DX CONSULTING COLUMN 工場DXコンサルティングコラム

専門コンサルタントが執筆するAI・ロボットコラム
最新のAI・ロボット技術に精通したコンサルタントによる定期コラム

ERP導入の目的やメリットは?デメリットや導入事例、導入の流れについても解説!

2024.07.22

「基幹システム刷新!」、「ERP導入!」というキーワードは聞きなれた言葉ではありますが、実際にERPとは?基幹システムとの違いは?などの疑問にお答えしたく、そこで今回はERPと基幹システムの違いについてわかりやすく解説いたします。 1.ERPとは? ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の資源を一元管理し、業務プロセスを最適化するための基幹業務の統合システムを指します。ERPは、財務、人事、製造、販売、在庫管理など、企業のさまざまな部門のデータを統合し、リアルタイムで情報を共有することができるシステムです。 これにより、経営判断の迅速化や業務効率の向上が期待されます。 2.ERPの導入目的 ERPの導入目的は、企業の業務プロセスを統合し、効率化することにあります。歴史を紐解くと、基幹業務に応じてシステムが別々に入れられてきたという経緯があります。これでは、各業務でデータベースは区切られてしまい、様々なデータを連動させるにも時間がかかってしまう上に、都度別のシステムにアクセスや同じデータの転記などといった無駄な業務も生じてしまいます。こういった問題を解決するためにERPは導入されるケースが多いです。 具体的には、データの一元管理による情報の可視化、業務の標準化、保守コストの低減、迅速な意思決定の支援などの効果を狙っての導入が挙げられます。 3.ERP導入の3つのメリット 1.情報の一元管理 特に、ERPの大きなメリットは、企業内の情報を一元管理しているということにあります。 これは、企業内のあらゆる情報を瞬時に一箇所に集められることを意味し、したがって経営分析や経営戦略の構築、経営の見える化という点でも大きなパワーを秘めているといえるのです。 2.業務効率化 また、システム同士のスムーズな連携によって業務効率が向上することもERPのメリットの一つです。 ERPでは、会計や販売、生産といった業務をまとめて管理できます。 ERPを導入すれば、それぞれの情報を個別に管理する煩雑さから解放され、効率よく業務を進められるようになるでしょう。 3.データドリブンな意思決定 次に、経営上の意思決定を迅速に行えることもERPの強みです。 情報の一元管理によって、経営層は企業内の状況を素早く正確に把握できるようになります。 その結果、経営層は会社にとって最適な意思決定を迅速に下すことが可能となるのです。 ERPには、成功企業のベストプラクティスを有効活用できるというメリットもあります。 ベストプラクティスとは、各業種において蓄積されたビジネスプロセスのノウハウのことです。 ERPパッケージが所有しているベストプラクティスを自社においても活用できるため、事業の効率的な成長が図れるでしょう。 4.ERP導入の3つのデメリット 1.選定の難しさ ERPのデメリットは、種類が多岐にわたるため、自社に合ったシステムを選ぶのが難しいことです。 目についたシステムを気軽に導入するのではなく、事前に検討を重ねることが重要です。 2.活用のハードルの高さ また、ERPを導入する前には社内教育をしっかりと行う必要があります。 ERPは業務効率を改善してくれるツールですが、社員が正しく使いこなさなければ意味がありません。 ERPを導入する前に、ERPが何の役に立つのか、どのように使うのかといったことを教育する必要がありますが、多機能なため教育に時間がかかるケースが多く、導入前にしっかりとてを打たないとメリットを出すまでに非常に時間がかかってしまいます。 3.導入コスト そして、導入にある程度のコストがかかることもERPのデメリットの一つです。 最近でこそ様々なパッケージ製品が出てきていますが、現在の業務に合わせてERPを導入するとなると、かなりの数のアドオン・カスタマイズが発生することになり、導入コストが高額になってしまう事が想定されます。 5.ERP導入事例3選 事例1.食品加工 X社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、属人的な判断をシステマチックな判断に変えることで業務を標準化すべく、ERPの導入に踏み切りました。発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が5%から2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例2.建材製造販売 Y社 Y社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 基本的に基幹システムは導入されておらず、エクセルで受注や製造の管理を行ってきました。 支店拡大に伴い、ERPを導入することに決めました。いままで出来ていなかったデータの一元管理を実現し、KPIや閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な業務を大幅に削減できました。 事例3.機械部品加工 Z社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。そこで、ERPを導入することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を30%削減しつつ、欠品率を5%から1%に改善することができました。 6.ERP導入の流れ ERPを実際に導入する前に、ERP導入の基本的な流れを押さえておきましょう。 ERPを導入する流れは、少しざっくりとした説明になりますが、以下の通りだと認識いただいて問題ありません。 1)現状分析・課題抽出 現行の業務プロセスを分析し、課題を洗い出します。 2)要求明確化 ERPシステムに求める要件を明確にします。 3)ベンダー選定 要件に合ったERPベンダー、ツールを選定します 4)要件定義 Fit&Gapを行い、本格的に必要な機能とアドオン・カスタマイズ内容を固め、正確な見積もりを算出してもらいます 5)システム設計・開発 業務プロセスに合わせたシステム設計・開発を行います。 6.)各種テスト システムの動作確認を行い、不具合を修正します。 7.)教育・訓練 従業員に対するシステムの操作・管理の教育訓練を行います。 8.)運用開始 システムの運用を開始します。 7.ERP導入に失敗しないためにおこなうべき4つのこと ERP導入はツールやベンダーを選択することも大切ですが、特に大切なポイントというのはその前段階にあります。 ここでは前段階の重要なポイントを4つご紹介します。 1つ目のプロセスは、ERPを導入する目的を明確にすることです。 ERPを導入することでどのような課題を解決したいのか、最初に明らかにしておきましょう。 それによって必要な機能が把握でき、導入するERPパッケージが選びやすくなります。 また、社員にERPの導入目的を説明するうえでも役に立ちます。 2つ目のプロセスは、プロジェクトの責任者を選定し、各部署の担当者を巻き込むことです。 ERPに関するプロジェクトは社内の業務全般に関わるため、広い範囲をカバーできるように必ず2人以上の推進者を選ぶようにしてください。 推進者に適している人材としては、部署間をまたいで発言できる経営層に近い役職者が挙げられます。 推進者の次に、各部署でプロジェクトの責任を負う担当者を選び、打ち合わせを進めていきます。 3つ目のプロセスは、ERP導入に関わる業務プロセスなどについて棚卸ししておくことです。 今後ERPで管理することになる業務について、今はどのようなツールで管理しているのかを確かめておきましょう。 業務プロセスは各企業に固有のものなので、基本的には自社で棚卸しを進める必要があります。 4つ目のプロセスは、ERPでカバーできる範囲に合わせて新しい業務フローを構築することです。 棚卸しした業務内容を基に、ERPでどの範囲までをカバーするのかということを決めていきましょう。 これを準備しないと、現状の業務を焼き直すようなシステム実装となってしまうため、改善効果が薄くなってしまうため注意が必要です。 8.ERP導入に関するよくある質問 最後に、ERP導入に関するよくある質問にお答えしたいと思います。 ○ERPの導入費用はいくらですか? ERPの導入費用は、企業の規模や導入するシステムの範囲によって大きく異なります。一般的には数千万円程度が必要とされますが、クラウド型のERPシステムを利用することで、初期費用を抑えることも可能です。 ○ERP導入にはどのくらいの期間がかかりますか? 導入するERPの種類にもよって期間は大きく変わります。開発を伴わないのであれば、通常6ヶ月から1年程度、開発を伴うのであれば(事業部数にもよりますが)1年以上の期間がかかります。 企業の規模や業務プロセスの複雑さによっては、さらに長期間を要する場合も大いにありえます。 ○中小企業におけるERP導入状況は? 中小企業においても、業務効率化やコスト削減を目的にERPシステムの導入が進んでいます。特にクラウド型のERPシステムは、初期費用が低く、スケーラビリティが高いため、中小企業にとって導入しやすい選択肢となっています。 以上です。 このコラムが皆様のERP検討に少しでも役立てば幸いです。 また、弊社では様々なノウハウをもとにERPの導入・活用のご支援を行っております。ご興味のある方はぜひご相談いただければと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 ▼レポート無料ダウンロード お申し込みはこちら▼ 「基幹システム刷新!」、「ERP導入!」というキーワードは聞きなれた言葉ではありますが、実際にERPとは?基幹システムとの違いは?などの疑問にお答えしたく、そこで今回はERPと基幹システムの違いについてわかりやすく解説いたします。 1.ERPとは? ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の資源を一元管理し、業務プロセスを最適化するための基幹業務の統合システムを指します。ERPは、財務、人事、製造、販売、在庫管理など、企業のさまざまな部門のデータを統合し、リアルタイムで情報を共有することができるシステムです。 これにより、経営判断の迅速化や業務効率の向上が期待されます。 2.ERPの導入目的 ERPの導入目的は、企業の業務プロセスを統合し、効率化することにあります。歴史を紐解くと、基幹業務に応じてシステムが別々に入れられてきたという経緯があります。これでは、各業務でデータベースは区切られてしまい、様々なデータを連動させるにも時間がかかってしまう上に、都度別のシステムにアクセスや同じデータの転記などといった無駄な業務も生じてしまいます。こういった問題を解決するためにERPは導入されるケースが多いです。 具体的には、データの一元管理による情報の可視化、業務の標準化、保守コストの低減、迅速な意思決定の支援などの効果を狙っての導入が挙げられます。 3.ERP導入の3つのメリット 1.情報の一元管理 特に、ERPの大きなメリットは、企業内の情報を一元管理しているということにあります。 これは、企業内のあらゆる情報を瞬時に一箇所に集められることを意味し、したがって経営分析や経営戦略の構築、経営の見える化という点でも大きなパワーを秘めているといえるのです。 2.業務効率化 また、システム同士のスムーズな連携によって業務効率が向上することもERPのメリットの一つです。 ERPでは、会計や販売、生産といった業務をまとめて管理できます。 ERPを導入すれば、それぞれの情報を個別に管理する煩雑さから解放され、効率よく業務を進められるようになるでしょう。 3.データドリブンな意思決定 次に、経営上の意思決定を迅速に行えることもERPの強みです。 情報の一元管理によって、経営層は企業内の状況を素早く正確に把握できるようになります。 その結果、経営層は会社にとって最適な意思決定を迅速に下すことが可能となるのです。 ERPには、成功企業のベストプラクティスを有効活用できるというメリットもあります。 ベストプラクティスとは、各業種において蓄積されたビジネスプロセスのノウハウのことです。 ERPパッケージが所有しているベストプラクティスを自社においても活用できるため、事業の効率的な成長が図れるでしょう。 4.ERP導入の3つのデメリット 1.選定の難しさ ERPのデメリットは、種類が多岐にわたるため、自社に合ったシステムを選ぶのが難しいことです。 目についたシステムを気軽に導入するのではなく、事前に検討を重ねることが重要です。 2.活用のハードルの高さ また、ERPを導入する前には社内教育をしっかりと行う必要があります。 ERPは業務効率を改善してくれるツールですが、社員が正しく使いこなさなければ意味がありません。 ERPを導入する前に、ERPが何の役に立つのか、どのように使うのかといったことを教育する必要がありますが、多機能なため教育に時間がかかるケースが多く、導入前にしっかりとてを打たないとメリットを出すまでに非常に時間がかかってしまいます。 3.導入コスト そして、導入にある程度のコストがかかることもERPのデメリットの一つです。 最近でこそ様々なパッケージ製品が出てきていますが、現在の業務に合わせてERPを導入するとなると、かなりの数のアドオン・カスタマイズが発生することになり、導入コストが高額になってしまう事が想定されます。 5.ERP導入事例3選 事例1.食品加工 X社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、属人的な判断をシステマチックな判断に変えることで業務を標準化すべく、ERPの導入に踏み切りました。発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が5%から2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例2.建材製造販売 Y社 Y社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 基本的に基幹システムは導入されておらず、エクセルで受注や製造の管理を行ってきました。 支店拡大に伴い、ERPを導入することに決めました。いままで出来ていなかったデータの一元管理を実現し、KPIや閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な業務を大幅に削減できました。 事例3.機械部品加工 Z社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。そこで、ERPを導入することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を30%削減しつつ、欠品率を5%から1%に改善することができました。 6.ERP導入の流れ ERPを実際に導入する前に、ERP導入の基本的な流れを押さえておきましょう。 ERPを導入する流れは、少しざっくりとした説明になりますが、以下の通りだと認識いただいて問題ありません。 1)現状分析・課題抽出 現行の業務プロセスを分析し、課題を洗い出します。 2)要求明確化 ERPシステムに求める要件を明確にします。 3)ベンダー選定 要件に合ったERPベンダー、ツールを選定します 4)要件定義 Fit&Gapを行い、本格的に必要な機能とアドオン・カスタマイズ内容を固め、正確な見積もりを算出してもらいます 5)システム設計・開発 業務プロセスに合わせたシステム設計・開発を行います。 6.)各種テスト システムの動作確認を行い、不具合を修正します。 7.)教育・訓練 従業員に対するシステムの操作・管理の教育訓練を行います。 8.)運用開始 システムの運用を開始します。 7.ERP導入に失敗しないためにおこなうべき4つのこと ERP導入はツールやベンダーを選択することも大切ですが、特に大切なポイントというのはその前段階にあります。 ここでは前段階の重要なポイントを4つご紹介します。 1つ目のプロセスは、ERPを導入する目的を明確にすることです。 ERPを導入することでどのような課題を解決したいのか、最初に明らかにしておきましょう。 それによって必要な機能が把握でき、導入するERPパッケージが選びやすくなります。 また、社員にERPの導入目的を説明するうえでも役に立ちます。 2つ目のプロセスは、プロジェクトの責任者を選定し、各部署の担当者を巻き込むことです。 ERPに関するプロジェクトは社内の業務全般に関わるため、広い範囲をカバーできるように必ず2人以上の推進者を選ぶようにしてください。 推進者に適している人材としては、部署間をまたいで発言できる経営層に近い役職者が挙げられます。 推進者の次に、各部署でプロジェクトの責任を負う担当者を選び、打ち合わせを進めていきます。 3つ目のプロセスは、ERP導入に関わる業務プロセスなどについて棚卸ししておくことです。 今後ERPで管理することになる業務について、今はどのようなツールで管理しているのかを確かめておきましょう。 業務プロセスは各企業に固有のものなので、基本的には自社で棚卸しを進める必要があります。 4つ目のプロセスは、ERPでカバーできる範囲に合わせて新しい業務フローを構築することです。 棚卸しした業務内容を基に、ERPでどの範囲までをカバーするのかということを決めていきましょう。 これを準備しないと、現状の業務を焼き直すようなシステム実装となってしまうため、改善効果が薄くなってしまうため注意が必要です。 8.ERP導入に関するよくある質問 最後に、ERP導入に関するよくある質問にお答えしたいと思います。 ○ERPの導入費用はいくらですか? ERPの導入費用は、企業の規模や導入するシステムの範囲によって大きく異なります。一般的には数千万円程度が必要とされますが、クラウド型のERPシステムを利用することで、初期費用を抑えることも可能です。 ○ERP導入にはどのくらいの期間がかかりますか? 導入するERPの種類にもよって期間は大きく変わります。開発を伴わないのであれば、通常6ヶ月から1年程度、開発を伴うのであれば(事業部数にもよりますが)1年以上の期間がかかります。 企業の規模や業務プロセスの複雑さによっては、さらに長期間を要する場合も大いにありえます。 ○中小企業におけるERP導入状況は? 中小企業においても、業務効率化やコスト削減を目的にERPシステムの導入が進んでいます。特にクラウド型のERPシステムは、初期費用が低く、スケーラビリティが高いため、中小企業にとって導入しやすい選択肢となっています。 以上です。 このコラムが皆様のERP検討に少しでも役立てば幸いです。 また、弊社では様々なノウハウをもとにERPの導入・活用のご支援を行っております。ご興味のある方はぜひご相談いただければと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。 ▼レポート無料ダウンロード お申し込みはこちら▼

製造業DXとは?メリットや成功事例6選、成功のポイントを一挙解説!

