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「倒産とAIと火縄銃」フライデーコラム:シオタ

2025.12.03

AI を使わないのは、火縄銃の時代に槍を持って戦うようなものです。 ---------- 船井総研の塩田です。 最近の私の関心事は、「どのような企業が倒産するのか」ということです。 船井総研では成功事例を紹介することが多いですが、「失敗事例」の方が学習効果が高いと言われています。他社の失敗から学び、反面教師として自社の生存戦略に活かす取り組みは非常に重要です。 そこで今回は、ある老舗企業の事例と、そこから見えてくる「今の時代に私たちが取るべき戦略」について共有させてください。 1.帝国データバンクに学ぶ「倒産の前兆」 『倒産の前兆』(帝国データバンク情報部著,2019)という書籍をご存じでしょうか。ここには、数多の企業を見てきたデータから導き出された「7つの経営破綻の公式」が記されています。 業界構造・市況変化の波を打破できない 大ヒット商品が綻びを生む 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる ベンチャー企業の急成長は急転落の序章である 攻めの投資で上場企業が破綻する 経営陣と現場の乖離は取引先の離反の元 信頼構築のためにトップが不正行為に手を染める この中で、私が今、最も危機感を覚えているのが 「③ 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる」 です。 書籍の中では、「株式会社吉年」 という企業の事例が紹介されています。 可鍛鋳鉄継手の製造で国内トップシェアを誇り、創業から約300年もの歴史を 持つ超名門企業。しかし、そんな老舗でさえも一度倒産してしまいました。 同書には、この事例について次のような記述があります。 「歴史と技術があっても変化し続けなければ生き残れない」 300年続いたのれんがあっても、確かな技術があっても、時代の変化に対応できなければ企業は倒産する。これは私たちにとって非常に重い教訓です。 今、デジタル化やAI化がこれほど叫ばれているにもかかわらず、昭和の時代からやり方が変わっていない、あるいはシステムを導入しても使いこなせていない例は枚挙に暇がありません。 デジタル化・AI化の波に乗れている企業とそうでない企業では、事業競争力に重大な乖離が発生していると強く感じます。(ポジショントークではなく、本当に感じています。) 2.米国で起きている「AIによる雇用破壊」の現実 では、今直面している「変化」とは何か。 それは、世界の最先端である米国で起きている現象を見れば明らかです。 一少し前の日経新聞に、衝撃的な記事が掲載されました。 「AI猛進の米国、若者の働き口に異変 学位あっても就職難」(日本経済新聞) 要約すると、米国ではAIの浸透によってホワイトカラーの仕事が代替され、若者の就職難が深刻化しています。企業は今、「人」ではなく「AI」への投資を優先しているのです。 Newsweekでも「AI就職氷河期が米Z世代を直撃している」と報じられており、実際に米国を視察した方からも、「広告などのクリエイティブはAIばかり。人間の仕事がAIに奪われる現象が現実化している」との話を聞きます。 3.日本でも「3年後」に同じことが起こる 「それはアメリカの話だろう」と思われるかもしれません。 しかし、日本のトレンドは米国の数年遅れでやってくるのが通例です。 現在、日本でも求人数が減少傾向にあります(日経新聞:求人広告、9月10%減)。現在は「賃上げによる採用控え」が主な要因とされていますが、これは米国のインフレ初期(約3年前)と状況が酷似しています。 つまり、これから数年以内に、日本でも「AI浸透による採用減(仕事の代替)」が本格化する可能性が高いということです。 4.全社員が「AIを使える人材」になるしかない この流れは不可逆です。「歴史があるから」「技術力があるから」といって変化を拒めば、淘汰されていくことは間違いないでしょう。 では、どうすべきか? 答えは一つです。 「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを使って生産性を爆発的に上げる」側に回ることです。 これからの時代、一部の専門家だけがAIを使えれば良いのではありません。 経理も、営業も、総務も、「全社員」が当たり前のようにAIを使いこなし、自分たちの仕事を効率化・高度化できる状態を作る必要があります。CopilotやGeminiの導入に二の足を踏んでいる場合ではないのです。 AIでできる業務はAIに任せる 人は、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中する この体制を組織全体で築けるかどうかが、数年後の企業の生存率を分けるはずです。 願わくば、「うちはまだ早い」ではなく、「今変わらなければ手遅れになる」という危機感を共有し、ぜひ全社一丸となってAI活用に取り組んでいっていただきたい。 AI を使わないのは、火縄銃の時代に槍を持って戦うようなものです。 -------------------- 船井総研では、「製造現場における生成AI活用研修」支援を行っております。 製造現場における生成AI活用はまだまだ難しい...と感じていませんか? 実は、CopilotやGeminiなどの生成AIがあれば、以下のようなことができるようになります。 ■トラブル履歴分析: 複数のトラブル報告書データを読み込ませ、原因の傾向分析、共通点の抽出、対策案の立案をおこなう。 ■ NCプログラム作成支援: 加工したい内容を自然言語で指示し、たたき台となるコードを生成。対話を通じて修正・最適化していく。 ■ 類似図面の検索・図面情報の言語化: 「急な仕様変更」「特定設備の故障」といったシナリオを提示し、AIと対話しながら影響範囲の特定や代替案のブレインストーミングをおこなう。 ■ 技術伝承の効率化:熟練技術者の作業手順書やノウハウメモを読み込ませ、若手社員向けのQ&Aチャットボットのように活用する。 “製造現場”に特化した生成AI活用研修をご希望の方は、船井総研お問い合わせフォームよりお問い合わせをお願いいたします。 AI を使わないのは、火縄銃の時代に槍を持って戦うようなものです。 ---------- 船井総研の塩田です。 最近の私の関心事は、「どのような企業が倒産するのか」ということです。 船井総研では成功事例を紹介することが多いですが、「失敗事例」の方が学習効果が高いと言われています。他社の失敗から学び、反面教師として自社の生存戦略に活かす取り組みは非常に重要です。 そこで今回は、ある老舗企業の事例と、そこから見えてくる「今の時代に私たちが取るべき戦略」について共有させてください。 1.帝国データバンクに学ぶ「倒産の前兆」 『倒産の前兆』(帝国データバンク情報部著,2019)という書籍をご存じでしょうか。ここには、数多の企業を見てきたデータから導き出された「7つの経営破綻の公式」が記されています。 業界構造・市況変化の波を打破できない 大ヒット商品が綻びを生む 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる ベンチャー企業の急成長は急転落の序章である 攻めの投資で上場企業が破綻する 経営陣と現場の乖離は取引先の離反の元 信頼構築のためにトップが不正行為に手を染める この中で、私が今、最も危機感を覚えているのが 「③ 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる」 です。 書籍の中では、「株式会社吉年」 という企業の事例が紹介されています。 可鍛鋳鉄継手の製造で国内トップシェアを誇り、創業から約300年もの歴史を 持つ超名門企業。しかし、そんな老舗でさえも一度倒産してしまいました。 同書には、この事例について次のような記述があります。 