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【2025年版】製造業のための生産管理システム選定 完全ガイド

2025.07.04

パッケージ、SaaSからローコードまで。自社に最適な一手を見極め、DXを成功に導くための「選定の軸」を徹底解説します。 【このコラムをお勧めしたい経営者のイメージ】 ● 「2025年の崖」を前に、基幹システムの刷新を真剣に検討している経営者様 ● Excelや手作業による管理に限界を感じ、データに基づいた経営判断を実現したい経営者様 ● 多品種少量生産など、自社の事業モデルに最適な生産管理の仕組みを構築したい経営者様 ● どのシステムが自社に合うか分からず、客観的な比較情報と導入の進め方を知りたいIT責任者様 【このコラムの内容の要約】 本コラムは、中小製造業の経営者様およびIT責任者様が、複雑化する生産管理システムの選定で失敗しないための実践的な指針を提供するものです。まず、多くの中小製造業が直面する5つの経営課題と、「2025年の崖」に代表されるシステム刷新の必要性を解説します。その上で、主要な選択肢である「パッケージ」「SaaS」「IaaS/PaaSカスタム開発」「ローコード」の4つのアプローチについて、それぞれの特徴、メリット・デメリット、コスト感を徹底比較します。さらに、企業規模や業種ごとの適合性を示し、具体的な導入プロセスと成功の秘訣を、実例を交えながら解説します。 【このコラムを読むメリット】 本コラムをお読みいただくことで、多様な生産管理システムの選択肢の中から、自社の事業規模、業種、業務プロセス、そして将来の成長戦略に本当に合致するものは何かを見極める「選定の軸」を得ることができます。各システムの長所・短所を客観的に理解し、特に初期費用だけでは見えない総所有コスト(TCO)や運用負荷といった重要な判断基準を学べます。これにより、ベンダーの提案を鵜呑みにすることなく、自社にとって最適なシステムを主体的に選定することが可能になります。具体的な導入ステップや、よくある失敗パターンとその対策も網羅しているため、システム投資の成功確率を大幅に高め、企業の競争力強化に直結するDXを実現するための一助となります。 1. はじめに:中小製造業が直面する5つの経営課題 多くの経営者様が日々実感されているように、現代の製造業、特に中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。我々が多くの現場でご支援する中で、企業の成長を阻害する共通の課題が5つ存在することが明らかになっています。 多品種少量生産のニーズ拡大: 顧客ニーズの多様化は、小ロット・短納期対応を必須のものとしました。これにより、従来の生産計画や在庫管理では対応が追いつかず、機会損失や過剰在庫のリスクが高まっています。 人手・ノウハウ不足: 熟練技術者の高齢化や離職が進む一方で、若手人材の確保は年々困難になっています。これにより、現場の貴重な技術や知識の継承が危機的な状況にあり、品質の維持すら難しくなっている企業様も少なくありません。 設備・システムの老朽化: 2000年代以前に導入された基幹システムを使い続けている企業も多く、保守部品の枯渇や、最新OSへの非対応といった問題に直面しています。結果として、拡張性の不足やセキュリティリスクの増大といった深刻な事態を招いています。 Excel/紙中心の非効率運用: いまだに多くの現場で、Excelや紙の帳票が管理の主役となっています。これらは手軽な反面、担当者による二重入力や転記ミスを誘発し、リアルタイムでの情報共有を著しく阻害します。データに基づいた迅速な経営判断の足かせとなっているのです。 DX・情報統合への遅れ: 上記の結果として、受発注、生産、在庫、会計といった各部門のデータが分断され、サイロ化しています。経営層が会社全体の状況を正確に把握し、データに基づいた戦略的な意思決定を行うために必要な、統合された情報を得られていないのが実情です。 これらの課題は、一つひとつが経営に影響を与えるだけでなく、相互に絡み合うことでより深刻な問題へと発展します。この状況を打破するためには、個別の問題への対症療法ではなく、業務プロセスと情報システムを根本から見直すことが不可欠なのです。 2. なぜ今、システム刷新が急務なのか? 前述の課題を背景に、なぜ「今」生産管理システムの見直しが、単なる業務改善ではなく、企業の存続をかけた経営戦略として急務となっているのでしょうか。その理由は、大きく3つの外部環境の変化にあります。 第一に、「2025年の崖」問題です。経済産業省が警鐘を鳴らすこの問題は、多くの企業で利用されているレガシーシステムが、2025年頃に保守・運用の限界を迎え、深刻な経済損失を生む可能性を指摘するものです。具体的には、システムのブラックボックス化による保守困難、旧世代の技術者の退職、そして深刻なセキュリティリスクの増大などが挙げられます。この「崖」を乗り越え、事業を継続するためには、柔軟性と保守性に優れたパッケージやクラウドへの移行が喫緊の課題となっています。 第二に、市場競争の激化と顧客要求の高度化です。現代の顧客は、単に良い製品であることだけでなく、多品種少量生産への対応、短納期、高い品質保証レベルといった、高度な要求を製造業に突き付けています。従来の硬直的なシステムでは、こうした柔軟な計画変更や緻密な進捗管理に対応できず、ビジネスチャンスを逃すことになりかねません。受注から納品までの全工程を、迅速かつ正確に管理できる新しいシステム基盤を構築すること自体が、他社との差別化を図る強力な競争優位性となるのです。 第三に、データ主導経営へのシフトが生き残りの鍵となっている点です。もはや経験と勘だけでは、複雑化した市場で勝ち抜くことはできません。製造現場で発生する様々なデータをリアルタイムに収集・分析し、それに基づいて在庫の最適化、生産性の向上、コスト削減といった具体的なアクションに繋げる高速な意思決定サイクルが、経営品質を大きく左右します。紙やExcelによる管理では、このスピード感に対応することは不可能です。統合されたシステムによるデータの一元管理こそが、データ主導経営を実現し、企業の収益性を向上させるための唯一の道と言えるでしょう。 3. 生産管理システムの「4つの選択肢」概要 システム刷新の必要性を理解した上で、次に検討すべきは「どのような選択肢があるのか」です。生産管理システムのアプローチは、大きく4つに分類できます。それぞれの特性と活用場面を把握し、自社に最適な方向性を見極めることが重要です。 パッケージ型: SAP S/4HANAやOracle NetSuiteに代表される、包括的な標準機能を備えた統合ソリューションです。ERPとして高い安定性と拡張性を持ち、多拠点・部門間の統合的な業務管理やグローバル展開を目指す企業に適しています。 SaaS型: エムネットクラウドやスマートFなど、クラウド上で提供される製造業特化型のサービスです。初期投資を抑え、迅速に導入できる点が最大の魅力で、IT人材が限られ、運用保守の負担を軽減したい企業に向いています。 IaaS/PaaSカスタムクラウド: AWSやMicrosoft Azureといったクラウドインフラを活用し、完全に自社仕様のシステムをゼロから開発するアプローチです。他社にはない独自の業務プロセスが競争力の源泉であり、複雑なシステム連携や高度な拡張性を求める場合に選択肢となります。 ローコード: ZohoやMicrosoft Power Platformなど、専門的なプログラミング知識を最小限に抑え、迅速に業務アプリケーションを開発できるプラットフォームです。現場の要望を素早く反映させたい、段階的にシステムを構築・改善したい、といったアジャイルな開発を目指す企業や、将来的な内製化を視野に入れる企業に最適です。 これらの4つの選択肢には、それぞれに長所と短所が存在します。以降の章では、それぞれの詳細と、どのような基準で比較検討すべきかを深掘りしていきます。 4. 【選択肢1】パッケージシステムの詳細解説 パッケージ型生産管理システムは、長年にわたり多くの企業で採用されてきた、最も伝統的で信頼性の高いソリューションです。SAP S/4HANA、Oracle NetSuite、Microsoft Dynamics 365、電脳工場などが代表的な製品として挙げられます。これらのシステムは、受注から生産計画、製造、出荷、在庫、原価、そして請求に至るまで、製造業の基幹業務プロセスを網羅した、包括的な機能群を提供します。 メリット パッケージシステムの最大のメリットは、その機能の網羅性と、グローバル標準の業務プロセスが組み込まれている点です。 業界標準の導入: 長年の導入実績を通じて蓄積されたベストプラクティスが反映されており、導入を機に自社の業務プロセスを標準化・高度化できます。 高い拡張性と信頼性: 企業の成長に合わせて機能を追加(モジュール追加)したり、大規模なデータ処理にも耐えうる高い信頼性を持っています。 豊富なサポート体制と分析機能: 専門のコンサルタントによる手厚い導入・運用支援を受けられるほか、経営判断に資する高度な分析レポート機能が標準で備わっていることが多いです。   デメリット 一方で、その包括性や信頼性と引き換えに、中小企業にとってはいくつかのデメリットが存在します。 高額な初期投資: ライセンス費用や導入コンサルティング費用が高額になる傾向があり、数百万から数千万円規模の投資が必要となるケースも珍しくありません。 長期の導入期間: 要件定義から本稼働まで、6ヶ月から1年以上といった長期間を要することが一般的です。 運用負荷: システムが多機能で複雑なため、運用には専任の管理者や継続的なメンテナンスが不可欠となります。 現場適合化の課題: 海外製のパッケージの場合、日本特有の商慣行や現場の細かい業務に標準機能では対応しきれず、追加のカスタマイズが必要となる場合があります。このカスタマイズが、さらなるコスト増大や期間延長の要因となりがちです。 結論として、パッケージシステムは、業務プロセスの標準化を志向し、グローバル展開や多拠点連携といった要件を持つ、比較的体力のある中堅・大企業にとって最適な選択肢と言えます。中小企業が導入を検討する際は、自社の業務プロセスがパッケージの標準機能にどれだけ適合するか(Fit to Standard)を慎重に見極め、カスタマイズ費用を含めた総所有コスト(TCO)を精緻に評価することが成功の鍵となります。 5. 【選択肢2】SaaS型システムの詳細解説 SaaS(Software as a Service)型システムは、インターネットを通じて月額課金で利用するクラウドサービスです。特に、エムネットクラウド、スマートF、TPiCS-X、UM SaaS Cloudなど、中小製造業の特定のニーズに特化したサービスが数多く登場しており、近年急速に導入が拡大しています。 メリット SaaS型の最大のメリットは、その導入の手軽さとスピード感にあります。 迅速な導入と低い初期費用: サーバーの購入やソフトウェアのインストールが不要なため、アカウントを発行すればすぐに利用を開始できます。これにより、初期投資を大幅に抑制し、数週間から数ヶ月という短期間での本格稼働が可能です。 運用保守が不要: システムのアップデートやセキュリティ対策、データのバックアップなどは全てサービス提供元(ベンダー)が行うため、IT専門の担当者がいない企業でも安心して利用できます。 現場での使いやすさ: 多くの中小企業向けSaaSは、専門知識がなくても直感的に操作できるユーザーインターフェース(UI)を備えており、現場での定着が進みやすい傾向があります。   デメリット この手軽さと引き換えに、SaaS型にはいくつかの制約やリスクが伴います。 カスタマイズの制約: 最大のデメリットは、基本的に提供されている標準機能の範囲内で運用することが前提となる点です。自社特有の複雑な業務プロセスや帳票レイアウトにシステムを合わせることが難しく、場合によっては業務フローの方をシステムに合わせる「業務標準化」が求められます。 外部依存リスク: 企業の重要な生産データを外部のサーバーに預けることになるため、ベンダーのサービス継続性やセキュリティ体制に事業が依存する形となります。また、データの所有権が誰に帰属するのか、契約終了時にデータを取り出せるかなども事前に確認が必要です。 結論として、SaaS型システムは、IT人材が不足しており、とにかく早く・安く生産管理のデジタル化を始めたい企業にとって非常に有効な選択肢です。特に、業務プロセスが比較的標準的で、システムの機能に合わせて業務を改善していくことに前向きな企業に向いています。導入を検討する際は、自社の必須要件が標準機能でカバーできるかを慎重に見極めることが最も重要です。 6. 