2024.07.22

製造業を取り巻く環境は、かつてないスピードで変動しています。インターネットおよびデジタル化の波は、もはや無視できない潮流となり、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。そんな中、注目を集めるのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。 「DXって、結局何をすればいいの?」 「うちの工場でも、本当に効果があるの?」 「コストばかりかかって、何も変わらないんじゃないか?」 そんな疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。もちろん多大な労力が必要ですが、DXは決して遠い世界の出来事ではありません。日々の業務効率化から、可視化による品質向上、さらにはコミュニケーションの変革まで、その効果は多岐にわたります。 この記事では、DXの基礎から、実際の成功事例、そして導入時の課題と解決策まで、あなたの工場がDXを成功させるための羅針盤となる情報を提供します。他社の失敗事例も踏まえ、業務改善につなげられるようなノウハウもご紹介していきます。 1.製造業におけるDX 近年、製造業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されています。DXとは、具体的にどういったものを指すのでしょうか? 1-1.そもそもDXとは そもそも、DXの定義はなんでしょうか?媒体によってさまざまな表現がなされていますが、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2020年)には、以下のように示されています。 「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション): 企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」 また、経済産業省の資料には、わかりやすく以下のように記載されています。 「そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か: デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。 また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。」 これらをまとめると、DXとは、「ICTの技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」だと言えます。 全社横断的な変革を実現し、且つお客様に価値を提供して初めてDXを“実現できている”ということができます。DXは、デジタル技術を活用して事業モデルや業務プロセス、組織文化、従業員の意識をイノベーションすることが求められます。 よく言われることですが、単にITシステムを導入するだけではDXとはいえません。例えば、RFIDタグを活用して日報の手書き作業をなくしたとしても、DXとはいえません。状況が可視化され、生産性は上がりますが、業務プロセスのなかの部分的な業務効率化にとどまっているためです。この場合はDXではなくデジタイゼーション (アナログ・物理データのデジタルデータ化)といいます。 1-2.DXが必要とされる背景 インターネットおよびデジタル化の発展により、製造業においても経済成長のスピードについていくためにはDXは欠かせないものです。詳しく解説します。 ◆デジタル化されていないと、すべてにおいて時間がかかり競争力が低下する 現代では、デジタル技術やデータを活用し、業務や判断がよりスピーディーに行われるようになってきており、年々そのスピードは上がっています。物事をKKD(勘、経験、度胸)に頼って判断していくことは、(判断は早い場合もありますが、)属人的でもあり、正確性にもかけてしまいます。データや事実に基づいた分析・改善をおこなっていくことで、よりムダのない、より成功確率の高い判断をしていくことが求められています。DXを実現できていない企業では、DXを実現してデータ活用をおこなっている企業と比較して、すべての面において大きな差が生まれ、競争力が低下するというのは明らかです。 ◆新人・若手の確保が難しくなる Paperlogic社の調査によると、2021年2月25日の段階で2021年の新卒社員の43.1%が、企業のDX推進具合を企業選考の基準としていたことが分かりました。DX推進具合を企業選考の基準とした理由としては「DXに限らず、今後必要になってくる事を積極的に取り入れる会社かどうか見極めるポイントになると考えたから」「社会情勢に応じて、柔軟な対応ができる企業に勤めたいと思っていたから」などが挙げられていました。より社会の変化に敏感になっている学生や若手社員にとって、DXへの姿勢は「この先やっていけるか」を判断する大変重要な要素になるということが分かります。 ◆脱炭素の実現やサプライチェーン強靭化に対応していないと競争力が低下する 他社から「製造品あたりのCO2排出量を教えてほしい」と要求された場合、どのように答えますか? 近年では、自社だけでなく、発注先会社の製造過程におけるCO2排出量なども考慮していく気運が高まっています。その中にあって、上記のような質問に答えるには、営業や、製造工程において使用する電力量、化石燃料使用量、メタン排出量etc..など、さまざまな製造データを収集し、統合する必要があります。 また、サプライチェーンについても同様のことが言えます。各社が持つ在庫情報や消費者ニーズを把握し、全体最適化していく気運が高まっています。同じように、他社から「製造品の発注数・受注数・在庫数データを共有してほしい」と要求された場合、どのように答えますか? 上記のような質問に答えるには、在庫情報や消費者ニーズの情報をデータに落とし込む必要があります。中長期的なSCM (サプライチェーンマネジメント)の観点からみれば、ERPやCRMを活用していない企業は競争力が低下することが懸念されています。 カーボンニュートラルの実現も、SCMの最適化も、どちらも自社でデータを収集し、データを活用できる社内環境が整備されていなければならず、これは簡単にできることではありませんが、近い将来対応していかなければならないテーマです。 1-3.日本のDXの現状 では、日本の製造業においてDXの推進状況はどのようになっているのでしょうか? 調査では、日本企業のDXの取り組みはゆっくりではあるものの順調に増加し、成果が出ている企業の割合も増加傾向にあります。一方で、DXの取り組みをデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階に分類すると、各段階における具体的な取り組み項目別の成果については、その割合に大きな変化は見られず、特にデジタルトランスフォーメーション段階での成果は、他の段階に比べて道半ばであるとしています。 日本企業のDXの取り組みについては、2021年度から年々増加傾向で、今回調査時点では7割強がDXに取り組んでおり、2022年度調査の米国に並びつつあると説明。DXに取り組んでいる企業の割合は、2021年度の55.8%から73.7%に増加し、着実にDXが企業に浸透していると分析しています。 (引用:DX動向2024) DXの取り組みにおいて、設定した目的に対する成果が出ているかという質問では、「成果が出ている」と回答した企業の割合は、2022年度調査の58.0%から2023年度調査は64.3%に増加しており、成果が出ている企業が増加しています。 一方で、2022年度の米国調査では、9割程度の企業が「成果が出ている」と回答しており、DXの取り組みは米国並みに進みつつある中で、成果創出につながっていない企業もあると考えられるとしています。 2.DX成功事例6選 国内には、アナログ的な手法から脱却してDXに成功した工場は多数存在します。ここでは成功事例を6つ紹介します。 2-1.DX成功事例①:J社 基幹システム刷新 J社では、基幹システム刷新と業務改革によって、DXの推進をおこなっています。 業種 鋳造・機械加工・表面処理業 DX化効果 300万円/年のコスト削減/作業時間の短縮 J社では、生産管理・会計管理・在庫管理・原価管理などのそれぞれの管理項目において、それぞれ別のシステムを用いて管理をおこなっていましたが、基幹システムの刷新に際し、さまざまな管理項目の一元化をおこないました。 その際に、現状業務フローの把握⇒フローの見直しをおこない、パッケージシステムに業務を合わせることで、全社横断的に2重/3重入力の排除、属人化の排除を実現しました。近年では、年間300万円のコスト削減に成功しています。 2-2.DX成功事例②:S社 協働ロボット活用 S 社では、これまで手作業だった作業に協働ロボットを使うことによって、加工機へのワーク投入作業の自動化に成功しました。 業種 樹脂切削加工品製造 デジタライゼーション化効果 年間工数1200時間削減 投資金額 500万円 S社の成功事例の特徴は、SIer なしでロボット導入を行った点です。 ロボット導入のネックになりがちな費用として、SIer 費用があげられます。 (S社でロボット導入を検討した際は、ロボット本体代金のほかに SIer 費用が 1000 万円近く見積もられていました。) S社では、自社で内製化することで、SIer 費用を押さえながらロボット活用を行うことに成功しました。 内製化の利点は、自動化品種の追加や、製造ラインの変更に比較的容易に対応できることです。ロボット立ち上げ時に、技術的な開発部分を SIer に任せてしまうと、新たに品種追加を行う際はさらに SIer に費用を払わなくてはなりません。内製化は時間も工数もかかりますが、中長期的に見れば経営効果は高いでしょう。 また、この会社様は従業員数 10 名以下の会社様のため、1 日数時間だけ単純作業を自動化するだけでも、高い自動化効果を発揮することができます。従業員数が少なくなればなるほど捻出される時間の価値が高まるため、ロボット活用は事業規模が小さい会社様ほど効果を発揮できるといえます。 ⇒関連記事:工場の自動化 (ファクトリーオートメーション) とは?成功事例5選やメリット、実現までの流れを一挙解説! 2-3.DX成功事例③:S社 AI外観検査 S社では、これまで目視で行われていた樹脂成形製品の目視検査をAI外観検査で自動化に成功しました。 業種 樹脂成型品製造 デジタライゼーション化効果 検査人員2名削減・1400万円/年のコスト削減 投資金額 4300万円 S社の成功事例の特徴は、製品自体を回転させながら撮像をおこない、AIに不良品判定を行わせている点です。 S社では、通常では検査が難しい透明の円筒形製品検査の自動化に取り組みました。製品自体を回転させ、且つ撮像した製品画像をAIで処理することで、不良品判定の自動化を成功させました。 明確な金額は記載しませんが、S社も補助金を活用することで投資費用を抑えています。 ⇒関連記事:AI外観検査とは?従来の画像検査との違い、導入のメリットや注意点とは? 2-4.DX成功事例④:A社 自動バリ取りロボット A 社ではロボットを使うことによって、工数がかかっていたバリ取り作業の自動化に成功しました。業種と自動化効果、投資金額は以下のようになっています。 業種 セラミック製品製造 自動化効果 年間工数 1019 時間削減・生産性 167%増 投資金額 1800 万円+6 軸ロボット費用 A 社の成功事例の特徴は、画像認識によりバリ取りパスを自動で生成している点です。自動生成されたパスに沿ってロボットが動作するため、品種ごとにティーチングプログラムを作成する必要がなく、超多品種少量生産に対応することができます。 本来ロボットを稼働させる際は、ティーチングと呼ばれるロボットのプログラムを人が作成する必要があります。そのためロボットでさまざまな製品の加工をおこなおうとすると、その数だけティーチングをおこなう必要があります。 A 社では、画像認識による自動プログラム作成を採用しているため、作業員が治具に製品を置けば、ロボットが自動でバリ取りをおこなってくれます。 ⇒関連記事:自社の業務に合わせた自動化で、少ない人員でも生産増に対応することができました-アスザック株式会社 様 2-5.DX成功事例⑤:C 社溶接ロボット・研磨ロボット C社では、高い品質が求められる製品において、溶接工程と研磨工程の自動化に成功しました。 業種 鈑金溶接品製造 自動化効果 溶接・研磨の熟練技術の継承に成功 投資金額 7700 万円 (うち 4000 万円は補助金) C社の成功事例の特徴は、非常に難易度の高い薄板ステンレスの TIG 溶接と鏡面研磨を最新技術を活用して自動化した点です。さらに投資金額 7700 万円のうち 4000 万円は事業再構築補助金を活用することにより投資コストを抑えています。 薄板の TIG 溶接は非常に熟練度が要求される作業であり、早い人でも製品として出荷できるレベルに達するまでには 5 年はかかる職人技術と言われています。また、C社の製品における研磨工程は鏡面仕上げとなっており相当の工数がかかっている状態でした。 これら難易度の高い職人技術を 6 軸力覚、加速度、位置センサー、アクティブ・コンプライアンス制御技術を用いて自動化に成功しました。 2-6.DX成功事例⑥:A社 協働ロボット A社では、100 台の協働ロボットを導入し、ワーク投入やエアブロー、検査などの自動化に成功しました。 業種 金属部品加工 自動化効果 人員 60名削減・2.5億/年のコスト削減 投資金額 協働ロボット 100台分 A社の成功事例の特徴は、S社と同様SIerレスで自動化に成功した点です。PLCが扱える人材を採用し、徹底してロボット活用の社内教育を行うことで、コストを抑えた圧倒的な自動化を実現しました。 総額では大きい投資となっていますが、それに見合うだけの費用対効果を実現しています。 さらに事例の詳細について気になる方は、1時間程度の無料相談会を活用ください。 HP 上には記載しきれていない、実際にロボットが稼働している様子や、自動化に関する情報を余すことなくご提供させていただきます。 3.DXの3つのメリット 製造業における、DXのメリットは以下の3点です。 3-1.DXのメリット①:生産性の向上 DXにより、工場の自動化や無人化が進むことで、生産性が大幅に向上します。IoTセンサーによるデータ収集や、AIを活用した最適化により、ムダな動作を排除し、無駄なく効率的に製造できるようになります。また、ロボットやコンベアなどの自動化設備の導入により、人的ミスを最小限に抑えることができます。 3-2.DXのメリット②:品質の安定化 DXを推進することで、製品の品質を安定的に保つことができます。例えば、ロボットによる自動組立てなどにより、人的なばらつきを排除でき、均一な製品を作り出せます。また、センサーでデータを常時監視することで、不良品の発生を未然に防ぐことも可能です。このように、DXは製品の品質保証に大きく貢献します。 3-3.DXのメリット③:顧客視点での製品開発 DXを進めることで、顧客の声をリアルタイムで製品開発に反映しやすくなります。例えば、IoTデバイスから集まる顧客の使用実態データや、SNSでの声などを分析することで、顧客のニーズをリアルタイムで製品にフィードバックすることができます。その上で、サンプル製品のシミュレーションや試作を効率的におこなえば、顧客目線での開発が可能となります。 4.製造業におけるDXの5つの課題 製造業における、DXの課題は以下の5点に集約されます。自社でもココが課題になっている、と感じるところはあるのではないでしょうか。一つずつ見ていきましょう。 4-1.製造業におけるDXの課題①:技術者の不足と社内教育への投資不足 DXにおいては、専門的な技術者やデジタルスキルに精通した人材が不足していることが課題の一つに挙げられます。広範囲にわたる技術的知識がなければ、DXの構想を考えることは難しいでしょう。更に、社内に技術者がいたとしても、他の従業員が最新のテクノロジーやデジタルツールについて一定程度理解していないと、宝の持ち腐れになってしまいます。デジタル技術を活用するための、社内教育への投資をおこなうことも重要です。 4-2.製造業におけるDXの課題②:旧来システムとの統合 製造業は歴史が古く、既存のシステムが複雑に絡み合っている企業が多いのが実情です。そのため、最新のデジタル技術を導入する際に、旧来のシステムとの親和性が課題となります。直近でいえば、2025年の崖問題が目前に迫っています。社内の状況によっては、一気にシステム刷新をする必要もあるかもしれません。 ⇒関連記事:2025年の崖を対策をしなかった場合の5つのリスク 4-3.製造業におけるDXの課題③:データの統合や分析プロセスの確立の難しさ 製造業では、工数データ、生産実績データなどの膨大な量のデータが生まれますが、それらのデータを統合し、分析する手法の確立は非常に困難です。管理する項目(生産管理、原価管理など)ごとにシステムを導入しており、スムーズなデータ統合ができないケースも多く存在します。また、データの品質や信頼性も重要な課題となっています。例えば工数データをRFIDで取得したとしても、データ利活用に必要十分な工数実績が正しく取得できているとは限りません。 4-4.製造業におけるDXの課題④:かさむ投資コスト DX化の必要性は理解しているが、コストがかかりすぎてしまい、投資に踏み切れない、という工場も多いでしょう。例えば、社内システム/ネットワークを統合しようとすれば、多方面に開発費用がかかってしまい、その分コストは上がります。自社の状況に合わせ、何から手をつけていけば最適なのか?をよく検討する必要があります。 しかし、近年は補助金制度が充実しています。諸条件はありますが、補助金を活用することで、通常よりも少ない投資金額で設備を導入することができるでしょう。 ⇒関連記事:ものづくり補助金最新動向 4-5.製造業におけるDXの課題⑤:従来の組織文化やプロセスの変革への抵抗 DXは、業務プロセスを抜本的に改革していく取り組みです。そのため、従業員の協力が得られない限りは効果的に推進することはできません。DXを推進していくためには、それぞれの部署に対して趣旨の共有をおこない、コミュニケーションをとり、合意形成を取っていく必要があります。人間の感情や、部署間の関係性がおおいに関わってくる領域になるため、最も大きな課題の一つということができます。立場が異なるメンバー・グループ同士が同じゴールを目指していけるよう、統括していく必要があります。 いかがでしたでしょうか。上記の課題が自社にあてはまっている…と感じる方は、船井総研の無料経営相談サービスを活用ください。専門のコンサルタントが対応し、豊富な他社事例やDXの方法などを情報共有いたします。 ⇒船井総研の無料経営相談フォームはこちら 5.DXを進めるためのプロセス 製造業がDXを推進する際のプロセスは、おおよそ以下のようになります。 ステップ1: 経営ビジョンの明確化と戦略の策定 ステップ2: 全体構想と意識改革 ステップ3: 本格推進 (参考:経済産業省 デジタルガバナンスコード実践の手引き) それぞれのステップについて解説していきます。 5-1.ステップ1: 経営ビジョンの明確化と戦略の策定 会社が目指すべき方向性を明確化します。 経営層の観点から、なぜ改革をおこなっていくのか、また目指すべき目標がなにかを議論していきます。生産性の向上、コスト削減、新しいビジネスモデルの構築などが目標として設定されます。 ビジョン・戦略策定の時点で目的や目標があいまいになってしまうと、全社的な合意形成を取ることが難しくなるため、注意が必要です。 5-2.ステップ2: 全体構想と意識改革 ビジョン達成のためのDXの構想を設計し、また社内の意識改革を促します。 一口にDXといっても、会社の業種や状況によってさまざまな解があります。目指すビジョンと現状の差を把握しながら、全体設計をおこなうことが非常に重要です。また、経営者が自らDX推進の必要性を理解し、従業員に共有することで、社内に変革を受け入れる空気感を醸成します。“経営者が自ら”旗振り役として推進していくことで、プロジェクトを進めやすくなります。 このタイミングでDXを推進するメンバーを選定し、プロジェクトを立ち上げますが、エンジニアやシステム導入の知見があるメンバーがいない場合は、外部から人材を採用したり、コンサルタント・SIer活用の検討もおこなう必要があります。 ⇒関連記事:DXロードマップのポイントと戦略的手法を解説!製造業のDX化を成功に導く方法とは? 5-3.ステップ3:本格推進 プロジェクトメンバー主導で、業務プロセスの現状把握・見直しとシステム構築をおこなっていきます。 既存の業務プロセス、インフラ、データ管理の状態を評価し、目標と現実とのギャップを正確に把握します。現状、現場で起きている不都合は何か?目的達成のために、今足りない部分はどこなのか?細かく精査をしていく必要があります。現状評価が不十分だと、適切なプロジェクト策定は行えません。 現状の業務プロセスが把握できたら、データの収集、管理、分析、活用のための戦略を立て、実行にうつります。多くの施策に同時並行で着手すると、プロジェクトメンバーや従業員への負荷が大きく、スムーズに進めることが難しくなってしまいます。はじめはスモールステップ的に実行していくことが重要です。 DXの成果は定期的に評価し、フィードバックを基に持続的な改善を実施する。生産性やコスト削減のKPIを設定し、定量的な評価を行います。成果の評価が適切でないと、改善の余地が見落とされるため、客観的で透明性のある評価プロセスを確立することが重要です。 6.製造業でDXを実現させるための3つのポイント 6-1.工場の自動化を実現する際のポイント①:経営者が旗振り役となること まず第一に、「経営者が旗振り役となって、DXを進めていくこと」が極めて重要です。経営者自身がDXの重要性を深く理解し、自らが先頭に立って取り組む姿勢を示すことで、組織全体が一丸となって改革に取り組む風土が生まれます。反対に、会社をどうしていきたいのか?理想に近づくためにデジタル技術をどのように活用していくのか?などのコアな部分を従業員やコンサル会社任せにしてしまうと、どこかに齟齬が生まれてしまい、理想的な成果を上げることは難しいでしょう。経営者が率先してビジョンや目標を社員と共有し、具体的なアクションプランを策定することができれば、DXの推進力を格段に上げることができます。 6-2.工場の自動化を実現する際のポイント②:中長期的な取り組みをスモールステップで推進 次に重要なのは、「中長期的な取り組みをスモールステップで推進すること」です。DXは時間も、お金も、労力もかかる取り組みであり、1、2年という短期間で本当の効果が出るものではありません。急激に進めようとすれば、従業員への負荷が高まり、かえって生産性が低下するリスクがあります。 そのため、まずはスモールステップで着実に進めることが重要ですが、小さなステップだけを繰り返していては、最終的なゴールにはたどり着くことができません。したがって、「5年や10年先を見据えた中長期的なビジョンを持ちつつ、現在できることに集中して取り組む」というような中長期的なゴールと短期的なゴールの両方を見据えながら取り組みを進めることが重要です。具体的には、まず既存の生産プロセスの一部をデジタル化し、小さな成功体験を積み重ねると共に、従業員の慣れやスキルを向上させます。これによって、次第により複雑で広範囲なDXの取り組みに挑戦することが可能となります。 6-3.工場の自動化を実現する際のポイント③:人材育成と外部リソースの活用 最後に重要な点は、「人材育成と外部リソースの活用」です。DX推進にはデジタル技術に精通した人材が不可欠であり、これを内部で育てるための育成プログラムの整備が求められます。作業者が導入したツールや技術を構想通りに活用できる様、サポートしていくことが重要です。 さらに、デジタル技術の専門知識やスキルが不足している場合には、外部の専門家やコンサルタントの力を借りることが効果的です。コンサルタントや専門企業の知見を活用することで、効率的かつ迅速にDXを進めることができます。社内人材のみでDXを推進する場合は、既存の業務と平行して進める必要があるため、プロジェクトに十分な時間を割くことができない、というジレンマがあります。プロジェクトを迅速に進めたい方は、外部リソースの活用を強く推奨します。 最後までお読みいただきありがとうございました。 製造業におけるDX推進の成功に向けた具体的なステップと重要なポイントがご理解いただけたでしょうか?自社のDX実現においてお困りの際は、船井総研の無料経営相談をご活用ください。特に、以下のようなお悩みをお持ちの際は、是非弊社の無料経営相談をご活用ください。 ⇒ 株式会社船井総合研究所の無料経営相談はこちらから! 自社でDXを推進しようと、すでにシステムを導入したが、なかなかうまくいかない… 現場の反発が大きく思うようにプロジェクトが進まない… DXを進めていきたいが、何から手を付けたらよいかわからない…アイデアが欲しい… 専門のコンサルタントが豊富な他社事例を共有しながら、貴社に最適なご提案をさせていただきます。 