A.製造業の成長M&Aには、技術を掛け合わせる「同業吸収型」、不足工程を補完する「工程付加型」、優良商流を得る「取引先獲得型」の3つがあります。M&Aの成功には営業力と強力なビジネスモデルの移植・導入が不可欠で、「機能と時間を買う戦略投資」といえます。
製造業におけるM&Aの進化
単なる規模拡大から「成長戦略」へ 製造業におけるM&Aは、単なる規模の拡大や救済手段から、明確な意図を持った「成長戦略」へと進化しています。船井総研グループの支援実績によると、成長意欲の高い製造業・商社の50%以上が既に何らかの形でM&Aを実施しています。
製造業において現在主流となっている、成長のための「3つのM&Aパターン」について下記にて解説します。
1. 同業吸収型(設備・技術の掛け算)
「切削加工×切削加工」「板金×板金」のように、同業種を買収するパターンです。 単に規模を大きくするだけでなく、「量産が得意な企業が試作メーカーを買う」「大型加工が得意な企業が微細加工の企業を買う」といったように、保有設備や技術特性の違いによる相乗効果を狙います。成功の鍵:買収後の現場改善が必須となるため、譲受側企業の「ビジネスプロセス(製造体制や生産管理体制)」がどれだけ洗練されているかが成否を分けるカギとなります。自社の効率的な管理ノウハウをいかにスムーズに移植できるかが重要です。
2. 工程付加型(ワンストップ化の実現)
「切削×研削」「板金×塗装・組立」のように、自社にない製造工程を補完するM&Aです。 自社の既存顧客に対し、これまでは外注していた工程も含めてワンストップでの受注・納品が可能になります。背景:大手メーカーが管理工数削減のためにサプライヤーを絞り込む傾向にあり、「一貫対応」ができる企業の価値が高まっていることが背景にあります。メリットとして、 既存顧客内での単価アップが見込め、シナジー効果を予測しやすいのが特徴です。ただし、未知の工程を取り込むリスクを避けるため、既存の外注先を買収するなど、連携実績のある企業をターゲットとすることでPMI(統合プロセス)を円滑に進められます。
3. 取引先獲得型(優良口座と時間を買う)
譲渡企業が保有する「大手・優良企業の取引口座(商流)」そのものを獲得目的とするケースです。 地域を代表する大手企業の新規口座を開設することは極めて困難ですが、M&Aであればその壁を越え、一挙に数億〜数十億円規模の受注基盤を獲得できる可能性があります。自社の技術・設備が活かせる仕事を持っている企業をターゲットにします。
上記3つのパターンは単なる種類になり、M&A後に業績を伸ばし続ける企業(例:キーエンス、ニデック、技術承継機構など)には、共通する2つの特徴があります。
①強力な営業力(新規開拓力)
M&Aで増えた生産キャパシティを埋めるための、「質」と「量」を伴った開拓力が必要です。
②洗練されたビジネスプロセス
買収した企業の生産性を高めるための、確立された管理システムやDX化のノウハウです。
これからの製造業M&Aは、単に会社を買うのではなく、これらの戦略的意図を持って「機能を付加し、成長の時間を買う」投資としての側面が一層強まっています。

