
昨今、多くの製造業を悩ませている「ナフサショック」。原材料価格の高騰や供給不安は、企業経営に深刻な影響を与えています。
先日、あるプラスチック製造業の経営者様とお話しした際、現在の状況について「全く見えません…」と仰っていました。複雑な言い回しではなく、この「見えない(=お手上げ状態)」というシンプルな言葉に、事態の深刻さが如実に表れています。原材料の価格はもちろん、仕入れできる量さえ全く分からないという、まさにナフサショックのど真ん中にいる企業のリアルな声です。
今回は、この先行きの見えない有事において、あらゆる製造業が今すぐ取るべき「短期的な財務対策」と「中長期的な業務改善・DX」について解説します。
【基礎知識】ナフサとは何か?

本題に入る前に、原油由来製品における「ナフサ」の位置づけを整理しておきましょう。ナフサはプラスチックやゴム、繊維など、製造業に欠かせない化学製品の基礎原料です。
■ 原油由来の製品分類
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製品 |
比重 |
特徴 |
主な用途 |
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石油ガス (LPG) |
0.50 〜 0.60 |
常温では気体 |
家庭用プロパンガス等 |
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ナフサ |
0.65 〜 0.75 |
液体だが蒸発しやすい |
プラ・ゴム・繊維等の化学品の原料 |
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ガソリン |
0.72 〜 0.76 |
ナフサとほぼ同等 |
自動車燃料 |
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灯油 |
0.78 〜 0.83 |
サラサラした液体 |
ストーブ・航空機の燃料 |
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軽油 |
0.80 〜 0.84 |
水に近く水には浮く |
トラック・バスの燃料 |
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A重油 |
0.82 〜 0.88 |
軽油に近い |
工場・船舶・火力発電の燃料 |
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C重油 |
0.90 〜 0.98 |
粘り気があり重い |
船舶等の大型ディーゼルエンジン燃料 |
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アスファルト |
1.00 〜 1.10 |
非常に重く水にわずか沈む |
道路舗装等 |
※上記は一般的な原油由来製品の分類です。比重などの数値は原油の産地や精製過程により変動するため、参考数値としてご覧ください。
【短期対策】有事の鉄則は「現預金の拡大」
コロナ禍にも通じますが、一企業単独ではマクロ環境の激変をコントロールすることはできません。このような有事に企業が最優先で取るべき対策は、「現預金の拡大」です。
究極的な理想を言えば「現預金を月商の6か月分持つ」ことですが、現実の中小製造業において、これは非常にハードルが高い水準です。よほどキャッシュフローが盤石な優良企業でない限り、すぐには届かないでしょう。
そのため、まずは「最低でも月商の3か月分を死守する」ことを当面の目標に設定してください。売上が急減しても、3か月分のキャッシュがあれば、その間に次の打ち手を講じる時間が生まれます。
平時と有事で変わる「資金調達」の考え方
財務的視点で見ると、平時と有事(現在)では、資金調達の正解が180度変わります。当社の財務コンサルタントからの共有事項をまとめました。
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項目 |
平時 |
有事(現在) |
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調達時期 |
必要な時に借りる |
借りられるときに借りておく |
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調達金額 |
必要な分を借りる |
借りられるだけ借りる |
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借入期間 |
適正な期間で |
なるべく長く |
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返済方法 |
毎月返済するもの・しないものを使い分ける |
とにかく毎月返済をつけてでも期間を長くし、期限の利益を確保する |
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担保・保証 |
必ずしも必要ではない |
資金調達額を増やせるなら、積極的に差し入れて最大限活用する |
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金利 |
とにかく低レート |
高くても気にしない(2%程度なら借入優先) |
● 平時の最優先事項:「金融機関と良好な関係を築き、良い条件で借りる」
● 有事の最優先事項:「借りるだけ借りて、手元の現預金を積み上げる」
調達条件(金利など)よりも、手元キャッシュの確保を最優先に動くことが、企業の生存確率を大幅に引き上げます。
利益は出ていても…「黒字倒産」のリスク
ある企業の決算書を拝見した際、営業利益はしっかりと出ているものの、現預金は月商の1か月分程度でした。一方で、支払手形残高が仕入の1か月分以上残っていました。
通常時であれば問題なく回るかもしれませんが、売上が数か月連続して急減した場合、決算上は黒字でも現預金が枯渇し、手形が不渡りとなる「黒字倒産」のリスクが高まります。このような企業こそ、まさに「現預金の拡大」と「キャッシュフローの改善」に急いで取り組む必要があります。専門の財務コンサルタント等へ早急に相談することをお勧めします。
【中長期対策】ピンチをチャンスに変える「社内業務効率化・DX」

資金繰りの安全確保という短期・緊急対策と並行して、中長期的な視点も忘れてはなりません。
外部環境が厳しく、売上拡大という「外向き」の動きが取りづらい時期だからこそ、改めて社内に目を向け、業務効率化や体質改善を図るタイミングです。普段は忙しくて手が回らない内部体制の見直しを進めましょう。
例えば、以下のようなポイントにメスを入れる時期に来ています。
● 生産管理体制の見直し: 無駄な在庫や工程は発生していないか?
● 既存システムの再評価: 導入済みのシステムは、現場で本当に活用しきれているか?
● 利益体質の確認: どんぶり勘定になっておらず、しっかり利益が残る構造になっているか?
● 優良顧客の選別: 最悪のリスクを想定した際、本当に大切にすべき取引先はどこか?
● データ基盤の整備: 上記の判断を正確に下すための「元となるデータ」が揃っているか?
DXは「現場の協力」があってこそ成功する
こういった社内改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)は、外部に丸投げして実現できるものではありません。現場で働く社員の協力があってこそ機能します。これまでDXに力を入れられてい難かった企業にとっても、このナフサショックという危機的状況は、社内意識を一つにまとめ、企業体質を変革する大きな「チャンス」となり得ます。
船井総研では、大掛かりなシステム導入ではなく、「今すぐ効果の得られる小規模DX」を通じた製造業の体質強化をご提案しています。 「何から手をつければいいか分からない」「自社に合った効率化の手法を知りたい」という経営者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。ピンチを共に乗り越え、より強い企業を創り上げるための第一歩を踏み出しましょう。
【参考記事】
「DX=高額な設備投資」の勘違い。今ある設備とシステムを使い倒し、最小のコストで最大の効果を生む秘訣
https://smart-factory.funaisoken.co.jp/blogs/column/dx-factorydx20260413_6