製造業を取り巻く環境は、かつてないスピードで変動しています。インターネットおよびデジタル化の波は、もはや無視できない潮流となり、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。そんな中、注目を集めるのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。 「DXって、結局何をすればいいの?」 「うちの工場でも、本当に効果があるの?」 「コストばかりかかって、何も変わらないんじゃないか?」 そんな疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。もちろん多大な労力が必要ですが、DXは決して遠い世界の出来事ではありません。日々の業務効率化から、可視化による品質向上、さらにはコミュニケーションの変革まで、その効果は多岐にわたります。 この記事では、DXの基礎から、実際の成功事例、そして導入時の課題と解決策まで、あなたの工場がDXを成功させるための羅針盤となる情報を提供します。他社の失敗事例も踏まえ、業務改善につなげられるようなノウハウもご紹介していきます。 1.製造業におけるDX 近年、製造業界でもデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されています。DXとは、具体的にどういったものを指すのでしょうか? 1-1.そもそもDXとは そもそも、DXの定義はなんでしょうか?媒体によってさまざまな表現がなされていますが、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(2020年)には、以下のように示されています。 「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション): 企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」 また、経済産業省の資料には、わかりやすく以下のように記載されています。 「そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か: デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。 また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。」 これらをまとめると、DXとは、「ICTの技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」だと言えます。 全社横断的な変革を実現し、且つお客様に価値を提供して初めてDXを“実現できている”ということができます。DXは、デジタル技術を活用して事業モデルや業務プロセス、組織文化、従業員の意識をイノベーションすることが求められます。 よく言われることですが、単にITシステムを導入するだけではDXとはいえません。例えば、RFIDタグを活用して日報の手書き作業をなくしたとしても、DXとはいえません。状況が可視化され、生産性は上がりますが、業務プロセスのなかの部分的な業務効率化にとどまっているためです。この場合はDXではなくデジタイゼーション (アナログ・物理データのデジタルデータ化)といいます。 1-2.DXが必要とされる背景 インターネットおよびデジタル化の発展により、製造業においても経済成長のスピードについていくためにはDXは欠かせないものです。詳しく解説します。 ◆デジタル化されていないと、すべてにおいて時間がかかり競争力が低下する 現代では、デジタル技術やデータを活用し、業務や判断がよりスピーディーに行われるようになってきており、年々そのスピードは上がっています。物事をKKD(勘、経験、度胸)に頼って判断していくことは、(判断は早い場合もありますが、)属人的でもあり、正確性にもかけてしまいます。データや事実に基づいた分析・改善をおこなっていくことで、よりムダのない、より成功確率の高い判断をしていくことが求められています。DXを実現できていない企業では、DXを実現してデータ活用をおこなっている企業と比較して、すべての面において大きな差が生まれ、競争力が低下するというのは明らかです。 ◆新人・若手の確保が難しくなる Paperlogic社の調査によると、2021年2月25日の段階で2021年の新卒社員の43.1%が、企業のDX推進具合を企業選考の基準としていたことが分かりました。DX推進具合を企業選考の基準とした理由としては「DXに限らず、今後必要になってくる事を積極的に取り入れる会社かどうか見極めるポイントになると考えたから」「社会情勢に応じて、柔軟な対応ができる企業に勤めたいと思っていたから」などが挙げられていました。より社会の変化に敏感になっている学生や若手社員にとって、DXへの姿勢は「この先やっていけるか」を判断する大変重要な要素になるということが分かります。 ◆脱炭素の実現やサプライチェーン強靭化に対応していないと競争力が低下する 他社から「製造品あたりのCO2排出量を教えてほしい」と要求された場合、どのように答えますか? 近年では、自社だけでなく、発注先会社の製造過程におけるCO2排出量なども考慮していく気運が高まっています。その中にあって、上記のような質問に答えるには、営業や、製造工程において使用する電力量、化石燃料使用量、メタン排出量etc..など、さまざまな製造データを収集し、統合する必要があります。 また、サプライチェーンについても同様のことが言えます。各社が持つ在庫情報や消費者ニーズを把握し、全体最適化していく気運が高まっています。同じように、他社から「製造品の発注数・受注数・在庫数データを共有してほしい」と要求された場合、どのように答えますか? 上記のような質問に答えるには、在庫情報や消費者ニーズの情報をデータに落とし込む必要があります。中長期的なSCM (サプライチェーンマネジメント)の観点からみれば、ERPやCRMを活用していない企業は競争力が低下することが懸念されています。 カーボンニュートラルの実現も、SCMの最適化も、どちらも自社でデータを収集し、データを活用できる社内環境が整備されていなければならず、これは簡単にできることではありませんが、近い将来対応していかなければならないテーマです。 1-3.日本のDXの現状 では、日本の製造業においてDXの推進状況はどのようになっているのでしょうか? 調査では、日本企業のDXの取り組みはゆっくりではあるものの順調に増加し、成果が出ている企業の割合も増加傾向にあります。一方で、DXの取り組みをデジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3段階に分類すると、各段階における具体的な取り組み項目別の成果については、その割合に大きな変化は見られず、特にデジタルトランスフォーメーション段階での成果は、他の段階に比べて道半ばであるとしています。 日本企業のDXの取り組みについては、2021年度から年々増加傾向で、今回調査時点では7割強がDXに取り組んでおり、2022年度調査の米国に並びつつあると説明。DXに取り組んでいる企業の割合は、2021年度の55.8%から73.7%に増加し、着実にDXが企業に浸透していると分析しています。 (引用:DX動向2024) DXの取り組みにおいて、設定した目的に対する成果が出ているかという質問では、「成果が出ている」と回答した企業の割合は、2022年度調査の58.0%から2023年度調査は64.3%に増加しており、成果が出ている企業が増加しています。 一方で、2022年度の米国調査では、9割程度の企業が「成果が出ている」と回答しており、DXの取り組みは米国並みに進みつつある中で、成果創出につながっていない企業もあると考えられるとしています。 2.DX成功事例6選 国内には、アナログ的な手法から脱却してDXに成功した工場は多数存在します。ここでは成功事例を6つ紹介します。 2-1.DX成功事例①:J社 基幹システム刷新 J社では、基幹システム刷新と業務改革によって、DXの推進をおこなっています。 業種 鋳造・機械加工・表面処理業 DX化効果 300万円/年のコスト削減/作業時間の短縮 J社では、生産管理・会計管理・在庫管理・原価管理などのそれぞれの管理項目において、それぞれ別のシステムを用いて管理をおこなっていましたが、基幹システムの刷新に際し、さまざまな管理項目の一元化をおこないました。 その際に、現状業務フローの把握⇒フローの見直しをおこない、パッケージシステムに業務を合わせることで、全社横断的に2重/3重入力の排除、属人化の排除を実現しました。近年では、年間300万円のコスト削減に成功しています。 2-2.DX成功事例②:S社 協働ロボット活用 S 社では、これまで手作業だった作業に協働ロボットを使うことによって、加工機へのワーク投入作業の自動化に成功しました。 業種 樹脂切削加工品製造 デジタライゼーション化効果 年間工数1200時間削減 投資金額 500万円 S社の成功事例の特徴は、SIer なしでロボット導入を行った点です。 ロボット導入のネックになりがちな費用として、SIer 費用があげられます。 (S社でロボット導入を検討した際は、ロボット本体代金のほかに SIer 費用が 1000 万円近く見積もられていました。) S社では、自社で内製化することで、SIer 費用を押さえながらロボット活用を行うことに成功しました。 内製化の利点は、自動化品種の追加や、製造ラインの変更に比較的容易に対応できることです。ロボット立ち上げ時に、技術的な開発部分を SIer に任せてしまうと、新たに品種追加を行う際はさらに SIer に費用を払わなくてはなりません。内製化は時間も工数もかかりますが、中長期的に見れば経営効果は高いでしょう。 また、この会社様は従業員数 10 名以下の会社様のため、1 日数時間だけ単純作業を自動化するだけでも、高い自動化効果を発揮することができます。従業員数が少なくなればなるほど捻出される時間の価値が高まるため、ロボット活用は事業規模が小さい会社様ほど効果を発揮できるといえます。 ⇒関連記事:工場の自動化 (ファクトリーオートメーション) とは?成功事例5選やメリット、実現までの流れを一挙解説! 2-3.DX成功事例③:S社 AI外観検査 S社では、これまで目視で行われていた樹脂成形製品の目視検査をAI外観検査で自動化に成功しました。 業種 樹脂成型品製造 デジタライゼーション化効果 検査人員2名削減・1400万円/年のコスト削減 投資金額 4300万円 S社の成功事例の特徴は、製品自体を回転させながら撮像をおこない、AIに不良品判定を行わせている点です。 S社では、通常では検査が難しい透明の円筒形製品検査の自動化に取り組みました。製品自体を回転させ、且つ撮像した製品画像をAIで処理することで、不良品判定の自動化を成功させました。 明確な金額は記載しませんが、S社も補助金を活用することで投資費用を抑えています。 ⇒関連記事:AI外観検査とは?従来の画像検査との違い、導入のメリットや注意点とは? 2-4.DX成功事例④:A社 自動バリ取りロボット A 社ではロボットを使うことによって、工数がかかっていたバリ取り作業の自動化に成功しました。業種と自動化効果、投資金額は以下のようになっています。 業種 セラミック製品製造 自動化効果 年間工数 1019 時間削減・生産性 167%増 投資金額 1800 万円+6 軸ロボット費用 A 社の成功事例の特徴は、画像認識によりバリ取りパスを自動で生成している点です。自動生成されたパスに沿ってロボットが動作するため、品種ごとにティーチングプログラムを作成する必要がなく、超多品種少量生産に対応することができます。 本来ロボットを稼働させる際は、ティーチングと呼ばれるロボットのプログラムを人が作成する必要があります。そのためロボットでさまざまな製品の加工をおこなおうとすると、その数だけティーチングをおこなう必要があります。 A 社では、画像認識による自動プログラム作成を採用しているため、作業員が治具に製品を置けば、ロボットが自動でバリ取りをおこなってくれます。 ⇒関連記事:自社の業務に合わせた自動化で、少ない人員でも生産増に対応することができました-アスザック株式会社 様 2-5.DX成功事例⑤:C 社溶接ロボット・研磨ロボット C社では、高い品質が求められる製品において、溶接工程と研磨工程の自動化に成功しました。 業種 鈑金溶接品製造 自動化効果 溶接・研磨の熟練技術の継承に成功 投資金額 7700 万円 (うち 4000 万円は補助金) C社の成功事例の特徴は、非常に難易度の高い薄板ステンレスの TIG 溶接と鏡面研磨を最新技術を活用して自動化した点です。さらに投資金額 7700 万円のうち 4000 万円は事業再構築補助金を活用することにより投資コストを抑えています。 薄板の TIG 溶接は非常に熟練度が要求される作業であり、早い人でも製品として出荷できるレベルに達するまでには 5 年はかかる職人技術と言われています。また、C社の製品における研磨工程は鏡面仕上げとなっており相当の工数がかかっている状態でした。 これら難易度の高い職人技術を 6 軸力覚、加速度、位置センサー、アクティブ・コンプライアンス制御技術を用いて自動化に成功しました。 2-6.DX成功事例⑥:A社 協働ロボット A社では、100 台の協働ロボットを導入し、ワーク投入やエアブロー、検査などの自動化に成功しました。 業種 金属部品加工 自動化効果 人員 60名削減・2.5億/年のコスト削減 投資金額 協働ロボット 100台分 A社の成功事例の特徴は、S社と同様SIerレスで自動化に成功した点です。PLCが扱える人材を採用し、徹底してロボット活用の社内教育を行うことで、コストを抑えた圧倒的な自動化を実現しました。 総額では大きい投資となっていますが、それに見合うだけの費用対効果を実現しています。 さらに事例の詳細について気になる方は、1時間程度の無料相談会を活用ください。 HP 上には記載しきれていない、実際にロボットが稼働している様子や、自動化に関する情報を余すことなくご提供させていただきます。 3.DXの3つのメリット 製造業における、DXのメリットは以下の3点です。 3-1.DXのメリット①:生産性の向上 DXにより、工場の自動化や無人化が進むことで、生産性が大幅に向上します。IoTセンサーによるデータ収集や、AIを活用した最適化により、ムダな動作を排除し、無駄なく効率的に製造できるようになります。また、ロボットやコンベアなどの自動化設備の導入により、人的ミスを最小限に抑えることができます。 3-2.DXのメリット②:品質の安定化 DXを推進することで、製品の品質を安定的に保つことができます。例えば、ロボットによる自動組立てなどにより、人的なばらつきを排除でき、均一な製品を作り出せます。また、センサーでデータを常時監視することで、不良品の発生を未然に防ぐことも可能です。このように、DXは製品の品質保証に大きく貢献します。 3-3.DXのメリット③:顧客視点での製品開発 DXを進めることで、顧客の声をリアルタイムで製品開発に反映しやすくなります。例えば、IoTデバイスから集まる顧客の使用実態データや、SNSでの声などを分析することで、顧客のニーズをリアルタイムで製品にフィードバックすることができます。その上で、サンプル製品のシミュレーションや試作を効率的におこなえば、顧客目線での開発が可能となります。 4.製造業におけるDXの5つの課題 製造業における、DXの課題は以下の5点に集約されます。自社でもココが課題になっている、と感じるところはあるのではないでしょうか。一つずつ見ていきましょう。 4-1.製造業におけるDXの課題①:技術者の不足と社内教育への投資不足 DXにおいては、専門的な技術者やデジタルスキルに精通した人材が不足していることが課題の一つに挙げられます。広範囲にわたる技術的知識がなければ、DXの構想を考えることは難しいでしょう。更に、社内に技術者がいたとしても、他の従業員が最新のテクノロジーやデジタルツールについて一定程度理解していないと、宝の持ち腐れになってしまいます。デジタル技術を活用するための、社内教育への投資をおこなうことも重要です。 4-2.製造業におけるDXの課題②:旧来システムとの統合 製造業は歴史が古く、既存のシステムが複雑に絡み合っている企業が多いのが実情です。そのため、最新のデジタル技術を導入する際に、旧来のシステムとの親和性が課題となります。直近でいえば、2025年の崖問題が目前に迫っています。社内の状況によっては、一気にシステム刷新をする必要もあるかもしれません。 ⇒関連記事:2025年の崖を対策をしなかった場合の5つのリスク 4-3.製造業におけるDXの課題③:データの統合や分析プロセスの確立の難しさ 製造業では、工数データ、生産実績データなどの膨大な量のデータが生まれますが、それらのデータを統合し、分析する手法の確立は非常に困難です。管理する項目(生産管理、原価管理など)ごとにシステムを導入しており、スムーズなデータ統合ができないケースも多く存在します。また、データの品質や信頼性も重要な課題となっています。例えば工数データをRFIDで取得したとしても、データ利活用に必要十分な工数実績が正しく取得できているとは限りません。 4-4.製造業におけるDXの課題④:かさむ投資コスト DX化の必要性は理解しているが、コストがかかりすぎてしまい、投資に踏み切れない、という工場も多いでしょう。例えば、社内システム/ネットワークを統合しようとすれば、多方面に開発費用がかかってしまい、その分コストは上がります。自社の状況に合わせ、何から手をつけていけば最適なのか?をよく検討する必要があります。 しかし、近年は補助金制度が充実しています。諸条件はありますが、補助金を活用することで、通常よりも少ない投資金額で設備を導入することができるでしょう。 ⇒関連記事:ものづくり補助金最新動向 4-5.製造業におけるDXの課題⑤:従来の組織文化やプロセスの変革への抵抗 DXは、業務プロセスを抜本的に改革していく取り組みです。そのため、従業員の協力が得られない限りは効果的に推進することはできません。DXを推進していくためには、それぞれの部署に対して趣旨の共有をおこない、コミュニケーションをとり、合意形成を取っていく必要があります。人間の感情や、部署間の関係性がおおいに関わってくる領域になるため、最も大きな課題の一つということができます。立場が異なるメンバー・グループ同士が同じゴールを目指していけるよう、統括していく必要があります。 いかがでしたでしょうか。上記の課題が自社にあてはまっている…と感じる方は、船井総研の無料経営相談サービスを活用ください。専門のコンサルタントが対応し、豊富な他社事例やDXの方法などを情報共有いたします。 ⇒船井総研の無料経営相談フォームはこちら 5.DXを進めるためのプロセス 製造業がDXを推進する際のプロセスは、おおよそ以下のようになります。 ステップ1: 経営ビジョンの明確化と戦略の策定 ステップ2: 全体構想と意識改革 ステップ3: 本格推進 (参考:経済産業省 デジタルガバナンスコード実践の手引き) それぞれのステップについて解説していきます。 5-1.ステップ1: 経営ビジョンの明確化と戦略の策定 会社が目指すべき方向性を明確化します。 経営層の観点から、なぜ改革をおこなっていくのか、また目指すべき目標がなにかを議論していきます。生産性の向上、コスト削減、新しいビジネスモデルの構築などが目標として設定されます。 ビジョン・戦略策定の時点で目的や目標があいまいになってしまうと、全社的な合意形成を取ることが難しくなるため、注意が必要です。 5-2.ステップ2: 全体構想と意識改革 ビジョン達成のためのDXの構想を設計し、また社内の意識改革を促します。 一口にDXといっても、会社の業種や状況によってさまざまな解があります。目指すビジョンと現状の差を把握しながら、全体設計をおこなうことが非常に重要です。また、経営者が自らDX推進の必要性を理解し、従業員に共有することで、社内に変革を受け入れる空気感を醸成します。“経営者が自ら”旗振り役として推進していくことで、プロジェクトを進めやすくなります。 このタイミングでDXを推進するメンバーを選定し、プロジェクトを立ち上げますが、エンジニアやシステム導入の知見があるメンバーがいない場合は、外部から人材を採用したり、コンサルタント・SIer活用の検討もおこなう必要があります。 ⇒関連記事:DXロードマップのポイントと戦略的手法を解説!製造業のDX化を成功に導く方法とは? 5-3.ステップ3:本格推進 プロジェクトメンバー主導で、業務プロセスの現状把握・見直しとシステム構築をおこなっていきます。 既存の業務プロセス、インフラ、データ管理の状態を評価し、目標と現実とのギャップを正確に把握します。現状、現場で起きている不都合は何か?目的達成のために、今足りない部分はどこなのか?細かく精査をしていく必要があります。現状評価が不十分だと、適切なプロジェクト策定は行えません。 現状の業務プロセスが把握できたら、データの収集、管理、分析、活用のための戦略を立て、実行にうつります。多くの施策に同時並行で着手すると、プロジェクトメンバーや従業員への負荷が大きく、スムーズに進めることが難しくなってしまいます。はじめはスモールステップ的に実行していくことが重要です。 DXの成果は定期的に評価し、フィードバックを基に持続的な改善を実施する。生産性やコスト削減のKPIを設定し、定量的な評価を行います。成果の評価が適切でないと、改善の余地が見落とされるため、客観的で透明性のある評価プロセスを確立することが重要です。 6.製造業でDXを実現させるための3つのポイント 6-1.工場の自動化を実現する際のポイント①:経営者が旗振り役となること まず第一に、「経営者が旗振り役となって、DXを進めていくこと」が極めて重要です。経営者自身がDXの重要性を深く理解し、自らが先頭に立って取り組む姿勢を示すことで、組織全体が一丸となって改革に取り組む風土が生まれます。反対に、会社をどうしていきたいのか?理想に近づくためにデジタル技術をどのように活用していくのか?などのコアな部分を従業員やコンサル会社任せにしてしまうと、どこかに齟齬が生まれてしまい、理想的な成果を上げることは難しいでしょう。経営者が率先してビジョンや目標を社員と共有し、具体的なアクションプランを策定することができれば、DXの推進力を格段に上げることができます。 6-2.工場の自動化を実現する際のポイント②:中長期的な取り組みをスモールステップで推進 次に重要なのは、「中長期的な取り組みをスモールステップで推進すること」です。DXは時間も、お金も、労力もかかる取り組みであり、1、2年という短期間で本当の効果が出るものではありません。急激に進めようとすれば、従業員への負荷が高まり、かえって生産性が低下するリスクがあります。 そのため、まずはスモールステップで着実に進めることが重要ですが、小さなステップだけを繰り返していては、最終的なゴールにはたどり着くことができません。したがって、「5年や10年先を見据えた中長期的なビジョンを持ちつつ、現在できることに集中して取り組む」というような中長期的なゴールと短期的なゴールの両方を見据えながら取り組みを進めることが重要です。具体的には、まず既存の生産プロセスの一部をデジタル化し、小さな成功体験を積み重ねると共に、従業員の慣れやスキルを向上させます。これによって、次第により複雑で広範囲なDXの取り組みに挑戦することが可能となります。 6-3.工場の自動化を実現する際のポイント③:人材育成と外部リソースの活用 最後に重要な点は、「人材育成と外部リソースの活用」です。DX推進にはデジタル技術に精通した人材が不可欠であり、これを内部で育てるための育成プログラムの整備が求められます。作業者が導入したツールや技術を構想通りに活用できる様、サポートしていくことが重要です。 さらに、デジタル技術の専門知識やスキルが不足している場合には、外部の専門家やコンサルタントの力を借りることが効果的です。コンサルタントや専門企業の知見を活用することで、効率的かつ迅速にDXを進めることができます。社内人材のみでDXを推進する場合は、既存の業務と平行して進める必要があるため、プロジェクトに十分な時間を割くことができない、というジレンマがあります。プロジェクトを迅速に進めたい方は、外部リソースの活用を強く推奨します。 最後までお読みいただきありがとうございました。 製造業におけるDX推進の成功に向けた具体的なステップと重要なポイントがご理解いただけたでしょうか?自社のDX実現においてお困りの際は、船井総研の無料経営相談をご活用ください。特に、以下のようなお悩みをお持ちの際は、是非弊社の無料経営相談をご活用ください。 ⇒ 株式会社船井総合研究所の無料経営相談はこちらから! 自社でDXを推進しようと、すでにシステムを導入したが、なかなかうまくいかない… 現場の反発が大きく思うようにプロジェクトが進まない… DXを進めていきたいが、何から手を付けたらよいかわからない…アイデアが欲しい… 専門のコンサルタントが豊富な他社事例を共有しながら、貴社に最適なご提案をさせていただきます。