【選択肢3】IaaS/PaaSカスタム開発の詳細解説 IaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)カスタム開発とは、Amazon Web Services (AWS)やMicrosoft Azureといったクラウド事業者が提供するインフラやプラットフォーム基盤の上に、完全に自社独自の生産管理システムをオーダーメイドで構築するアプローチです。これは、既存のいかなるパッケージやSaaSでも対応できない、極めて特殊で複雑な要件を実現するための選択肢と言えます。 メリット カスタム開発のメリットは、何と言ってもその圧倒的な自由度と柔軟性にあります。 完全な業務最適化: 自社の業務プロセスに100%適合したシステムを設計できるため、業務効率を極限まで高めることが可能です。 競争優位性の確立: 他社にはない独自の生産方式や管理ノウハウをシステムに組み込むことで、それ自体が強力な差別化要因となり、競争優位性を確立できます。 最大限のコントロール: 技術選定からインフラ構成、データ所有権に至るまで、システムに関する全ての要素を自社で完全にコントロールし、資産として保有できます。   デメリット この「究極の自由」には、相応の覚悟とリソースが求められます。 莫大な開発コストと期間: 設計から開発、テスト、導入に至る全工程を自社(または開発パートナー)が行うため、開発コストと期間が他のアプローチに比べて大幅に増大します。プロジェクトが年単位に及ぶことも珍しくありません。 高度なIT人材が必須: クラウドアーキテクチャの設計、プログラミング、データベース管理、セキュリティ対策など、広範かつ高度な専門知識を持つIT人材を、プロジェクト期間中だけでなく、運用フェーズでも継続的に確保する必要があります。これは多くの中小企業にとって最大の障壁です。 高いプロジェクト失敗リスク: 要件定義の不備や、開発途中の仕様変更(スコープ拡大)などが原因で、プロジェクトが頓挫するリスクが他の手法に比べて格段に高くなります。 継続的な運用・保守負担: 完成したシステムの運用、障害対応、セキュリティパッチの適用、将来的な機能改修などは全て自社の責任となり、継続的なコストと人的リソースの投入が必要です。 結論として、IaaS/PaaSでのカスタム開発は、独自の業務プロセスが競争力の源泉であり、そのシステム化に大きな投資をかけられるだけの体力と、高度なIT体制を持つ一部の企業に限られる、非常に難易度の高い選択肢です。 7. 【選択肢4】ローコードプラットフォームの詳細解説 ローコードプラットフォームは、パッケージの「信頼性」とカスタム開発の「柔軟性」、そしてSaaSの「迅速性」の“いいとこ取り”を目指した、新しいアプローチです。Zoho、Microsoft Power Platform、Mendix、OutSystemsなどが代表的な製品で、専門的なプログラミング知識を最小限に抑え、迅速に業務アプリケーションを開発できる点が最大の特徴です。 メリット ローコードプラットフォームは、特に変化への対応力とスピードを重視する中小企業にとって、多くのメリットを提供します。 迅速かつ柔軟な開発: 生産計画、在庫管理、工程管理といった標準的な業務テンプレートをベースに、自社の業務に合わせてドラッグ&ドロップ操作などで画面や機能(ロジック)を柔軟にカスタマイズできます。これにより、従来のスクラッチ開発に比べて1/3から1/5の期間という、圧倒的なスピードでシステムを構築することが可能です。 現場主導での開発と内製化: 業務を最もよく理解している現場担当者が「市民開発者」として、主体的に開発プロセスに参加できます。これにより、現場のニーズに即した本当に使えるシステムが実現しやすくなるだけでなく、社内にノウハウが蓄積され、継続的な改善やDXの内製化を推進することが可能になります。 高いコスト効率と拡張性: 必要な機能からスモールスタートし、事業の成長に合わせて段階的に機能を拡張していくアジャイルなアプローチに適しています。また、多くのプラットフォームはAPI連携機能を標準で装備しており、既存の会計システムや他のクラウドサービスとの連携も容易です。   デメリット・制約 万能に見えるローコードプラットフォームにも、いくつかの制約や不得意な領域があります。 機能やパフォーマンスの制約: プラットフォームが提供する機能の範囲を超える、極めて複雑な計算ロジックや、大量のデータをリアルタイムで処理するような高負荷なシステムには向いていない場合があります。 プラットフォームへの依存: 開発したアプリケーションは、そのプラットフォーム上でしか動作しないため、特定のベンダーに依存する形となります。 大規模・特殊案件への不適合: 高度に最適化された特殊なアルゴリズムを要するシステムや、非常に大規模なエンタープライズシステムの構築には適していません。 結論として、ローコードプラットフォームは、SaaSの標準機能では物足りないが、フルカスタム開発ほどのコストや時間はかけられない、という多くの中小企業にとって、最もバランスの取れた現実的な選択肢です。特に、変化に強く、現場主導で継続的に業務を改善していきたいと考える企業に最適です。 8. 徹底比較:4つのアプローチの機能とコスト ここまで解説してきた4つの選択肢を、「業務範囲」「カスタマイズ性」「導入期間」「コスト」「IT人材要件」といった観点から横断的に比較し、その違いを明確にします。 機能・特徴の比較 比較項目 パッケージシステム SaaS型クラウド IaaS/PaaSカスタム ローコード開発 主な特徴 全業務網羅型 即時利用型 完全オーダーメイド型 半カスタム型 業務範囲 生産、販売、在庫、会計まで統合 生産管理中心、他システム連携が必要な場合も 任意の業務範囲に対応可能 基本機能から段階的に拡張可能 カスタマイズ性 可能だが高コスト・長期間 基本的に制限あり 自由度最大 テンプレート+柔軟なカスタムが可能   コスト・期間・人材の比較 比較項目 パッケージシステム SaaS型クラウド IaaS/PaaSカスタム ローコード開発 初期導入コスト 高額 低~中 最高額 中程度 月額運用費用 中~高 中(ユーザー数で変動) 変動大(リソース使用量による) 低~中(ユーザー数で変動) 導入期間 長期(6ヶ月~1年以上) 短期(1~3ヶ月) 最長(6ヶ月~1年半) 中短期(1~4ヶ月) IT人材要件 専門管理者、専門コンサルタント必須 最小限(基本操作トレーニングのみ) 高度専門家(クラウド、開発、セキュリティ)必須 中程度(高度な部分は外部委託も可) この比較から分かるように、各アプローチは明確なトレードオフの関係にあります。「完璧なシステム」は存在せず、自社の経営戦略、事業規模、業務特性、そしてITに関する体力(予算・人材)を総合的に勘案し、何を優先し、何を妥協するのかを決定することが、システム選定の核心と言えるでしょう。 9. 自社に合うのはどれ?企業規模の適合性 4つの選択肢の特性を理解した上で、より具体的に「自社にはどのタイプが合うのか」を、企業規模と業種という2つの軸から見ていきましょう。これはあくまで一般的な傾向ですが、システム選定の重要な判断材料となります。 企業規模別の推奨システム 小規模企業(~30名) 特徴: IT専門人材が不在で、投資予算も限られている。迅速な導入と即効性のある業務効率化が最優先課題。 推奨システム: SaaS または ローコード。初期投資を抑え、短期間で導入効果を得られるアプローチが最適です。代表的な製品例としては、SaaSではエムネットクラウドやスマートF、ローコードではZohoなどが挙げられます。 中規模企業(30~100名) 特徴: 部門間の連携や情報統合のニーズが高まり、業界特有の要件も増えてくる段階。 推奨システム: SaaSの本格活用 + ローコード。業務の根幹は安定したSaaS(例: TPiCS-X、UM SaaS Cloud)で運用し、SaaSでカバーできない独自の要件や周辺業務をローコード(例: Zoho、Dynamics 365 Business CentralのPower Platform連携)で補完する、ハイブリッドな構成が有効です。 大規模企業(100名~) 特徴: 複数拠点や部門間の複雑な業務連携が必須。高度な分析・計画機能が求められる。 推奨システム: パッケージ または IaaS/PaaSカスタム開発。業務の複雑性と規模に対応できる、堅牢な基幹システムが中心となります。SAP S/4HANAやOracle NetSuiteなどが代表例です。   これらの軸を参考に、自社の立ち位置を客観的に把握し、選択肢を絞り込んでいくことが、合理的なシステム選定に繋がります。 10. 導入を成功に導く実践的プロセスと成功事例 最適なシステムを選定することは重要ですが、それだけではDXは成功しません。ここでは、導入プロジェクトを成功に導くための実践的なプロセスと、よくある失敗パターンへの対策を解説します。   失敗しないための「5つのステップ」 システム選定から導入までを、以下の5つのステップで進めることを推奨します。 現状把握: 業務フローを可視化し、課題を明確にします。 要件整理: 把握した課題に基づき、システムに必要な「必須要件」を定義し、優先順位を付けます。 比較検討: 複数の候補に対し、客観的な評価軸(後述のチェックリスト等)を用いて最適な製品・ベンダーを選定します。 スモールスタート(PoC): 最も重要な業務に絞って小規模に試行し、効果と使い勝手を検証します。 改善・拡張: PoCの結果を踏まえて本格導入し、その後も段階的に全社展開と継続的な改善を行います。   よくある失敗パターンとその対策 多くのプロジェクトは、共通の失敗パターンに陥りがちです。 現場要件の把握不足: 対策として、プロジェクトの初期段階から現場のキーマンを巻き込み、要件定義からテストまで一貫して関与してもらう体制を構築することが重要です。 コストオーバーラン: 対策は、必須要件と希望要件を厳密に分け、スモールスタートを徹底すること。安易なカスタマイズは避け、まずは標準機能で業務を回すことを考えます。 導入スケジュールの遅延: 対策として、現実的なマイルストーンを設定し、各工程に十分なバッファを確保した計画を立てることが不可欠です。   成功事例に学ぶ3つのパターン 成功企業には共通の導入アプローチがあります。 部分導入から全社展開: 最も効果が見込める部門から導入し、成功体験を積み重ねて全社に展開するパターン。 ベンダー主導+現場巻込み: 専門ベンダーの知見を活用しつつ、現場の声を反映させる定期的なレビュー会議などでオーナーシップを醸成するパターン。 内製(ローコード)+外部支援活用: ローコードツールで自社主導開発を進め、複雑な部分だけを外部の専門家に依頼するパターン。社内にノウハウが蓄積されるメリットがあります。 これらのプロセスやパターンを参考に、自社に最適な導入計画を立てることが、DX成功の確率を飛躍的に高めます。そして、この全てのプロセスにおいて最も重要な成功要因は、「経営層の強いコミットメント」と「現場を巻き込んだ推進体制」の両輪を回し続けることに尽きます。         【このコラムを読んだ後に取るべき行動】 本ガイドをお読みいただき、生産管理システム選定の全体像をご理解いただけたかと存じます。次の一歩を踏み出すために、以下の具体的なアクションプランをお勧めします。 現状整理と課題棚卸(1週間): まずは自社の現行業務フローを書き出し、どこに問題があるのかを関係者でリストアップしてみてください。 社内キーパーソンの選定(2週間): 経営層、IT部門、そして現場のリーダーからなるプロジェクトチームを編成します。 優先度付けと情報収集(1ヶ月): 課題の重要度・緊急度を評価し、解決すべきテーマを絞り込みます。同時に、本ガイドで紹介した4タイプの中から候補となるベンダー2~3社に問い合わせてみましょう。 小規模な実証実験(PoC)の企画(2ヶ月): 最も重要な業務プロセス一つに絞り、小規模な実証実験を計画します。 導入プロジェクト計画の策定(3ヶ月): PoCの結果を踏まえ、具体的なスケジュール、予算、体制、KPIを設定したプロジェクト計画書を作成し、経営承認を得ます。 これらのステップを自社だけで進めるのが難しい、あるいは専門家の客観的なアドバイスが欲しいとお考えの場合は、ぜひ我々、船井総合研究所にご相談ください。貴社に最適なDXの実現に向けて、全力でサポートさせていただきます。 ご相談はこちら https://formslp.funaisoken.co.jp/form01/lp/post/inquiry-S045.html?siteno=S045&_gl=1*n9ocn6*_gcl_au*MTQxOTg2OTc5LjE3NDg0MDQ4OTA.