個別原価計算
目次
1.個別原価計算とは
個別原価計算とは、製品ごとにかかった原材料費や労働費、間接費、その他経費などの生産コストを個別に明確に把握し、製品ごとの利益率や原価を評価するための原価計算手法です。
製造業において、各製品の原価計算によって収益性や生産性を把握することは、会社の業績アップを目指す上で重要な役割を果たします。
直接原価と間接原価
製品ごとの原価計算を行う際には、直接原価と間接原価を正確に算出することが不可欠です。
直接原価とは、製品を生産する際に直接かかる費用が含まれます。
直接原価
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直接材料費(原材料費)
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製品を製造する際に直接使用される材料の費用を指します。
直接材料費には、製品の特性や製造プロセスに応じて異なる種類の原材料が含まれます。例)自動車部品製造における鉄・アルミ・樹脂等
家具製造における木材や金属部品等
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直接労務費
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製品を製造する際に直接的にかかる労働者の給与や賃金、およびその他の関連する労務費用を指します。
基本的には直接作業時間×工賃によって算出されます。
直接的に労働力が必要な作業や手順に関連する費用が該当するほか、労働者の社会保険料や労働条件に関連する費用も含まれます。例)組み立て・加工・梱包等
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その他直接経費
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特定の製品やサービスに直接的に関連する直接材料費・直接労務費以外の費用を指します。
その他直接経費は、製品を製造するために直接的に必要な機械や設備のメンテナンス費用が含まれます。
間接原価
間接原価には、製品と直接関係のない間接的な費用が含まれます。
例)管理費用やオフィスの維持費用
事務用品や事務機器の購入費用
システムやソフトウェアのライセンス料などの情報技術関連費用
これらの費用は一定の配賦基準(直接作業時間や直接労務費等)に基づいて費用を製品個別に振り分けます。
管理会計上において、間接原価まで詳細に把握することは難易度が高く把握の緊急性が低いことが多いので、全製品一定の基準を設けて配賦することが良いと考えられます。
2.個別原価計算のメリット
個別原価計算の主なメリットは、原価や利益を製品別に明確に把握できる点です。これにより、製品ラインナップの最適化やコスト削減のポイントを特定しやすくなります。
また、工程の見直しや価格交渉時の根拠算出においても正確なデータを元に意思決定が行えるようになります。
製品ごとの原価を把握することで、収益性の高い製品や費用対効果の高い生産方法をピンポイントで議論することができるようになります。今までの勘や経験に依存した改善から脱却することができ、データをもとに改善・意思決定が行えるようになります。
3.総合原価計算との違い・メリットデメリット
総合原価計算は、企業全体の生産コストを把握するための手法であり、個別原価計算とは異なります。
総合原価計算では、原価管理にかかる工数を削減できるというメリットがありますが、反対に全体のコストを均等に製品に割り振る計算方法であるため、製品ごとの利益率やコスト構造を把握するには適していません。
個別原価計算 | 総合原価計算 | |
---|---|---|
メリット | 製品個別の利益やコスト構造を把握できる。 | 原価管理業務の工数を削減し、会社全体の利益やコスト構造を把握できる。 |
デメリット | 原価管理業務の工数がかかる。 | 製品個別の利益やコスト構造は把握できない。 |
4.製造業における個別原価計算の重要性
製造業において、個別原価計算は会社の業績アップを目指す上で非常に重要な立ち位置となります。
特に受注生産で多品種少量生産を実施している近年の製造業では、製品ごとの収益性や生産性を正確に把握することで、効率的な生産計画の立案や現場人員の最適配置が可能となります。また、材料費高騰などの外部要因に対する自社への影響を即時に把握することができ、早めの対策を行えるようになります。
製造業では、製品の生産にかかるコストが大きな部分を占めることが多いため、原価計算は企業経営において重要な要素になります。個別原価計算を行うことで、企業は製品ごとの利益を最大化することができるのです。
5.BIツールを活用した原価管理方法
「3.総合原価計算との違い・メリットデメリット」でも記載したように、個別原価計算は細かい集計作業が必要であるため原価管理業務の工数がかかります。
このデメリットを解消するためにBIツールを活用することが今後の製造業における原価管理では必要になると考えられます。
BI(Business Intelligence)ツールを活用することで、個別原価計算を効率的に行うことが可能になります。これらのツールはデータ集計・データ加工・可視化をローコードで設定して保存することができ、データが更新された際に自動で最新のデータを表示させることができるものになっています。また、クラウド上で閲覧できるソフトが多くあるため、それらを利用することで出張先でも自社の最新の原価情報を把握することができるようになります。
BIツールを活用して大量のデータを分析し、可視化することで、製品ごとの原価や利益をリアルタイムで把握することができます。また、BIツールは予測分析やシミュレーション機能も備えているソフトもあり、より効果的な原価管理が可能となります。
参照:BIツールとは