記事公開日:2023.05.12
最終更新日:2023.05.15
DXとデータドリブン
いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。
1.DX進展と売上高の関係について
下のグラフは2021年の経済産業省が出した「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトによる調整研究」です。企業におけるデジタル・トランスフォーメーションの取組状況に応じて、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進展度を1から3まで定義し、進展度に応じて、企業の売上高にどのような影響があるかを評価しています。
日本・米国・ドイツいずれの国においても、DX進展度の高い企業ほど、2020年度は2019年度に比べて売上高が増加したと回答した企業の比率が高い結果となりました。デジタル・トランスフォーメーションの取組と売上高との因果関係はこのデータだけでは読み取れませんが、相関関係は有していることは明らかとなりました。
DXとは、「ビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指します。多くの企業がデジタル技術やデジタルデータを活用して、従来型のいわゆる3K(勘・経験・度胸)体制から脱却しようとしています。
ではなぜ、こぞって従来型から脱却しようとしているのでしょうか?
(出典)総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」
2.DXの行き着くところはデータドリブン
なぜ、従来型から脱却しようとしているのか?それは、世界的な市場の急激な変化や消費者の価値観や行動の多様化・複雑化により、経験や勘に頼った判断が通用しにくくなっているためです。
ダイナミクスケイパビリティという言葉がありますが、ダイナミクスケイパビリティとは、環境の変化に対応するために、企業が自己変革していく能力であり、「企業変革力」とも呼ばれています。 企業におけるダイナミックケイパビリティは、外部環境の変化に応じて自社が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)を適切に組み合わせながら、自社の競争優位を確保する手法を指しています。これは昔からある言葉ですが、コロナ以降再度注目されている考え方です。
外部環境の変化に応じて自己変革というのはなかなか難しいことです。このあたりの話をすると「変化を予測する」という考えに行き着く方もいますが、将来予測というのは、なかなか困難な時代です。予測と言えばAIですが、AIで予測できることもありますが、基本的にAIで出来る予測は、過去起こった事柄かつ大量にデータサンプルがあるときに限られます。ゆえに、これまで起こった事のないこと、サンプルが少ないものはAIでも予測することはできないのです。今後、世界がどうなっていくかはどんなテクノロジーを使っても誰もわからないのです。
とは言え、我々は未知の将来に対して準備をしなければなりません。我々に、いま何ができるのでしょうか?
それは「データ集めて、それを積極的に活用していき、自社が置かれた状態・環境を正確に・客観的に把握し、必要あれば変革していく」ことです。
市場の動きや行動をデータ化し、分析や考察を通じて、環境の変化に対応していくことが出来ます。 積極的にデータを活用して変わっていくこと、つまり、「データドリブン」によって市場の変化や顧客ニーズをより早く察知できる環境をつくることが重要になってきます。 そして、正しく変革をしていくことによって、自社の競争優位性を確保できると考えられます。
3.データドリブンの壁
データドリブンはデータを蓄積すればすぐ出来ることではありません。データを集める段階から以下のような様々な壁が存在します。
1.データマネジメント
データがサイロ化によって部門に閉じてしまい、情報収集ができず、よいインサイトが得られない状況
2.組織文化と人財
データを価値ある資産ととらえて全社で共有するマインドが醸成できておらず、人財に対して実践的な教育ができていないためにデータを活用できなくなっている状況
3.技術
既存システムを改修してデータ活用に取り組むが費用だけかさみ投資対効果が生み出しにくい状況
4.組織間連携
データ活用の目的が組織を超えて伝わらず要約されてしまい重要な細部や本質が抜け落ちている状況
上記の壁を一つ一つ解決していくことで、少しずつ「データドリブン経営」に行き着きます。これらは1年程度で辿り着くものではなく、数年かけて、壁を乗り越えながら到達するものです。10年後自社がどうありたいかを考えた時、長期的な目線でこれらのことを検討していくことがこれからは必要になっていくでしょう。
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