記事公開日:2019.09.17
最終更新日:2023.01.20

産業用ロボットとは?最新動向からロボットの違いを知る

近年、「ロボット」という言葉は様々な業界において幅広く聞かれるようになってきました。
そのせいか、ロボットの定義は明確に定まっている訳ではなく所々で色々な定義がされているようです。

そんな中、この「ロボット」という言葉の一つの定義として、“人の代わりに何等かの作業を自律的に行う装置、もしくは機械のこと。”とあります。

このように、どのような用途でロボットが使用されるものかという大まかに定義づけがある他、学術的なロボットの定義の一つとしては、日本ロボット学会が編纂したロボット工学ハンドブックで紹介されているものとして、“自動性、知能性、個体性、半機械半人間性、作業性、汎用性、情報性、柔軟性、有限性、移動性を持つもの”だと言われることもあります。

我々の日常の業務は多くの産業において“人”によって行われているため、この「ロボット」はどのような産業においても遅かれ早かれ関係を持つものとなるだろうことが予想されます。

近年では、日本の人口ピラミッドの推移からも考察できるように、国内の人口は減少傾向であることは明確です。
さらにそれに加え、人口の分布としては高齢者の割合は増加傾向でありながら、若い世代の割合は減少するということが予測されております。

このことから、

  • 国内の人口は減少傾向にあるということ
  • 人口分布は高齢者人口が多くなっていくということ(=国内人口における生産年齢人口の割合が低下するということ)

上記のことが容易に予測できます。

もう一度、「ロボット」の定義の一つを下記に示してみます。

ロボットとは、“人の代わりに何等かの作業を自律的に行う装置、もしくは機械のこと。”

世界的な人口は増加傾向にあります。
しかしながら、一方で日本国内の人口は減少傾向にあります。

そのような環境下において我々に代わって作業を代替してくれる装置・機械である「ロボット」の需要は日に日に増していくことでしょう。

以下のレポートにおいても、中小企業の全体的な方向性としては、社内のシニア、ベテラン人材の継続確保よりも、自動機やロボットによる自動化・省人化のポイントが増加しているようです。

https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2018/honbun_pdf/pdf/honbun01_01_02.pdf

これらのことからも、ロボットへの期待は既に高まっていることが覗えます。

では、このような「ロボット」、多くの産業から耳にするようになっておりますが、具体的にはどのような分野においてロボット化は進んでいるのでしょうか?

ロボット化が進む分野は?

産業用ロボット

BtoBにおけるロボットとしては産業用ロボットが代表的です。
この産業用ロボットという括りではざっくりとしすぎているため、以下の様に分類してみました。

農業用

農業のロボット化というと、スマート農業という言葉が最近では聞かれるようになってきています。スマート農業を牽引させている企業としては、クボタなどが代表的な企業となります。農業人口が減少している中で、クボタの開発した無人コンバインや、無人田植え機は高齢者の農業を手助けするだけでなく、生産年齢人口が減少している中で大きな貢献が期待されています。

林業用

林業用のロボットとしては、自動枝払い機や下草刈りロボットなどが挙げられます。木にロボットを装着するだけで、自動でロボットが枝を切断してくれるロボットなどが代表的な例です。高い木などの切断が困難である中で、林業者の手助けをしてくれるロボットです。草刈りロボットはルンバのような形状で、自動で草を刈り人の作業を手助けしてくれています。

工業用

産業用のロボットというと、日本の製造業から考えていくと工業のロボット化を表すことが多いかもしれません。工業用ロボットは、アームロボットであれば、溶接の工程に用いられたり、組立工程において用いられたりと使用の用途は様々です。このようなロボット化は減少している生産年齢人口に対応するだけでなく、過酷作業を低減させることや、中小企業にとっては採用面でも強化が期待できるようです。

商業用

マネキン型ロボット「Palette」は人感センサーを備え、人が近づくとさまざまなポーズを披露するマネキン型ロボットです。ファッション業界においてこれらのロボットが現在では活用されているようです。また、物流クライシスや物流事業の危機が囁かれ、更なる宅配ニーズが急激に増加するなかで、自動運搬ロボットは少子高齢化、深刻な人手不足にみまわれている状況における一つの打開策として期待が持たれています。