*_ga*MTQwMzYyNzIxNC4xNzAxMTQ4MzQz*_ga_D8HCS71KCM*czE3NTEyNjM4NjIkbzQ0MCRnMCR0MTc1MTI2Mzg2MiRqNjAkbDAkaDA. パッケージ、SaaSからローコードまで。自社に最適な一手を見極め、DXを成功に導くための「選定の軸」を徹底解説します。 【このコラムをお勧めしたい経営者のイメージ】 ● 「2025年の崖」を前に、基幹システムの刷新を真剣に検討している経営者様 ● Excelや手作業による管理に限界を感じ、データに基づいた経営判断を実現したい経営者様 ● 多品種少量生産など、自社の事業モデルに最適な生産管理の仕組みを構築したい経営者様 ● どのシステムが自社に合うか分からず、客観的な比較情報と導入の進め方を知りたいIT責任者様 【このコラムの内容の要約】 本コラムは、中小製造業の経営者様およびIT責任者様が、複雑化する生産管理システムの選定で失敗しないための実践的な指針を提供するものです。まず、多くの中小製造業が直面する5つの経営課題と、「2025年の崖」に代表されるシステム刷新の必要性を解説します。その上で、主要な選択肢である「パッケージ」「SaaS」「IaaS/PaaSカスタム開発」「ローコード」の4つのアプローチについて、それぞれの特徴、メリット・デメリット、コスト感を徹底比較します。さらに、企業規模や業種ごとの適合性を示し、具体的な導入プロセスと成功の秘訣を、実例を交えながら解説します。 【このコラムを読むメリット】 本コラムをお読みいただくことで、多様な生産管理システムの選択肢の中から、自社の事業規模、業種、業務プロセス、そして将来の成長戦略に本当に合致するものは何かを見極める「選定の軸」を得ることができます。各システムの長所・短所を客観的に理解し、特に初期費用だけでは見えない総所有コスト(TCO)や運用負荷といった重要な判断基準を学べます。これにより、ベンダーの提案を鵜呑みにすることなく、自社にとって最適なシステムを主体的に選定することが可能になります。具体的な導入ステップや、よくある失敗パターンとその対策も網羅しているため、システム投資の成功確率を大幅に高め、企業の競争力強化に直結するDXを実現するための一助となります。 1. はじめに:中小製造業が直面する5つの経営課題 多くの経営者様が日々実感されているように、現代の製造業、特に中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。我々が多くの現場でご支援する中で、企業の成長を阻害する共通の課題が5つ存在することが明らかになっています。 多品種少量生産のニーズ拡大: 顧客ニーズの多様化は、小ロット・短納期対応を必須のものとしました。これにより、従来の生産計画や在庫管理では対応が追いつかず、機会損失や過剰在庫のリスクが高まっています。 人手・ノウハウ不足: 熟練技術者の高齢化や離職が進む一方で、若手人材の確保は年々困難になっています。これにより、現場の貴重な技術や知識の継承が危機的な状況にあり、品質の維持すら難しくなっている企業様も少なくありません。 設備・システムの老朽化: 2000年代以前に導入された基幹システムを使い続けている企業も多く、保守部品の枯渇や、最新OSへの非対応といった問題に直面しています。結果として、拡張性の不足やセキュリティリスクの増大といった深刻な事態を招いています。 Excel/紙中心の非効率運用: いまだに多くの現場で、Excelや紙の帳票が管理の主役となっています。これらは手軽な反面、担当者による二重入力や転記ミスを誘発し、リアルタイムでの情報共有を著しく阻害します。データに基づいた迅速な経営判断の足かせとなっているのです。 DX・情報統合への遅れ: 上記の結果として、受発注、生産、在庫、会計といった各部門のデータが分断され、サイロ化しています。経営層が会社全体の状況を正確に把握し、データに基づいた戦略的な意思決定を行うために必要な、統合された情報を得られていないのが実情です。 これらの課題は、一つひとつが経営に影響を与えるだけでなく、相互に絡み合うことでより深刻な問題へと発展します。この状況を打破するためには、個別の問題への対症療法ではなく、業務プロセスと情報システムを根本から見直すことが不可欠なのです。 2. なぜ今、システム刷新が急務なのか? 前述の課題を背景に、なぜ「今」生産管理システムの見直しが、単なる業務改善ではなく、企業の存続をかけた経営戦略として急務となっているのでしょうか。その理由は、大きく3つの外部環境の変化にあります。 第一に、「2025年の崖」問題です。経済産業省が警鐘を鳴らすこの問題は、多くの企業で利用されているレガシーシステムが、2025年頃に保守・運用の限界を迎え、深刻な経済損失を生む可能性を指摘するものです。具体的には、システムのブラックボックス化による保守困難、旧世代の技術者の退職、そして深刻なセキュリティリスクの増大などが挙げられます。この「崖」を乗り越え、事業を継続するためには、柔軟性と保守性に優れたパッケージやクラウドへの移行が喫緊の課題となっています。 第二に、市場競争の激化と顧客要求の高度化です。現代の顧客は、単に良い製品であることだけでなく、多品種少量生産への対応、短納期、高い品質保証レベルといった、高度な要求を製造業に突き付けています。従来の硬直的なシステムでは、こうした柔軟な計画変更や緻密な進捗管理に対応できず、ビジネスチャンスを逃すことになりかねません。受注から納品までの全工程を、迅速かつ正確に管理できる新しいシステム基盤を構築すること自体が、他社との差別化を図る強力な競争優位性となるのです。 第三に、データ主導経営へのシフトが生き残りの鍵となっている点です。もはや経験と勘だけでは、複雑化した市場で勝ち抜くことはできません。製造現場で発生する様々なデータをリアルタイムに収集・分析し、それに基づいて在庫の最適化、生産性の向上、コスト削減といった具体的なアクションに繋げる高速な意思決定サイクルが、経営品質を大きく左右します。紙やExcelによる管理では、このスピード感に対応することは不可能です。統合されたシステムによるデータの一元管理こそが、データ主導経営を実現し、企業の収益性を向上させるための唯一の道と言えるでしょう。 3. 生産管理システムの「4つの選択肢」概要 システム刷新の必要性を理解した上で、次に検討すべきは「どのような選択肢があるのか」です。生産管理システムのアプローチは、大きく4つに分類できます。それぞれの特性と活用場面を把握し、自社に最適な方向性を見極めることが重要です。 パッケージ型: SAP S/4HANAやOracle NetSuiteに代表される、包括的な標準機能を備えた統合ソリューションです。ERPとして高い安定性と拡張性を持ち、多拠点・部門間の統合的な業務管理やグローバル展開を目指す企業に適しています。 SaaS型: エムネットクラウドやスマートFなど、クラウド上で提供される製造業特化型のサービスです。初期投資を抑え、迅速に導入できる点が最大の魅力で、IT人材が限られ、運用保守の負担を軽減したい企業に向いています。 IaaS/PaaSカスタムクラウド: AWSやMicrosoft Azureといったクラウドインフラを活用し、完全に自社仕様のシステムをゼロから開発するアプローチです。他社にはない独自の業務プロセスが競争力の源泉であり、複雑なシステム連携や高度な拡張性を求める場合に選択肢となります。 ローコード: ZohoやMicrosoft Power Platformなど、専門的なプログラミング知識を最小限に抑え、迅速に業務アプリケーションを開発できるプラットフォームです。現場の要望を素早く反映させたい、段階的にシステムを構築・改善したい、といったアジャイルな開発を目指す企業や、将来的な内製化を視野に入れる企業に最適です。 これらの4つの選択肢には、それぞれに長所と短所が存在します。以降の章では、それぞれの詳細と、どのような基準で比較検討すべきかを深掘りしていきます。 4. 【選択肢1】パッケージシステムの詳細解説 パッケージ型生産管理システムは、長年にわたり多くの企業で採用されてきた、最も伝統的で信頼性の高いソリューションです。SAP S/4HANA、Oracle NetSuite、Microsoft Dynamics 365、電脳工場などが代表的な製品として挙げられます。これらのシステムは、受注から生産計画、製造、出荷、在庫、原価、そして請求に至るまで、製造業の基幹業務プロセスを網羅した、包括的な機能群を提供します。 メリット パッケージシステムの最大のメリットは、その機能の網羅性と、グローバル標準の業務プロセスが組み込まれている点です。 業界標準の導入: 長年の導入実績を通じて蓄積されたベストプラクティスが反映されており、導入を機に自社の業務プロセスを標準化・高度化できます。 高い拡張性と信頼性: 企業の成長に合わせて機能を追加(モジュール追加)したり、大規模なデータ処理にも耐えうる高い信頼性を持っています。 豊富なサポート体制と分析機能: 専門のコンサルタントによる手厚い導入・運用支援を受けられるほか、経営判断に資する高度な分析レポート機能が標準で備わっていることが多いです。   デメリット 一方で、その包括性や信頼性と引き換えに、中小企業にとってはいくつかのデメリットが存在します。 高額な初期投資: ライセンス費用や導入コンサルティング費用が高額になる傾向があり、数百万から数千万円規模の投資が必要となるケースも珍しくありません。 長期の導入期間: 要件定義から本稼働まで、6ヶ月から1年以上といった長期間を要することが一般的です。 運用負荷: システムが多機能で複雑なため、運用には専任の管理者や継続的なメンテナンスが不可欠となります。 現場適合化の課題: 海外製のパッケージの場合、日本特有の商慣行や現場の細かい業務に標準機能では対応しきれず、追加のカスタマイズが必要となる場合があります。このカスタマイズが、さらなるコスト増大や期間延長の要因となりがちです。 結論として、パッケージシステムは、業務プロセスの標準化を志向し、グローバル展開や多拠点連携といった要件を持つ、比較的体力のある中堅・大企業にとって最適な選択肢と言えます。中小企業が導入を検討する際は、自社の業務プロセスがパッケージの標準機能にどれだけ適合するか(Fit to Standard)を慎重に見極め、カスタマイズ費用を含めた総所有コスト(TCO)を精緻に評価することが成功の鍵となります。 5. 【選択肢2】SaaS型システムの詳細解説 SaaS(Software as a Service)型システムは、インターネットを通じて月額課金で利用するクラウドサービスです。特に、エムネットクラウド、スマートF、TPiCS-X、UM SaaS Cloudなど、中小製造業の特定のニーズに特化したサービスが数多く登場しており、近年急速に導入が拡大しています。 メリット SaaS型の最大のメリットは、その導入の手軽さとスピード感にあります。 迅速な導入と低い初期費用: サーバーの購入やソフトウェアのインストールが不要なため、アカウントを発行すればすぐに利用を開始できます。これにより、初期投資を大幅に抑制し、数週間から数ヶ月という短期間での本格稼働が可能です。 運用保守が不要: システムのアップデートやセキュリティ対策、データのバックアップなどは全てサービス提供元(ベンダー)が行うため、IT専門の担当者がいない企業でも安心して利用できます。 現場での使いやすさ: 多くの中小企業向けSaaSは、専門知識がなくても直感的に操作できるユーザーインターフェース(UI)を備えており、現場での定着が進みやすい傾向があります。   デメリット この手軽さと引き換えに、SaaS型にはいくつかの制約やリスクが伴います。 カスタマイズの制約: 最大のデメリットは、基本的に提供されている標準機能の範囲内で運用することが前提となる点です。自社特有の複雑な業務プロセスや帳票レイアウトにシステムを合わせることが難しく、場合によっては業務フローの方をシステムに合わせる「業務標準化」が求められます。 外部依存リスク: 企業の重要な生産データを外部のサーバーに預けることになるため、ベンダーのサービス継続性やセキュリティ体制に事業が依存する形となります。また、データの所有権が誰に帰属するのか、契約終了時にデータを取り出せるかなども事前に確認が必要です。 結論として、SaaS型システムは、IT人材が不足しており、とにかく早く・安く生産管理のデジタル化を始めたい企業にとって非常に有効な選択肢です。特に、業務プロセスが比較的標準的で、システムの機能に合わせて業務を改善していくことに前向きな企業に向いています。導入を検討する際は、自社の必須要件が標準機能でカバーできるかを慎重に見極めることが最も重要です。 6. 