AI外観検査とは?従来の画像検査との違い、導入のメリットや注意点とは?

2024.07.04

いつもご愛読いただきありがとうございます。 製造業における、製品の品質管理は企業の信頼性を担保する重要な要素ですが、従来の手作業による検査は効率面や品質の均一性において課題が残されているケースが多くあります。 本記事では、AIを活用した外観検査の自動化について、その効果を最大限に引き出す方法をご紹介いたします。 AI外観検査の基本的な概要から導入メリット、よくある誤解、導入プロセスやよくあるFAQまで詳しく解説いたします。 本記事をお読みいただくことで、AI外観検査の基礎から導入方法までを包括的に理解することができます。外観検査の効率化を検討中の企業様は、ぜひ最後までご一読ください。 1.AI外観検査とは? 外観検査は、製品が仕様通りの外観を保っているかを確認する工程です。品質管理において、外観検査は非常に重要です。まずは、AIを活用した外観検査について解説していきます。 1-1.AIとは AI(人工知能)とは、人間の知能を模倣し、データ解析や学習を行うシステムです。AIはディープラーニングなどの技術を活用して、大量のデータを解析し、人間と同等、あるいはそれ以上の精度で判断を行います。AI技術は医療、金融、製造業などさまざまな分野で利用されており、特に画像認識や異常検知の分野で高い精度を誇ります。 AIは、膨大なデータを分析し、そこから特徴を抽出することで、人間の感覚に近い判断を下せるように教育されています。 AIの歴史は1950年代にさかのぼります。当初は理論的な研究が主でしたが、現在では実用的な応用が進んでいます。2022年11月30日にはChatGPTがリリースされ、AIの実用性は加速的に高まっています。画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で大きな成果を上げており、製造業でもその適用範囲が広がっています。 例えば、お客様とのコミュニケーションを自動化するAIチャットボットや、製造工程の最適化に貢献するAIソリューションなど、様々な分野でAIが活躍しています。 1-2.AI外観検査とは AI外観検査は、製品の外観をAI技術を用いて自動的に検査する方法です。具体的には、カメラで撮影された画像をAIが解析し、不良箇所や不良を検出します。AIの学習方法にもよりますが、従来の目視検査やルールベースの画像検査と異なり、AI自体に不良データを学習させ、製品の良否判定をおこなわせることもできます。 AI外観検査は、特に大量生産をおこなっている工場で非常に有効です。例えば、自動車部品の製造ラインでは、毎分数百個の部品が生産されますが、このすべてを人間が目視で検査することは現実的ではありません。AI外観検査を導入することで、即時に大量の部品を検査することができ、生産性が大幅に向上します。 AI外観検査は、異物の混入や、製品のキズ、欠け、打痕、バリ、ムラなどを検出することができます。 1-3.AI外観検査と従来の外観検査⼿法との違い 従来の目視検査は、人間の経験や勘に頼る部分が大きく、検査をおこなう人や、その人の状態などによって検査結果にばらつきが生じやすいという欠点があります。特に検査員が疲労している場合や、スキルにばらつきがある場合、不良品を見逃すリスクが高まります。これに対し、AI外観検査は一定の基準に従って一貫した検査を行うため、信頼性が高いと言えます。 また、従来の画像検査システムでは、あらかじめ決められたルールに基づいて不良を検知します。しかし、作業員の経験に頼るような、難易度の高い外観検査を自動化する場合は、不良のモデル化が困難であるという欠点がありました。AI外観検査は、機械学習アルゴリズムを使用してデータから学習をおこなうため、不良のモデル化が難しい、曖昧な不良パターンの自動化にも対応することができます。 AI外観検査では、正常な製品画像と異常な製品画像をAIに学習させることで、異常個所を自動的に検出する仕組みになっています。 AI外観検査の導入には初期コストがかかりますが、長期的に見れば検査の効率が向上し、不良品の減少によるコスト削減効果が期待できます。AI外観検査を導入することで、品質管理のレベルが向上し、製品の信頼性を高めることができます。 AI外観検査導入の際には、対象製品において不良の検出が可能かどうか、事前に検証をおこなう必要があります。 2.AI外観検査の2つのメリット AI外観検査には、以下の2つのメリットがあります。 省人化によるコスト削減と生産性向上 検査品質の向上と均一化 それぞれ詳しく見ていきましょう。 2-1.AI外観検査のメリット①:省人化によるコスト削減と生産性向上 AI外観検査を導入することで、人手による検査が不要となり、人件費の大幅な削減が可能です。時間や人手のかかっている作業を選定し、自動化することができれば、浮かせた工数分、人件費を削減することができます。また、製造ラインを24時間稼働させることもできるようになるため、さらなる生産性向上が期待できます。 さらに検査を自動化することで、検査員をより付加価値の高い業務に配置することが可能になります。例えば、生産ラインの監視や機械の保守、オペレーションの最適化など、より付加価値の高い業務に集中することができます。これにより、工場全体の生産性向上と業務効率化を図ることができます。 AI外観検査は、繰り返し作業の自動化に役立ち、従業員がより創造的な業務に集中することを可能にします。 2-2.AI外観検査のメリット②:検査品質の向上と均一化 AI外観検査は、設定された基準に基づいて検査をおこないます。人間の疲労や主観によるばらつきを防ぎ、精度高く検査をおこなうことができます。 検査の精度向上は、製品の品質安定化に繋がり、お客様の満足度向上に大きく貢献します。 AI外観検査では、微細なキズや目に見えない欠陥を検出することができます。例えば、プリント基板の微細なクラックや汚れ、半導体チップの微細な不良など、人間の目では見逃しがちな不良を検出することができます。 AIは、人間の目では見逃してしまうような微細な傷や異物を、高い精度で検出することができます。 3.AI外観検査の2つのデメリット AI外観検査には既存の検査方法にはないメリットがありますが、いくつかのデメリットや課題も存在します。 高コストの初期導入費用 データの質と量に依存 それぞれ詳しく見ていきましょう。 3-1.AI外観検査のデメリット①:高コストの初期導入費用 AI外観検査システムの導入に際しては、ハードウェア、ソフトウェア、AIモデルの開発費用などの初期投資が必要になります。特に、高度なAIモデルを構築するためには、大量のデータや専門的な知識が必要であり、その開発のためのリソースが求められます。中小企業にとっては、この初期投資が高額であり、導入をためらう要因になるケースがあります。 AI外観検査システムの導入には、もちろん初期費用がかかりますが、長期的な観点から見ると、人件費削減や品質向上による効果が期待できます。 3-2.AI外観検査のデメリット②:データの質と量に依存 AI外観検査の精度は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。適切なデータを収集し、正確にラベル付することが求められます。例えば、不良対象が上手く撮像できていない場合や、撮像データが数十データしかない場合、AIモデルの検査精度は低下し、誤検出や見逃しが発生するリスクが高まります。どんなに質の高いAIを活用しても、適切なデータを収集できていなければ、理想的な外観検査の自動化を実現することは難しいです。 AIモデルの学習には、良品と不良品の画像データが必要となります。 4.「AIによる外観検査」でよくある誤解 AI外観検査の導入提案をしていく中で、残念ながらAIに対する誤解が見られることがあります。よくある例として、「AIは完全無欠であり、人間の介入なしで検査を自動化できる」と考えがちですが、これは誤りです。先ほど記載した通り、AIの精度は学習データに依存しているため、データの質や量が検査結果に影響します。また、環境の変化や新たな不良パターンに対応するための継続的な学習が必要です。さらに、重要な判断には人間の確認が求められることもあります。 例えば、ある自動車メーカーにおいて、学習データが偏っていたり、学習事項を適切に更新していなかったことから、AIが誤った不良検出を多発させた事例があります。AI外観検査システムは常に最新のデータに更新しながら、運用していくことが求められます。また、すべての不良をAIで検出できるわけではないため、特に複雑な検査結果には人間による最終確認が必要です。 AIはあくまでもツールであり、人間の判断を完全に代替できるわけではありません。AIの特性を理解し、適切に使っていくことが重要です。 5.よくある質問 次に、外観検査AIを導入する際によくある質問についてご紹介いたします。 5-1.AI外観検査の導入にはどのくらいのコストがかかりますか? 初期投資としては数百万円から数千万円が一般的です。具体的な費用は、検査対象の規模や求める精度、必要な機能、自動化によって削減できる人件費によっても異なります。費用対効果を考慮し、適切なシステムを選定することが重要です。 AI外観検査システムの価格は、会社や提供するソリューションによって大きく異なります。 5-2.AI外観検査はどのような業界で導入されていますか? AI外観検査は製造業、自動車産業、食品産業、医薬品産業など、多岐にわたる業界で導入されています。特に製造業では、部品の表面検査や組み立て製品の最終検査などで使用され、高精度な検査結果と効率化が期待されています。 AI外観検査は、金属、電子部品、プラスチック、食品、医薬品など、様々な商品の検査に使われています。 6.AIで外観検査をおこなうかどうか?以外の検討事項 6-1.AI以外の検討事項 検査工程を自動化する際は、AIで外観検査をおこなうかどうか?以外にもさまざまな検討事項があります。 例えば、 照明:製品に赤/青/緑/白い光を当てるのか?紫外線を当てるのか? 装置の位置:どの角度から光を照射するのか?どの位置から製品を撮像するのか? 画像ソフト:機械学習をさせるのか?ルールベースで画像認識をさせるのか?AIを使うのか? カメラのスペック:どの程度の解像度のカメラが必要なのか タクトタイム:どのような仕様にすれば理想のタクトタイムが実現できるのか。カメラの台数を増やすのか?より高速処理できる画像ソフトを使うのか?etc… 示した通り、画像検査を自動化する手法は非常に多岐に渡ります。一つ一つを精査し、自社に合った適切な手法を検討することが重要です。 検査対象の特性、要求される精度、速度、そして予算などを考慮して、最適なシステムを選択する必要があります。 6-2.費用対効果の検討 技術的な部分と合わせて検討すべきは、費用対効果の検討です。 自動化といっても、うちは多品種過ぎて費用対効果が出ないのではないか…と考えている企業様もいらっしゃるかと思います。 これらは、自動化品種や検査ラインの組み方、画像処理の方法を工夫することで、多品種でも費用対効果の出る自動化を実現できる可能性があります。 ロボットなどでワーク投入などを自動化させる際は、原則一つのティーチングにおいて一つの製品のみを自動化させることができます。 一つ一つの品種に対してそれぞれティーチングを行う必要があるので、品種追加をしようとすると非常に工数がかかってしまいます。 しかし、外観検査においては、厳密には異なる品種でも、同じ製造ラインにて自動化をおこなうことができます。 これは、外観検査の際に製品に対しておこなう動作が“撮像”であることに起因しています。 製品がカメラの画角に収まっていれば、さまざまな不良データを学習させたり、照射する光の角度や種類を変えることで、同一ラインにて多品種製品の自動化をおこなうことができます。 AI外観検査システムは、柔軟な設定が可能なため、多品種少量生産にも対応することができます。 品種選定、検査ラインの組み方、画像処理方法などをしっかりと精査することで、費用対効果の出る自動化を実現しましょう。 導入事例を参考にしたり、専門家の意見を聞くことも役立ちます。 7.まとめ AI外観検査は、外観検査の自動化と品質向上に大きく寄与する技術です。 省人化によるコスト削減、検査品質の向上など、多くのメリットがあります。 一方で、導入前には詳細な検討をおこない、実際に費用対効果が出る形で導入を進めていく必要があります。 船井総研では、AI外観検査の自動化コンサルティングをおこなっております。要件定義から機器選定、補助金活用~導入後の運用支援まで、一貫して導入のお手伝いをさせていただいております。 株式会社船井総合研究所は、AI外観検査導入をトータルでサポートする会社です。 ご興味のある方は以下の無料経営相談をご活用ください。画像検査専門のコンサルタントが対応させていただきます。 気軽にご相談ください。 ⇒経営相談はこちら いつもご愛読いただきありがとうございます。 製造業における、製品の品質管理は企業の信頼性を担保する重要な要素ですが、従来の手作業による検査は効率面や品質の均一性において課題が残されているケースが多くあります。 本記事では、AIを活用した外観検査の自動化について、その効果を最大限に引き出す方法をご紹介いたします。 AI外観検査の基本的な概要から導入メリット、よくある誤解、導入プロセスやよくあるFAQまで詳しく解説いたします。 本記事をお読みいただくことで、AI外観検査の基礎から導入方法までを包括的に理解することができます。外観検査の効率化を検討中の企業様は、ぜひ最後までご一読ください。 1.AI外観検査とは? 外観検査は、製品が仕様通りの外観を保っているかを確認する工程です。品質管理において、外観検査は非常に重要です。まずは、AIを活用した外観検査について解説していきます。 1-1.AIとは AI(人工知能)とは、人間の知能を模倣し、データ解析や学習を行うシステムです。AIはディープラーニングなどの技術を活用して、大量のデータを解析し、人間と同等、あるいはそれ以上の精度で判断を行います。AI技術は医療、金融、製造業などさまざまな分野で利用されており、特に画像認識や異常検知の分野で高い精度を誇ります。 AIは、膨大なデータを分析し、そこから特徴を抽出することで、人間の感覚に近い判断を下せるように教育されています。 AIの歴史は1950年代にさかのぼります。当初は理論的な研究が主でしたが、現在では実用的な応用が進んでいます。2022年11月30日にはChatGPTがリリースされ、AIの実用性は加速的に高まっています。画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で大きな成果を上げており、製造業でもその適用範囲が広がっています。 例えば、お客様とのコミュニケーションを自動化するAIチャットボットや、製造工程の最適化に貢献するAIソリューションなど、様々な分野でAIが活躍しています。 1-2.AI外観検査とは AI外観検査は、製品の外観をAI技術を用いて自動的に検査する方法です。具体的には、カメラで撮影された画像をAIが解析し、不良箇所や不良を検出します。AIの学習方法にもよりますが、従来の目視検査やルールベースの画像検査と異なり、AI自体に不良データを学習させ、製品の良否判定をおこなわせることもできます。 AI外観検査は、特に大量生産をおこなっている工場で非常に有効です。例えば、自動車部品の製造ラインでは、毎分数百個の部品が生産されますが、このすべてを人間が目視で検査することは現実的ではありません。AI外観検査を導入することで、即時に大量の部品を検査することができ、生産性が大幅に向上します。 AI外観検査は、異物の混入や、製品のキズ、欠け、打痕、バリ、ムラなどを検出することができます。 1-3.AI外観検査と従来の外観検査⼿法との違い 従来の目視検査は、人間の経験や勘に頼る部分が大きく、検査をおこなう人や、その人の状態などによって検査結果にばらつきが生じやすいという欠点があります。特に検査員が疲労している場合や、スキルにばらつきがある場合、不良品を見逃すリスクが高まります。これに対し、AI外観検査は一定の基準に従って一貫した検査を行うため、信頼性が高いと言えます。 また、従来の画像検査システムでは、あらかじめ決められたルールに基づいて不良を検知します。しかし、作業員の経験に頼るような、難易度の高い外観検査を自動化する場合は、不良のモデル化が困難であるという欠点がありました。AI外観検査は、機械学習アルゴリズムを使用してデータから学習をおこなうため、不良のモデル化が難しい、曖昧な不良パターンの自動化にも対応することができます。 AI外観検査では、正常な製品画像と異常な製品画像をAIに学習させることで、異常個所を自動的に検出する仕組みになっています。 AI外観検査の導入には初期コストがかかりますが、長期的に見れば検査の効率が向上し、不良品の減少によるコスト削減効果が期待できます。AI外観検査を導入することで、品質管理のレベルが向上し、製品の信頼性を高めることができます。 AI外観検査導入の際には、対象製品において不良の検出が可能かどうか、事前に検証をおこなう必要があります。 2.AI外観検査の2つのメリット AI外観検査には、以下の2つのメリットがあります。 省人化によるコスト削減と生産性向上 検査品質の向上と均一化 それぞれ詳しく見ていきましょう。 2-1.AI外観検査のメリット①:省人化によるコスト削減と生産性向上 AI外観検査を導入することで、人手による検査が不要となり、人件費の大幅な削減が可能です。時間や人手のかかっている作業を選定し、自動化することができれば、浮かせた工数分、人件費を削減することができます。また、製造ラインを24時間稼働させることもできるようになるため、さらなる生産性向上が期待できます。 さらに検査を自動化することで、検査員をより付加価値の高い業務に配置することが可能になります。例えば、生産ラインの監視や機械の保守、オペレーションの最適化など、より付加価値の高い業務に集中することができます。これにより、工場全体の生産性向上と業務効率化を図ることができます。 AI外観検査は、繰り返し作業の自動化に役立ち、従業員がより創造的な業務に集中することを可能にします。 2-2.AI外観検査のメリット②:検査品質の向上と均一化 AI外観検査は、設定された基準に基づいて検査をおこないます。人間の疲労や主観によるばらつきを防ぎ、精度高く検査をおこなうことができます。 検査の精度向上は、製品の品質安定化に繋がり、お客様の満足度向上に大きく貢献します。 AI外観検査では、微細なキズや目に見えない欠陥を検出することができます。例えば、プリント基板の微細なクラックや汚れ、半導体チップの微細な不良など、人間の目では見逃しがちな不良を検出することができます。 AIは、人間の目では見逃してしまうような微細な傷や異物を、高い精度で検出することができます。 3.AI外観検査の2つのデメリット AI外観検査には既存の検査方法にはないメリットがありますが、いくつかのデメリットや課題も存在します。 高コストの初期導入費用 データの質と量に依存 それぞれ詳しく見ていきましょう。 3-1.AI外観検査のデメリット①:高コストの初期導入費用 AI外観検査システムの導入に際しては、ハードウェア、ソフトウェア、AIモデルの開発費用などの初期投資が必要になります。特に、高度なAIモデルを構築するためには、大量のデータや専門的な知識が必要であり、その開発のためのリソースが求められます。中小企業にとっては、この初期投資が高額であり、導入をためらう要因になるケースがあります。 AI外観検査システムの導入には、もちろん初期費用がかかりますが、長期的な観点から見ると、人件費削減や品質向上による効果が期待できます。 3-2.AI外観検査のデメリット②:データの質と量に依存 AI外観検査の精度は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。適切なデータを収集し、正確にラベル付することが求められます。例えば、不良対象が上手く撮像できていない場合や、撮像データが数十データしかない場合、AIモデルの検査精度は低下し、誤検出や見逃しが発生するリスクが高まります。どんなに質の高いAIを活用しても、適切なデータを収集できていなければ、理想的な外観検査の自動化を実現することは難しいです。 AIモデルの学習には、良品と不良品の画像データが必要となります。 4.「AIによる外観検査」でよくある誤解 AI外観検査の導入提案をしていく中で、残念ながらAIに対する誤解が見られることがあります。よくある例として、「AIは完全無欠であり、人間の介入なしで検査を自動化できる」と考えがちですが、これは誤りです。先ほど記載した通り、AIの精度は学習データに依存しているため、データの質や量が検査結果に影響します。また、環境の変化や新たな不良パターンに対応するための継続的な学習が必要です。さらに、重要な判断には人間の確認が求められることもあります。 例えば、ある自動車メーカーにおいて、学習データが偏っていたり、学習事項を適切に更新していなかったことから、AIが誤った不良検出を多発させた事例があります。AI外観検査システムは常に最新のデータに更新しながら、運用していくことが求められます。また、すべての不良をAIで検出できるわけではないため、特に複雑な検査結果には人間による最終確認が必要です。 AIはあくまでもツールであり、人間の判断を完全に代替できるわけではありません。AIの特性を理解し、適切に使っていくことが重要です。 5.よくある質問 次に、外観検査AIを導入する際によくある質問についてご紹介いたします。 5-1.AI外観検査の導入にはどのくらいのコストがかかりますか? 初期投資としては数百万円から数千万円が一般的です。具体的な費用は、検査対象の規模や求める精度、必要な機能、自動化によって削減できる人件費によっても異なります。費用対効果を考慮し、適切なシステムを選定することが重要です。 AI外観検査システムの価格は、会社や提供するソリューションによって大きく異なります。 5-2.AI外観検査はどのような業界で導入されていますか? AI外観検査は製造業、自動車産業、食品産業、医薬品産業など、多岐にわたる業界で導入されています。特に製造業では、部品の表面検査や組み立て製品の最終検査などで使用され、高精度な検査結果と効率化が期待されています。 AI外観検査は、金属、電子部品、プラスチック、食品、医薬品など、様々な商品の検査に使われています。 6.AIで外観検査をおこなうかどうか?以外の検討事項 6-1.AI以外の検討事項 検査工程を自動化する際は、AIで外観検査をおこなうかどうか?以外にもさまざまな検討事項があります。 例えば、 照明:製品に赤/青/緑/白い光を当てるのか?紫外線を当てるのか? 装置の位置:どの角度から光を照射するのか?どの位置から製品を撮像するのか? 画像ソフト:機械学習をさせるのか?ルールベースで画像認識をさせるのか?AIを使うのか? カメラのスペック:どの程度の解像度のカメラが必要なのか タクトタイム:どのような仕様にすれば理想のタクトタイムが実現できるのか。カメラの台数を増やすのか?より高速処理できる画像ソフトを使うのか?etc… 示した通り、画像検査を自動化する手法は非常に多岐に渡ります。一つ一つを精査し、自社に合った適切な手法を検討することが重要です。 検査対象の特性、要求される精度、速度、そして予算などを考慮して、最適なシステムを選択する必要があります。 6-2.費用対効果の検討 技術的な部分と合わせて検討すべきは、費用対効果の検討です。 自動化といっても、うちは多品種過ぎて費用対効果が出ないのではないか…と考えている企業様もいらっしゃるかと思います。 これらは、自動化品種や検査ラインの組み方、画像処理の方法を工夫することで、多品種でも費用対効果の出る自動化を実現できる可能性があります。 ロボットなどでワーク投入などを自動化させる際は、原則一つのティーチングにおいて一つの製品のみを自動化させることができます。 一つ一つの品種に対してそれぞれティーチングを行う必要があるので、品種追加をしようとすると非常に工数がかかってしまいます。 しかし、外観検査においては、厳密には異なる品種でも、同じ製造ラインにて自動化をおこなうことができます。 これは、外観検査の際に製品に対しておこなう動作が“撮像”であることに起因しています。 製品がカメラの画角に収まっていれば、さまざまな不良データを学習させたり、照射する光の角度や種類を変えることで、同一ラインにて多品種製品の自動化をおこなうことができます。 AI外観検査システムは、柔軟な設定が可能なため、多品種少量生産にも対応することができます。 品種選定、検査ラインの組み方、画像処理方法などをしっかりと精査することで、費用対効果の出る自動化を実現しましょう。 導入事例を参考にしたり、専門家の意見を聞くことも役立ちます。 7.まとめ AI外観検査は、外観検査の自動化と品質向上に大きく寄与する技術です。 省人化によるコスト削減、検査品質の向上など、多くのメリットがあります。 一方で、導入前には詳細な検討をおこない、実際に費用対効果が出る形で導入を進めていく必要があります。 船井総研では、AI外観検査の自動化コンサルティングをおこなっております。要件定義から機器選定、補助金活用~導入後の運用支援まで、一貫して導入のお手伝いをさせていただいております。 株式会社船井総合研究所は、AI外観検査導入をトータルでサポートする会社です。 ご興味のある方は以下の無料経営相談をご活用ください。画像検査専門のコンサルタントが対応させていただきます。 気軽にご相談ください。 ⇒経営相談はこちら

