記事公開日:2025.12.19
最終更新日:2025.12.19
DX推進を成功させるITグランドデザインの描き方

ITグランドデザインとは、企業が抱える課題を解決し、目指す姿を実現するために、どのようなシステムを構築すべきか、その全体像を設計することです。
個別のシステム機能だけを考えるのではなく、企業のビジョンや目標と照らし合わせ、長期的な視点でシステム全体の役割を定義することが重要になります。
これまでのシステム導入では、特定の業務や部署に特化したシステムを個別最適に進めた結果、全体最適が実現できないケースが多く見られました。
たとえば、部署ごとにマスタデータが分散してしまい、当初目指したデータ一元管理が実現できなかったり、導入後に機能不足が判明して追加のツール導入でコストが肥大化したり、システム間の連携がうまくいかず手作業が増えて工数が増大したりといった失敗が起こり得ます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)を本格的に推進し、企業全体を変革するためには、システムが部分最適化している状態を見直し、システム全体の構想を策定することが不可欠です。
業務改善や企業の変革につなげるためには、システム導入自体を目的とするのではなく、ITグランドデザインを描き、目的や全体最適なシステム構成を導入の前段階で決定しておくことが成功の鍵となります。
1.ITグランドデザインが必要なパターンとは
ITグランドデザインの策定には、いくつかの重要な要素があります。
まず、自社の事業戦略とITシステムの方向性を一致させることです。
ITは企業のビジネスを支える基盤であるため、経営戦略を踏まえて投資の方向性を明確にし、企業戦略に合わせたシステムの活用方法を見極めることがポイントになります。
これまで弊社にご相談いただいた企業様でいえば、ITグランドデザイン策定が必要になるケースは大きく分けて3つのパターンに分類できます。
パターン➀:継続&安定的なシステム利活用に向けた刷新
これまで利用しているメインの基幹システムの保守やサービスの更新が近づいており、そのタイミングでシステムの見直しを図るケースです。また、社内に在籍するシステム担当者の高齢化に伴い必要リソースの確保が困難になり、安定的なシステム利用が難しくなるためにITグランドデザインの策定を検討されるケースも近年増えています。
パターン②:事業戦略と連動したシステムの全体最適化
自社の事業戦略の策定に際して、事業としてのデータ活用の強化や生産性向上、組織的な配置の変更、新規事業参入などによる新たな事業戦略を描く中で、現状のシステムを見直し、全体最適なシステム構成を検討するパターンです。上流となる会社方針が起点となるため、これまで部分最適に導入していたシステムが本当に適切かどうかを今一度見直します。
パターン③:現場業務の生産性UPに向けたシステムの導入
➀と②とは異なり、現状の現場業務が「紙」「アナログ」の運用により業務負荷がかかってしまい、その解消のためのシステム導入を検討するケースです。単にシステムの導入ではなく業務プロセスの観点から見直しを図り、将来の拡張性を見定めた方針を設計することが求められます。
このように、自社の課題や事業戦略などの状況によって、システムそのものの見直しから課題解決まで、ITグランドデザインの必要性も多岐に渡ります。
一度 俯瞰したうえで全体最適な視点から現在のITシステムの課題を洗い出し、ITシステムの方向性を踏まえてその将来像や目標を描いていきます。
これにより、目指すべき姿を企業全体で共有し、課題解決を行うべき業務領域や業務システムを定めることができます。
2.ITグランドデザインを描くための4つのステップ
DX推進のためにITグランドデザインを描く際の4つのポイントをご紹介します。
まず一つ目は、「全体像の可視化」です。目的から逸脱しないシステム選定や導入を進めるために、目的に合ったシステム構成を図式化します。
どのようなシステムが必要か、「販売管理システム」といったカテゴリー名で記載し、全体のイメージを把握することが重要です。
システム構成図を用いることで、システムの全体像や要素間の関係性を視覚的に捉えることができます。
二つ目は、「必要機能の把握」です。各部門の業務を棚卸して課題を抽出するプロセスを通じて、必要となるシステム機能を具体的に洗い出します。
各業務の詳細を理解し、それをシステム機能に落とし込むことで、自社にとって最適なシステムを選定するための判断材料とすることができます。
三つ目は、「システム連携の把握」です。複数のシステムを組み合わせて全体を構築する場合、システム間の連携情報の把握は非常に重要になります。
API連携機能、CSV/テキスト入出力機能、必要なデータ項目など、詳細を確認することで、スムーズなデータ連携を実施するための要件を明確にします。
四つ目は、「全体像の具体化」です。ステップ②で把握した必要なシステム名や機能情報と、ステップ③で確認したシステム連携情報を、ステップ①で作成した全体像イメージに反映させます。
これにより、より現状のシステム状況を踏まえたITグランドデザインを描き出すことが可能となります。
これらのステップを踏むことで、全体最適なITグランドデザインを策定し、DXの実現に近づくことができます。
3.ITグランドデザイン策定における課題と成功のポイント
ITグランドデザインやITグランドデザインの策定を進める上で、いくつかの課題に直面することがあります。
たとえば、ITのトレンドや技術は日々進化しているために最新のシステム・IT情報を入手することが難しいという点や、現行業務の分析(As-Is)や理想とする将来像(To-Be)を描ける人材・リソースが社内にないため業務分析が進められないという点、IT投資の費用対効果をどのように分析すれば良いか分からない、などの課題が挙げられます。
また、構想策定のインプット(前提情報)となる資料が整備されていなかったり、経営層と現場の視点が異なったり、システムありきの検討になりがちになったり、という落とし穴も考えられます。
このような課題を乗り越えるためには、ケースや目的に応じて外部の専門ベンダーやコンサルタントの活用も視野に入れるとよいでしょう。
また、システムを検討する以前に、改めて自社の業務分析を行うことも現場目線での課題の明確化に対して有効です。
最終的には現場への協力も必要となるため、経営層や現場のユーザーなど、関係者を巻き込みDXの目的達成に向けて、合意形成を図りながら、構想をまとめていくことが重要となります。
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