【選択肢3】IaaS/PaaSカスタム開発の詳細解説 IaaS(Infrastructure as a Service)/PaaS(Platform as a Service)カスタム開発とは、Amazon Web Services (AWS)やMicrosoft Azureといったクラウド事業者が提供するインフラやプラットフォーム基盤の上に、完全に自社独自の生産管理システムをオーダーメイドで構築するアプローチです。これは、既存のいかなるパッケージやSaaSでも対応できない、極めて特殊で複雑な要件を実現するための選択肢と言えます。 メリット カスタム開発のメリットは、何と言ってもその圧倒的な自由度と柔軟性にあります。 完全な業務最適化: 自社の業務プロセスに100%適合したシステムを設計できるため、業務効率を極限まで高めることが可能です。 競争優位性の確立: 他社にはない独自の生産方式や管理ノウハウをシステムに組み込むことで、それ自体が強力な差別化要因となり、競争優位性を確立できます。 最大限のコントロール: 技術選定からインフラ構成、データ所有権に至るまで、システムに関する全ての要素を自社で完全にコントロールし、資産として保有できます。   デメリット この「究極の自由」には、相応の覚悟とリソースが求められます。 莫大な開発コストと期間: 設計から開発、テスト、導入に至る全工程を自社(または開発パートナー)が行うため、開発コストと期間が他のアプローチに比べて大幅に増大します。プロジェクトが年単位に及ぶことも珍しくありません。 高度なIT人材が必須: クラウドアーキテクチャの設計、プログラミング、データベース管理、セキュリティ対策など、広範かつ高度な専門知識を持つIT人材を、プロジェクト期間中だけでなく、運用フェーズでも継続的に確保する必要があります。これは多くの中小企業にとって最大の障壁です。 高いプロジェクト失敗リスク: 要件定義の不備や、開発途中の仕様変更(スコープ拡大)などが原因で、プロジェクトが頓挫するリスクが他の手法に比べて格段に高くなります。 継続的な運用・保守負担: 完成したシステムの運用、障害対応、セキュリティパッチの適用、将来的な機能改修などは全て自社の責任となり、継続的なコストと人的リソースの投入が必要です。 結論として、IaaS/PaaSでのカスタム開発は、独自の業務プロセスが競争力の源泉であり、そのシステム化に大きな投資をかけられるだけの体力と、高度なIT体制を持つ一部の企業に限られる、非常に難易度の高い選択肢です。 7. 【選択肢4】ローコードプラットフォームの詳細解説 ローコードプラットフォームは、パッケージの「信頼性」とカスタム開発の「柔軟性」、そしてSaaSの「迅速性」の“いいとこ取り”を目指した、新しいアプローチです。Zoho、Microsoft Power Platform、Mendix、OutSystemsなどが代表的な製品で、専門的なプログラミング知識を最小限に抑え、迅速に業務アプリケーションを開発できる点が最大の特徴です。 メリット ローコードプラットフォームは、特に変化への対応力とスピードを重視する中小企業にとって、多くのメリットを提供します。 迅速かつ柔軟な開発: 生産計画、在庫管理、工程管理といった標準的な業務テンプレートをベースに、自社の業務に合わせてドラッグ&ドロップ操作などで画面や機能(ロジック)を柔軟にカスタマイズできます。これにより、従来のスクラッチ開発に比べて1/3から1/5の期間という、圧倒的なスピードでシステムを構築することが可能です。 現場主導での開発と内製化: 業務を最もよく理解している現場担当者が「市民開発者」として、主体的に開発プロセスに参加できます。これにより、現場のニーズに即した本当に使えるシステムが実現しやすくなるだけでなく、社内にノウハウが蓄積され、継続的な改善やDXの内製化を推進することが可能になります。 高いコスト効率と拡張性: 必要な機能からスモールスタートし、事業の成長に合わせて段階的に機能を拡張していくアジャイルなアプローチに適しています。また、多くのプラットフォームはAPI連携機能を標準で装備しており、既存の会計システムや他のクラウドサービスとの連携も容易です。   デメリット・制約 万能に見えるローコードプラットフォームにも、いくつかの制約や不得意な領域があります。 機能やパフォーマンスの制約: プラットフォームが提供する機能の範囲を超える、極めて複雑な計算ロジックや、大量のデータをリアルタイムで処理するような高負荷なシステムには向いていない場合があります。 プラットフォームへの依存: 開発したアプリケーションは、そのプラットフォーム上でしか動作しないため、特定のベンダーに依存する形となります。 大規模・特殊案件への不適合: 高度に最適化された特殊なアルゴリズムを要するシステムや、非常に大規模なエンタープライズシステムの構築には適していません。 結論として、ローコードプラットフォームは、SaaSの標準機能では物足りないが、フルカスタム開発ほどのコストや時間はかけられない、という多くの中小企業にとって、最もバランスの取れた現実的な選択肢です。特に、変化に強く、現場主導で継続的に業務を改善していきたいと考える企業に最適です。 8. 徹底比較:4つのアプローチの機能とコスト ここまで解説してきた4つの選択肢を、「業務範囲」「カスタマイズ性」「導入期間」「コスト」「IT人材要件」といった観点から横断的に比較し、その違いを明確にします。 機能・特徴の比較 比較項目 パッケージシステム SaaS型クラウド IaaS/PaaSカスタム ローコード開発 主な特徴 全業務網羅型 即時利用型 完全オーダーメイド型 半カスタム型 業務範囲 生産、販売、在庫、会計まで統合 生産管理中心、他システム連携が必要な場合も 任意の業務範囲に対応可能 基本機能から段階的に拡張可能 カスタマイズ性 可能だが高コスト・長期間 基本的に制限あり 自由度最大 テンプレート+柔軟なカスタムが可能   コスト・期間・人材の比較 比較項目 パッケージシステム SaaS型クラウド IaaS/PaaSカスタム ローコード開発 初期導入コスト 高額 低~中 最高額 中程度 月額運用費用 中~高 中(ユーザー数で変動) 変動大(リソース使用量による) 低~中(ユーザー数で変動) 導入期間 長期(6ヶ月~1年以上) 短期(1~3ヶ月) 最長(6ヶ月~1年半) 中短期(1~4ヶ月) IT人材要件 専門管理者、専門コンサルタント必須 最小限(基本操作トレーニングのみ) 高度専門家(クラウド、開発、セキュリティ)必須 中程度(高度な部分は外部委託も可) この比較から分かるように、各アプローチは明確なトレードオフの関係にあります。「完璧なシステム」は存在せず、自社の経営戦略、事業規模、業務特性、そしてITに関する体力(予算・人材)を総合的に勘案し、何を優先し、何を妥協するのかを決定することが、システム選定の核心と言えるでしょう。 9. 自社に合うのはどれ?企業規模の適合性 4つの選択肢の特性を理解した上で、より具体的に「自社にはどのタイプが合うのか」を、企業規模と業種という2つの軸から見ていきましょう。これはあくまで一般的な傾向ですが、システム選定の重要な判断材料となります。 企業規模別の推奨システム 小規模企業(~30名) 特徴: IT専門人材が不在で、投資予算も限られている。迅速な導入と即効性のある業務効率化が最優先課題。 推奨システム: SaaS または ローコード。初期投資を抑え、短期間で導入効果を得られるアプローチが最適です。代表的な製品例としては、SaaSではエムネットクラウドやスマートF、ローコードではZohoなどが挙げられます。 中規模企業(30~100名) 特徴: 部門間の連携や情報統合のニーズが高まり、業界特有の要件も増えてくる段階。 推奨システム: SaaSの本格活用 + ローコード。業務の根幹は安定したSaaS(例: TPiCS-X、UM SaaS Cloud)で運用し、SaaSでカバーできない独自の要件や周辺業務をローコード(例: Zoho、Dynamics 365 Business CentralのPower Platform連携)で補完する、ハイブリッドな構成が有効です。 大規模企業(100名~) 特徴: 複数拠点や部門間の複雑な業務連携が必須。高度な分析・計画機能が求められる。 推奨システム: パッケージ または IaaS/PaaSカスタム開発。業務の複雑性と規模に対応できる、堅牢な基幹システムが中心となります。SAP S/4HANAやOracle NetSuiteなどが代表例です。   これらの軸を参考に、自社の立ち位置を客観的に把握し、選択肢を絞り込んでいくことが、合理的なシステム選定に繋がります。 10. 導入を成功に導く実践的プロセスと成功事例 最適なシステムを選定することは重要ですが、それだけではDXは成功しません。ここでは、導入プロジェクトを成功に導くための実践的なプロセスと、よくある失敗パターンへの対策を解説します。   失敗しないための「5つのステップ」 システム選定から導入までを、以下の5つのステップで進めることを推奨します。 現状把握: 業務フローを可視化し、課題を明確にします。 要件整理: 把握した課題に基づき、システムに必要な「必須要件」を定義し、優先順位を付けます。 比較検討: 複数の候補に対し、客観的な評価軸(後述のチェックリスト等)を用いて最適な製品・ベンダーを選定します。 スモールスタート(PoC): 最も重要な業務に絞って小規模に試行し、効果と使い勝手を検証します。 改善・拡張: PoCの結果を踏まえて本格導入し、その後も段階的に全社展開と継続的な改善を行います。   よくある失敗パターンとその対策 多くのプロジェクトは、共通の失敗パターンに陥りがちです。 現場要件の把握不足: 対策として、プロジェクトの初期段階から現場のキーマンを巻き込み、要件定義からテストまで一貫して関与してもらう体制を構築することが重要です。 コストオーバーラン: 対策は、必須要件と希望要件を厳密に分け、スモールスタートを徹底すること。安易なカスタマイズは避け、まずは標準機能で業務を回すことを考えます。 導入スケジュールの遅延: 対策として、現実的なマイルストーンを設定し、各工程に十分なバッファを確保した計画を立てることが不可欠です。   成功事例に学ぶ3つのパターン 成功企業には共通の導入アプローチがあります。 部分導入から全社展開: 最も効果が見込める部門から導入し、成功体験を積み重ねて全社に展開するパターン。 ベンダー主導+現場巻込み: 専門ベンダーの知見を活用しつつ、現場の声を反映させる定期的なレビュー会議などでオーナーシップを醸成するパターン。 内製(ローコード)+外部支援活用: ローコードツールで自社主導開発を進め、複雑な部分だけを外部の専門家に依頼するパターン。社内にノウハウが蓄積されるメリットがあります。 これらのプロセスやパターンを参考に、自社に最適な導入計画を立てることが、DX成功の確率を飛躍的に高めます。そして、この全てのプロセスにおいて最も重要な成功要因は、「経営層の強いコミットメント」と「現場を巻き込んだ推進体制」の両輪を回し続けることに尽きます。         【このコラムを読んだ後に取るべき行動】 本ガイドをお読みいただき、生産管理システム選定の全体像をご理解いただけたかと存じます。次の一歩を踏み出すために、以下の具体的なアクションプランをお勧めします。 現状整理と課題棚卸(1週間): まずは自社の現行業務フローを書き出し、どこに問題があるのかを関係者でリストアップしてみてください。 社内キーパーソンの選定(2週間): 経営層、IT部門、そして現場のリーダーからなるプロジェクトチームを編成します。 優先度付けと情報収集(1ヶ月): 課題の重要度・緊急度を評価し、解決すべきテーマを絞り込みます。同時に、本ガイドで紹介した4タイプの中から候補となるベンダー2~3社に問い合わせてみましょう。 小規模な実証実験(PoC)の企画(2ヶ月): 最も重要な業務プロセス一つに絞り、小規模な実証実験を計画します。 導入プロジェクト計画の策定(3ヶ月): PoCの結果を踏まえ、具体的なスケジュール、予算、体制、KPIを設定したプロジェクト計画書を作成し、経営承認を得ます。 これらのステップを自社だけで進めるのが難しい、あるいは専門家の客観的なアドバイスが欲しいとお考えの場合は、ぜひ我々、船井総合研究所にご相談ください。貴社に最適なDXの実現に向けて、全力でサポートさせていただきます。 ご相談はこちら https://formslp.funaisoken.co.jp/form01/lp/post/inquiry-S045.html?siteno=S045&_gl=1*n9ocn6*_gcl_au*MTQxOTg2OTc5LjE3NDg0MDQ4OTA.*_ga*MTQwMzYyNzIxNC4xNzAxMTQ4MzQz*_ga_D8HCS71KCM*czE3NTEyNjM4NjIkbzQ0MCRnMCR0MTc1MTI2Mzg2MiRqNjAkbDAkaDA.