10分でわかる基幹システムの再構築ステップ

2024.07.04

業務効率化、コスト削減、リアルタイムデータの活用など、多くの企業がヒト・モノ・カネの流れを一元管理して可視化するために基幹システムを導入しています。 しかし、基幹システムの導入は必ずしも成功に繋がるわけではありません。 本来の目的を達成できず、中途半端な状態で運用されている事例も少なくありません。 本コラムでは、既存の基幹システムを刷新せずに再構築する際の成功のための具体的なポイントを探ります。 1.導入失敗の原因 まず、なぜ多くの企業が基幹システムの導入に失敗するのか、その原因を探ることから始めましょう。 主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。 ①経営陣のサポート不足 経営陣がプロジェクトに対して十分な理解とサポートができていない場合、プロジェクトが円滑に進まないことがよく起こります。 経営陣の強い想いと覚悟が従業員にうまく伝わっていなかったり、プロジェクトチームへのサポートが欠如していると、予算の確保や意思決定の遅延などに繋がり、その結果プロジェクト全体が停滞したり迷走してしまいます。 ②本来の目的を見失う プロジェクトが進行するうちに、初期の目的や目標を見失うことがよくあります。 特に、ユーザーの声に対して過度に反応しすぎることで、本来の目的から逸脱した機能追加や変更が行われるケースがあります。 このような迷走を避けるためには、常にプロジェクトの基本方針を確認し、目的を見失わないようにすることが重要です。 ③社内合意形成の不足 基幹システムの導入は会社全体の大きな変革をもたらします。 会社全体の動きを適切に捉えるために業務フローを変えなければならないことも生じます。 そのため、全てのステークホルダー間でしっかりと合意形成を行うことが不可欠です。 しかし、これが不十分な場合、部署ごとに異なる期待を持ち、部分最適がぶつかり合い、結果的にシステムが各部門のニーズを満たさなくなることがしばしばあります。 ④要件定義の不備 要件定義が不十分であると、後々のトラブルの原因となります。 具体的なニーズや要件が明確にならないままプロジェクトが進行すると、完成したシステムが実際の業務に適さないものとなる可能性が高くなります。 このような原因で基幹システムをうまく機能させることができていない企業も多いのではないでしょうか。 次に再構築の計画立案について詳しく解説します。 2.再構築の計画立案 基幹システム再構築にチャレンジする際、過去の経験を反省材料として次のステップに活かすことが重要です。 再構築に向けては、以下のステップをしっかりと計画立案することが求められます。 ①プロジェクトチーム結成 基幹システム再構築の成功には、まず経営陣から現場までのすべてのステークホルダーを巻き込んだ強力なプロジェクトチームの結成が不可欠です。 経営陣の強い想いと覚悟をプロジェクトメンバー内で共有します。 ②目的確認 プロジェクトチームが行う最初のステップは、本来の目的を明確に確認することです。 具体的な目的としては、月次決算の早期化、在庫の適正化、個別原価の把握などが挙げられます。 これらの目的を明確にすることで、プロジェクト全体の透明性と信頼性が大いに向上します。 再構築プロジェクトの目的を明確化し、その目的に対する全体の合意を形成します。 このプロセスは、プロジェクトメンバー全員が共通の目標を持ち、一体感を持って取り組むために欠かせません。 明確に定義された目的は、プロジェクトの進行過程での優先順位付けや意思決定において重要な指針となります。 ③現状分析 本来の目的が達成できていない原因を徹底的に洗い出します。 どこに改良が必要なのか、どの部分が再構築の対象になるのかを明確にします。 特に、システムの問題だけでなく、組織的な役割分担や業務フローの課題にも目を向けることが重要です。 各部門のニーズや課題をヒアリングし、全社的な視点で改善ポイントを洗い出します。 ④ステップアッププラン策定 基幹システム再構築の本来の目的を見据え、個々の目標と優先順位を明確に設定します。 一度にすべてを改善するのは難しいため、優先順位をつけて一つずつステップアップしていくことが重要です。 このアプローチは、各部署間の衝突を回避しつつ、全体としての本来の目的に到達するために効果的です。 ⑤要件定義と業務フロー再構築 比較的新しい既存システムの再構築の場合、システム改修は必要最小限にとどめることが重要です。 多くの場合、問題の根本はシステムではなく、組織の役割分担や業務フロー、マスター設計や設定にあります。 現場の業務が滞りなく進むよう、入力支援ツールや設備IoTの活用、BIツールを使った効率的なレポート出力も検討しましょう。 これにより、具体的な改修要件と業務フローが明確になります。 ⑥設計・開発 この段階では、要件定義に基づき具体的な設計と開発作業を行います。 まず、基幹システムの改修を行い、次に業務支援ツールの開発に取り組みます。 同時に、マスターの再設計と再設定も非常に重要です。 これにより、システム全体がより効率的かつ効果的に機能するようになります。 ⑦テスト・シミュレーション 開発が完了したら、順次テストとシミュレーションを実施してシステムの精度を確認します。 また、ユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れ、操作性や機能性を継続的に改善します。 この段階でのポイントは、既に稼働しているシステムを利用した現実的なテスト環境を整え、実際の運用条件に近い設定でシミュレーションを行うことです。 これにより、導入後の問題発生を最小限に抑えることができます。 ⑧稼働・運用定着 最後に、新しいシステムを稼働させ、運用が定着するまでのプロセスを丁寧に管理します。 現行システム再構築の場合、操作に慣れている面もありますが、本来の目的を達成するための新しいマスターと業務フローへのスムーズな移行が不可欠です。 このため、移行スケジュールを詳細に計画し、全社員が新業務に適応できる環境を整備します。 例えば、適切な作業手順書を用意し、全社一丸となったサポート体制を築くことが重要です。 そして、システム稼働後も運用の安定を支えるために継続的なサポート体制を整えます。 定期的なトレーニングやフィードバックの仕組みを導入することで、持続的な改善を実現します。 このように、しっかりと計画立案を行うことで、基幹システム再構築の成功確率を大いに高めることができます。 3.まとめ 基幹システムの再構築は簡単なプロジェクトではありません。 特に多くのステークホルダー間での合意形成が大きな課題となります。 しかし、経営陣の強いサポート、プロジェクトチームによる目的の周知徹底、綿密な計画立案、継続的なテストとフィードバック、そして強固なサポート体制を整えることで、再構築の成功率を大いに高めることができます。 これにより、業務効率の向上、コスト削減、新たなビジネスチャンスの創出といった具体的な利点が期待できます。 是非、積極的にこれらの戦略を実行に移し、企業のさらなる成長と発展を目指していただきたいと思います。 ■関連するセミナーのご案内 製造業の基幹システムリニューアル&再構築戦略! セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115742 【このような方にオススメ】 どんぶり勘定から抜け出し個別原価管理を実現して利益構造を解明したい 紙帳票やEXCEL依存から抜け出して電子帳票化やBI化へと進みたい 複数拠点情報をリアルタイムに把握しデータに基づく経営を実践したい 基幹システムを刷新したばかりなのに上手く使いこなせていない 集めた社内データを生成AIで使い勝手よく利用したい お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115742 業務効率化、コスト削減、リアルタイムデータの活用など、多くの企業がヒト・モノ・カネの流れを一元管理して可視化するために基幹システムを導入しています。 しかし、基幹システムの導入は必ずしも成功に繋がるわけではありません。 本来の目的を達成できず、中途半端な状態で運用されている事例も少なくありません。 本コラムでは、既存の基幹システムを刷新せずに再構築する際の成功のための具体的なポイントを探ります。 1.導入失敗の原因 まず、なぜ多くの企業が基幹システムの導入に失敗するのか、その原因を探ることから始めましょう。 主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。 ①経営陣のサポート不足 経営陣がプロジェクトに対して十分な理解とサポートができていない場合、プロジェクトが円滑に進まないことがよく起こります。 経営陣の強い想いと覚悟が従業員にうまく伝わっていなかったり、プロジェクトチームへのサポートが欠如していると、予算の確保や意思決定の遅延などに繋がり、その結果プロジェクト全体が停滞したり迷走してしまいます。 ②本来の目的を見失う プロジェクトが進行するうちに、初期の目的や目標を見失うことがよくあります。 特に、ユーザーの声に対して過度に反応しすぎることで、本来の目的から逸脱した機能追加や変更が行われるケースがあります。 このような迷走を避けるためには、常にプロジェクトの基本方針を確認し、目的を見失わないようにすることが重要です。 ③社内合意形成の不足 基幹システムの導入は会社全体の大きな変革をもたらします。 会社全体の動きを適切に捉えるために業務フローを変えなければならないことも生じます。 そのため、全てのステークホルダー間でしっかりと合意形成を行うことが不可欠です。 しかし、これが不十分な場合、部署ごとに異なる期待を持ち、部分最適がぶつかり合い、結果的にシステムが各部門のニーズを満たさなくなることがしばしばあります。 ④要件定義の不備 要件定義が不十分であると、後々のトラブルの原因となります。 具体的なニーズや要件が明確にならないままプロジェクトが進行すると、完成したシステムが実際の業務に適さないものとなる可能性が高くなります。 このような原因で基幹システムをうまく機能させることができていない企業も多いのではないでしょうか。 次に再構築の計画立案について詳しく解説します。 2.再構築の計画立案 基幹システム再構築にチャレンジする際、過去の経験を反省材料として次のステップに活かすことが重要です。 再構築に向けては、以下のステップをしっかりと計画立案することが求められます。 ①プロジェクトチーム結成 基幹システム再構築の成功には、まず経営陣から現場までのすべてのステークホルダーを巻き込んだ強力なプロジェクトチームの結成が不可欠です。 経営陣の強い想いと覚悟をプロジェクトメンバー内で共有します。 ②目的確認 プロジェクトチームが行う最初のステップは、本来の目的を明確に確認することです。 具体的な目的としては、月次決算の早期化、在庫の適正化、個別原価の把握などが挙げられます。 これらの目的を明確にすることで、プロジェクト全体の透明性と信頼性が大いに向上します。 再構築プロジェクトの目的を明確化し、その目的に対する全体の合意を形成します。 このプロセスは、プロジェクトメンバー全員が共通の目標を持ち、一体感を持って取り組むために欠かせません。 明確に定義された目的は、プロジェクトの進行過程での優先順位付けや意思決定において重要な指針となります。 ③現状分析 本来の目的が達成できていない原因を徹底的に洗い出します。 どこに改良が必要なのか、どの部分が再構築の対象になるのかを明確にします。 特に、システムの問題だけでなく、組織的な役割分担や業務フローの課題にも目を向けることが重要です。 各部門のニーズや課題をヒアリングし、全社的な視点で改善ポイントを洗い出します。 ④ステップアッププラン策定 基幹システム再構築の本来の目的を見据え、個々の目標と優先順位を明確に設定します。 一度にすべてを改善するのは難しいため、優先順位をつけて一つずつステップアップしていくことが重要です。 このアプローチは、各部署間の衝突を回避しつつ、全体としての本来の目的に到達するために効果的です。 ⑤要件定義と業務フロー再構築 比較的新しい既存システムの再構築の場合、システム改修は必要最小限にとどめることが重要です。 多くの場合、問題の根本はシステムではなく、組織の役割分担や業務フロー、マスター設計や設定にあります。 現場の業務が滞りなく進むよう、入力支援ツールや設備IoTの活用、BIツールを使った効率的なレポート出力も検討しましょう。 これにより、具体的な改修要件と業務フローが明確になります。 ⑥設計・開発 この段階では、要件定義に基づき具体的な設計と開発作業を行います。 まず、基幹システムの改修を行い、次に業務支援ツールの開発に取り組みます。 同時に、マスターの再設計と再設定も非常に重要です。 これにより、システム全体がより効率的かつ効果的に機能するようになります。 ⑦テスト・シミュレーション 開発が完了したら、順次テストとシミュレーションを実施してシステムの精度を確認します。 また、ユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れ、操作性や機能性を継続的に改善します。 この段階でのポイントは、既に稼働しているシステムを利用した現実的なテスト環境を整え、実際の運用条件に近い設定でシミュレーションを行うことです。 これにより、導入後の問題発生を最小限に抑えることができます。 ⑧稼働・運用定着 最後に、新しいシステムを稼働させ、運用が定着するまでのプロセスを丁寧に管理します。 現行システム再構築の場合、操作に慣れている面もありますが、本来の目的を達成するための新しいマスターと業務フローへのスムーズな移行が不可欠です。 このため、移行スケジュールを詳細に計画し、全社員が新業務に適応できる環境を整備します。 例えば、適切な作業手順書を用意し、全社一丸となったサポート体制を築くことが重要です。 そして、システム稼働後も運用の安定を支えるために継続的なサポート体制を整えます。 定期的なトレーニングやフィードバックの仕組みを導入することで、持続的な改善を実現します。 このように、しっかりと計画立案を行うことで、基幹システム再構築の成功確率を大いに高めることができます。 3.まとめ 基幹システムの再構築は簡単なプロジェクトではありません。 特に多くのステークホルダー間での合意形成が大きな課題となります。 しかし、経営陣の強いサポート、プロジェクトチームによる目的の周知徹底、綿密な計画立案、継続的なテストとフィードバック、そして強固なサポート体制を整えることで、再構築の成功率を大いに高めることができます。 これにより、業務効率の向上、コスト削減、新たなビジネスチャンスの創出といった具体的な利点が期待できます。 是非、積極的にこれらの戦略を実行に移し、企業のさらなる成長と発展を目指していただきたいと思います。 ■関連するセミナーのご案内 製造業の基幹システムリニューアル&再構築戦略! セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115742 【このような方にオススメ】 どんぶり勘定から抜け出し個別原価管理を実現して利益構造を解明したい 紙帳票やEXCEL依存から抜け出して電子帳票化やBI化へと進みたい 複数拠点情報をリアルタイムに把握しデータに基づく経営を実践したい 基幹システムを刷新したばかりなのに上手く使いこなせていない 集めた社内データを生成AIで使い勝手よく利用したい お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115742

