なぜウチの工場は「作れば作るほど儲からない」のか?見積もりと合わない“隠れ赤字”の正体と脱却法

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執筆者志田 雅樹
コラムテーマDX
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  「現場は毎日フル稼働で残業もこなしている」「営業部門も奮闘し、売上目標を無事に達成している」。現場には活気があり、会社全体に「これだけ忙しいのだから今期は安泰だ」という期待感が満ちていることでしょう。それなのに、いざ決算や月末の帳簿を締めてみると、思ったほど手元に利益が残っていない……。 日本の屋台骨を支える製造業の経営者や工場長から、こうした切実なお悩みを本当によく耳にします。   受注時の見積もり段階では、間違いなくしっかりと利益(粗利)を確保できるような単価設定で計算しているはずです。それにもかかわらず、なぜか事後計算になると手品のように利益が消えてしまう。この「作れば作るほど儲からない」という恐ろしいジレンマの裏には、工場を静かに、しかし確実に蝕んでいく「隠れ赤字」「ドンブリ勘定」という深刻な経営課題が潜んでいます。   本コラムでは、見積もりと実績が合わなくなる根本的な原因を紐解き、長年の悪習であるドンブリ勘定から脱却して「確実に利益を残す強靭な体質」へと工場を改善するための具体的なアプローチを詳しく解説します。  

見積もりは黒字のはずが…「隠れ赤字」を生み出す3つの正体

  受注時の見積もり(標準原価)と、実際に製造にかかったコスト(実際原価)にズレが生じると、想定していた利益はいとも簡単に吹き飛びます。まずは、企業の利益を圧迫する「隠れ赤字」の正体を3つの視点から見ていきましょう。  

把握しきれない「見えない工数(人件費)」

見積もり時には「この工程は熟練工が担当すれば2時間で終わる」と論理的に計算していても、現実の現場は計画通りにはいきません。段取り替えに予想以上の手間取ったり、機械の一時的な停止(チョコ停)が頻発したり、最悪の場合は不良品の手戻り(再加工)が起きたりすることが多々あります。 これらの「想定外の作業時間」はすべて労務費の増加に直結します。しかし、作業日報が手書きやExcelの自己申告による管理だと、こうしたロス時間を正確に把握することは困難です。結果として、誰も気づかない「見えないコスト」が利益を容赦なく削り取っていくのです。  

材料費の変動と歩留まりの悪化

昨今の急激な原材料費や部品価格の高騰、為替の変動は、見積もり時点の単価設定をあっという間に陳腐化させます。数ヶ月前の見積もり単価のまま製造を続けていれば、当然ながら利益は圧迫されます。 また、現場での端材の廃棄が想定より多かったり、不良率が高く「歩留まりの悪化」が生じたりすると、予定以上の材料を投入しなければなりません。こうした材料の無駄使いは、見積もり以上の材料費を発生させ、結果としてその製品を赤字へと転落させてしまいます。  

「ドンブリ勘定」による間接費の配賦

電気代などのエネルギーコスト、機械設備の減価償却費、工場全体の消耗品費や管理者人件費といった「間接費」を、製品ごとにどう割り当てているでしょうか。「なんとなく生産数量や売上高の比率で機械的に割っている」というドンブリ勘定を行っている工場は少なくありません。 しかし、この方法では、本当は手間と多大なコスト(電力や場所など)がかかっている赤字製品のマイナス分を、効率よく生産できている別の黒字製品の利益で相殺して見えなくしてしまうという、極めて危険な状態を生み出します。  

「事後計算」の罠!気づいた時には手遅れになっている

  こうした隠れ赤字を長期間放置してしまう最大の原因は、製造現場にはびこる「原価の事後計算」という古い体質にあります。   多くの工場では、月末や翌月の初めになってから、現場の紙の作業日報や材料の出庫伝票を回収・集計し、事務担当者が手入力でExcelに打ち込んで原価計算を行っています。しかし、これでは計算結果が出る頃には翌月の半ばを過ぎており、「どの案件(ロット)で、どれだけのコストが超過しているか」に気づくのがあまりにも遅すぎます。 赤字になっていることに気づいた時にはすでに納品が完了しており、手の打ちようがありません。   「毎日これだけ忙しいのに儲からない」という嘆きの正体は、現場の努力不足ではなく、この「後手に回った管理」と「不透明な現場データ」が最悪の形で組み合わさっている結果なのです。  