「何か良いシステムはないかな?」 と思ったときに読むコラム

2025.07.02

1.自社にとっての「良いシステム」とは何か? 「何か良いシステムはないかな?」と考えるとき、私たちは往々にして、他社の成功事例や最新のITトレンドに目を向けがちです。しかし、A社にとっての「良いシステム」が、必ずしも貴社にとっての「良いシステム」であるとは限りません。自社にとっての「良いシステム」とは、突き詰めて言えば、貴社の経営課題や業務課題を明確に解決し、具体的な目標達成に貢献するシステムです。 例えば、顧客からの問い合わせ対応に時間がかかり、顧客満足度が低下している課題がある場合、「良いシステム」とは顧客からの問い合わせを効率的に管理し、迅速な対応を可能にするCRM(顧客関係管理)システムかもしれません。あるいは、在庫管理が属人化しており、過剰在庫や欠品が頻発しているならば、正確な在庫情報をリアルタイムで把握できる生産管理システムが「良いシステム」となり得るでしょう。 重要なのは、システム導入ありきで考えるのではなく、まず貴社が抱える具体的な課題や、達成したい目標を明確にすることです。そして、その課題解決や目標達成のために、システムがどのような役割を果たすべきかを深く掘り下げて検討することが、「良いシステム」を見つけるための第一歩となります。 2.「良いシステム」の定義が曖昧なまま、システム会社へ直接問い合わせていませんか? 多くの企業が陥りやすいのが、「良いシステム」の定義が曖昧なまま、あるいは自社の課題が不明瞭なままシステム会社へ問い合わせをしてしまうことです。例えば、「最新の〇〇システムを導入したい」「他社でうまくいっている△△を導入できないか」といった漠然とした依頼では、システム会社も貴社の真のニーズを理解することが困難です。 結果として、システム会社からは一般的なパッケージ製品の紹介や、貴社の状況に合致しない提案がなされる可能性が高まります。最悪の場合、導入されたシステムが「思っていたものと違った」「結局、何の課題も解決されなかった」といった結果になりかねません。 これは、家を建てる際に「良い家を建てたい」とだけ言って工務店に丸投げするようなものです。「どんな家族構成か」「何部屋必要か」「どのような暮らしがしたいか」といった具体的な要望がなければ、住む人にとって本当に良い家は建ちません。システム導入もこれと同じで、自社の課題と目的を明確にし、システムに求める要件を具体的に整理することなくして、最適なシステムに出会うことはできないのです。 この「自社の課題と目的を明確にし、システムに求める要件を具体的に整理する」プロセスこそが、システム開発における上流工程であり、この工程を疎かにすることが、多くのシステム導入プロジェクト失敗の根本原因となっています。 3.システム導入の成功確度を高めるためのポイント 自社にとっての「良いシステム」を導入し、プロジェクトの成功確度を高めるためには、以下のポイントを強く意識する必要があります。 ①現状の課題と目標を明確にする まずは、自社の業務プロセスを徹底的に分析し、非効率な点、ボトルネックとなっている点、顧客からの不満点などを洗い出します。そして、それらの課題を解決することで、どのような状態を目指すのか、具体的な数値目標(例:〇〇の作業時間を△△%削減する、顧客満足度を〇〇%向上させるなど)を設定します。 ②システムに求める要件を具体化する 課題と目標が明確になったら、それを解決するためにシステムがどのような機能を持つべきか、どのような性能が必要か、誰がどのように利用するか、といった要件を具体的に定義します。この際、現場の業務担当者の意見をしっかりとヒアリングし、現実的な要件と理想的な要件を区別し、優先順位を付けることが重要です。 ③システム導入の目的を関係者間で共有する 経営層から現場の利用者まで、システム導入に関わるすべてのステークホルダーが、なぜこのシステムを導入するのか、導入によって何を達成したいのか、という目的を共有することが不可欠です。目的が共有されていれば、途中で生じるであろう様々な課題や困難に対しても、共通の認識を持って対処することができます。 ④適切なパートナーを見つけるための準備をする 上記のプロセスを経て、自社の課題、目的、そしてシステムに求める具体的な要件が明確になれば、初めてシステム会社へ具体的な相談を始める準備が整ったと言えます。明確な情報を提供することで、システム会社も貴社に最適な提案をすることができ、費用対効果の高いシステム導入に繋がります。 これらのポイントは、システム開発における上流工程に相当します。この工程に十分な時間とリソースを投資し、徹底的に検討することで、貴社にとって本当に価値のある「良いシステム」に出会い、システム導入プロジェクトを成功へと導くことができるでしょう。 4.さいごに システム導入において、ここまでに紹介した上流工程は「急がば回れ」の精神が非常に重要になります。一見すると、すぐにシステム会社に相談して見積もりを取り、開発を始めた方が早いように感じるかもしれません。しかし、課題や要件が曖昧なまま進めると、後になって大規模な手戻りが発生し、結果的に時間もコストも大幅にかかってしまうケースが少なくありません。 上流工程での綿密な準備は、まさに「遠回りに見えて、実は近道」なのです。この初期段階での丁寧な作業が、プロジェクト全体の進行をスムーズにし、最終的な成功へと最短で導く鍵となります。 貴社は、自社にとっての「良いシステム」を明確に定義できていますか?       7月28日(月)東京開催 【システム実演デモ付き】基幹システム刷新 成功事例セミナー https://www.funaisoken.co.jp/seminar/130217 1.自社にとっての「良いシステム」とは何か? 「何か良いシステムはないかな?」と考えるとき、私たちは往々にして、他社の成功事例や最新のITトレンドに目を向けがちです。しかし、A社にとっての「良いシステム」が、必ずしも貴社にとっての「良いシステム」であるとは限りません。自社にとっての「良いシステム」とは、突き詰めて言えば、貴社の経営課題や業務課題を明確に解決し、具体的な目標達成に貢献するシステムです。 例えば、顧客からの問い合わせ対応に時間がかかり、顧客満足度が低下している課題がある場合、「良いシステム」とは顧客からの問い合わせを効率的に管理し、迅速な対応を可能にするCRM(顧客関係管理)システムかもしれません。あるいは、在庫管理が属人化しており、過剰在庫や欠品が頻発しているならば、正確な在庫情報をリアルタイムで把握できる生産管理システムが「良いシステム」となり得るでしょう。 重要なのは、システム導入ありきで考えるのではなく、まず貴社が抱える具体的な課題や、達成したい目標を明確にすることです。そして、その課題解決や目標達成のために、システムがどのような役割を果たすべきかを深く掘り下げて検討することが、「良いシステム」を見つけるための第一歩となります。 2.「良いシステム」の定義が曖昧なまま、システム会社へ直接問い合わせていませんか? 多くの企業が陥りやすいのが、「良いシステム」の定義が曖昧なまま、あるいは自社の課題が不明瞭なままシステム会社へ問い合わせをしてしまうことです。例えば、「最新の〇〇システムを導入したい」「他社でうまくいっている△△を導入できないか」といった漠然とした依頼では、システム会社も貴社の真のニーズを理解することが困難です。 結果として、システム会社からは一般的なパッケージ製品の紹介や、貴社の状況に合致しない提案がなされる可能性が高まります。最悪の場合、導入されたシステムが「思っていたものと違った」「結局、何の課題も解決されなかった」といった結果になりかねません。 これは、家を建てる際に「良い家を建てたい」とだけ言って工務店に丸投げするようなものです。「どんな家族構成か」「何部屋必要か」「どのような暮らしがしたいか」といった具体的な要望がなければ、住む人にとって本当に良い家は建ちません。システム導入もこれと同じで、自社の課題と目的を明確にし、システムに求める要件を具体的に整理することなくして、最適なシステムに出会うことはできないのです。 この「自社の課題と目的を明確にし、システムに求める要件を具体的に整理する」プロセスこそが、システム開発における上流工程であり、この工程を疎かにすることが、多くのシステム導入プロジェクト失敗の根本原因となっています。 3.システム導入の成功確度を高めるためのポイント 自社にとっての「良いシステム」を導入し、プロジェクトの成功確度を高めるためには、以下のポイントを強く意識する必要があります。 ①現状の課題と目標を明確にする まずは、自社の業務プロセスを徹底的に分析し、非効率な点、ボトルネックとなっている点、顧客からの不満点などを洗い出します。そして、それらの課題を解決することで、どのような状態を目指すのか、具体的な数値目標(例:〇〇の作業時間を△△%削減する、顧客満足度を〇〇%向上させるなど)を設定します。 ②システムに求める要件を具体化する 課題と目標が明確になったら、それを解決するためにシステムがどのような機能を持つべきか、どのような性能が必要か、誰がどのように利用するか、といった要件を具体的に定義します。この際、現場の業務担当者の意見をしっかりとヒアリングし、現実的な要件と理想的な要件を区別し、優先順位を付けることが重要です。 ③システム導入の目的を関係者間で共有する 経営層から現場の利用者まで、システム導入に関わるすべてのステークホルダーが、なぜこのシステムを導入するのか、導入によって何を達成したいのか、という目的を共有することが不可欠です。目的が共有されていれば、途中で生じるであろう様々な課題や困難に対しても、共通の認識を持って対処することができます。 ④適切なパートナーを見つけるための準備をする 上記のプロセスを経て、自社の課題、目的、そしてシステムに求める具体的な要件が明確になれば、初めてシステム会社へ具体的な相談を始める準備が整ったと言えます。明確な情報を提供することで、システム会社も貴社に最適な提案をすることができ、費用対効果の高いシステム導入に繋がります。 これらのポイントは、システム開発における上流工程に相当します。この工程に十分な時間とリソースを投資し、徹底的に検討することで、貴社にとって本当に価値のある「良いシステム」に出会い、システム導入プロジェクトを成功へと導くことができるでしょう。 4.さいごに システム導入において、ここまでに紹介した上流工程は「急がば回れ」の精神が非常に重要になります。一見すると、すぐにシステム会社に相談して見積もりを取り、開発を始めた方が早いように感じるかもしれません。しかし、課題や要件が曖昧なまま進めると、後になって大規模な手戻りが発生し、結果的に時間もコストも大幅にかかってしまうケースが少なくありません。 上流工程での綿密な準備は、まさに「遠回りに見えて、実は近道」なのです。この初期段階での丁寧な作業が、プロジェクト全体の進行をスムーズにし、最終的な成功へと最短で導く鍵となります。 貴社は、自社にとっての「良いシステム」を明確に定義できていますか?       7月28日(月)東京開催 【システム実演デモ付き】基幹システム刷新 成功事例セミナー https://www.funaisoken.co.jp/seminar/130217

【事例公開】地方中小企業でも年収アップ!DXで間接業務9割削減の秘訣!