「歴史と技術があっても変化し続けなければ生き残れない」 300年続いたのれんがあっても、確かな技術があっても、時代の変化に対応できなければ企業は倒産する。これは私たちにとって非常に重い教訓です。 今、デジタル化やAI化がこれほど叫ばれているにもかかわらず、昭和の時代からやり方が変わっていない、あるいはシステムを導入しても使いこなせていない例は枚挙に暇がありません。 デジタル化・AI化の波に乗れている企業とそうでない企業では、事業競争力に重大な乖離が発生していると強く感じます。(ポジショントークではなく、本当に感じています。) 2.米国で起きている「AIによる雇用破壊」の現実 では、今直面している「変化」とは何か。 それは、世界の最先端である米国で起きている現象を見れば明らかです。 一少し前の日経新聞に、衝撃的な記事が掲載されました。 「AI猛進の米国、若者の働き口に異変 学位あっても就職難」(日本経済新聞) 要約すると、米国ではAIの浸透によってホワイトカラーの仕事が代替され、若者の就職難が深刻化しています。企業は今、「人」ではなく「AI」への投資を優先しているのです。 Newsweekでも「AI就職氷河期が米Z世代を直撃している」と報じられており、実際に米国を視察した方からも、「広告などのクリエイティブはAIばかり。人間の仕事がAIに奪われる現象が現実化している」との話を聞きます。 3.日本でも「3年後」に同じことが起こる 「それはアメリカの話だろう」と思われるかもしれません。 しかし、日本のトレンドは米国の数年遅れでやってくるのが通例です。 現在、日本でも求人数が減少傾向にあります(日経新聞:求人広告、9月10%減)。現在は「賃上げによる採用控え」が主な要因とされていますが、これは米国のインフレ初期(約3年前)と状況が酷似しています。 つまり、これから数年以内に、日本でも「AI浸透による採用減(仕事の代替)」が本格化する可能性が高いということです。 4.全社員が「AIを使える人材」になるしかない この流れは不可逆です。「歴史があるから」「技術力があるから」といって変化を拒めば、淘汰されていくことは間違いないでしょう。 では、どうすべきか? 答えは一つです。 「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを使って生産性を爆発的に上げる」側に回ることです。 これからの時代、一部の専門家だけがAIを使えれば良いのではありません。 経理も、営業も、総務も、「全社員」が当たり前のようにAIを使いこなし、自分たちの仕事を効率化・高度化できる状態を作る必要があります。CopilotやGeminiの導入に二の足を踏んでいる場合ではないのです。 AIでできる業務はAIに任せる 人は、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中する この体制を組織全体で築けるかどうかが、数年後の企業の生存率を分けるはずです。 願わくば、「うちはまだ早い」ではなく、「今変わらなければ手遅れになる」という危機感を共有し、ぜひ全社一丸となってAI活用に取り組んでいっていただきたい。 AI を使わないのは、火縄銃の時代に槍を持って戦うようなものです。 -------------------- 船井総研では、「製造現場における生成AI活用研修」支援を行っております。 製造現場における生成AI活用はまだまだ難しい...と感じていませんか? 実は、CopilotやGeminiなどの生成AIがあれば、以下のようなことができるようになります。 ■トラブル履歴分析: 複数のトラブル報告書データを読み込ませ、原因の傾向分析、共通点の抽出、対策案の立案をおこなう。 ■ NCプログラム作成支援: 加工したい内容を自然言語で指示し、たたき台となるコードを生成。対話を通じて修正・最適化していく。 ■ 類似図面の検索・図面情報の言語化: 「急な仕様変更」「特定設備の故障」といったシナリオを提示し、AIと対話しながら影響範囲の特定や代替案のブレインストーミングをおこなう。 ■ 技術伝承の効率化:熟練技術者の作業手順書やノウハウメモを読み込ませ、若手社員向けのQ&Aチャットボットのように活用する。 “製造現場”に特化した生成AI活用研修をご希望の方は、船井総研お問い合わせフォームよりお問い合わせをお願いいたします。

予算不足で諦めていた現場へ。FAIRINOなら実現できる「低コスト×短納期」の自動化戦略とは

2025.12.02

「人手が足りない。でも、ロボット導入に数千万円も出せない」 これは、多くの中小製造業の工場長や経営者が抱える、切実な悩みです。大手メーカー製の協働ロボットで見積もりを取り、「本体だけで500万円、周辺機器やSIer費用を含めると1,000万円オーバー」という現実に直面し、稟議書をそっと閉じた経験がある方もいるのではないでしょうか。 しかし、諦めるのはまだ早いです。今、協働ロボット市場に「価格破壊」とも呼べる波が来ています。その中心にいるのが「FAIRINO」です。 この記事では、「予算不足で諦めていた現場」に向けて、FAIRINOを活用した「低コスト×短納期」の自動化戦略を、工場のDX支援を行うプロの視点で徹底解説します。安さの理由から、導入リスクの回避方法まで、包み隠さずお伝えします。 1. なぜ今、中国発の協働ロボット「FAIRINO」が選ばれるのか? 製造業の現場で「FAIRINO」の名前を耳にする機会が急増しています。なぜ、後発メーカーであるFAIRINOが、これほどまでに注目され、日本の現場で選ばれ始めているのでしょうか。 1-1. 協働ロボット市場の「価格破壊」を起こす存在 最大の理由は、やはり「圧倒的なコストパフォーマンス」です。 一般的な欧州系大手メーカーの協働ロボットと比較し、FAIRINOはおよそ半額〜1/3程度の価格帯で導入が可能です。 これまで「投資対効果(ROI)が合わない」と自動化を見送られてきた、単純な搬送作業や、季節変動のあるラインなどでも、FAIRINOの価格なら十分に採算が合うケースが増えています。まさに、中小製造業のための「現実的な選択肢」が登場したと言えます。 1-2. 「低コスト」だけではない、驚異の「短納期」対応 昨今の半導体不足や物流の混乱により、産業用ロボットの納期が「半年〜1年待ち」となることも珍しくありません。しかし、FAIRINOは独自のサプライチェーン網を駆使し、「注文から数週間〜1ヶ月程度」での納品を実現しているケースが多くあります。 「今すぐ人手が欲しい」「来期の増産になんとか間に合わせたい」という切迫した現場のニーズに対し、このスピード感は大きな価値となります。 1-3. 大手メーカー製との最大の違いは「圧倒的な投資回収スピード」 ロボット導入の成功指標は「いかに早く投資を回収し、利益を生み出すフェーズに入れるか」に尽きます。 導入コストが半額であれば、単純計算で投資回収期間も半分になります。 大手メーカーA社: 投資額1,000万円以上 → 回収まで3年以上 FAIRINO: 投資額500万円(システム込み) → 回収まで1年 この差は、変化の激しい現代のビジネス環境において、経営上の大きなアドバンテージとなります。 2. 安さの秘密を公開!FAIRINOが低価格を実現できる3つの理由 「安いのは分かった。でも、安かろう悪かろうでは困る。なぜそんなに安いのか?」 当然の疑問です。FAIRINOの安さには、品質を犠牲にするような裏技ではなく、製造業としての正当な理由があります。 2-1. サプライチェーンの強みと部品の完全内製化 ロボットの価格を押し上げる最大の要因は、モーター、減速機、ドライバーといった主要部品の調達コストです。多くのメーカーはこれらを外部サプライヤーから購入していますが、FAIRINOは主要部品のほとんどを自社グループ内で内製化しています。 中間マージンを極限までカットし、製造原価そのものを下げているため、販売価格を安く抑えることができるのです。 