毎日作るものが違うからIoTは無理」は本当か?1個作りが7割の現場でも成功する“身の丈DX”

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執筆者志田 雅樹
コラムテーマAI・デジタル・IoT
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製造現場に立ちはだかる「IoT導入のジレンマ」

  「ウチは毎日、図面も違えば工程も違う単品モノばかり作っている。量産工場向けのIoTや生産管理システムなんて、どうせウチには合わないよ」   日本のモノづくりを支える中小製造業の経営者様から、このようなお悩みをよくお聞きします。日々持ち込まれる一品一様のオーダーに応え、職人の熟練技術で困難な加工をやってのける。こうした「多品種少量生産」や「個別受注生産」の現場こそが、日本の製造業の強みです。   しかし、いざ「デジタル化」や「生産性向上」の話題になると、途端に足踏みしてしまう企業が少なくありません。確かに、毎日同じものを大量に作る工場であれば、機械にセンサーを付け、自動でデータを取得するシステムは絶大な威力を発揮します。しかし、一品一様の製品が生産の7割を占めるような現場では、そう簡単にはいきません。   「毎回手順や工程が違うのに、どうやってシステムに登録すればいいのか?」 「職人の頭の中にある段取りやノウハウを、正確にデータ化するなんて不可能だ」   そう考えて、システム化やDX(デジタルトランスフォーメーション)を諦めてしまうのは、今の現状を鑑みれば非常に無理のないことです。   しかし、結論から申し上げます。「毎日作るものが違うからIoTは無理」というのは、大きな思い込みです。 多品種少量の現場には、量産工場とは全く異なる、その現場の特性に合った「身の丈DX」のやり方が確実に存在します。  

なぜ「多品種少量の壁」にぶつかってしまうのか?

  多品種少量の現場がシステム化に失敗する最大の理由は、「量産工場と同じアプローチ(完璧主義)をしてしまうから」に他なりません。   一般的な生産管理システムやIoTソリューションは、「事前にすべての工程・標準時間・部品表(BOM)をマスターとして登録すること」を大前提としています。同じものを繰り返し作るなら、最初の手間は後で回収できます。しかし、毎日違うものを作っている現場で、毎回この膨大な初期登録をやるのは物理的に不可能です。結果として、マスター登録の作業だけで現場の管理担当者がパンクしてしまい、システムが放置される「システム化の墓場」状態に陥ってしまいます。   また、高額なセンサーを導入して「機械の稼働状況」だけを完璧に取ろうとするアプローチも、多品種少量の現場ではミスマッチを起こします。一品一様の現場では、「機械が動いている時間」よりも、実は「人が段取りをしている時間」や「図面を確認している時間」、あるいは「材料を探している時間」の方がはるかに長いことが珍しくありません。機械だけを監視しても、本当に知りたい「人の作業データ」や「見えないムダ」が全く取れないのです。 「量産型DX」と「多品種少量向けの身の丈DX」の違いを比較した図解。左側の量産型が膨大なマスター登録や機械データの取得で現場を疲弊させるのに対し、右側の身の丈DXは人と時間の記録に絞ったシンプルな1クリック入力で現場に定着する様子を示している。 )  

1個作りの現場で成功する「身の丈DX」 3つの鉄則

  では、一品一様ばかりで複雑な工程を抱える現場は、一体どうアプローチすればよいのでしょうか? システム導入に成功し、しっかりと利益を出している工場が実践しているのは、完璧主義を捨てた「身の丈DX」です。具体的には、以下の3つの鉄則に基づいたアプローチを採用しています。  

鉄則1:「モノ」ではなく「人・時間」の動きを追う

  毎回作るものが違うのであれば、製品ごとの完璧な原価や工程のデータ化は一旦諦める勇気が必要です。その代わり、「誰が」「どの案件(作業指示書)に」「いつ着手して、いつ終わったか」という“時間の記録”だけにフォーカスを絞ります。   多品種少量の現場において最も重要な原価は「人の工数」です。複雑なマスター登録を行わなくても、各案件に対して「実際にかかった作業時間」さえ正確に把握できれば、案件ごとの「実際原価」が明確になります。赤字案件と黒字案件を見極めるためには、このシンプルな時間の記録だけで十分なのです。  