売り上げも収益も上げる営業変革のポイントとは

2024.07.01

1.はじめに いつも大変お世話になっております。船井総合研究所の高階と申します。 今回のコラムでは、様々なお客様からご要望があった“業績向上に繋がる“営業改革の取り組みについてご紹介したいと思います。 私は基幹システムを中心にした業務改革の支援を中心に活動しているのですが、実は営業に関する改善支援も多く行っています。 規模は中小、中堅、大手と様々なお客様とお話をしていますが、実は悩みは似通っていることが多いです。 支援先の営業管理者・担当者の皆様の悩みを聞くたびに、私も営業出身だったという事もあり首が取れそうなほど頷いてしまいます。 少し、例を挙げてみようと思います。 皆様の会社ではどうでしょうか。 営業は事務処理に追われている。管理者側はもっと営業活動に時間を使ってほしいと要望を出しているが、現場は無茶な要求だと感じているようで動きが悪い 営業日報や週報を書いてもらっているが、担当者によって記載される内容粒度に差がある。まとめ書き・まとめて提出なども横行しており、意味を為していない 営業所や事業部によって使用している営業管理システムが違うため、統括する部署からすると参照先が複数あるなど管理が煩雑 営業管理システムを入れてはみたが、業績が上がらなかった。現在はちゃんと使われているか不明 案件の進捗は属人的な管理になっている。エクセルで一覧管理するなどしてはいるが、更新が随時行われているわけではないため、詳しくは直接聞くしかない 既存のお客様との関係構築が最重要課題だが、顧客情報や商談履歴、見積もり履歴などは担当者別に管理している状況の為、ブラックボックス化している 営業指標の確認をもっと簡単に行いたい。時間もかかる上に、複雑すぎるように感じる …etc. DXというワードが飛び交っている現在でも、企業規模や悩みの大きさこそ違えど、どの企業も似たような悩みを持っているのだな、というのが私の感想です。 2.「Excel依存」「属人化」のリスク回避に成功した製造業の事例 上記のような課題を少しマクロな目線でまとめてみます。 オープンにするべき情報のブラックボックス化(営業活動の属人化) 既存業務をスクラップ&ビルドできていない(業務負荷・分担) 営業情報や重要指標が簡単に確認できないため、マネジメント不全が起きている(情報共有) 部分的なデジタル化の弊害による二重・三重入力(業務効率) などが挙げられると考えています。 こういった課題は、特に複数事業部や複数営業所(営業部)を持つ企業では深刻になりがちです。 そもそも日本では事業部制を取る企業が多く、縦割りが強い企業が多いです。 部門によって導入しているツールが違う、案件のまとめ方も案件のステージ定義も営業の進め方も標準化されていない、目標指標の立て方も管理方法も報告内容も統一されていない、といったケースは珍しくありません。 同じ会社にもかかわらず中小企業がいくつも集まっているような状況になってしまい、前述の課題を加速させてしまっているわけです。 また、こういった問題を解決すべく、営業管理システム(SFA,CRM,MA)を導入されている会社様も近年は非常に多いのですが、正直中々上手くいっていない、というのが現状です。 営業管理システムの導入というのは、営業活動を1つのデータベースにまとめ、営業活動や顧客情報をオープンに管理しようという事です。これ自体は非常に素晴らしい判断だと言えます。 しかし、実際は中々定着せずに徐々に使われなくなっていき、結局業績向上に繋がっていないケースが非常に多いのです。 先ほど挙げた4つの課題と照らし合わせれば理由は明白なのですが、既存業務の整理が終わっていないことで、新しい業務が受け入れづらい(現場の負担が純粋に増える)こと、そして、そもそもこの独立色の強い縦割りの社内環境を変革できていないことが成功していない要因だと私は考えています。 では、どうすれば業績に繋がる活動になるのでしょうか? 3.どうすれば業績に繋がる活動になるのか SalesForce社のTheModelというのを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。定量的に営業活動を管理し、マネジメントするポイントを明確にすることで業績向上、顧客満足度の向上に繋げましょう、という考え方です。 この考え方はシンプルながら、いままで感覚的に行われてきた営業マネジメントに一石を投じる考え方でした。 これを行うには定量的なデータが必要ですから、営業活動を一つのデータベースにまとめよう、という営業管理システムは売れに売れました。 この営業を定量的に管理する手法には私も賛成なのですが、様々な支援をする中でこれだけでは不十分であると感じています。 前述の通り、営業管理システムを単独で通常の業務にプラスオンする形で導入してしまうとほぼ上手くいきません。 導入はともかく、活用するまでに至らず、業績に繋がらないばかりかむしろ生産性を下げてしまいかねないというわけです。 私としては、現状業務の非効率性や、他で導入しているシステムとの連携といった業務効率改善(ツールを使えるような土壌整理)を基本としたうえで、しっかりと“活用”と“改善活動”に焦点を当てたツールの選定と導入をおススメします。 こういった準備を進めるなかで、是非重要視していただきたいのが“生産効率”についてです。 TheModelは売り上げを上げるために必要な要素をちゃんとマネジメントしよう、という考え方ですが、同じ売り上げを上げるのにどれだけの労力を割いているのか、という点に注目していただきたいという事です。 繰り返し作業(定型業務) 二重三重入力 戻り作業と修正業務 無駄な待ち時間 習慣的な業務(昔は重要だったが、今はさほど重要性が高くない) 恐らくこういった事が工数を最適化するにあたっての課題として思い浮かぶのではないでしょうか。 今はRPAやAIといった自動化に繋がる技術や、生成AIのようなツールも多く出てきています。 こういったものも検討しつつ、無駄のない、あるべき業務フローを検討することが営業を効率化させるために絶対的に必要な要素だと私は考えています。 4.どうすれば業績に繋がる活動になるのか さて、今回はどうすれば“業績向上”につながる営業変革ができるのか、という事をお話してきました。 7月の9,10、18日の3日間、今回のコラムのように、営業変革をテーマにセミナーを開催予定です。 もう少し詳細な現在のトレンドの紹介、成功されている企業様の具体的な取り組み事例などをご紹介させていただきます。 今回のセミナーには無料の相談ミーティングも付いてきますので、その場では皆様個別に抱えている課題などに対してもアドバイスが出来るかと思います。 また、最後に少し触れたAI技術の営業活用についても多くご紹介させていただきますので、ご興味のある方は是非ご参加いただければと思います。 ■関連するセミナーのご案内 複数事業部&複数営業所を持つ製造業・商社のためのDX 営業マン20人以上、異なる3事業部以上、営業所3拠点以上を展開する製造業・商社のDXとは? セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115062 お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115062 1.はじめに いつも大変お世話になっております。船井総合研究所の高階と申します。 今回のコラムでは、様々なお客様からご要望があった“業績向上に繋がる“営業改革の取り組みについてご紹介したいと思います。 私は基幹システムを中心にした業務改革の支援を中心に活動しているのですが、実は営業に関する改善支援も多く行っています。 規模は中小、中堅、大手と様々なお客様とお話をしていますが、実は悩みは似通っていることが多いです。 支援先の営業管理者・担当者の皆様の悩みを聞くたびに、私も営業出身だったという事もあり首が取れそうなほど頷いてしまいます。 少し、例を挙げてみようと思います。 皆様の会社ではどうでしょうか。 営業は事務処理に追われている。管理者側はもっと営業活動に時間を使ってほしいと要望を出しているが、現場は無茶な要求だと感じているようで動きが悪い 営業日報や週報を書いてもらっているが、担当者によって記載される内容粒度に差がある。まとめ書き・まとめて提出なども横行しており、意味を為していない 営業所や事業部によって使用している営業管理システムが違うため、統括する部署からすると参照先が複数あるなど管理が煩雑 営業管理システムを入れてはみたが、業績が上がらなかった。現在はちゃんと使われているか不明 案件の進捗は属人的な管理になっている。エクセルで一覧管理するなどしてはいるが、更新が随時行われているわけではないため、詳しくは直接聞くしかない 既存のお客様との関係構築が最重要課題だが、顧客情報や商談履歴、見積もり履歴などは担当者別に管理している状況の為、ブラックボックス化している 営業指標の確認をもっと簡単に行いたい。時間もかかる上に、複雑すぎるように感じる …etc. DXというワードが飛び交っている現在でも、企業規模や悩みの大きさこそ違えど、どの企業も似たような悩みを持っているのだな、というのが私の感想です。 2.「Excel依存」「属人化」のリスク回避に成功した製造業の事例 上記のような課題を少しマクロな目線でまとめてみます。 オープンにするべき情報のブラックボックス化(営業活動の属人化) 既存業務をスクラップ&ビルドできていない(業務負荷・分担) 営業情報や重要指標が簡単に確認できないため、マネジメント不全が起きている(情報共有) 部分的なデジタル化の弊害による二重・三重入力(業務効率) などが挙げられると考えています。 こういった課題は、特に複数事業部や複数営業所(営業部)を持つ企業では深刻になりがちです。 そもそも日本では事業部制を取る企業が多く、縦割りが強い企業が多いです。 部門によって導入しているツールが違う、案件のまとめ方も案件のステージ定義も営業の進め方も標準化されていない、目標指標の立て方も管理方法も報告内容も統一されていない、といったケースは珍しくありません。 同じ会社にもかかわらず中小企業がいくつも集まっているような状況になってしまい、前述の課題を加速させてしまっているわけです。 また、こういった問題を解決すべく、営業管理システム(SFA,CRM,MA)を導入されている会社様も近年は非常に多いのですが、正直中々上手くいっていない、というのが現状です。 営業管理システムの導入というのは、営業活動を1つのデータベースにまとめ、営業活動や顧客情報をオープンに管理しようという事です。これ自体は非常に素晴らしい判断だと言えます。 しかし、実際は中々定着せずに徐々に使われなくなっていき、結局業績向上に繋がっていないケースが非常に多いのです。 先ほど挙げた4つの課題と照らし合わせれば理由は明白なのですが、既存業務の整理が終わっていないことで、新しい業務が受け入れづらい(現場の負担が純粋に増える)こと、そして、そもそもこの独立色の強い縦割りの社内環境を変革できていないことが成功していない要因だと私は考えています。 では、どうすれば業績に繋がる活動になるのでしょうか? 3.どうすれば業績に繋がる活動になるのか SalesForce社のTheModelというのを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。定量的に営業活動を管理し、マネジメントするポイントを明確にすることで業績向上、顧客満足度の向上に繋げましょう、という考え方です。 この考え方はシンプルながら、いままで感覚的に行われてきた営業マネジメントに一石を投じる考え方でした。 これを行うには定量的なデータが必要ですから、営業活動を一つのデータベースにまとめよう、という営業管理システムは売れに売れました。 この営業を定量的に管理する手法には私も賛成なのですが、様々な支援をする中でこれだけでは不十分であると感じています。 前述の通り、営業管理システムを単独で通常の業務にプラスオンする形で導入してしまうとほぼ上手くいきません。 導入はともかく、活用するまでに至らず、業績に繋がらないばかりかむしろ生産性を下げてしまいかねないというわけです。 私としては、現状業務の非効率性や、他で導入しているシステムとの連携といった業務効率改善(ツールを使えるような土壌整理)を基本としたうえで、しっかりと“活用”と“改善活動”に焦点を当てたツールの選定と導入をおススメします。 こういった準備を進めるなかで、是非重要視していただきたいのが“生産効率”についてです。 TheModelは売り上げを上げるために必要な要素をちゃんとマネジメントしよう、という考え方ですが、同じ売り上げを上げるのにどれだけの労力を割いているのか、という点に注目していただきたいという事です。 繰り返し作業(定型業務) 二重三重入力 戻り作業と修正業務 無駄な待ち時間 習慣的な業務(昔は重要だったが、今はさほど重要性が高くない) 恐らくこういった事が工数を最適化するにあたっての課題として思い浮かぶのではないでしょうか。 今はRPAやAIといった自動化に繋がる技術や、生成AIのようなツールも多く出てきています。 こういったものも検討しつつ、無駄のない、あるべき業務フローを検討することが営業を効率化させるために絶対的に必要な要素だと私は考えています。 4.どうすれば業績に繋がる活動になるのか さて、今回はどうすれば“業績向上”につながる営業変革ができるのか、という事をお話してきました。 7月の9,10、18日の3日間、今回のコラムのように、営業変革をテーマにセミナーを開催予定です。 もう少し詳細な現在のトレンドの紹介、成功されている企業様の具体的な取り組み事例などをご紹介させていただきます。 今回のセミナーには無料の相談ミーティングも付いてきますので、その場では皆様個別に抱えている課題などに対してもアドバイスが出来るかと思います。 また、最後に少し触れたAI技術の営業活用についても多くご紹介させていただきますので、ご興味のある方は是非ご参加いただければと思います。 ■関連するセミナーのご案内 複数事業部&複数営業所を持つ製造業・商社のためのDX 営業マン20人以上、異なる3事業部以上、営業所3拠点以上を展開する製造業・商社のDXとは? セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115062 お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/115062

「Excel依存」「属人化」の放置に潜む3つのリスク

2024.07.01

1.「Excel依存」「属人化」の放置に潜む3つのリスクとは? 今回は製造業の現場で問題となっている 「Excel依存」と「属人化」に関するリスクについてご紹介いたします。 これらの問題を放置すると、 企業全体の効率や信頼性に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。 以下に、その具体的なリスクを3つに分けて解説させていただきます。 1. データの一貫性と信頼性の低下 Excelは手軽に使用できる反面、手動によるデータ入力や加工が多くなります。 そのため、入力ミスや計算ミスが発生しやすく、データの一貫性や信頼性が低下するリスクがあります。 特に製造業では、正確なデータが製品品質や生産効率に直結するため、 このようなミスは重大なトラブルを引き起こす可能性があります。 2. 業務の非効率化とブラックボックス化 属人化が進むと、特定の社員だけが業務の詳細を把握している状態が生まれます。 この状況は「業務のブラックボックス化」を招き、 その社員が休暇や退職した場合に、 業務の引き継ぎがスムーズに行えなくなります。 結果として、業務が遅延し、全体の効率が低下するリスクが高まります。 3. システムの老朽化と技術負債の累積 長期間にわたりExcelに依存したシステムを使用していると、 次第にそれが古くなり、システム自体の更新が困難になるケースが増えます。 この「技術負債」が蓄積されると、今後のシステム拡張や改善が難しくなり、 企業自体の成長を妨げる大きな障害となります。 上記のリスクを避けるためには、 はじめに「自社の業務プロセス・業務ルールの見直し」が不可欠です。 その上で、クラウドベースのERPシステムや専用の製造業向けソフトウェアを導入することで、 これらの問題を大幅に軽減できます。 また、社員間での情報共有を積極的に行い、業務の属人化を防ぐことも重要です。 ここで、「Excel依存」と「属人化」の回避に成功した企業様の概要ならびに 取り組みのBefore/Afterについて、簡単にご紹介したいと思います。 2.「Excel依存」「属人化」のリスク回避に成功した製造業の事例 <成功企業様の概要> 本社:岩手県花巻市 主な事業:電動ドライバー用「自動ネジ・ボルト・ナット保持装置」の開発と製品販売 従業員数(直近):10 名台 一元管理システム導入のBefore/After 【Before(システム導入前の状態と主な課題)】 ①既存システムとExcelにおいて二重三重入力が発生している。 ②現場担当者がそれぞれ異なるフォーマットのExcelや紙伝票を使用している。 ③設計データと既存システムがバラバラに管理されている。 ④発注は在庫を見て感覚で発注している。 ⑤製品に紐づく材料費・労務費・経費等の「製品別原価」が十分に管理できていない。 ⑥在庫の把握は毎月の棚卸で把握している。 ⑦月末在庫金額の計算もExcel上で計算しており、Excelのメンテナンスが必要。 ⑧社内資料は複数Excelを合算して作成している。 ⑨システム運用ルールが明確でない。 【After(システム導入後の主な効果)】 ①各種データを一元化&二重三重入力を排除し業務を効率化! ②ERP導入をきっかけに、既存のExcelや既存伝票の見直し・標準化・効率化を推進! ③設計データとERPを(手動)連携することで、BOMと原価が見える化! ④システムにて発注数を計算。自動発注が可能に! ⑤「製品別の個別原価管理」が可能に! ⑥システム内で理論在庫の把握が可能に! ⑦在庫金額もシステムにて自動計算が可能に! ⑧ボタン1つでデータ出力が可能に! ⑨ERP導入をきっかけに運用ルールを定めることで、誰でも同じ作業が出来るように!(標準化/属人化の排除) 上記の取り組み全体を通して、 元々はバラバラのExcelを駆使して販売・購買・在庫・生産・会計等を管理していたが、全社一丸となりシステムによる統合一元管理を実現した ERPシステム(業務の一元管理システム)の導入を通じて「脱・Excel管理」「脱・紙伝票管理」を実現した という成果をあげることができました。 では、なぜこのような成果をあげることができたのでしょうか? ここまでお読みいただいた皆様の中には、 ・さらに詳しく話を聞いてみたい! ・自社で上手くいっていない理由を探りたい! ・当事者の生の声を直接聞きたい! という方もいらっしゃるかと思います。 そのような皆様のお声にお応えするべく、 船井総研では今回新たにセミナーを企画させていただきました。 特別ゲスト講師として、当事者である“経営者様”に直接お話をしていただくセミナーです。 詳細は以下のURLより是非ご覧ください。 ■関連するセミナーのご案内 「”脱”Excel管理」「”脱”紙伝票管理」を実現し生産性アップ!~ セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 【事例講座】ERP導入を通じて「“脱”Excel管理」「“脱”属人化」を実現!機械加工業における生産性アップの最新事例を大公開! ERP導入により、散在していたデータを一元管理! ERP導入により、データの入力を入口から一本化! 手作業で行っていた社内資料がボタン1つで自動化! ERP導入と合わせて運用ルールを明確に! 運用ルールを定めることで、誰でも同じ作業ができるように!(標準化/属人化の排除) 船井総合研究所コンサルタントによる事例解説 株式会社 SAWA 代表取締役 澤村 英朗 氏 株式会社 船井総合研究所 AI・ロボット・ERP支援部 岩松 将史 お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 ▼レポート無料ダウンロード お申し込みはこちら▼ 1.「Excel依存」「属人化」の放置に潜む3つのリスクとは? いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。 今回は製造業の現場で問題となっている 「Excel依存」と「属人化」に関するリスクについてご紹介いたします。 これらの問題を放置すると、 企業全体の効率や信頼性に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。 以下に、その具体的なリスクを3つに分けて解説させていただきます。 1. データの一貫性と信頼性の低下 Excelは手軽に使用できる反面、手動によるデータ入力や加工が多くなります。 そのため、入力ミスや計算ミスが発生しやすく、データの一貫性や信頼性が低下するリスクがあります。 特に製造業では、正確なデータが製品品質や生産効率に直結するため、 このようなミスは重大なトラブルを引き起こす可能性があります。 2. 業務の非効率化とブラックボックス化 属人化が進むと、特定の社員だけが業務の詳細を把握している状態が生まれます。 この状況は「業務のブラックボックス化」を招き、 その社員が休暇や退職した場合に、 業務の引き継ぎがスムーズに行えなくなります。 結果として、業務が遅延し、全体の効率が低下するリスクが高まります。 3. システムの老朽化と技術負債の累積 長期間にわたりExcelに依存したシステムを使用していると、 次第にそれが古くなり、システム自体の更新が困難になるケースが増えます。 この「技術負債」が蓄積されると、今後のシステム拡張や改善が難しくなり、 企業自体の成長を妨げる大きな障害となります。 上記のリスクを避けるためには、 はじめに「自社の業務プロセス・業務ルールの見直し」が不可欠です。 その上で、クラウドベースのERPシステムや専用の製造業向けソフトウェアを導入することで、 これらの問題を大幅に軽減できます。 また、社員間での情報共有を積極的に行い、業務の属人化を防ぐことも重要です。 ここで、「Excel依存」と「属人化」の回避に成功した企業様の概要ならびに 取り組みのBefore/Afterについて、簡単にご紹介したいと思います。 2.「Excel依存」「属人化」のリスク回避に成功した製造業の事例 <成功企業様の概要> 本社:岩手県花巻市 主な事業:電動ドライバー用「自動ネジ・ボルト・ナット保持装置」の開発と製品販売 従業員数(直近):10 名台 一元管理システム導入のBefore/After 【Before(システム導入前の状態と主な課題)】 ①既存システムとExcelにおいて二重三重入力が発生している。 ②現場担当者がそれぞれ異なるフォーマットのExcelや紙伝票を使用している。 ③設計データと既存システムがバラバラに管理されている。 ④発注は在庫を見て感覚で発注している。 ⑤製品に紐づく材料費・労務費・経費等の「製品別原価」が十分に管理できていない。 ⑥在庫の把握は毎月の棚卸で把握している。 ⑦月末在庫金額の計算もExcel上で計算しており、Excelのメンテナンスが必要。 ⑧社内資料は複数Excelを合算して作成している。 ⑨システム運用ルールが明確でない。 【After(システム導入後の主な効果)】 ①各種データを一元化&二重三重入力を排除し業務を効率化! ②ERP導入をきっかけに、既存のExcelや既存伝票の見直し・標準化・効率化を推進! ③設計データとERPを(手動)連携することで、BOMと原価が見える化! ④システムにて発注数を計算。自動発注が可能に! ⑤「製品別の個別原価管理」が可能に! ⑥システム内で理論在庫の把握が可能に! ⑦在庫金額もシステムにて自動計算が可能に! ⑧ボタン1つでデータ出力が可能に! ⑨ERP導入をきっかけに運用ルールを定めることで、誰でも同じ作業が出来るように!(標準化/属人化の排除) 上記の取り組み全体を通して、 元々はバラバラのExcelを駆使して販売・購買・在庫・生産・会計等を管理していたが、全社一丸となりシステムによる統合一元管理を実現した ERPシステム(業務の一元管理システム)の導入を通じて「脱・Excel管理」「脱・紙伝票管理」を実現した という成果をあげることができました。 では、なぜこのような成果をあげることができたのでしょうか? ここまでお読みいただいた皆様の中には、 ・さらに詳しく話を聞いてみたい! ・自社で上手くいっていない理由を探りたい! ・当事者の生の声を直接聞きたい! という方もいらっしゃるかと思います。 そのような皆様のお声にお応えするべく、 船井総研では今回新たにセミナーを企画させていただきました。 特別ゲスト講師として、当事者である“経営者様”に直接お話をしていただくセミナーです。 詳細は以下のURLより是非ご覧ください。 ■関連するセミナーのご案内 「”脱”Excel管理」「”脱”紙伝票管理」を実現し生産性アップ!~ セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 【事例講座】ERP導入を通じて「“脱”Excel管理」「“脱”属人化」を実現!機械加工業における生産性アップの最新事例を大公開! ERP導入により、散在していたデータを一元管理! ERP導入により、データの入力を入口から一本化! 手作業で行っていた社内資料がボタン1つで自動化! ERP導入と合わせて運用ルールを明確に! 運用ルールを定めることで、誰でも同じ作業ができるように!(標準化/属人化の排除) 船井総合研究所コンサルタントによる事例解説 株式会社 SAWA 代表取締役 澤村 英朗 氏 株式会社 船井総合研究所 AI・ロボット・ERP支援部 岩松 将史 お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 ▼レポート無料ダウンロード お申し込みはこちら▼