2025.07.02

いつもお世話になっております。 今回は8月22日(金)14:30~17:30に開催予定の 船井総研スマートファクトリー経営部会でご講演いただく 三共電機株式会社様のDX成功事例をご紹介します。 従業員数58名。愛知県稲沢市に本社を構え、制御盤の設計・製造などを手掛ける同社では、DXに関する取り組みを通じて、単なる業務効率化に留まらず、社員の年収アップ、雇用創出、残業時間削減、売上高約1.5倍、間接業務9割削減といった多岐にわたる経営指標の改善に成功されました。特に、DXの実現を通じて、一般社員の平均年収は450万円あまり、管理職は820万円にまでアップしたとのことです。 地方の中小企業でありながら、どのようにして社員の年収アップ、生産性向上、 そして「昭和の工場」からの大改革を実現したのか、その全貌を3つのパートに分けてお伝えします。 1. 日常業務のDXで生産性の飛躍的な向上を実現! 三共電機株式会社様は、かつて「ありとあらゆる作業が手書き、Excel・メモ帳管理」というアナログな業務環境を抱えていました。特に、制御盤製作に不可欠な約2,000種類もの在庫部品の手配業務は、必要な時に都度手書きで依頼し、型式や数量の書き間違い、二重手配、過剰手配といった問題が頻発していました。また、在庫管理の責任者が「仕事ができる人」になりがちで、そのためにその人の生産性が落ちるという課題もありました。 年に2回行われる棚卸業務も大きな負担でした。手書き・手計算で行われ、集計に1週間以上を要し、誤記入や誤集計、集計漏れが常態化し、決算期の生産性にも悪影響を及ぼしていました。 これらの課題に対し、同社はDXを推進。在庫棚に貼られたQRコードを読み取るだけで部品を手配・計上できるアプリを導入しました。手配担当者への「確認要求自動メール」送信機能も構築され、発注ミスや重複を激減。棚卸業務もアプリ化され、わずか半日で完了するようになりました。写真を見ながら作業できるため、商品知識がないパート社員でも正確に対応可能となり、全社員で棚卸作業に参加できる体制が整いました。結果として、在庫数・金額の正確性が向上し、過剰在庫の削減にも成功しました。 2. 社会課題解決のDXで社員の働きがい向上! 同社は、社員の働きがい向上にもDXを積極的に活用しました。以前は、労働者の権利である有給休暇の取得が難しく、紙の申請書を社長(前社長)に直接提出する形式であったため、社員が「申請しづらい」と感じる雰囲気がありました。また、有給申請後の予定表や勤怠管理システムへの反映は手入力で行われており、従業員が増えるほど労務管理者の手間が増大し、従業員満足度やモチベーションの低下につながっていました。 そこで、同社は有給申請のアプリ化を実施。社員はアプリ上で希望日と理由を設定して申請でき、Teams上で承認プロセスが完結し、その状態が可視化されます。さらに、Power Automate®と連携することで、Outlookの共有予定表に自動で反映される仕組みを構築しました。 このDXにより、社員は上司の顔色をうかがうことなく有給申請できるようになり、有給取得率が抜本的に向上しました。申請・承認作業がクラウド化されたことで、いつでもどこでも承認・却下が可能になり、労務管理の手間も大幅に削減されました。結果、従業員満足度が向上し、QOL(生活の質)の向上やモチベーションアップという好循環を生み出しました。この仕組みは休日出勤申請にも横展開されています。 3. 経営のDXで「データドリブン経営」を実現! 経営の根幹を支える経営指標の作成においても、同社は大きな課題を抱えていました。以前は、売上データや仕入データなどの経営指標のグラフ作成に過剰な時間を費やし、「グラフづくり」が「目的化」してしまうという問題がありました。原価が変更されるたびにCSV出力し、Excelグラフを更新するといった煩雑な手作業が、迅速な経営判断を妨げていたのです。 同社はこの課題を解決するため、基幹システムからのデータ取得にRPAを導入して自動化し、さらにクラウドデータベースをBIレポートに直接連携させることで、リアルタイムな経営データの可視化を実現しました。 この取り組みにより、同社は「データドリブン経営」を実践できるようになりました。BIレポートについて、一度ひな形を作成すれば、決まった時刻に最新データが自動配信される仕組みを確立。これにより、売上アップ・粗利アップ・利益アップ・コストダウンといった具体的な成果に向けて“即行動”できる体制が整ったのです。 4.さいごに 三共電機株式会社様の事例は、DXが単なる業務効率化に留まらず、社員の年収アップ、雇用創出、残業時間削減、売上高約1.5倍、間接業務9割削減といった多岐にわたる経営指標を改善し、企業の持続的な成長を可能にすることを示しています。特に、DXの実現を通じて、一般社員の平均年収は450万円あまり、管理職は820万円にまでアップしたとのことです。 本事例の詳細について、8月22日(金)14:30~17:30に開催予定の 船井総研スマートファクトリー経営部会(@船井総研グループ東京本社)にて、 三共電機株式会社 代表取締役 三橋 進様よりご講演をいただきます。 本事例の詳細に関するご講演に加えて、当日限定で三橋様による「経営指標のリアルタイム見える化」の実演もを予定しています。 スマートファクトリー経営部会のお試し参加にご興味のある方は、 「今すぐ」以下のURLからお申し込みください。 https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/ 《無料お試しご参加条件》 ・本研究会に過去ご参加された経験のない企業様 ・経営者様、経営幹部の皆様 ※ご参加は1回限りです。当日のプログラム全体終了直後に、本研究会へご入会するか否かのご判断をいただきます。事業の経営判断ができる方がご参加ください。     8月22日(金)14:30~17:30 ものづくり経営研究会スマートファクトリー経営部会 お試し参加ご案内 https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/ いつもお世話になっております。 今回は8月22日(金)14:30~17:30に開催予定の 船井総研スマートファクトリー経営部会でご講演いただく 三共電機株式会社様のDX成功事例をご紹介します。 従業員数58名。愛知県稲沢市に本社を構え、制御盤の設計・製造などを手掛ける同社では、DXに関する取り組みを通じて、単なる業務効率化に留まらず、社員の年収アップ、雇用創出、残業時間削減、売上高約1.5倍、間接業務9割削減といった多岐にわたる経営指標の改善に成功されました。特に、DXの実現を通じて、一般社員の平均年収は450万円あまり、管理職は820万円にまでアップしたとのことです。 地方の中小企業でありながら、どのようにして社員の年収アップ、生産性向上、 そして「昭和の工場」からの大改革を実現したのか、その全貌を3つのパートに分けてお伝えします。 1. 日常業務のDXで生産性の飛躍的な向上を実現! 三共電機株式会社様は、かつて「ありとあらゆる作業が手書き、Excel・メモ帳管理」というアナログな業務環境を抱えていました。特に、制御盤製作に不可欠な約2,000種類もの在庫部品の手配業務は、必要な時に都度手書きで依頼し、型式や数量の書き間違い、二重手配、過剰手配といった問題が頻発していました。また、在庫管理の責任者が「仕事ができる人」になりがちで、そのためにその人の生産性が落ちるという課題もありました。 年に2回行われる棚卸業務も大きな負担でした。手書き・手計算で行われ、集計に1週間以上を要し、誤記入や誤集計、集計漏れが常態化し、決算期の生産性にも悪影響を及ぼしていました。 これらの課題に対し、同社はDXを推進。在庫棚に貼られたQRコードを読み取るだけで部品を手配・計上できるアプリを導入しました。手配担当者への「確認要求自動メール」送信機能も構築され、発注ミスや重複を激減。棚卸業務もアプリ化され、わずか半日で完了するようになりました。写真を見ながら作業できるため、商品知識がないパート社員でも正確に対応可能となり、全社員で棚卸作業に参加できる体制が整いました。結果として、在庫数・金額の正確性が向上し、過剰在庫の削減にも成功しました。 2. 社会課題解決のDXで社員の働きがい向上! 同社は、社員の働きがい向上にもDXを積極的に活用しました。以前は、労働者の権利である有給休暇の取得が難しく、紙の申請書を社長(前社長)に直接提出する形式であったため、社員が「申請しづらい」と感じる雰囲気がありました。また、有給申請後の予定表や勤怠管理システムへの反映は手入力で行われており、従業員が増えるほど労務管理者の手間が増大し、従業員満足度やモチベーションの低下につながっていました。 そこで、同社は有給申請のアプリ化を実施。社員はアプリ上で希望日と理由を設定して申請でき、Teams上で承認プロセスが完結し、その状態が可視化されます。さらに、Power Automate®と連携することで、Outlookの共有予定表に自動で反映される仕組みを構築しました。 このDXにより、社員は上司の顔色をうかがうことなく有給申請できるようになり、有給取得率が抜本的に向上しました。申請・承認作業がクラウド化されたことで、いつでもどこでも承認・却下が可能になり、労務管理の手間も大幅に削減されました。結果、従業員満足度が向上し、QOL(生活の質)の向上やモチベーションアップという好循環を生み出しました。この仕組みは休日出勤申請にも横展開されています。 3. 経営のDXで「データドリブン経営」を実現! 経営の根幹を支える経営指標の作成においても、同社は大きな課題を抱えていました。以前は、売上データや仕入データなどの経営指標のグラフ作成に過剰な時間を費やし、「グラフづくり」が「目的化」してしまうという問題がありました。原価が変更されるたびにCSV出力し、Excelグラフを更新するといった煩雑な手作業が、迅速な経営判断を妨げていたのです。 同社はこの課題を解決するため、基幹システムからのデータ取得にRPAを導入して自動化し、さらにクラウドデータベースをBIレポートに直接連携させることで、リアルタイムな経営データの可視化を実現しました。 この取り組みにより、同社は「データドリブン経営」を実践できるようになりました。BIレポートについて、一度ひな形を作成すれば、決まった時刻に最新データが自動配信される仕組みを確立。これにより、売上アップ・粗利アップ・利益アップ・コストダウンといった具体的な成果に向けて“即行動”できる体制が整ったのです。 4.さいごに 三共電機株式会社様の事例は、DXが単なる業務効率化に留まらず、社員の年収アップ、雇用創出、残業時間削減、売上高約1.5倍、間接業務9割削減といった多岐にわたる経営指標を改善し、企業の持続的な成長を可能にすることを示しています。特に、DXの実現を通じて、一般社員の平均年収は450万円あまり、管理職は820万円にまでアップしたとのことです。 本事例の詳細について、8月22日(金)14:30~17:30に開催予定の 船井総研スマートファクトリー経営部会(@船井総研グループ東京本社)にて、 三共電機株式会社 代表取締役 三橋 進様よりご講演をいただきます。 本事例の詳細に関するご講演に加えて、当日限定で三橋様による「経営指標のリアルタイム見える化」の実演もを予定しています。 スマートファクトリー経営部会のお試し参加にご興味のある方は、 「今すぐ」以下のURLからお申し込みください。 https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/ 《無料お試しご参加条件》 ・本研究会に過去ご参加された経験のない企業様 ・経営者様、経営幹部の皆様 ※ご参加は1回限りです。当日のプログラム全体終了直後に、本研究会へご入会するか否かのご判断をいただきます。事業の経営判断ができる方がご参加ください。     8月22日(金)14:30~17:30 ものづくり経営研究会スマートファクトリー経営部会 お試し参加ご案内 https://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/

ロボット導入で失敗しないための「正しい手順」- 計画策定から定着まで

2025.07.02