鉄則2:現場の入力を「1クリック」にする

  システム導入において一番の壁となるのは、新しい操作や文字入力を嫌う現場の職人さんたちの反発です。彼らは「ものづくり」のプロであって、パソコンの入力係ではありません。   だからこそ、身の丈DXでは現場の入力負荷を極限までゼロに近づけます。例えば、紙の作業指示書にバーコード(QRコード)を印字し、現場の各工程には安価なタブレット端末を置いておきます。職人さんは作業の開始時と終了時に、手元のバーコードリーダーで「ピッ」と読み込むだけ。 キーボードでの文字入力は一切させず、直感的な1クリック(あるいは1スキャン)の簡単な仕組みからスタートすることで、現場への定着率は飛躍的に高まります。  

鉄則3:「見えないムダ」を見える化する

  多品種少量の現場で一番利益を圧迫しているのは、加工そのものの時間ではなく、「手待ち時間」や「材料探し・図面の問い合わせによる中断」です。   時間だけをシンプルに記録する仕組みができると、システム上に「なぜこの単品モノの加工に、想定以上の時間がかかったのか?」というボトルネックが自然と浮き彫りになります。データを見ることで、「実は図面が不明確で、設計への確認待ちに毎日30分使っていた」「刃物を探す時間が発生していた」といった事実が判明します。この「見えないムダ」をピンポイントで改善するだけで、工場の生産性と利益率は劇的に向上するのです。  

「どんぶり勘定」からの脱却が、最大の利益を生む

  1個作りが7割を占めるような現場でも、この「身の丈DX」を導入したことで、劇的な変化を遂げた企業が多数存在します。具体的な成果としては、以下のようなものが挙げられます。   *   適正な見積もりの実現:「儲かる仕事」と「赤字の仕事」が工数データとして明確に見える化され、過去の経験やカンに頼らない、根拠のある見積もりが提示できるようになります。 *   残業時間の大幅な削減:夕方に職人が疲れ切った頭で書いていた「思い出し日報」が不要になり、入力の手間が消えることで、現場の残業時間が直接的に削減されます。 *   進捗管理のリアルタイム化:社長や工場長が、いちいち現場を歩き回って「あれ、どこまで進んでる?」と確認しなくても、手元の画面でどの仕事がどこにあるかリアルタイムで把握できるようになります。   多品種少量生産という複雑な環境だからこそ、長年の経験やカンに依存する「どんぶり勘定」からいち早く脱却することが、利益率向上の最短ルートに直結するのです。  

まとめ:まずは「今のやり方」を少しだけデジタル化しませんか?

  「毎日作るものが違う」という事実は、決してシステム化できない理由にはなりません。むしろ、状況がコロコロ変わる複雑な現場だからこそ、シンプルに「今、何に時間がかかっているのか」を把握する仕組みが必要不可欠です。   何千万円もするような大掛かりで複雑なシステムは不要です。現場の職人に負担をかけず、明日からでも無理なく始められるスモールスタートの仕組みづくり。それこそが、私たちがご提案する「身の丈DX」です。   「ウチのような一品一様の複雑な現場でも、本当にそんなに上手くいくのだろうか?」 少しでも気になった経営者様や工場長様は、ぜひ多品種少量生産に特化した導入事例や、具体的な解決策をまとめた資料をご覧ください。   御社の現場に眠る「見えない利益」を掘り起こすヒントが、きっと見つかるはずです。   ---   >>「多品種少量・個別受注」の現場に特化! 現場が迷わない、社長の右腕になる生産管理・実績収集システム〇〇の詳細はこちら


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執筆者 : 志田 雅樹

船井総研に入社以来、一貫して製造業の現場DXコンサルティングに従事。GASやRFID、各種生産管理システムを駆使した現場発のデジタル化を得意とする。大手企業における現場常駐型の稼働率改善や、中小企業での「紙日報の完全廃止・実績のリアルタイム自動送信システム」の構築など、事務転記をゼロにする劇的な成果を多数創出。 「DXの主役は『人』であり、現場が納得しない取り組みに意味はない」という強い現場第一主義を貫く。 現場と経営陣の間に立つ全体最適のFit&Gapを得意とし、最後までやりきる実行力で、日本の中小企業からものづくりの未来を革新すべく日々奮闘している。