サービス用ロボット

サービス産業におけるロボット化としては、看護ロボットにおいてはMoxiなどの看護師を支援するロボットがあります。また、ビルや公共建物清掃などを行うロボットや福祉業界においても近年需要が高まっています。このようなことから、サービス分野においてもロボット化が急速に進むことが予測されています。

ペットロボット

また、産業用ロボットやサービス用ロボットは主に人間が行っている作業を代替するものがほとんどでありました。しかし、ペットロボットは人間にセラピー効果を与えることへ期待が持たれているものです。このようなロボットの代表としては、SONYにより開発されたAIBOや、バロなどが有名です。これらロボットの効果としては、うつ状態の効果を改善させる心理的効果、ストレス低減といった生理的効果、発話の増加による社会的効果増進などの効果に寄与するようです。

 

今回の記事では、上記のように分類してみましたが、人それぞれで分類の方法は異なるでしょう。
これは、ロボットという定義が場所によって人によって状況によって変わってくるものであるから避けられないことかもしれません。

産業用ロボットとは?

「ロボット」と一口に言っても様々な種類があることをご紹介してきました。

そのような中で、製造業において注目したロボット化とは、産業のロボット化にあたります。

この日本のお家芸であったロボットに世界が追い付こうと、ドイツではインダストリー4.0、アメリカではインダストリー・インターネット・コンソーシアムというように世界的にもロボット化が進んでいます。

しかし、近年では中小企業においても産業のロボット化は急速に進んできています。

このような産業のロボット化、その中でも工業のロボット化に注目が集まっている理由としては、顧客のニーズが多様化していることもありますし、それに加え、これから課題となる生産人口の減少にも対応することが可能となるからでしょう。

そもそも、この産業ロボットの定義はどのようなものなのかというと、日本工業規格(JIS)によれば、「自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行できる、産業に使用される機械」と定義されています。

そして、このような産業のロボット化とは大企業が大きな投資をすることにより実現することが可能なものだと考えられておりました。

しかし、近年では資金が大企業のように潤沢ではなく、規模もそれほどではないような中小企業においてもロボット化が可能となってきております。

このように、中小企業のロボット化は大企業のそれとは異なります。

中小企業のロボット化は

  • ロボットによる熟練作業の代替
  • 熟練作業員は更なる付加価値の高い業務へと移行可能に
  • ロボットによる3K業務の代替
  • ロボット導入により、若い人材を採用可能に

中小企業のロボット化は大企業のそれとは異なり、上記のようなメリットを享受することに期待がもてることになりそうです。

【産業用ロボット例】例えば垂直多関節ロボットとは?

垂直多関節ロボットについてもう少し具体的に用途や事例を紹介したいと思います。

次に垂直多関節ロボットは、「6軸ロボット」や「5軸ロボット」とも呼ばれています。複数個の間接を持つロボットという意味で多関節ロボットと呼称されています。

ロボットは軸が多いほど自由に動けます。それぞれの関節がほぼ360°の動きに対応しており、その関節の動きの組み合わせにより様々な動きを実現出来ます。
ここで言う関節にはサーボモータが組み込まれており、関節数はサーボモータの数と同じです。つまりロボットとはサーボモータの集合体なのです。

そして、このサーボモータの性能と複数のサーボモーターを同時に制御するソフトウェアの合体したものが産業用ロボットです。

さらにロボットハンドの先端に用途に合わせて様々なハンドを装着する事が出来ます。このハンドにはモノを掴んだり、加工したり、形状を測定したり、塗装したり、溶接したりと、色々な種類があり、その組み合わせと使い方は無限大の可能性を秘めてます。

その汎用性の高さ故に、様々な分野で使用されており、世界中のものづくりに変革をもたらしています。

代表的な使用方法

1、バラ積みピッキング

垂直多関節ロボットやパラレルリンクロボットにカメラを追加して、ばらばらに置かれている製品や材料の向きや角度を判別してロボットが自動でピッキング(把持する)する機構です。
機械加工をはじめ食品、倉庫等様々な分野で利用されています。