なぜ自動化は失敗するのか?投資を利益に変える、体系化されたプロジェクトの進め方を、プロのコンサルタントが徹底解説します。 このコラムをお勧めしたい経営者・幹部社員のイメージ ● 人手不足や生産性向上に課題を抱え、自動化・ロボット活用を本気で検討している経営者様 ● ロボット導入に関心はあるが、具体的な進め方が分からず一歩を踏み出せないでいる経営者・幹部社員様 ● 投資対効果を明確にし、社内(特に経営層)を説得できる具体的な計画を立てたいと考えている生産技術責任者様 ● パートナーとなるSIer(システムインテグレータ)の選定方法に悩んでいる購買・企画担当者様 このコラムの内容の要約 本コラムは、製造現場へのロボット導入や自動化を成功に導くための、体系的かつ実践的なプロジェクトの進め方を解説するものです。多くの企業が陥りがちな失敗の原因を明らかにし、それを回避するための具体的な手順を提示します。感覚や思い付きに頼るのではなく、「どの工程を自動化すべきか」というテーマ選定から、投資対効果の算出、最適なパートナー(SIer)の選定、そして導入後の定着まで、一連のプロセスを論理的に進めるためのノウハウを凝縮しました。本コラムを通じて、自動化プロジェクトを成功させるための「具体的な手法」を提供します。 このコラムを読むメリットを表す文章 本コラムをお読みいただくことで、自動化・ロボット導入プロジェクトにおける意思決定の精度が飛躍的に高まります。データに基づいた対象工程の選定手法を学ぶことで、投資効果を最大化するテーマを見つけ出すことができます。また、経営層を説得するための具体的な投資対効果の算出方法や、最適なSIerを選び抜くためのRFI・RFPの活用法を知ることで、自信を持ってプロジェクトを推進できます。これまで「何から手をつければ良いか分からない」と感じていた方も、具体的なタスクレベルで全体の流れを把握できるため、失敗のリスクを大幅に低減し、自社の自動化を成功へと導くことができるようになります。   1. はじめに:なぜ多くの自動化プロジェクトは失敗に終わるのか? 人手不足の解消、生産性の向上、品質の安定化。これらは、現代の製造業が抱える共通の課題であり、その解決策として「自動化・ロボット導入」への期待は年々高まっています。しかし、その一方で「高額な投資をしたにもかかわらず、期待した効果が出なかった」「現場で使いこなせず、ロボットが“置物”になっている」といった声が後を絶たないのも事実です。   なぜ、成功する企業と失敗する企業に分かれてしまうのでしょうか。我々、株式会社船井総合研究所が数多くの現場をご支援する中で見えてきたのは、失敗の根本原因が「技術」や「資金」の問題ではなく、プロジェクトの「手順」にあるということです。例えば、目的を明確にしないまま「とりあえず自動化」を進めてしまったり、自社の課題に合わないSIer(システムインテグレータ)に「丸投げ」してしまったりするケースです。これらは、体系化された正しい手順を知らないことに起因します。   成功する企業は、例外なく、データに基づいた客観的な判断と、段階的なプロセスを踏んでいます。本コラムでは、皆様が失敗の轍を踏むことなく、投資を確実に利益に変えるための「正しい手順」を、4つのステップに分けて具体的に解説していきます。   2. ステップ1:現状分析 -「どこから始めるか」をデータで決める 自動化プロジェクトの成否は、最初の「どこを自動化の対象にするか」というテーマ選定で8割が決まると言っても過言ではありません。ここでは、感覚や思い付きではなく、客観的な「データ」に基づいて費用対効果の高いテーマを絞り込む、3つの具体的な分析手法を解説します。   手法①:製品分析 まず、どの製品の生産に最も時間がかかっているかを特定し、改善効果の大きい「重点製品」を見つけ出します。 具体的なタスクとしては、まず過去数年分の製品別生産実績データを収集します。次に、各製品の標準サイクルタイムと年間生産量を基に、「製品ごとの年間総工数」を算出します。この数値が、そのままその製品にかかっているコストの大きさを表します。年間総工数が大きい製品群をリストアップし、それらの製品に共通する工程が、自動化の主要な候補となります。   手法②:作業分析 次に、特定した重点製品の工程を対象に、どの「作業」がボトルネックかを分析します。 効果的なのは、スマートフォンの動画機能などを活用した動画撮影による分析です。対象作業を撮影し、再生しながら「部品を掴む」「機械にセットする」「ネジを締める」といった細かい「要素作業」に分解し、それぞれの時間をストップウォッチで計測します。これにより、合計時間が最も長い作業や、繰り返し頻度が極端に高い作業といった、改善効果の大きいボトルネック作業を定量的に特定できます。   手法③:マン・マシンチャート分析 人と機械が協働する工程では、両者の稼働状況を時系列で可視化するマン・マシンチャートが有効です。横軸に時間を、縦軸に「人」と「機械」を取り、それぞれの動作を「主作業」「付随作業」「手待ち」などに分類して記録します。これにより、「作業者が機械の動作完了を待っている時間(手待ち)」や「作業者が別の作業をしている間に機械が停止している時間(機械の非稼働)」といったムダが一目瞭然になります。このムダを削減するような自動化(例:機械への部品の自動供給)は、非常に高い投資対効果が期待できます。   これらの分析手法を通じて、最も投資対効果が期待できるテーマを論理的に選定し、「対象製品・対象工程 選定報告書」としてまとめることが、成功への第一歩です。   3. ステップ2:投資計画 -「儲かる自動化」を数値で示す 自動化のテーマが決定したら、次はその投資が妥当であることを、誰にでも分かる「数値」で証明する必要があります。ここでは、経営層の意思決定を後押しする、具体的な投資対効果(ROI)計画書の作成手法を解説します。 タスク①:初期投資額(I)の算出 まず、自動化に必要な初期投資の総額を算出します。ここで重要なのは、抜け漏れなくコストを洗い出すことです。 設備・システム導入費用: ロボット本体費用に加え、ロボットハンドや架台、センサー、安全柵といった周辺装置費用、そしてシステムの設計・構築・ティーチングを行うシステムインテグレーション費用を計上します。一般的に、これらはロボット本体価格のそれぞれ100%~200%程度かかることも珍しくありません。 導入関連費用: 従業員への教育・トレーニング費用や、コンサルティング費用なども忘れずに含めます。 補助金・助成金額: 活用可能な補助金があれば、投資額から差し引くマイナス項目として計上します。   タスク②:年間リターン(R)の算出 次に、自動化によって得られる年間の効果額を算出します。人件費削減だけでは、投資の価値を過小評価してしまいます。 人件費削減効果: 自動化により削減される人員数、または作業時間に残業単価などを乗じて算出します。 生産性向上による効果: サイクルタイム短縮や24時間稼働による生産量増加分に、製品1個あたりの利益(売上から変動費を引いた限界利益)を乗じて算出します。これは売上拡大に直結する、非常に重要な効果です。 品質改善による効果: 不良率の削減見込みから、年間の材料費や再加工費の削減額を算出します。   タスク③:投資回収期間の計算と計画書作成 最後に、「初期投資額 ÷ 年間リターン」で投資回収期間を算出します。これらの計算結果と、算出の根拠、そして安全性向上などの定性的なメリットを「投資計画書」としてA4一枚程度にまとめることで、経営層も短時間で内容を把握でき、スムーズな意思決定を後押しします。   4. ステップ3:パートナー選定 - RFIとRFPで最適なSIerを見抜く 自動化プロジェクトは自社だけでは完結せず、専門家であるSIer(システムインテグレータ)との協業が不可欠です。ここでは、2段階のコミュニケーション手法「RFI」と「RFP」を活用し、最適なパートナーを選び抜く具体的な手順を解説します。   タスク①:RFIによる情報収集と一次選定 まず、ステップ1で定めたテーマと大まかな構想を基に、「RFI(情報提供依頼)」を作成します。これは、SIerの技術や実績、概算費用感といった「情報」を広く集めるためのものです。10社程度の候補にRFIを送付し、その回答内容から、自社の課題への理解度が高く、実績も豊富なSIerを2~3社に絞り込みます(ショートリスト化)。この段階では、SIerからの多様な技術的アイデアを収集し、自社の構想を具体化させることも重要な目的です。   タスク②:要求仕様書の作成 次に、RFIで得た情報も参考にしながら、自動化システムに「何を(What)」求めるかを定義した、自社の公式な文書である「要求仕様書」を作成します。ここには、目標とするサイクルタイムや精度、満たすべき安全基準などを、具体的かつ測定可能な形で記述します。この要求仕様書の質が、プロジェクト全体の質を左右します。   タスク③:RFPによる提案依頼と最終選定 作成した「要求仕様書」を中核として、より詳細な「RFP(提案依頼書)」を作成し、ショートリストの2~3社に提示します。RFPに基づき、各社から正式な「提案書」と「確定見積書」を取得します。 提出された提案は、事前に作成した「SIer評価シート」を用いて評価します。「初期投資コスト」といった定量項目だけでなく、「技術提案の質」「サポート体制」といった定性項目も、重要度に応じた重み付けを行い、総合的に点数化することで、客観的な比較が可能になります。   タスク④:技術検証(PoC) 最終候補となったSIerとは、契約前に「技術検証(PoC)」を実施することを推奨します。実際の製品(ワーク)を使い、「提案されたロボットハンドで本当に掴めるのか」といった技術的な懸念点を物理的にテストすることで、導入後のリスクを最小限に抑えることができます。   5. ステップ4:導入と定着 - ロボットを「置物」にしないために パートナーとなるSIerと契約を締結したら、いよいよ実行フェーズです。導入したロボットが現場で有効活用されず、「高価な置物」になってしまう失敗を避けるため、導入後の「定着」までを見据えた具体的なマネジメント手法を解説します。   タスク①:要件定義とプロジェクト計画の合意 契約後、まずSIerが作成する「要件定義書」(自社の要求仕様を、"どうやって"実現するかの詳細設計書)を、現場の担当者も交えて徹底的にレビューし、認識の齟齬がないか合意します。同時に、SIerが作成する詳細なWBS(作業分解構成図)を確認し、プロジェクト全体のスケジュールとマイルストーンを共有します。   タスク②:徹底した品質管理と進捗管理 プロジェクトの実行中は、定期的な進捗会議を通じて課題やリスクを管理します。そしてシステムが完成したら、2段階のテストで品質を担保します。 出荷前立会評価(FAT): SIerの工場で、システムが要求仕様通りに動作するかを顧客が立ち会って確認します。 現地受入評価(SAT): 自社工場に設置後、実際の生産環境で最終テストを行います。 ここで、要求した性能や安全性が確実に担保されているかを厳しくチェックし、すべての検収条件をクリアして初めて検収完了とします。   タスク③:人材育成と運用の定着 ロボットを真の戦力とするためには、「人」の育成が不可欠です。 オペレーター教育: SIerによる操作教育を実施し、複数の従業員が操作できるよう作業手順書を作成・整備します。 保全担当者教育: 日常点検や軽微なトラブルに対応できる「保全のキーマン」を育成します。これにより、ダウンタイムの短縮と長期的なコスト削減に繋がります。 これらのタスクを確実に実行することで、ロボットは持続的に利益を生み出す、企業の重要な資産となるのです。     このコラムを読んだ後に取るべき行動 本コラムを通じて、自動化・ロボット導入を成功させるための「正しい手順」をご理解いただけたことと存じます。 しかし、実際にこの手順を自社に当てはめて推進しようとすると、「どの分析手法が自社に最適か」「投資効果の算出に必要な数値の根拠が分からない」「RFIやRFPに何を具体的に書けば良いのか」といった、新たな疑問や課題に直面するかもしれません。 そこで、株式会社船井総合研究所では、本コラムで解説した手順を、専門コンサルタントがお客様のためだけに実践する、第一歩として最適なサービスをご用意しております。 それが「SmartFactory化構想策定簡易診断」です。 経験豊富なコンサルタントが貴社工場を訪問し、現場を拝見し、関係者の皆様にヒアリングを行います。その上で、 貴社にとって最も費用対効果の高い、最初の自動化テーマ あるべき姿を示す、具体的なコンセプト図 実現に向けた簡易ロードマップと、概算の投資対効果 を、最短2週間で「診断レポート」としてご提示いたします。 まずは、専門家と共に自社の可能性を客観的に把握することから始めてみませんか。 ご興味をお持ちいただけましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください。詳細なサービス内容をご説明させていただきます。 [お問い合わせはこちら] https://formslp.funaisoken.co.jp/form01/lp/post/inquiry-S045.html?siteno=S045&_gl=1*n9ocn6*_gcl_au*MTQxOTg2OTc5LjE3NDg0MDQ4OTA.*_ga*MTQwMzYyNzIxNC4xNzAxMTQ4MzQz*_ga_D8HCS71KCM*czE3NTEyNjM4NjIkbzQ0MCRnMCR0MTc1MTI2Mzg2MiRqNjAkbDAkaDA. なぜ自動化は失敗するのか?投資を利益に変える、体系化されたプロジェクトの進め方を、プロのコンサルタントが徹底解説します。 