2-2. 機能を「現場で本当に必要なもの」に絞り込んだ設計思想 一部のハイエンドロボットには、過剰とも言える高機能が搭載されていますが、実際の現場で使われる機能はその一部に過ぎないことが多いです。 FAIRINOは、「運ぶ」「積む」「組む」といったコア機能の性能は維持しつつ、装飾的な機能や過剰スペックを削ぎ落とすことで、実用性を保ったままコストダウンを実現しています。これは「引き算の美学」とも言える設計思想です。 2-3. 広告費を抑え、製品開発に還元するコスト構造 FAIRINOは、派手なマス広告よりも、実機展示や代理店経由の提案など、地道な販促活動に重きを置いています。莫大なマーケティングコストを製品価格に転嫁せず、その分を価格競争力に還元している点も、安さの理由の一つです。 3. コスパ最強でも性能は?スペックと実用性を徹底検証 では、実際のスペックはどうなのでしょうか。主要メーカーをベンチマークとして比較してみます。 3-1. 【比較表】FAIRINO vs 主要メーカー:価格・性能 項目 FAIRINO(FR5) 主要メーカー(5kg可搬クラス) 比較のポイント 可搬容量 5kg 5kg 同等 リーチ 900mm 前後 850mm 前後 繰り返し精度 ±0.05mm ±0.03mm ~ ±0.05mm 実用上、ほぼ遜色なし 本体重量 軽量 標準 移設のしやすさは同等 価格目安 100万円台~ 300万円~500万円 FAIRINOが圧倒的優位 ※価格は構成や為替により変動します。正確な見積もりが必要です。 このように、精度やパワーといった基本スペックにおいて、FAIRINOは大手メーカー製品と遜色のない数値を叩き出しています。0.01mm単位の超精密作業でない限り、一般的な工場の作業(パレタイズ、箱詰め、機械投入など)においては、全く問題なく稼働するスペックを持っています。 3-2. 現場で使えるラインナップ(FRシリーズ)の特徴 FAIRINOのFRシリーズは、可搬重量3kgの小型モデルから、20kgの重量物を扱えるモデルまで幅広くラインナップされています。 特に人気なのが、可搬5kg〜10kgのモデルです。これらは「人間の腕」の代わりとして最も汎用性が高く、ダンボールの積み付けや、工作機械へのワーク脱着作業に最適です。 3-3. 専門SE不要?グラフィカルな操作画面とプログラミング難易度 「安いロボットは、操作が難しくて専門のSEが必要なのでは?」という懸念もよく聞かれます。 FAIRINOは、タブレット端末のようなティーチングペンダントを採用しており、ドラッグ&ドロップで直感的に動作を作成できます。また、ダイレクトティーチング(ロボットを直接手で動かして覚えさせる機能)にも対応しており、プログラミング言語を知らない現場の作業者でも、数時間の講習で基本操作を習得可能です。 4. 予算1/2で実現?中小製造業におけるFAIRINO活用事例 実際にFAIRINOを導入し、低予算で自動化に成功した事例を紹介します。 4-1. 【パレタイズ・移載】単純作業を24時間稼働へ置き換え 課題: 完成品のダンボール箱(10kg)をパレットに積む作業が重労働で、腰痛による離職が相次いでいた。 FAIRINO導入後: ロボットが休憩なしで積み付けを行い、人はフォークリフトでの運搬に専念。 効果: 作業員を1名減らしつつ、生産量は1.2倍に。導入コストは他社見積もりの約半分で済んだ。 4-2. 【溶接・組立】熟練工不足を補う品質の安定化 課題: 熟練の溶接工が高齢化し、若手への継承が課題。手作業のため品質にバラつきがあった。 FAIRINO導入後: 溶接トーチを持たせたFAIRINOを導入。熟練工の軌道をティーチングし、一定速度・一定角度での溶接を実現。 効果: 初心者でもボタン一つで熟練工並みの溶接が可能に。品質不良が激減。 4-3. 【マシンテンディング】既存設備への後付けで省人化達成 課題: NC旋盤へのワーク脱着のためだけに、作業員が機械の前に張り付いている必要があった。 FAIRINO導入後: 既存のNC旋盤の前に、移動台車に乗せたFAIRINOを設置。ドアの開閉とワーク交換を自動化。 効果: 夜間の無人稼働が可能になり、稼働率が劇的に向上。 5. 導入コストをさらに抑える「賢い自動化戦略」 FAIRINOを選んだ時点でコストは大きく下がりますが、さらに賢く導入するための戦略があります。 5-1. スモールスタートの鉄則:まずは1工程から始める いきなりライン全体を自動化しようとすると、システム設計が複雑になり、SIer費用が跳ね上がります。 まずは「パレタイズだけ」「検査工程だけ」といったピンポイントの自動化から始めましょう。FAIRINOのような協働ロボットは、後から別の場所に移動させることも容易なため、スモールスタートに最適です。 5-2. 周辺機器(ハンド・架台)も安く調達するコツ ロボット本体以外に、ワークを掴む「ハンド(グリッパー)」や、ロボットを固定する「架台」が必要です。これらも汎用品を組み合わせることで、数十万円単位のコストダウンが可能です。 当社では、こうした「周辺機器のコストダウンノウハウ」も含めて提案を行っています。 5-3. 知らないと損する?自動化関連の補助金・助成金の活用 中小企業の自動化投資には、補助金が活用できる場合があります。これらをうまく組み合わせれば、実質負担額をさらに1/2〜2/3に圧縮できる可能性があります。 「どの補助金が使えるか分からない」という場合も、ぜひご相談ください。 6. 失敗しないために:安易なポチり買いより「プロへの相談」 ここまでFAIRINOの魅力をお伝えしましたが、最後に一つだけ注意点があります。 それは、「ロボットは、買って置いておけば勝手に動く家電ではない」ということです。 6-1. 安いロボットほど「設置・設定」の初期設計が命 「安く買えたが、ハンドの選定を間違えてワークを掴めなかった」「安全柵なしで運用しようとしたら、リスクアセスメントでNGが出た」 こうした失敗は、導入前の設計不足が原因です。特にコストを抑えるために自分たちで設置しようとする場合、この落とし穴にはまりがちです。 6-2. 「買ったが動かない」を防ぐ、事前シミュレーションの重要性 成功の鍵は、購入前にプロの目で現場を確認し、「本当にFAIRINOでその作業が可能か?」「サイクルタイムは間に合うか?」をシミュレーションすることです。 このワンステップを踏むだけで、導入後のトラブルはほぼゼロにできます。 6-3. あなたの現場にFAIRINOは最適?まずは無料診断を 「うちは予算が少ないから…」と悩む必要はありません。FAIRINOは、まさにそのような現場のためにあるロボットです。 「自社のこの作業は、FAIRINOで自動化できる?」 「本体と設置工事を含めて、総額いくらで導入できる?」 「他社メーカーの見積もりが高すぎたので、比較したい」 そのような疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、当社の無料相談窓口へお問い合わせください。 工場の自動化専門チームが、貴社の課題と予算に合わせた最適なプランを、正直ベースでご提案します。無理な売り込みは一切いたしません。 [ >> FAIRINO導入の無料相談依頼はこちら(30秒で入力完了) ] https://www.funaisoken.co.jp/form/consulting 7. 【Q&A】FAIRINO導入に関するよくある質問 最後に、FAIRINOをご検討中の方から頻繁にいただく質問にお答えします。導入前の不安解消にお役立てください。 Q1. 中国メーカー製ですが、故障時のサポートや部品供給は大丈夫ですか? A. 国内代理店・パートナー網が充実しており、迅速なサポートが可能です。 「海外製は壊れたら終わり」というのは過去の話です。FAIRINOは日本国内に正規代理店や技術パートナーを持っており、主要な交換部品の国内在庫も確保しています。