ドンブリ勘定から脱却し、確実に利益を残す3つのステップ

左側に「見えない工数」「材料費高騰・歩留まり悪化」「どんぶり勘定」といった隠れ赤字の原因を示す下向きの矢印があり、右側に向かって「1.リアルタイム収集」「2.個別原価の見える化」「3.見積もりへの反映」という利益体質改善に向けた3つのステップが上向きのサイクルとして描かれている、ビジネス向けの洗練された図解。   では、この隠れ赤字の負の連鎖から抜け出し、「作れば作るほど儲かる工場」へ生まれ変わるにはどうすればよいのでしょうか。解決の鍵となるのは、属人的な管理を捨て去り、データドリブンな意思決定を行うための以下の3つのステップです。  

ステップ1:現場の実績データを「リアルタイム」に収集する

最初のステップは、作業に「誰が・いつ・何時間かかったか」「材料をどれだけ使ったか、あるいは廃棄したか」という実績データを、正確かつリアルタイムに収集する仕組みを構築することです。 手書きの日報や後日のExcel転記作業は、データの精度を下げるだけでなくタイムラグを生みます。これらを廃止し、タブレット端末やバーコードリーダー、あるいはIoT機器などを活用して、現場の作業員の負担を増やすことなく、デジタルで瞬時に実績を吸い上げる環境を整えましょう。  

ステップ2:製品・案件ごとの「個別原価」を見える化する

次のステップでは、収集した正確なデータをもとに、製品単位・ロット単位での「実際原価(個別原価)」を精緻に算出します。 実際の材料費、発生したロス時間も含めた正確な労務費、そして機械の稼働時間など実態に即した基準で正しく配賦された間接費を組み合わせることで、初めて「どの製品が本当に儲かっていて、どの製品が赤字を垂れ流しているのか」が白日の下に晒されます。 個別原価が見える化されれば、不採算取引の顧客への単価交渉や、特定のボトルネック工程の現場改善に、自信を持ってピンポイントで着手できるようになります。  

ステップ3:実績データを「次回の見積もり」にフィードバックする

そして最も重要なのが、算出された実際原価のデータを、次回の見積もり(標準原価)の更新に活かすことです。 「この製品は特定の加工で手戻りが多いから、次回の見積もり工数はあらかじめ15%多めに見積もる」「材料費の最新の仕入れ単価を即座にマスターシステムに反映させる」といった具体的なPDCAサイクルを回し続けます。 現場の実績データが見積もりに絶えずフィードバックされる仕組みができれば、見積もりと実績の乖離(=隠れ赤字)は劇的に減少し、確実に利益を確保できる強い見積もりが作成可能になります。  

まとめ:「精緻な原価管理」が工場の未来を救う

  繰り返しますが、「作れば作るほど儲からない」という厳しい状況は、現場で汗を流す従業員の努力不足によるものではありません。その根本的な原因は、経営陣や管理者が「利益を可視化する仕組み(システム)」を現場に提供できていないことによって引き起こされています。   属人的なExcel管理や、長年の勘に頼ったドンブリ勘定から勇気を持って脱却し、実績データに基づいた精緻な原価管理・生産管理の仕組みを導入することこそが、企業の利益体質への第一歩となります。正しい数字をリアルタイムで把握することで、経営陣は初めて正しい意思決定を下すことができるのです。   本LP(製品・サービスページ)では、こうした製造現場の「隠れ赤字」を根本から解消し、リアルタイムでの原価把握と見積もり精度の劇的な向上を実現するソリューションを詳しくご紹介しています。 「ウチの本当の利益はいくらなのか?」――その答えを正確に把握し、予測不能な時代を勝ち抜く「強い工場」へと変革するために、ぜひ具体的な機能と導入効果をご覧ください。


「見積もり段階では黒字だったはずなのに、いざ終わってみると利益が残っていない……。」こうした「隠れ赤字」を防ぎ、長年染み付いたドンブリ勘定から脱却することは、企業の持続的な成長において避けては通れない課題です。 しかし、いざ改善しようと思っても、「原価管理を徹底したいが、どこから手をつければいいのかわからない」「現場の負担を増やさずに、精度の高い管理体制を構築したい」と悩まれている経営者様や責任者様も多いのではないでしょうか。 そこで今回、こうした課題を根本から解決するためのセミナーを開催いたします。本セミナーでは、「隠れ赤字」を正確に可視化し、プロジェクトごとに確実に利益を残すための具体的な仕組みづくりや、ドンブリ勘定からの脱却に成功した企業の事例を詳しく解説いたします。 「忙しいのに利益が出ない」という現状を変え、確実に利益が手元に残る筋肉質な企業体質へと転換したい方は、ぜひこの機会にご参加ください。 ▼詳細・お申し込みはこちら https://www.funaisoken.co.jp/seminar/139988 セミナー開催のお知らせ

執筆者 : 志田 雅樹

新卒で船井総合研究所に入社後、製造業向け原価管理プロジェクトに従事。 現場密着した実際製造工数のデータ取りから、経営者向けデータ分析・可視化までを手がける。