「Excelのバケツリレー」あなたの会社でも起こっていませんか?

2024.07.01

1.「Excelのバケツリレー」とは? 突然ですが、「Excelのバケツリレー」という言葉を聞いて、 皆様はどのようなイメージを思い浮かべますか? 「Excelのバケツリレー」という言葉は 正式な単語として世の中に存在しているわけではないですが、 一例として、以下のような事象のことを指します。 【世の中の中堅・中小企業でよく起こっている事象】 毎月実施している「経営会議」や「部門会議」の報告資料を作成する際に、「Excelの継ぎ接ぎ」を繰り返して報告資料を完成させている。 前工程から渡ってきた情報を自部門のExcelに再度手入力したり、コピペしたりしている。 Excel上に情報を入力しようとしたが、不明点が多く、前工程の担当者に都度確認している。 Excelへの入力内容に不備が判明した場合、前工程の担当者へ情報の修正を依頼し、業務のやり直し・二度手間が度々発生している。 自社が「縦割り組織」となっているため、各部門の業務情報をシームレスに繋ぐことができず、やむを得ずにExcelを使って、社内の各部門をまたいで情報の集計を行っている。 いかがでしょうか。 もしかすると、「ウチの会社でもよく起こっているなぁ…」と 思われた方もいらっしゃるかもしれません。 「Excelのバケツリレー」と称した上記の事象ですが、 いずれも生産性の低下に直結する事象のため、 会社全体として解決を図っていく必要があります。 ここで「Excelのバケツリレー」がもたらす弊害について、いくつか挙げてみます。 2.「Excelのバケツリレー」がもたらす弊害とは? 「Excelのバケツリレー」がもたらす弊害として、 以下のようなことが挙げられます。 「業務の二度手間・三度手間」が増える 「定型業務に割く時間」が長くなる 「入力ミスの可能性」が増える 「業務の属人化」をもたらす 「部分最適」が減らない 「不正の温床」ができる 本来、限りある業務時間を 付加価値の高い「非定型業務」に充てることが望ましい中、 「Excelのバケツリレー」が常態化している現場では、 それ自体では付加価値を生まない「定型業務」に 業務時間の大半を割いていることになります。 また、「Excelのバケツリレー」は 「システム」ではなく「人間の能力」に依存しているがゆえに、 当然ながら業務上でのミスの可能性も高まります。 と同時に、不正が入り込む余地も生まれてしまいます。 何よりも、「Excelのバケツリレー」に時間を割いているということは、 その分、該当する業務に人件費がかかっているわけです。 1日だけならまだしも、1週間・1か月・1年…と積み重ねていくと、 実に多くの時間とコストを「Excelのバケツリレー」に費やしていることが想像できます。 「毎日格闘しているそのExcel業務は、本当にお客様への付加価値に直結しているのだろうか…」 「あくまで社内の仕組みや業務プロセスの不具合を人力で繕っているに過ぎないのでは…」 「定型業務はシステムに任せて、従業員には“ヒトにしかできない付加価値の高い業務”を担ってほしい…」 本コラムの内容について1つでも思い当たる節がある場合、 是非一度、自社の業務のあり方やルール等を見直してみることをおすすめいたします。 ■関連するセミナーのご案内 「”脱”Excel管理」「”脱”紙伝票管理」を実現し生産性アップ!~ セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 機械加工業における「脱・エクセル」「脱・紙伝票」の手法がわかる! ~現場にExcelや紙伝票が散在しており、二重三重業務が常態化している・・・そんな現場の実態にお悩みの機械加工業社長のためのセミナーです~" お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 1.「Excelのバケツリレー」とは? 突然ですが、「Excelのバケツリレー」という言葉を聞いて、 皆様はどのようなイメージを思い浮かべますか? 「Excelのバケツリレー」という言葉は 正式な単語として世の中に存在しているわけではないですが、 一例として、以下のような事象のことを指します。 【世の中の中堅・中小企業でよく起こっている事象】 毎月実施している「経営会議」や「部門会議」の報告資料を作成する際に、「Excelの継ぎ接ぎ」を繰り返して報告資料を完成させている。 前工程から渡ってきた情報を自部門のExcelに再度手入力したり、コピペしたりしている。 Excel上に情報を入力しようとしたが、不明点が多く、前工程の担当者に都度確認している。 Excelへの入力内容に不備が判明した場合、前工程の担当者へ情報の修正を依頼し、業務のやり直し・二度手間が度々発生している。 自社が「縦割り組織」となっているため、各部門の業務情報をシームレスに繋ぐことができず、やむを得ずにExcelを使って、社内の各部門をまたいで情報の集計を行っている。 いかがでしょうか。 もしかすると、「ウチの会社でもよく起こっているなぁ…」と 思われた方もいらっしゃるかもしれません。 「Excelのバケツリレー」と称した上記の事象ですが、 いずれも生産性の低下に直結する事象のため、 会社全体として解決を図っていく必要があります。 ここで「Excelのバケツリレー」がもたらす弊害について、いくつか挙げてみます。 2.「Excelのバケツリレー」がもたらす弊害とは? 「Excelのバケツリレー」がもたらす弊害として、 以下のようなことが挙げられます。 「業務の二度手間・三度手間」が増える 「定型業務に割く時間」が長くなる 「入力ミスの可能性」が増える 「業務の属人化」をもたらす 「部分最適」が減らない 「不正の温床」ができる 本来、限りある業務時間を 付加価値の高い「非定型業務」に充てることが望ましい中、 「Excelのバケツリレー」が常態化している現場では、 それ自体では付加価値を生まない「定型業務」に 業務時間の大半を割いていることになります。 また、「Excelのバケツリレー」は 「システム」ではなく「人間の能力」に依存しているがゆえに、 当然ながら業務上でのミスの可能性も高まります。 と同時に、不正が入り込む余地も生まれてしまいます。 何よりも、「Excelのバケツリレー」に時間を割いているということは、 その分、該当する業務に人件費がかかっているわけです。 1日だけならまだしも、1週間・1か月・1年…と積み重ねていくと、 実に多くの時間とコストを「Excelのバケツリレー」に費やしていることが想像できます。 「毎日格闘しているそのExcel業務は、本当にお客様への付加価値に直結しているのだろうか…」 「あくまで社内の仕組みや業務プロセスの不具合を人力で繕っているに過ぎないのでは…」 「定型業務はシステムに任せて、従業員には“ヒトにしかできない付加価値の高い業務”を担ってほしい…」 本コラムの内容について1つでも思い当たる節がある場合、 是非一度、自社の業務のあり方やルール等を見直してみることをおすすめいたします。 ■関連するセミナーのご案内 「”脱”Excel管理」「”脱”紙伝票管理」を実現し生産性アップ!~ セミナー詳細・申込はこちらから↓↓↓ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273 機械加工業における「脱・エクセル」「脱・紙伝票」の手法がわかる! ~現場にExcelや紙伝票が散在しており、二重三重業務が常態化している・・・そんな現場の実態にお悩みの機械加工業社長のためのセミナーです~" お申し込みはこちらから⇒ https://www.funaisoken.co.jp/seminar/116273

工場における生産管理システムとは?導入のメリットや注意点について解説!

2024.06.20

1.製造業が抱える課題 製造業においては、効率と品質を追求する中で様々な課題が存在します。その中でも特に以下の点が挙げられます。 需要変動への対応 市場の需要は常に変動しており、それに迅速に対応することが求められますが、非常に困難です。需要予測が難しい場合、過剰な在庫を抱えるリスクや、逆に欠品のリスクが生じてしまいます。 適正在庫の維持 適正在庫の維持は、コスト削減と効率的な生産活動に直結します。過剰在庫は保管コストを増加させ収益性を悪化させますし、欠品は顧客満足度の低下を引き起こし、どちらも経営状況を悪化させてしまう要因となります。 リードタイム短縮 顧客の期待に応えるためには、生産から納品までのリードタイムを短縮することが必要です。実際の工数はどれくらいで、どこにボトルネックがあるのか、それを基にどのような改善活動をしてリードタイムを短縮していくのか。 このような具体的なディスカッションを行うことで、競争力は向上していきます。 作業効率の改善 日本の労働人口はどんどん減少していっています。 この状況を加味すれば、より少ない人数で現状の生産を担保しないといけない時代がやってくることが予想されます。 工場内の作業効率を高め。無駄な動きや待ち時間を最小限に抑えるための改善活動が重要です。 2.生産管理システムとは 上記のような課題を抱える製造業において、生産管理システムというのはこれらの課題を解決するための強力なツールであると言えます。以下にシステム概要と、主な機能を説明しておきます。 2-1.生産管理システムの概要 生産管理システムとは、生産プロセス全体を効率的に管理・コントロールするためのソフトウェアです。 需要予測から生産計画、在庫管理、品質管理まで、多岐にわたる業務を統合的に管理します。 2-2.生産管理システムの主な機能 生産管理システムの機能として、主要な機能は以下のようなものが挙げられます。 需要予測:市場データを基に将来の需要を予測し、生産計画を立てます。 生産計画:効率的な生産スケジュールを作成し、リソースを最適に配分します。 在庫管理:リアルタイムで在庫状況を監視し、適正在庫を維持します。 品質管理:品質基準を設定し、製品がその基準を満たしているかを検査します。 工程管理:各工程の進捗を監視し、問題が発生した場合に迅速に対応します。 2-3.生産管理システムの導入方法 生産管理システムの導入は、以下のステップで進める必要があります。 現状分析:現在の生産プロセスを詳細に分析し、課題を明確にします。 要件定義:システムに求める機能や要件を定義します。 ベンダー選定:要件を満たすシステムを提供するベンダーを選定します。 導入計画:導入スケジュールやトレーニング計画を策定します。 システム導入:実際の導入作業を行い、テストを実施します。 運用開始:操作者・管理者向けのトレーニングを行い、システムの運用を開始します。 3.生産管理システム導入のメリット 生産管理システムを導入することで、多くのメリットが得られます。以下にその具体例をいくつか挙げます。 手作業の削減と間違い防止 手作業によるデータ入力や管理業務を自動化することで、人的ミスを減少させ、業務の正確性が向上します。 適正在庫の維持と過剰在庫抑制 リアルタイムで在庫状況を把握し、適正在庫を維持することで、過剰在庫や欠品のリスクを抑えることができます。 リードタイム短縮と納期遵守向上 生産プロセス全体を効率化することで、リードタイムを短縮し、納期遵守率を向上させます。 生産性と作業効率の大幅改善 各工程の無駄を排除し、作業効率を大幅に改善します。これにより、生産性が向上し、コスト削減が実現します。 ムダな動きや待ち時間の削減 リアルタイム監視とデータ分析により、ムダな動きや待ち時間を最小限に抑えることができます。 4.成功事例 事例1.食品加工 X社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が5%から2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例2.建材製造販売 Y社 Y社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPIや閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例3.機械部品加工 Z社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を30%削減しつつ、欠品率を5%から1%に改善することができました。 5.生産管理システム導入の方法と注意点 生産管理システムを導入する際には、以下の点に注意することが重要です。 現状分析と課題の明確化:導入前に現状を詳細に分析し、解決すべき課題を明確にします。 要件定義の精度:システムに求める要件を正確に定義し、ベンダーとのコミュニケーションを密に行います。 トレーニングの徹底:システム導入後のトレーニングを徹底し、全社員がシステムを活用できるようにします。 継続的な改善:導入後も継続的にデータを分析し、システムの改善点を見つけて対応します。 システムを導入することがゴールではありません。あくまでシステムはツールのひとつですから、いかにどう活用するか、というのこそ重要なポイントと言えます。 6.まとめ 以上のように、生産管理は製造業において非常に重要な業務であり、その効率化や品質向上は企業の競争力を大きく左右します。 生産管理システムを導入することで、多くの課題を解決し、効率的な生産が実現可能です。もちろん、システム導入には慎重な計画と実行が必要ですが、しっかりと導入効果を見据えた上で導入と活用が出来たのであれば、その効果は計り知れません。 今後の製造業の未来を考えれば、生産管理の重要性はますます高まることでしょう。 1.製造業が抱える課題 製造業においては、効率と品質を追求する中で様々な課題が存在します。その中でも特に以下の点が挙げられます。 需要変動への対応 市場の需要は常に変動しており、それに迅速に対応することが求められますが、非常に困難です。需要予測が難しい場合、過剰な在庫を抱えるリスクや、逆に欠品のリスクが生じてしまいます。 適正在庫の維持 適正在庫の維持は、コスト削減と効率的な生産活動に直結します。過剰在庫は保管コストを増加させ収益性を悪化させますし、欠品は顧客満足度の低下を引き起こし、どちらも経営状況を悪化させてしまう要因となります。 リードタイム短縮 顧客の期待に応えるためには、生産から納品までのリードタイムを短縮することが必要です。実際の工数はどれくらいで、どこにボトルネックがあるのか、それを基にどのような改善活動をしてリードタイムを短縮していくのか。 このような具体的なディスカッションを行うことで、競争力は向上していきます。 作業効率の改善 日本の労働人口はどんどん減少していっています。 この状況を加味すれば、より少ない人数で現状の生産を担保しないといけない時代がやってくることが予想されます。 工場内の作業効率を高め。無駄な動きや待ち時間を最小限に抑えるための改善活動が重要です。 2.生産管理システムとは 上記のような課題を抱える製造業において、生産管理システムというのはこれらの課題を解決するための強力なツールであると言えます。以下にシステム概要と、主な機能を説明しておきます。 2-1.生産管理システムの概要 生産管理システムとは、生産プロセス全体を効率的に管理・コントロールするためのソフトウェアです。 需要予測から生産計画、在庫管理、品質管理まで、多岐にわたる業務を統合的に管理します。 2-2.生産管理システムの主な機能 生産管理システムの機能として、主要な機能は以下のようなものが挙げられます。 需要予測:市場データを基に将来の需要を予測し、生産計画を立てます。 生産計画:効率的な生産スケジュールを作成し、リソースを最適に配分します。 在庫管理:リアルタイムで在庫状況を監視し、適正在庫を維持します。 品質管理:品質基準を設定し、製品がその基準を満たしているかを検査します。 工程管理:各工程の進捗を監視し、問題が発生した場合に迅速に対応します。 2-3.生産管理システムの導入方法 生産管理システムの導入は、以下のステップで進める必要があります。 現状分析:現在の生産プロセスを詳細に分析し、課題を明確にします。 要件定義:システムに求める機能や要件を定義します。 ベンダー選定:要件を満たすシステムを提供するベンダーを選定します。 導入計画:導入スケジュールやトレーニング計画を策定します。 システム導入:実際の導入作業を行い、テストを実施します。 運用開始:操作者・管理者向けのトレーニングを行い、システムの運用を開始します。 3.生産管理システム導入のメリット 生産管理システムを導入することで、多くのメリットが得られます。以下にその具体例をいくつか挙げます。 手作業の削減と間違い防止 手作業によるデータ入力や管理業務を自動化することで、人的ミスを減少させ、業務の正確性が向上します。 適正在庫の維持と過剰在庫抑制 リアルタイムで在庫状況を把握し、適正在庫を維持することで、過剰在庫や欠品のリスクを抑えることができます。 リードタイム短縮と納期遵守向上 生産プロセス全体を効率化することで、リードタイムを短縮し、納期遵守率を向上させます。 生産性と作業効率の大幅改善 各工程の無駄を排除し、作業効率を大幅に改善します。これにより、生産性が向上し、コスト削減が実現します。 ムダな動きや待ち時間の削減 リアルタイム監視とデータ分析により、ムダな動きや待ち時間を最小限に抑えることができます。 4.成功事例 事例1.食品加工 X社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が5%から2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例2.建材製造販売 Y社 Y社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPIや閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例3.機械部品加工 Z社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を30%削減しつつ、欠品率を5%から1%に改善することができました。 5.生産管理システム導入の方法と注意点 生産管理システムを導入する際には、以下の点に注意することが重要です。 現状分析と課題の明確化:導入前に現状を詳細に分析し、解決すべき課題を明確にします。 要件定義の精度:システムに求める要件を正確に定義し、ベンダーとのコミュニケーションを密に行います。 トレーニングの徹底:システム導入後のトレーニングを徹底し、全社員がシステムを活用できるようにします。 継続的な改善:導入後も継続的にデータを分析し、システムの改善点を見つけて対応します。 システムを導入することがゴールではありません。あくまでシステムはツールのひとつですから、いかにどう活用するか、というのこそ重要なポイントと言えます。 6.まとめ 以上のように、生産管理は製造業において非常に重要な業務であり、その効率化や品質向上は企業の競争力を大きく左右します。 生産管理システムを導入することで、多くの課題を解決し、効率的な生産が実現可能です。もちろん、システム導入には慎重な計画と実行が必要ですが、しっかりと導入効果を見据えた上で導入と活用が出来たのであれば、その効果は計り知れません。 今後の製造業の未来を考えれば、生産管理の重要性はますます高まることでしょう。

在庫管理の見える化とは?メリットや改善方法、成功事例を解説!