日本語による技術サポートやメンテナンス体制も整っているため、国産ロボットと同じ感覚で安心して運用していただけます。 Q2. 安全柵なしで本当に使えますか? A. 協働ロボットとしての安全機能を備えていますが、リスクアセスメントが必要です。 FAIRINOは、人が接触すると即座に停止する「衝突検知機能」など、国際規格(ISO/TS15066等)に準拠した安全設計がなされています。しかし、ロボットの先端に鋭利な刃物を取り付ける場合や、極端な高速動作をさせる場合などは、安全柵の設置が必要になるケースもあります。当社では、安全な運用方法についてもアドバイスを行っています。 Q3. 導入前に実機を触ったり、テストすることは可能ですか? A. はい、可能です。 実際の動きや操作性を確認せずに購入するのは不安かと思います。代理店によってはデモ機の貸し出しや、ショールームでの実機見学、お客様のワーク(部品)を使ったテスト検証を受け付けています。「自社の製品を本当に掴めるか試したい」というご要望も大歓迎ですので、お気軽にお申し付けください。 Q4. 故障が心配です。保証期間はどのくらいですか? A. 保証の安心パックが付帯している場合があります 通常使用における故障については、納品後に安心パック保証が付帯できます。また、お客様のニーズに合わせて保証期間を延長するオプションや、定期メンテナンスプランもご用意している代理店があります。 8. まとめ FAIRINOは、これまで予算の壁に阻まれてきた中小製造業にとって、自動化の扉を開く強力な武器です。「低コスト×短納期」という強みを活かし、賢く導入すれば、人手不足の解消と生産性の向上を同時に実現できます。 まずは「相談する」という小さな一歩から、工場の未来を変えていきましょう。 「人手が足りない。でも、ロボット導入に数千万円も出せない」 これは、多くの中小製造業の工場長や経営者が抱える、切実な悩みです。大手メーカー製の協働ロボットで見積もりを取り、「本体だけで500万円、周辺機器やSIer費用を含めると1,000万円オーバー」という現実に直面し、稟議書をそっと閉じた経験がある方もいるのではないでしょうか。 しかし、諦めるのはまだ早いです。今、協働ロボット市場に「価格破壊」とも呼べる波が来ています。その中心にいるのが「FAIRINO」です。 この記事では、「予算不足で諦めていた現場」に向けて、FAIRINOを活用した「低コスト×短納期」の自動化戦略を、工場のDX支援を行うプロの視点で徹底解説します。安さの理由から、導入リスクの回避方法まで、包み隠さずお伝えします。 1. なぜ今、中国発の協働ロボット「FAIRINO」が選ばれるのか? 製造業の現場で「FAIRINO」の名前を耳にする機会が急増しています。なぜ、後発メーカーであるFAIRINOが、これほどまでに注目され、日本の現場で選ばれ始めているのでしょうか。 1-1. 協働ロボット市場の「価格破壊」を起こす存在 最大の理由は、やはり「圧倒的なコストパフォーマンス」です。 一般的な欧州系大手メーカーの協働ロボットと比較し、FAIRINOはおよそ半額〜1/3程度の価格帯で導入が可能です。 これまで「投資対効果(ROI)が合わない」と自動化を見送られてきた、単純な搬送作業や、季節変動のあるラインなどでも、FAIRINOの価格なら十分に採算が合うケースが増えています。まさに、中小製造業のための「現実的な選択肢」が登場したと言えます。 1-2. 「低コスト」だけではない、驚異の「短納期」対応 昨今の半導体不足や物流の混乱により、産業用ロボットの納期が「半年〜1年待ち」となることも珍しくありません。しかし、FAIRINOは独自のサプライチェーン網を駆使し、「注文から数週間〜1ヶ月程度」での納品を実現しているケースが多くあります。 「今すぐ人手が欲しい」「来期の増産になんとか間に合わせたい」という切迫した現場のニーズに対し、このスピード感は大きな価値となります。 1-3. 大手メーカー製との最大の違いは「圧倒的な投資回収スピード」 ロボット導入の成功指標は「いかに早く投資を回収し、利益を生み出すフェーズに入れるか」に尽きます。 導入コストが半額であれば、単純計算で投資回収期間も半分になります。 大手メーカーA社: 投資額1,000万円以上 → 回収まで3年以上 FAIRINO: 投資額500万円(システム込み) → 回収まで1年 この差は、変化の激しい現代のビジネス環境において、経営上の大きなアドバンテージとなります。 2. 安さの秘密を公開!FAIRINOが低価格を実現できる3つの理由 「安いのは分かった。でも、安かろう悪かろうでは困る。なぜそんなに安いのか?」 当然の疑問です。FAIRINOの安さには、品質を犠牲にするような裏技ではなく、製造業としての正当な理由があります。 2-1. サプライチェーンの強みと部品の完全内製化 ロボットの価格を押し上げる最大の要因は、モーター、減速機、ドライバーといった主要部品の調達コストです。多くのメーカーはこれらを外部サプライヤーから購入していますが、FAIRINOは主要部品のほとんどを自社グループ内で内製化しています。 中間マージンを極限までカットし、製造原価そのものを下げているため、販売価格を安く抑えることができるのです。 2-2. 機能を「現場で本当に必要なもの」に絞り込んだ設計思想 一部のハイエンドロボットには、過剰とも言える高機能が搭載されていますが、実際の現場で使われる機能はその一部に過ぎないことが多いです。 FAIRINOは、「運ぶ」「積む」「組む」といったコア機能の性能は維持しつつ、装飾的な機能や過剰スペックを削ぎ落とすことで、実用性を保ったままコストダウンを実現しています。これは「引き算の美学」とも言える設計思想です。 2-3. 広告費を抑え、製品開発に還元するコスト構造 FAIRINOは、派手なマス広告よりも、実機展示や代理店経由の提案など、地道な販促活動に重きを置いています。莫大なマーケティングコストを製品価格に転嫁せず、その分を価格競争力に還元している点も、安さの理由の一つです。 3. コスパ最強でも性能は?スペックと実用性を徹底検証 では、実際のスペックはどうなのでしょうか。主要メーカーをベンチマークとして比較してみます。 3-1. 【比較表】FAIRINO vs 主要メーカー:価格・性能 項目 FAIRINO(FR5) 主要メーカー(5kg可搬クラス) 比較のポイント 可搬容量 5kg 5kg 同等 リーチ 900mm 前後 850mm 前後 繰り返し精度 ±0.05mm ±0.03mm ~ ±0.05mm 実用上、ほぼ遜色なし 本体重量 軽量 標準 移設のしやすさは同等 価格目安 100万円台~ 300万円~500万円 FAIRINOが圧倒的優位 ※価格は構成や為替により変動します。正確な見積もりが必要です。 このように、精度やパワーといった基本スペックにおいて、FAIRINOは大手メーカー製品と遜色のない数値を叩き出しています。0.01mm単位の超精密作業でない限り、一般的な工場の作業(パレタイズ、箱詰め、機械投入など)においては、全く問題なく稼働するスペックを持っています。 3-2. 現場で使えるラインナップ(FRシリーズ)の特徴 FAIRINOのFRシリーズは、可搬重量3kgの小型モデルから、20kgの重量物を扱えるモデルまで幅広くラインナップされています。 特に人気なのが、可搬5kg〜10kgのモデルです。これらは「人間の腕」の代わりとして最も汎用性が高く、ダンボールの積み付けや、工作機械へのワーク脱着作業に最適です。 3-3. 専門SE不要?グラフィカルな操作画面とプログラミング難易度 「安いロボットは、操作が難しくて専門のSEが必要なのでは?」という懸念もよく聞かれます。 FAIRINOは、タブレット端末のようなティーチングペンダントを採用しており、ドラッグ&ドロップで直感的に動作を作成できます。また、ダイレクトティーチング(ロボットを直接手で動かして覚えさせる機能)にも対応しており、プログラミング言語を知らない現場の作業者でも、数時間の講習で基本操作を習得可能です。 