このコラムをお勧めしたい経営者・幹部社員のイメージ ● 人手不足や生産性向上に課題を抱え、自動化・ロボット活用を本気で検討している経営者様 ● ロボット導入に関心はあるが、具体的な進め方が分からず一歩を踏み出せないでいる経営者・幹部社員様 ● 投資対効果を明確にし、社内(特に経営層)を説得できる具体的な計画を立てたいと考えている生産技術責任者様 ● パートナーとなるSIer(システムインテグレータ)の選定方法に悩んでいる購買・企画担当者様 このコラムの内容の要約 本コラムは、製造現場へのロボット導入や自動化を成功に導くための、体系的かつ実践的なプロジェクトの進め方を解説するものです。多くの企業が陥りがちな失敗の原因を明らかにし、それを回避するための具体的な手順を提示します。感覚や思い付きに頼るのではなく、「どの工程を自動化すべきか」というテーマ選定から、投資対効果の算出、最適なパートナー(SIer)の選定、そして導入後の定着まで、一連のプロセスを論理的に進めるためのノウハウを凝縮しました。本コラムを通じて、自動化プロジェクトを成功させるための「具体的な手法」を提供します。 このコラムを読むメリットを表す文章 本コラムをお読みいただくことで、自動化・ロボット導入プロジェクトにおける意思決定の精度が飛躍的に高まります。データに基づいた対象工程の選定手法を学ぶことで、投資効果を最大化するテーマを見つけ出すことができます。また、経営層を説得するための具体的な投資対効果の算出方法や、最適なSIerを選び抜くためのRFI・RFPの活用法を知ることで、自信を持ってプロジェクトを推進できます。これまで「何から手をつければ良いか分からない」と感じていた方も、具体的なタスクレベルで全体の流れを把握できるため、失敗のリスクを大幅に低減し、自社の自動化を成功へと導くことができるようになります。   1. はじめに:なぜ多くの自動化プロジェクトは失敗に終わるのか? 人手不足の解消、生産性の向上、品質の安定化。これらは、現代の製造業が抱える共通の課題であり、その解決策として「自動化・ロボット導入」への期待は年々高まっています。しかし、その一方で「高額な投資をしたにもかかわらず、期待した効果が出なかった」「現場で使いこなせず、ロボットが“置物”になっている」といった声が後を絶たないのも事実です。   なぜ、成功する企業と失敗する企業に分かれてしまうのでしょうか。我々、株式会社船井総合研究所が数多くの現場をご支援する中で見えてきたのは、失敗の根本原因が「技術」や「資金」の問題ではなく、プロジェクトの「手順」にあるということです。例えば、目的を明確にしないまま「とりあえず自動化」を進めてしまったり、自社の課題に合わないSIer(システムインテグレータ)に「丸投げ」してしまったりするケースです。これらは、体系化された正しい手順を知らないことに起因します。   成功する企業は、例外なく、データに基づいた客観的な判断と、段階的なプロセスを踏んでいます。本コラムでは、皆様が失敗の轍を踏むことなく、投資を確実に利益に変えるための「正しい手順」を、4つのステップに分けて具体的に解説していきます。   2. ステップ1:現状分析 -「どこから始めるか」をデータで決める 自動化プロジェクトの成否は、最初の「どこを自動化の対象にするか」というテーマ選定で8割が決まると言っても過言ではありません。ここでは、感覚や思い付きではなく、客観的な「データ」に基づいて費用対効果の高いテーマを絞り込む、3つの具体的な分析手法を解説します。   手法①:製品分析 まず、どの製品の生産に最も時間がかかっているかを特定し、改善効果の大きい「重点製品」を見つけ出します。 具体的なタスクとしては、まず過去数年分の製品別生産実績データを収集します。次に、各製品の標準サイクルタイムと年間生産量を基に、「製品ごとの年間総工数」を算出します。この数値が、そのままその製品にかかっているコストの大きさを表します。年間総工数が大きい製品群をリストアップし、それらの製品に共通する工程が、自動化の主要な候補となります。   手法②:作業分析 次に、特定した重点製品の工程を対象に、どの「作業」がボトルネックかを分析します。 効果的なのは、スマートフォンの動画機能などを活用した動画撮影による分析です。対象作業を撮影し、再生しながら「部品を掴む」「機械にセットする」「ネジを締める」といった細かい「要素作業」に分解し、それぞれの時間をストップウォッチで計測します。これにより、合計時間が最も長い作業や、繰り返し頻度が極端に高い作業といった、改善効果の大きいボトルネック作業を定量的に特定できます。   手法③:マン・マシンチャート分析 人と機械が協働する工程では、両者の稼働状況を時系列で可視化するマン・マシンチャートが有効です。横軸に時間を、縦軸に「人」と「機械」を取り、それぞれの動作を「主作業」「付随作業」「手待ち」などに分類して記録します。これにより、「作業者が機械の動作完了を待っている時間(手待ち)」や「作業者が別の作業をしている間に機械が停止している時間(機械の非稼働)」といったムダが一目瞭然になります。このムダを削減するような自動化(例:機械への部品の自動供給)は、非常に高い投資対効果が期待できます。   これらの分析手法を通じて、最も投資対効果が期待できるテーマを論理的に選定し、「対象製品・対象工程 選定報告書」としてまとめることが、成功への第一歩です。   3. ステップ2:投資計画 -「儲かる自動化」を数値で示す 自動化のテーマが決定したら、次はその投資が妥当であることを、誰にでも分かる「数値」で証明する必要があります。ここでは、経営層の意思決定を後押しする、具体的な投資対効果(ROI)計画書の作成手法を解説します。 タスク①:初期投資額(I)の算出 まず、自動化に必要な初期投資の総額を算出します。ここで重要なのは、抜け漏れなくコストを洗い出すことです。 設備・システム導入費用: ロボット本体費用に加え、ロボットハンドや架台、センサー、安全柵といった周辺装置費用、そしてシステムの設計・構築・ティーチングを行うシステムインテグレーション費用を計上します。一般的に、これらはロボット本体価格のそれぞれ100%~200%程度かかることも珍しくありません。 導入関連費用: 従業員への教育・トレーニング費用や、コンサルティング費用なども忘れずに含めます。 補助金・助成金額: 活用可能な補助金があれば、投資額から差し引くマイナス項目として計上します。   タスク②:年間リターン(R)の算出 次に、自動化によって得られる年間の効果額を算出します。人件費削減だけでは、投資の価値を過小評価してしまいます。 人件費削減効果: 自動化により削減される人員数、または作業時間に残業単価などを乗じて算出します。 生産性向上による効果: サイクルタイム短縮や24時間稼働による生産量増加分に、製品1個あたりの利益(売上から変動費を引いた限界利益)を乗じて算出します。これは売上拡大に直結する、非常に重要な効果です。 品質改善による効果: 不良率の削減見込みから、年間の材料費や再加工費の削減額を算出します。   タスク③:投資回収期間の計算と計画書作成 最後に、「初期投資額 ÷ 年間リターン」で投資回収期間を算出します。これらの計算結果と、算出の根拠、そして安全性向上などの定性的なメリットを「投資計画書」としてA4一枚程度にまとめることで、経営層も短時間で内容を把握でき、スムーズな意思決定を後押しします。   4. ステップ3:パートナー選定 - RFIとRFPで最適なSIerを見抜く 自動化プロジェクトは自社だけでは完結せず、専門家であるSIer(システムインテグレータ)との協業が不可欠です。ここでは、2段階のコミュニケーション手法「RFI」と「RFP」を活用し、最適なパートナーを選び抜く具体的な手順を解説します。   タスク①:RFIによる情報収集と一次選定 まず、ステップ1で定めたテーマと大まかな構想を基に、「RFI(情報提供依頼)」を作成します。これは、SIerの技術や実績、概算費用感といった「情報」を広く集めるためのものです。10社程度の候補にRFIを送付し、その回答内容から、自社の課題への理解度が高く、実績も豊富なSIerを2~3社に絞り込みます(ショートリスト化)。この段階では、SIerからの多様な技術的アイデアを収集し、自社の構想を具体化させることも重要な目的です。   タスク②:要求仕様書の作成 次に、RFIで得た情報も参考にしながら、自動化システムに「何を(What)」求めるかを定義した、自社の公式な文書である「要求仕様書」を作成します。ここには、目標とするサイクルタイムや精度、満たすべき安全基準などを、具体的かつ測定可能な形で記述します。この要求仕様書の質が、プロジェクト全体の質を左右します。   タスク③:RFPによる提案依頼と最終選定 作成した「要求仕様書」を中核として、より詳細な「RFP(提案依頼書)」を作成し、ショートリストの2~3社に提示します。RFPに基づき、各社から正式な「提案書」と「確定見積書」を取得します。 提出された提案は、事前に作成した「SIer評価シート」を用いて評価します。「初期投資コスト」といった定量項目だけでなく、「技術提案の質」「サポート体制」といった定性項目も、重要度に応じた重み付けを行い、総合的に点数化することで、客観的な比較が可能になります。   タスク④:技術検証(PoC) 最終候補となったSIerとは、契約前に「技術検証(PoC)」を実施することを推奨します。実際の製品(ワーク)を使い、「提案されたロボットハンドで本当に掴めるのか」といった技術的な懸念点を物理的にテストすることで、導入後のリスクを最小限に抑えることができます。   5. ステップ4:導入と定着 - ロボットを「置物」にしないために パートナーとなるSIerと契約を締結したら、いよいよ実行フェーズです。導入したロボットが現場で有効活用されず、「高価な置物」になってしまう失敗を避けるため、導入後の「定着」までを見据えた具体的なマネジメント手法を解説します。   タスク①:要件定義とプロジェクト計画の合意 契約後、まずSIerが作成する「要件定義書」(自社の要求仕様を、"どうやって"実現するかの詳細設計書)を、現場の担当者も交えて徹底的にレビューし、認識の齟齬がないか合意します。同時に、SIerが作成する詳細なWBS(作業分解構成図)を確認し、プロジェクト全体のスケジュールとマイルストーンを共有します。   タスク②:徹底した品質管理と進捗管理 プロジェクトの実行中は、定期的な進捗会議を通じて課題やリスクを管理します。そしてシステムが完成したら、2段階のテストで品質を担保します。 出荷前立会評価(FAT): SIerの工場で、システムが要求仕様通りに動作するかを顧客が立ち会って確認します。 現地受入評価(SAT): 自社工場に設置後、実際の生産環境で最終テストを行います。 ここで、要求した性能や安全性が確実に担保されているかを厳しくチェックし、すべての検収条件をクリアして初めて検収完了とします。   タスク③:人材育成と運用の定着 ロボットを真の戦力とするためには、「人」の育成が不可欠です。 オペレーター教育: SIerによる操作教育を実施し、複数の従業員が操作できるよう作業手順書を作成・整備します。 保全担当者教育: 日常点検や軽微なトラブルに対応できる「保全のキーマン」を育成します。これにより、ダウンタイムの短縮と長期的なコスト削減に繋がります。 これらのタスクを確実に実行することで、ロボットは持続的に利益を生み出す、企業の重要な資産となるのです。     このコラムを読んだ後に取るべき行動 本コラムを通じて、自動化・ロボット導入を成功させるための「正しい手順」をご理解いただけたことと存じます。 しかし、実際にこの手順を自社に当てはめて推進しようとすると、「どの分析手法が自社に最適か」「投資効果の算出に必要な数値の根拠が分からない」「RFIやRFPに何を具体的に書けば良いのか」といった、新たな疑問や課題に直面するかもしれません。 そこで、株式会社船井総合研究所では、本コラムで解説した手順を、専門コンサルタントがお客様のためだけに実践する、第一歩として最適なサービスをご用意しております。 それが「SmartFactory化構想策定簡易診断」です。 経験豊富なコンサルタントが貴社工場を訪問し、現場を拝見し、関係者の皆様にヒアリングを行います。その上で、 貴社にとって最も費用対効果の高い、最初の自動化テーマ あるべき姿を示す、具体的なコンセプト図 実現に向けた簡易ロードマップと、概算の投資対効果 を、最短2週間で「診断レポート」としてご提示いたします。 まずは、専門家と共に自社の可能性を客観的に把握することから始めてみませんか。 ご興味をお持ちいただけましたら、下記よりお気軽にお問い合わせください。詳細なサービス内容をご説明させていただきます。 [お問い合わせはこちら] https://formslp.funaisoken.co.jp/form01/lp/post/inquiry-S045.html?siteno=S045&_gl=1*n9ocn6*_gcl_au*MTQxOTg2OTc5LjE3NDg0MDQ4OTA.*_ga*MTQwMzYyNzIxNC4xNzAxMTQ4MzQz*_ga_D8HCS71KCM*czE3NTEyNjM4NjIkbzQ0MCRnMCR0MTc1MTI2Mzg2MiRqNjAkbDAkaDA.
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