2、溶接

ロボットハンドに溶接トーチを持たせて自動で溶接を行います。
TIG,MIG,MAG,YEG様々な溶接にも対応可能です。特殊な肉盛り溶接やアルミ溶接など難易度の高い溶接にも対応しており、現在もメーカーから様々なロボット溶接用トーチが開発販売されています。

3、研磨ロボット

ハンドにて製品や材料をピッキングし、研磨機等に押し付ける事で研磨を行う工程に用いられています。
ロボットは力加減が出来ないモノなのですが、ハンドに力覚センサーを初めとするセンサーを用いる事で研磨機への押し付け強さ等もコントロールする事が出来、従来では研磨の職人さんしか出来なかった分野への利用が進んでいます。
鋳物部品のバリ取りから眼鏡レンズの研磨など粗いものから精密なものまで幅広く使用されてます。

4、塗装

塗装についても非常に自動化が進んでいる分野です。塗装も非常に高い技術が必要な加工なのですが、ロボットでの塗装も非常に広く利用されてます。
例えば自動車ですが、基本的に全てロボットで塗ってます。
携帯電話のケースやOA機器等のケース等の量産品も多くの場合ロボットで塗られています。逆に職人さんが手吹きで塗装しているモノの方が少なくなってきていると思います。

5、検査

検査といえば、検査専用用カメラですが、ここにもロボットを用いられるケースが増えてきています。
なぜなら、検査用カメラは動く事が出来ない為です。立体物の多面を検査する為には、立体物を動かす必要があるからです。従来の検査方法では、人間が製品や材料を動かして多方向からカメラで撮像、検査を行う必要がありました。検査用カメラも非常に高価なものなので、複数個のカメラを用いて多方向から同時検出する事が現実的に不可能でした。そこでロボットを活用します。
カメラは一つでロボットが検査する面をカメラにむけて撮像、検査、面を変えて検査という方法や、ロボットハンドにカメラを持たせて立体物の周囲全方向から撮像、検査を実施する場合もあります。
特に非常に大きなモノや重たいモノの検査に重宝されています。

このように様々な分野に垂直多関節ロボットは利用されています。何にでも利用出来る反面、用途や環境に合わせたカスタマイズをしっかりと行う必要があるのが垂直多関節ロボットであり、このカスタマイズを如何に現場に最適なモノにするかが導入の最も大きなポイントです。
垂直多関節ロボットの導入を検討している方は、しっかりと目的・用途・環境等を吟味した上でロボットのカスタマイズする事をおすすめします。

まとめ

このように近年では、様々な業界においてロボットが用いられるようになってきています。

背景には将来的な人口減少により生産年齢人口が減少することや、顧客のニーズを満たすようなロボットを製造することが出来るまでに技術が発展していることなどが挙げられます。

その中で産業用ロボットやサービス用ロボット、ペットロボットなど種類・業界は多岐に渡って活躍していくことでしょう。
色々な環境においてロボット化が進んでいることから、ロボットの定義は場所や人、状況によって様々なものとなっているようです。

また、「ロボット」は日本のお家芸であり常に世界の先陣を走っていました。
しかし、それに追いつこうと近頃ではインダストリー4.0やインダストリー・インターネット・コンソーシアム(IIC)など工場の自動化に注目が非常に集まってきています。

近年、中小企業でもこのような工場の自動化の事例は急速に増えてきています。
これはロボットがプログラミングによって動作を変更することができることの他、ロボットに付随するアプリケーションの発展があり、多品種少量に対応することが出来るようになった事も要因として挙げられます。

本記事ではロボットとはどのような種類があるのかを簡単にまとめてきました。
他の記事では、中小企業がロボット化を実現している事例なども紹介しておりますから、ロボット化をお考えの方のきっとお役に立つことと思います。
是非一度、ご覧になって下さい。

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本事例集は、全国の先進的な工場が取り組む「自動化・ロボット化」の事例をまとめたものとなります。
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