4. 予算1/2で実現?中小製造業におけるFAIRINO活用事例 実際にFAIRINOを導入し、低予算で自動化に成功した事例を紹介します。 4-1. 【パレタイズ・移載】単純作業を24時間稼働へ置き換え 課題: 完成品のダンボール箱(10kg)をパレットに積む作業が重労働で、腰痛による離職が相次いでいた。 FAIRINO導入後: ロボットが休憩なしで積み付けを行い、人はフォークリフトでの運搬に専念。 効果: 作業員を1名減らしつつ、生産量は1.2倍に。導入コストは他社見積もりの約半分で済んだ。 4-2. 【溶接・組立】熟練工不足を補う品質の安定化 課題: 熟練の溶接工が高齢化し、若手への継承が課題。手作業のため品質にバラつきがあった。 FAIRINO導入後: 溶接トーチを持たせたFAIRINOを導入。熟練工の軌道をティーチングし、一定速度・一定角度での溶接を実現。 効果: 初心者でもボタン一つで熟練工並みの溶接が可能に。品質不良が激減。 4-3. 【マシンテンディング】既存設備への後付けで省人化達成 課題: NC旋盤へのワーク脱着のためだけに、作業員が機械の前に張り付いている必要があった。 FAIRINO導入後: 既存のNC旋盤の前に、移動台車に乗せたFAIRINOを設置。ドアの開閉とワーク交換を自動化。 効果: 夜間の無人稼働が可能になり、稼働率が劇的に向上。 5. 導入コストをさらに抑える「賢い自動化戦略」 FAIRINOを選んだ時点でコストは大きく下がりますが、さらに賢く導入するための戦略があります。 5-1. スモールスタートの鉄則:まずは1工程から始める いきなりライン全体を自動化しようとすると、システム設計が複雑になり、SIer費用が跳ね上がります。 まずは「パレタイズだけ」「検査工程だけ」といったピンポイントの自動化から始めましょう。FAIRINOのような協働ロボットは、後から別の場所に移動させることも容易なため、スモールスタートに最適です。 5-2. 周辺機器(ハンド・架台)も安く調達するコツ ロボット本体以外に、ワークを掴む「ハンド(グリッパー)」や、ロボットを固定する「架台」が必要です。これらも汎用品を組み合わせることで、数十万円単位のコストダウンが可能です。 当社では、こうした「周辺機器のコストダウンノウハウ」も含めて提案を行っています。 5-3. 知らないと損する?自動化関連の補助金・助成金の活用 中小企業の自動化投資には、補助金が活用できる場合があります。これらをうまく組み合わせれば、実質負担額をさらに1/2〜2/3に圧縮できる可能性があります。 「どの補助金が使えるか分からない」という場合も、ぜひご相談ください。 6. 失敗しないために:安易なポチり買いより「プロへの相談」 ここまでFAIRINOの魅力をお伝えしましたが、最後に一つだけ注意点があります。 それは、「ロボットは、買って置いておけば勝手に動く家電ではない」ということです。 6-1. 安いロボットほど「設置・設定」の初期設計が命 「安く買えたが、ハンドの選定を間違えてワークを掴めなかった」「安全柵なしで運用しようとしたら、リスクアセスメントでNGが出た」 こうした失敗は、導入前の設計不足が原因です。特にコストを抑えるために自分たちで設置しようとする場合、この落とし穴にはまりがちです。 6-2. 「買ったが動かない」を防ぐ、事前シミュレーションの重要性 成功の鍵は、購入前にプロの目で現場を確認し、「本当にFAIRINOでその作業が可能か?」「サイクルタイムは間に合うか?」をシミュレーションすることです。 このワンステップを踏むだけで、導入後のトラブルはほぼゼロにできます。 6-3. あなたの現場にFAIRINOは最適?まずは無料診断を 「うちは予算が少ないから…」と悩む必要はありません。FAIRINOは、まさにそのような現場のためにあるロボットです。 「自社のこの作業は、FAIRINOで自動化できる?」 「本体と設置工事を含めて、総額いくらで導入できる?」 「他社メーカーの見積もりが高すぎたので、比較したい」 そのような疑問をお持ちの方は、ぜひ一度、当社の無料相談窓口へお問い合わせください。 工場の自動化専門チームが、貴社の課題と予算に合わせた最適なプランを、正直ベースでご提案します。無理な売り込みは一切いたしません。 [ >> FAIRINO導入の無料相談依頼はこちら(30秒で入力完了) ] https://www.funaisoken.co.jp/form/consulting 7. 【Q&A】FAIRINO導入に関するよくある質問 最後に、FAIRINOをご検討中の方から頻繁にいただく質問にお答えします。導入前の不安解消にお役立てください。 Q1. 中国メーカー製ですが、故障時のサポートや部品供給は大丈夫ですか? A. 国内代理店・パートナー網が充実しており、迅速なサポートが可能です。 「海外製は壊れたら終わり」というのは過去の話です。FAIRINOは日本国内に正規代理店や技術パートナーを持っており、主要な交換部品の国内在庫も確保しています。日本語による技術サポートやメンテナンス体制も整っているため、国産ロボットと同じ感覚で安心して運用していただけます。 Q2. 安全柵なしで本当に使えますか? A. 協働ロボットとしての安全機能を備えていますが、リスクアセスメントが必要です。 FAIRINOは、人が接触すると即座に停止する「衝突検知機能」など、国際規格(ISO/TS15066等)に準拠した安全設計がなされています。しかし、ロボットの先端に鋭利な刃物を取り付ける場合や、極端な高速動作をさせる場合などは、安全柵の設置が必要になるケースもあります。当社では、安全な運用方法についてもアドバイスを行っています。 Q3. 導入前に実機を触ったり、テストすることは可能ですか? A. はい、可能です。 実際の動きや操作性を確認せずに購入するのは不安かと思います。代理店によってはデモ機の貸し出しや、ショールームでの実機見学、お客様のワーク(部品)を使ったテスト検証を受け付けています。「自社の製品を本当に掴めるか試したい」というご要望も大歓迎ですので、お気軽にお申し付けください。 Q4. 故障が心配です。保証期間はどのくらいですか? A. 保証の安心パックが付帯している場合があります 通常使用における故障については、納品後に安心パック保証が付帯できます。また、お客様のニーズに合わせて保証期間を延長するオプションや、定期メンテナンスプランもご用意している代理店があります。 8. まとめ FAIRINOは、これまで予算の壁に阻まれてきた中小製造業にとって、自動化の扉を開く強力な武器です。「低コスト×短納期」という強みを活かし、賢く導入すれば、人手不足の解消と生産性の向上を同時に実現できます。 まずは「相談する」という小さな一歩から、工場の未来を変えていきましょう。

1人当たり生産高219%増を実現!独自の生産管理システム「SINS」と人財育成で、「勘と記憶」頼りの生産から脱却したSANMATSUのDX戦略

2025.11.26

株式会社SANMATSUは、「デジタルと職人技の融合」を掲げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきました。かつての「経験と勘」に頼る生産体制から脱却し、独自の生産管理システム「SINS」の活用と人財育成を両輪とすることで、1人当たり生産高219%増という目覚ましい成果を上げています。 本記事では、同社のDX戦略の軌跡を紹介します。 課題:「勘と記憶」の限界 SANMATSUは、シートメタル加工をベースとする「小ロット製造代行サービス会社」です。その生産体制は「月産12万点、うち1個作りが70%」という極端な多品種少量(変種変量)生産が特徴です。 2017年時点で、同社の生産状況は以下の通りでした: 受注オーダー数: 9,541オーダー/月 製品加工種類: 7,966種類/月 部品加工点数: 98,273個/月 このような複雑な生産体制において、同社は「工程・出荷管理が人間の勘と記憶だけでは無理」という深刻な課題に直面していました。 解決策①:独自の生産管理システム「SINS」 この課題を克服するため、SANMATSUは「経験と勘」から「デジタル化」「IoT化」へと舵を切りました。その中核を担うのが、独自の「SANMATSU統合生産管理システム(SINS)」です。 SINSは、1993年の生産管理システム導入を起点とし、1997年の中期経営計画策定を機に「再活用」が図られました。このシステムは、エンジニアリング室(CAD・CAM)、製造現場の各種NC制御・加工機、製造事務所、本社事務所、夜須工場(生産管理)など、社内のあらゆる部門をネットワークで結びつけるものです。 これにより、旧来の属人的な管理から脱却し、工程の負荷把握や工番別の原価管理といった「計数管理」が可能になりました。 解決策②:「三松大学」による人財育成 SANMATSUのDXは、システムの導入だけではありません。DXを「デジタルと職人技の融合」と定義する同社は、人財育成にも強くコミットしています。 その象徴が、社内教育機関である「三松大学」の設立です。 体系的な教育: 「三松大学」では、OJT、社内勉強会、資格試験支援、改善発表会など、体系的な社員教育(技能教育)が行われています。 知識の向上: 全従業員を対象とした「SANMATSU統一試験」をEラーニング化して実施し、「品質・図面・技術を中心としたSANMATSU従業員としての必要知識の向上」を図っています。 導入効果:1人当たり生産高219%増と働き方改革 SINSによる「デジタル化」と三松大学による「職人技の育成」の融合は、劇的な生産性向上をもたらしました。 2010年当時を100%とした場合、2025年現在の実績は以下の通りです: 項目 2010年当時 2025年現在 売上 100% 327% 社員 100% 152% 1人当たり生産高 100% 219% 休日数 100% 113% 残業時間 100% 61% 人員の増加をはるかに上回る売上増を達成し、タイトルにもある「1人当たり生産高219%」を実現しました。さらに特筆すべきは、残業時間を61%の水準まで大幅に削減しつつ、休日数を増やしている点です。 結論:SANMATSUのDX戦略 SANMATSUの成功は、DXを単なるツール導入(デジタル化)に終わらせず、「経営戦略の実現」と「課題改善活動」そのものとして捉えた結果です。 独自の生産管理システム「SINS」で「計数管理」を徹底し、同時に「三松大学」で人を育てる。「デジタルと職人技の融合」という明確なビジョンこそが、「勘と記憶」頼りの生産から脱却し、持続的な成長を実現した最大の秘訣と言えるでしょう。 [参加者インタビュー] 成功事例から自社の課題解決の糸口を探る 株式会社 共立合金製作所 取締役専務 常見亘様   本事例(株式会社SANMATSU様)のような、先進的な取り組みを共有する「研究会」に参加されている経営幹部の方に、参加の意義と活用法についてお話を伺いました。 ── 製造・営業など多岐にわたる現場への「キャッチアップ」 (3つの事業部を統括する経営幹部様) 「私は現在、製造や営業など会社の中のあらゆる部署に関わっています。そのため、SANMATSU様のような『生産管理システムと現場の融合』といった先進事例は、まさに今、システム会社さんと進めている自社のプロジェクトに直結する内容です。こうした最新の情報をキャッチアップし、自分なりに現場へ落とし込んでいきたいという意識で参加しています」 ── 「3つの事業部」それぞれへのヒントが見つかる 「弊社には3つの事業部があり、中には業績が低迷し『なんとかしなければならない』という課題を抱えている部門もあります。研究会のテーマは非常に幅広いですが、だからこそ飽きが来ず、『この事例はあの事業部の再生に使える』と、それぞれの課題に合わせて解決策の引き出しを増やすことができています」 ── 厳しい経営環境における「視座」の維持 「経営環境は厳しく、社内にいるだけではどうしてもモチベーションが下がってしまう局面もあります。しかし、ここに来れば『上場志向』を持つような高い視座の経営者仲間がいます。今回のような劇的な生産性向上の事例に触れ、意識の高いメンバーと交流することは、経営層として前向きな視点を持ち続けるために不可欠な時間だと感じています」 船井総研 ものづくり経営研究会 スマートファクトリー経営部会のご紹介 船井総合研究所の「スマートファクトリー経営部会」は、多品種少量生産型の中堅・中小製造業経営者を主な対象とした、ものづくりの生産性向上に関する経営研究会です 。 研究会の目的とテーマ 国内製造業における人手不足、特に熟練者不足が進む中で 、多品種少量生産型の製造業が生産性向上を実現するための手段を研究します 。 研究テーマは、以下の通り、デジタル化と現場改善の両輪を網羅しています。 “AI化・デジタル化・ロボット化・自動化・効率化” の徹底研究 。 AIを活用した自動化装置や産業用ロボット等の最新事例研究 。 これらを活用した工程改善や人員配置改善、効率化等の人的仕組みの研究 。 最新事例の研究や最先端の工場視察等を通じて、ご参加いただく企業様にとって最適な「スマートファクトリー化」の形を追求していきます 。 業績アップに直結する環境と継続性 単発の刺激で終わるセミナーとは異なり 、本研究会は継続的な実践と双方向の情報交換を重視しています 。 継続性: 年間を通じた最新情報提供と現場視察の機会により、業績UPに直結する継続的な取り組みを後押しします 。 双方向性: 講師側の一方通行な講話ではなく、質疑応答や会員様同士の実践経験の共有により、立体的な理解と実践への落とし込みを実現します 。 無料お試し入会も受付しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/ 株式会社SANMATSUは、「デジタルと職人技の融合」を掲げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきました。かつての「経験と勘」に頼る生産体制から脱却し、独自の生産管理システム「SINS」の活用と人財育成を両輪とすることで、1人当たり生産高219%増という目覚ましい成果を上げています。 本記事では、同社のDX戦略の軌跡を紹介します。 課題:「勘と記憶」の限界 SANMATSUは、シートメタル加工をベースとする「小ロット製造代行サービス会社」です。その生産体制は「月産12万点、うち1個作りが70%」という極端な多品種少量(変種変量)生産が特徴です。 2017年時点で、同社の生産状況は以下の通りでした: 受注オーダー数: 9,541オーダー/月 製品加工種類: 7,966種類/月 部品加工点数: 98,273個/月 このような複雑な生産体制において、同社は「工程・出荷管理が人間の勘と記憶だけでは無理」という深刻な課題に直面していました。 解決策①:独自の生産管理システム「SINS」 この課題を克服するため、SANMATSUは「経験と勘」から「デジタル化」「IoT化」へと舵を切りました。その中核を担うのが、独自の「SANMATSU統合生産管理システム(SINS)」です。 SINSは、1993年の生産管理システム導入を起点とし、1997年の中期経営計画策定を機に「再活用」が図られました。このシステムは、エンジニアリング室(CAD・CAM)、製造現場の各種NC制御・加工機、製造事務所、本社事務所、夜須工場(生産管理)など、社内のあらゆる部門をネットワークで結びつけるものです。 これにより、旧来の属人的な管理から脱却し、工程の負荷把握や工番別の原価管理といった「計数管理」が可能になりました。 解決策②:「三松大学」による人財育成 SANMATSUのDXは、システムの導入だけではありません。DXを「デジタルと職人技の融合」と定義する同社は、人財育成にも強くコミットしています。 その象徴が、社内教育機関である「三松大学」の設立です。 体系的な教育: 「三松大学」では、OJT、社内勉強会、資格試験支援、改善発表会など、体系的な社員教育(技能教育)が行われています。 知識の向上: 全従業員を対象とした「SANMATSU統一試験」をEラーニング化して実施し、「品質・図面・技術を中心としたSANMATSU従業員としての必要知識の向上」を図っています。 導入効果:1人当たり生産高219%増と働き方改革 SINSによる「デジタル化」と三松大学による「職人技の育成」の融合は、劇的な生産性向上をもたらしました。 2010年当時を100%とした場合、2025年現在の実績は以下の通りです: 項目 2010年当時 2025年現在 売上 100% 327% 社員 100% 152% 1人当たり生産高 100% 219% 休日数 100% 113% 残業時間 100% 61% 人員の増加をはるかに上回る売上増を達成し、タイトルにもある「1人当たり生産高219%」を実現しました。さらに特筆すべきは、残業時間を61%の水準まで大幅に削減しつつ、休日数を増やしている点です。 結論:SANMATSUのDX戦略 SANMATSUの成功は、DXを単なるツール導入(デジタル化)に終わらせず、「経営戦略の実現」と「課題改善活動」そのものとして捉えた結果です。 独自の生産管理システム「SINS」で「計数管理」を徹底し、同時に「三松大学」で人を育てる。「デジタルと職人技の融合」という明確なビジョンこそが、「勘と記憶」頼りの生産から脱却し、持続的な成長を実現した最大の秘訣と言えるでしょう。 [参加者インタビュー] 成功事例から自社の課題解決の糸口を探る 株式会社 共立合金製作所 取締役専務 常見亘様   本事例(株式会社SANMATSU様)のような、先進的な取り組みを共有する「研究会」に参加されている経営幹部の方に、参加の意義と活用法についてお話を伺いました。 ── 製造・営業など多岐にわたる現場への「キャッチアップ」 (3つの事業部を統括する経営幹部様) 「私は現在、製造や営業など会社の中のあらゆる部署に関わっています。そのため、SANMATSU様のような『生産管理システムと現場の融合』といった先進事例は、まさに今、システム会社さんと進めている自社のプロジェクトに直結する内容です。こうした最新の情報をキャッチアップし、自分なりに現場へ落とし込んでいきたいという意識で参加しています」 ── 「3つの事業部」それぞれへのヒントが見つかる 「弊社には3つの事業部があり、中には業績が低迷し『なんとかしなければならない』という課題を抱えている部門もあります。研究会のテーマは非常に幅広いですが、だからこそ飽きが来ず、『この事例はあの事業部の再生に使える』と、それぞれの課題に合わせて解決策の引き出しを増やすことができています」 ── 厳しい経営環境における「視座」の維持 「経営環境は厳しく、社内にいるだけではどうしてもモチベーションが下がってしまう局面もあります。しかし、ここに来れば『上場志向』を持つような高い視座の経営者仲間がいます。今回のような劇的な生産性向上の事例に触れ、意識の高いメンバーと交流することは、経営層として前向きな視点を持ち続けるために不可欠な時間だと感じています」 船井総研 ものづくり経営研究会 スマートファクトリー経営部会のご紹介 船井総合研究所の「スマートファクトリー経営部会」は、多品種少量生産型の中堅・中小製造業経営者を主な対象とした、ものづくりの生産性向上に関する経営研究会です 。 研究会の目的とテーマ 国内製造業における人手不足、特に熟練者不足が進む中で 、多品種少量生産型の製造業が生産性向上を実現するための手段を研究します 。 研究テーマは、以下の通り、デジタル化と現場改善の両輪を網羅しています。 “AI化・デジタル化・ロボット化・自動化・効率化” の徹底研究 。 AIを活用した自動化装置や産業用ロボット等の最新事例研究 。 これらを活用した工程改善や人員配置改善、効率化等の人的仕組みの研究 。 最新事例の研究や最先端の工場視察等を通じて、ご参加いただく企業様にとって最適な「スマートファクトリー化」の形を追求していきます 。 業績アップに直結する環境と継続性 単発の刺激で終わるセミナーとは異なり 、本研究会は継続的な実践と双方向の情報交換を重視しています 。 継続性: 年間を通じた最新情報提供と現場視察の機会により、業績UPに直結する継続的な取り組みを後押しします 。 双方向性: 講師側の一方通行な講話ではなく、質疑応答や会員様同士の実践経験の共有により、立体的な理解と実践への落とし込みを実現します 。 無料お試し入会も受付しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。 https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/

「失敗から学ぶ製造業DX・3つの落とし穴」フライデーコラム:シオタ

2025.11.26

「DXの重要性は理解している。高額なAIやIoTの予算も付けた。しかし、現場では一向に使われる気配がない…」 「データを集めて『可視化』はしたが、そこから先、一向に利益に結びつかない…」 お世話になっております。船井総研の塩田です。 製造業のDX推進において、このような「やったつもりDX」に陥っているケースは後を絶ちません。最新鋭の技術を導入しても、なぜか成果が出ない。その原因は、技術そのものではなく、その「進め方」や「マインドセット」にあることがほとんどです。 多くの企業がつまずく共通の「落とし穴」。今回は、特に陥りがちな3つ落とし穴を、処方箋とともに解説します。 落とし穴1:「とりあえずAI」がすべてをダメにする【目的化の罠】 最も多く、そして根深いのがこの罠です。「手段」であるはずのツール導入が、いつの間にか「目的」にすり替わってしまいます。 典型的な失敗例は、「競合のA社がAIによる画像検品を導入したから、ウチも遅れてはならない」「国から大型の補助金が出るから、このIoTパッケージシステムを導入しよう」といったように、「ツールありき」でプロジェクトがスタートするケースです。しかし、いざ導入してみると、現場の本当の課題(ペイン)とズレていることが発覚します。 現場が本当に困っていたのは「検品作業」ではなく、「頻繁な段取り替えの手間」や「ベテランのノウハウの属人化」だったかもしれません。その場合、高額なAI検品システムは「余計な仕事」と見なされ、結局「従来通りの目視検品の方が早い」と埃をかぶることになります。 【処方箋】 DXは「デジタル"で"トランスフォーメーション(変革)する」ことである、という原点に立ち返るべきです。まず問うべきは「どのツールを使うか?」ではありません。「自社のどの課題を解決し、どのような姿に変革したいのか?」です。 「AIを導入したい」ではなく、「熟練工でしかできなかった検品作業を自動化し、工数を30%削減する。その人員を、より付加価値の高い改善活動にシフトさせる」という明確な「目的」を先に立てる必要があります。課題ドリブンで考えることこそ、DX成功の第一歩です。 落とし穴2:社長の「よろしく」が現場の士気を下げる【経営丸投げの罠】 DXは、既存の業務プロセスや組織の壁を打ち破る「変革」活動です。その推進を現場やIT部門だけに「丸投げ」した瞬間、失敗が約束されます。 例えば、経営会議で社長が「DXは重要だ。予算はつける。あとはDX推進室(またはIT部門)で、うまくやってくれ」と指示だけ出すケースがこれにあたります。推進担当者が現場のDX、たとえば生産データと設計データの連携などを進めようとすると、製造部門と設計部門の間で「データの形式が違う」「ウチの仕事が増える」といった根強い利害対立が発生します。 ここで経営層に仲裁や意思決定を求めても、「現場同士でうまく調整してくれ」と差し戻されてしまうのです。トップの本気度が見えないと、現場は「どうせまた掛け声だけだろう」「面倒なことを押し付けられた」と冷めてしまいます。抵抗勢力を前に、推進担当者だけが疲弊し、プロジェクトは静かに塩漬けとなります。 【処方箋】 DXは「経営マター」であると断言できます。DXを阻む最大の壁は、技術ではなく「組織の壁」と「古い慣習」です。 これを打ち破る権限を持っているのは、全社を動かせる経営トップ以外にいません。 社長の仕事は、予算をつけることやハンコを押すことではありません。明確なビジョン(DXによって会社をどう変えるか)を発信し続け、変革を阻害する古いルールや部門間の壁を自ら先頭に立って壊し、そして失敗を恐れず挑戦する現場を賞賛し、責任を取ることです。DX担当者を任命して終わりではなく、社長自身が「DX最高責任者」としての覚悟を示す必要があります。 落とし穴3:「目先の利益」だけを追い、大きな構想を見失う【近視眼の罠】 DXを「既存業務のちょっとした改善」や「単発のコストダウン」の手段としか捉えていないと、本質的な変革のチャンスを逃してしまいます。 典型的なのは、現場の「紙の帳票をタブレット入力にしたい」という要望に応え、システムを導入するようなケースです。確かにペーパーレス化は実現し、現場は一時的に満足するかもしれません。これが「目先のメリット」です。 しかし、その入力データが「どの工程の品質向上に使えるか」「設計部門にフィードバックして開発に活かせないか」といった、部門を横断したデータ活用の構想が全くないとどうなるでしょう。結果、データは入力されるだけで活用されず、「デジタル化(Digitization)」はしたものの、会社全体の「変革(Transformation)」には繋がらないのです。これでは、高価な「デジタル文房具」を買っただけで終わってしまいます。 【処方箋】 DXの真価は、個別の「点」の改善ではなく、それらを繋げて「線」や「面」にし、製造プロセス全体、さらにはビジネスモデル自体を変革することにあります。 「その投資は、目先の工数削減(点)だけでなく、5年後のサプライチェーン全体の最適化(面)にどう繋がるのか?」「そのデータは、単なる可視化(点)だけでなく、将来の『技術継承』や『予知保全』(線)にどう貢献するのか?」 このように、より大きな構想、広いスパンで考えることで、一見バラバラに見える投資が「意味を持った未来への布石」となります。「木を見て森を見ず」になっていないか。自社のDX構想を、もう一度大局観で捉え直すことが不可欠です。 「DXの重要性は理解している。高額なAIやIoTの予算も付けた。しかし、現場では一向に使われる気配がない…」 「データを集めて『可視化』はしたが、そこから先、一向に利益に結びつかない…」 お世話になっております。船井総研の塩田です。 製造業のDX推進において、このような「やったつもりDX」に陥っているケースは後を絶ちません。最新鋭の技術を導入しても、なぜか成果が出ない。その原因は、技術そのものではなく、その「進め方」や「マインドセット」にあることがほとんどです。 多くの企業がつまずく共通の「落とし穴」。今回は、特に陥りがちな3つ落とし穴を、処方箋とともに解説します。 落とし穴1:「とりあえずAI」がすべてをダメにする【目的化の罠】 最も多く、そして根深いのがこの罠です。「手段」であるはずのツール導入が、いつの間にか「目的」にすり替わってしまいます。 典型的な失敗例は、「競合のA社がAIによる画像検品を導入したから、ウチも遅れてはならない」「国から大型の補助金が出るから、このIoTパッケージシステムを導入しよう」といったように、「ツールありき」でプロジェクトがスタートするケースです。しかし、いざ導入してみると、現場の本当の課題(ペイン)とズレていることが発覚します。 現場が本当に困っていたのは「検品作業」ではなく、「頻繁な段取り替えの手間」や「ベテランのノウハウの属人化」だったかもしれません。その場合、高額なAI検品システムは「余計な仕事」と見なされ、結局「従来通りの目視検品の方が早い」と埃をかぶることになります。 【処方箋】 DXは「デジタル"で"トランスフォーメーション(変革)する」ことである、という原点に立ち返るべきです。まず問うべきは「どのツールを使うか?」ではありません。「自社のどの課題を解決し、どのような姿に変革したいのか?」です。 「AIを導入したい」ではなく、「熟練工でしかできなかった検品作業を自動化し、工数を30%削減する。その人員を、より付加価値の高い改善活動にシフトさせる」という明確な「目的」を先に立てる必要があります。課題ドリブンで考えることこそ、DX成功の第一歩です。 落とし穴2:社長の「よろしく」が現場の士気を下げる【経営丸投げの罠】 DXは、既存の業務プロセスや組織の壁を打ち破る「変革」活動です。その推進を現場やIT部門だけに「丸投げ」した瞬間、失敗が約束されます。 例えば、経営会議で社長が「DXは重要だ。予算はつける。あとはDX推進室(またはIT部門)で、うまくやってくれ」と指示だけ出すケースがこれにあたります。推進担当者が現場のDX、たとえば生産データと設計データの連携などを進めようとすると、製造部門と設計部門の間で「データの形式が違う」「ウチの仕事が増える」といった根強い利害対立が発生します。 ここで経営層に仲裁や意思決定を求めても、「現場同士でうまく調整してくれ」と差し戻されてしまうのです。トップの本気度が見えないと、現場は「どうせまた掛け声だけだろう」「面倒なことを押し付けられた」と冷めてしまいます。抵抗勢力を前に、推進担当者だけが疲弊し、プロジェクトは静かに塩漬けとなります。 【処方箋】 DXは「経営マター」であると断言できます。DXを阻む最大の壁は、技術ではなく「組織の壁」と「古い慣習」です。 これを打ち破る権限を持っているのは、全社を動かせる経営トップ以外にいません。 社長の仕事は、予算をつけることやハンコを押すことではありません。明確なビジョン(DXによって会社をどう変えるか)を発信し続け、変革を阻害する古いルールや部門間の壁を自ら先頭に立って壊し、そして失敗を恐れず挑戦する現場を賞賛し、責任を取ることです。DX担当者を任命して終わりではなく、社長自身が「DX最高責任者」としての覚悟を示す必要があります。 落とし穴3:「目先の利益」だけを追い、大きな構想を見失う【近視眼の罠】 DXを「既存業務のちょっとした改善」や「単発のコストダウン」の手段としか捉えていないと、本質的な変革のチャンスを逃してしまいます。 典型的なのは、現場の「紙の帳票をタブレット入力にしたい」という要望に応え、システムを導入するようなケースです。確かにペーパーレス化は実現し、現場は一時的に満足するかもしれません。これが「目先のメリット」です。 しかし、その入力データが「どの工程の品質向上に使えるか」「設計部門にフィードバックして開発に活かせないか」といった、部門を横断したデータ活用の構想が全くないとどうなるでしょう。結果、データは入力されるだけで活用されず、「デジタル化(Digitization)」はしたものの、会社全体の「変革(Transformation)」には繋がらないのです。これでは、高価な「デジタル文房具」を買っただけで終わってしまいます。 【処方箋】 DXの真価は、個別の「点」の改善ではなく、それらを繋げて「線」や「面」にし、製造プロセス全体、さらにはビジネスモデル自体を変革することにあります。 「その投資は、目先の工数削減(点)だけでなく、5年後のサプライチェーン全体の最適化(面)にどう繋がるのか?」「そのデータは、単なる可視化(点)だけでなく、将来の『技術継承』や『予知保全』(線)にどう貢献するのか?」 このように、より大きな構想、広いスパンで考えることで、一見バラバラに見える投資が「意味を持った未来への布石」となります。「木を見て森を見ず」になっていないか。自社のDX構想を、もう一度大局観で捉え直すことが不可欠です。
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