2024.06.20

1.在庫管理の見える化とは? 在庫管理の「見える化」とは、単に在庫を保管しその数量を把握するだけではなく、在庫の流れや動きを可視化し、適正な在庫水準を維持することを指します。 ここでの可視化とは、進捗状況や生産状況をディスプレイで表示し、誰でも簡単に状況を確認できるようにすることです。 これにより、過剰在庫や欠品リスクを最小限に抑え、スムーズな事業運営を実現できます。 例えば、過去の販売データから出荷・出庫量の予測を立て、発注タイミングや発注量を最適化したり、製品ごとの在庫回転率を把握して無駄な備蓄を防止することができます。 単に在庫数字を見るだけでは気づきにくい課題や無駄を、リアルタイムに可視化・分析することで発見し、改善することが可能になるのです。 見える化を実現するためには、適切なツールを選ぶことが大切です。在庫管理システム、BIツール、クラウドサービスなど、様々なツールが存在します。それぞれのツールの特徴を理解し、自社のニーズに合ったツールを選びましょう。 ⇒関連記事:AIによる在庫管理事例!中小製造業編 導入のメリットや導入方法も解説! 2.在庫管理を見える化する3つのメリット 在庫管理を徹底的に「見える化」し、改善活動を行うことで、以下の3つの大きなメリットが期待できます。 2-1)キャッシュフロー改善 見える化によって、皆さんの目の前のディスプレイには会社の在庫数が現在どのような状況なのかを示す資料が映っています。 正確な情報を掴むことで過剰在庫を抑え、運転資金の圧迫を防ぐことができます。 適切な在庫水準を維持することで、無駄なコストを削減し、健全な資金繰りを実現できるでしょう。 在庫管理の見える化は、キャッシュフロー改善に大きく貢献します。在庫の適正化により、在庫にかかる費用(保管費用、保険料など)を削減することができます。 2-2)業務効率化 在庫の流れを正確に把握できるようになり、発注業務の最適化や、倉庫の無駄なスペースの削減などにつながります。 これにより今まで行ってきたアナログな在庫把握手法やルールは最低限で済むため、従業員や在庫管理担当者の作業負荷は大きく軽減され、生産性の向上が見込めます。 また、5s (整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)も促進することができます。さらに、在庫管理システムを導入することで、入庫、出庫、棚卸などの業務を効率化することができます。 2-3)リスク管理の強化 閾値に対する現状の見える化は、欠品リスクや過剰在庫リスクの低減に役立ちます。 これにより、経営リスクを適切にコントロールできるようになります。 事業の継続性と収益性を高められる大きな強みになると言えます。在庫管理の見える化は、リスク管理の強化にも繋がります。例えば、賞味期限切れや在庫の劣化を防ぐことができます。 3.在庫管理を見える化する手法 在庫管理の見える化を実現するには、以下のような取り組みが有効です。 3-1)ITシステムの活用 当然ですが、在庫管理領域の専門の在庫管理システムは存在します。 在庫管理システムは、在庫状況をリアルタイムで把握し、分析することを可能にします。また、システムによっては、発注や入出庫の自動化、在庫の移動管理など、様々な機能が利用できます。 更に、AIなどの活用で需要予測の精度を高め、最適な発注タイミングや発注量を算出できるようになるでしょう。 3-2)KPI設定と管理 在庫回転率などの具体的なKPIを設定し、定期的にモニタリングすることで、適切な在庫水準の維持と改善につなげることが出来るようになります。 ただし、KPIの達成状況も明確に「見える化」し、そこから更に改善サイクルを回すことが重要です。 KPIを設定することで、在庫管理の目標を明確化し、進捗状況を把握することができます。 3-3)人材育成 更に現場従業員の意識改革と、在庫管理に関するスキルの向上を図ることも、在庫状況の見える化には欠かせないポイントの一つです。 教育や研修を実施し、従業員一人ひとりの「見える化」に対する意欲やマインドを醸成する必要がありますデータは集められても、改善活動につながらないようなケースの多くが、この使いこなせる人材を育成できていないためです。在庫管理システムを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ、効果は半減してしまいます。そのため、従業員への教育や研修が重要となります。 4.在庫管理システム導入事例3選 では、具体的な取り組みはどのようなものがあるのでしょうか。 今回は最後に在庫管理システムを上手く活用し、「見える化」を実現した先進企業の事例を3つご紹介します。 事例1.食品加工 X社 X社では、在庫管理システムの導入により、属人的な管理から脱却し、効率的な在庫管理を実現しました。 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要です。 X社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで在庫管理システムの導入に踏み切りました。 専用の在庫管理システムを導入し、発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が5%から2%まで改善。 在庫の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例2.建材製造販売 Y社 Y社では、在庫管理システムと生産管理システムを連携させることで、より精度の高い在庫管理を実現しました。 Y社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 商品在庫の方針として、在庫切れをなるべく避けるような方針が固められており、倉庫に大量の不良在庫や陳腐化在庫が発生しており、その結果、資金繰りが悪化していたという背景がありました。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPIや閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例3.機械部品加工 Z社 Z社では、AIを活用した需要予測システムを導入することで、より高度な在庫管理を実現しました。 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、管理は属人的に行われていました。 その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。 そこで、AIを搭載した高度な需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を30%削減しつつ、欠品率を5%から1%に改善することができました。 5.まとめ 事例でもご紹介した通り、在庫管理の「見える化」は、過剰在庫や欠品リスクの削減、キャッシュフロー改善、業務効率化など、多くのメリットをもたらします。 見える化をするだけでなく、様々なITシステムの活用、KPIを用いた定量的な管理、活用活動の原動力たる従業員教育などを組み合わせて推進することで、着実にあるべき姿を実現していくことが出来ます。 先進企業の事例の通り、「見える化」は企業の収益力と経営基盤を大きく強化する重要な取り組みであると言えます。 ぜひ本気で「見える化」に取り組み、経営課題の解決と競争力の向上を目指してみてください。 1.在庫管理の見える化とは? 在庫管理の「見える化」とは、単に在庫を保管しその数量を把握するだけではなく、在庫の流れや動きを可視化し、適正な在庫水準を維持することを指します。 ここでの可視化とは、進捗状況や生産状況をディスプレイで表示し、誰でも簡単に状況を確認できるようにすることです。 これにより、過剰在庫や欠品リスクを最小限に抑え、スムーズな事業運営を実現できます。 例えば、過去の販売データから出荷・出庫量の予測を立て、発注タイミングや発注量を最適化したり、製品ごとの在庫回転率を把握して無駄な備蓄を防止することができます。 単に在庫数字を見るだけでは気づきにくい課題や無駄を、リアルタイムに可視化・分析することで発見し、改善することが可能になるのです。 見える化を実現するためには、適切なツールを選ぶことが大切です。在庫管理システム、BIツール、クラウドサービスなど、様々なツールが存在します。それぞれのツールの特徴を理解し、自社のニーズに合ったツールを選びましょう。 ⇒関連記事:AIによる在庫管理事例!中小製造業編 導入のメリットや導入方法も解説! 2.在庫管理を見える化する3つのメリット 在庫管理を徹底的に「見える化」し、改善活動を行うことで、以下の3つの大きなメリットが期待できます。 2-1)キャッシュフロー改善 見える化によって、皆さんの目の前のディスプレイには会社の在庫数が現在どのような状況なのかを示す資料が映っています。 正確な情報を掴むことで過剰在庫を抑え、運転資金の圧迫を防ぐことができます。 適切な在庫水準を維持することで、無駄なコストを削減し、健全な資金繰りを実現できるでしょう。 在庫管理の見える化は、キャッシュフロー改善に大きく貢献します。在庫の適正化により、在庫にかかる費用(保管費用、保険料など)を削減することができます。 2-2)業務効率化 在庫の流れを正確に把握できるようになり、発注業務の最適化や、倉庫の無駄なスペースの削減などにつながります。 これにより今まで行ってきたアナログな在庫把握手法やルールは最低限で済むため、従業員や在庫管理担当者の作業負荷は大きく軽減され、生産性の向上が見込めます。 また、5s (整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)も促進することができます。さらに、在庫管理システムを導入することで、入庫、出庫、棚卸などの業務を効率化することができます。 2-3)リスク管理の強化 閾値に対する現状の見える化は、欠品リスクや過剰在庫リスクの低減に役立ちます。 これにより、経営リスクを適切にコントロールできるようになります。 事業の継続性と収益性を高められる大きな強みになると言えます。在庫管理の見える化は、リスク管理の強化にも繋がります。例えば、賞味期限切れや在庫の劣化を防ぐことができます。 3.在庫管理を見える化する手法 在庫管理の見える化を実現するには、以下のような取り組みが有効です。 3-1)ITシステムの活用 当然ですが、在庫管理領域の専門の在庫管理システムは存在します。 在庫管理システムは、在庫状況をリアルタイムで把握し、分析することを可能にします。また、システムによっては、発注や入出庫の自動化、在庫の移動管理など、様々な機能が利用できます。 更に、AIなどの活用で需要予測の精度を高め、最適な発注タイミングや発注量を算出できるようになるでしょう。 3-2)KPI設定と管理 在庫回転率などの具体的なKPIを設定し、定期的にモニタリングすることで、適切な在庫水準の維持と改善につなげることが出来るようになります。 ただし、KPIの達成状況も明確に「見える化」し、そこから更に改善サイクルを回すことが重要です。 KPIを設定することで、在庫管理の目標を明確化し、進捗状況を把握することができます。 3-3)人材育成 更に現場従業員の意識改革と、在庫管理に関するスキルの向上を図ることも、在庫状況の見える化には欠かせないポイントの一つです。 教育や研修を実施し、従業員一人ひとりの「見える化」に対する意欲やマインドを醸成する必要がありますデータは集められても、改善活動につながらないようなケースの多くが、この使いこなせる人材を育成できていないためです。在庫管理システムを導入しても、それを使いこなせる人材がいなければ、効果は半減してしまいます。そのため、従業員への教育や研修が重要となります。 4.在庫管理システム導入事例3選 では、具体的な取り組みはどのようなものがあるのでしょうか。 今回は最後に在庫管理システムを上手く活用し、「見える化」を実現した先進企業の事例を3つご紹介します。 事例1.食品加工 X社 X社では、在庫管理システムの導入により、属人的な管理から脱却し、効率的な在庫管理を実現しました。 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要です。 X社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで在庫管理システムの導入に踏み切りました。 専用の在庫管理システムを導入し、発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が5%から2%まで改善。 在庫の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例2.建材製造販売 Y社 Y社では、在庫管理システムと生産管理システムを連携させることで、より精度の高い在庫管理を実現しました。 Y社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 商品在庫の方針として、在庫切れをなるべく避けるような方針が固められており、倉庫に大量の不良在庫や陳腐化在庫が発生しており、その結果、資金繰りが悪化していたという背景がありました。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPIや閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例3.機械部品加工 Z社 Z社では、AIを活用した需要予測システムを導入することで、より高度な在庫管理を実現しました。 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、管理は属人的に行われていました。 その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。 そこで、AIを搭載した高度な需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を30%削減しつつ、欠品率を5%から1%に改善することができました。 5.まとめ 事例でもご紹介した通り、在庫管理の「見える化」は、過剰在庫や欠品リスクの削減、キャッシュフロー改善、業務効率化など、多くのメリットをもたらします。 見える化をするだけでなく、様々なITシステムの活用、KPIを用いた定量的な管理、活用活動の原動力たる従業員教育などを組み合わせて推進することで、着実にあるべき姿を実現していくことが出来ます。 先進企業の事例の通り、「見える化」は企業の収益力と経営基盤を大きく強化する重要な取り組みであると言えます。 ぜひ本気で「見える化」に取り組み、経営課題の解決と競争力の向上を目指してみてください。

「要件定義書」と「要求仕様書・RFP」の違いとは!?基本の流れと重要性、記載内容について解説!

2024.06.14

システム導入を成功に導くために欠かせないのが「要件定義書」と「要求仕様書・RFP」です。 しかし、多くの中小企業ではこれらの文書が適切に管理されておらず、残念ながらシステム導入後にトラブルが発生することが少なくありません。 本記事では、これらのドキュメントの役割や違い、記載すべき内容を解説します。 1.システム導入で必要な「要件定義書」「要求仕様書・RFP」 全国各地の中小企業様に訪問やヒアリングをさせていただく機会が多くある中で、既存システムの現状把握の際に伺うのは【既存システムにおける「要件定義書」「要求仕様書・RFP」】に関するお話です。 「システムをどのようなコンセプトで導入したのか」「どのような機能が実装されているのか」把握するために伺います。システム導入時には当然のようにあるべきドキュメントですが、残念ながら現実として、この資料がすぐに出てこないケースが多いです。「要求仕様書が存在しないパターン」は大変よくありますが(良いことではありませんが)、まれに「要件定義書もないパターン」ということもお聞きします。「一体どうやってシステム導入したのか⁉」と思いますが、様々なベンダーさんがいる中でこれが実情とも感じます。 皆様の会社でも、これまでに何らかのシステム導入を行ってきたと思います。改めてですが、今、お手元に過去のシステム導入で作成した「要件定義書」「要求仕様書・RFP」はありますでしょうか? 両方ない場合は、ほぼ間違いなく納品後にベンダーとトラブルになってきた経緯があると察しますが、いかがでしょうか。パッケージシステムを導入する際にも、カスタマイズ込みのシステムを導入する際には、このドキュメントがないとほぼ間違いなくベンダーとのトラブルになる、と感じています。 今回はなぜシステム導入で「要件定義書」「要求仕様書・RFP」が必要になるのかを解説してきたいと思います。 2.「要件定義書」「要求仕様書・RFP」の違いとは?? 要件定義書・・・要件定義とは、開発者がシステム開発をするための仕様を定義したものです。要件定義を明文化した「要件定義書」は、ユーザー側の合意・了承を得るためのもので開発者側が作成します。 • 要求仕様書・RFP・・・要求定義はユーザーがシステムに求める仕様を定義したものです。要求定義の内容を明文化した「要求仕様書」は、システム開発に対するオーダーを記したものになるため、ユーザー側が作成します。 要求定義は、システム開発の上流工程として最も重要なプロセスです。 主な順番としては、「要求定義→ベンダー決定→要件定義→基本設計→詳細設計→開発→テスト→リリース/運用」となります。 ユーザーが作成する要求仕様書とRFPも実は異なるドキュメントになるので、説明していきます。 RFPとは「Request for Proposal(提案依頼書)」の頭文字3文字を取っており、外部のベンダー(システム開発業者)へシステムを発注しようとしている企業の担当者が、外部のベンダーからシステム開発の提案をもらうために必要な要件をまとめた書類のことです。 RFPと要求仕様書の違いは、提案の求め方です。要求仕様書は、企業が「自社で開発・導入するソフトウェアやシステムの要件や仕様を明確にすること」を目的に使用されます。一方で、RFPは、「外部業者からのシステム開発提案を求めるために使用される文書」であり、提案内容や提出期限、提案方法、評価方法などを明確に記載する必要があります。RFPの内容が明確かつ詳細に記載されていると、外部業者側はどのような要件に基づいて提案すれば良いのかが明確になるため、自社の課題に沿った内容の提案を組み立てやすくなるとともに、正確性の高い見積もりを導き出すことにもつながります。 3.「要件定義書」「要求仕様書・RFP」がないトラブル事例 このように、システム導入において、「要件定義書」「要求仕様書・RFP」は非常に重要なドキュメントとなります。 「要求仕様書・RFPがない」=開発者に伝えられるべきユーザーの要望が文書化されていない(ユーザー側でまとまっていない)。開発者にも明確に伝わっていない可能性が高い。 「要件定義書」=開発者が開発すべき機能が明確になっていない。ユーザー側もどのようなものを開発者側が作ろうとしているかをわかっていない。ということです。 要求仕様も要件定義書がない場合、ほぼ間違いなくシステムの納品後に以下のようなトラブルが起こります。 (口頭で)要望した機能が実装されていないことに、システムを使い始めて気づいた。 機能は実装されているが気がするが、非常に使い勝手が悪い。 システムが現場の運用に即していない。 当初イメージしたシステムでない。(例:もっとスタイリッシュな画面を想像していた) たとえシステム納品後に、ユーザー側にこのような不満があっても、要求仕様・要件定義書を作成していなければ、お互いに立ち返る根拠がありません。ドキュメントにしていれば「○○に明記されている」と伝えることができますが、ドキュメント化されていなければ「言った言わない」という話に終始して、お互いに歩み寄ることができなくなります。 この場合、泥沼化しながらユーザー側があきらめるか、開発側が作り直すか。二者択一になります。非常に怖い話ですが、実際に各地でよく起きているのが実情です。 システム導入が上手くいかなかった企業は多くあります。振り返ってみて、要求仕様書・要件定義書があったかどうかを確認してみてください。もし、トラブルが起こった場合、自社は悪くない。ベンダーに問題があったと思いがちですが、 ユーザー側の要望は齟齬ないように明確に伝えられていたでしょうか? ベンダーが作成した要件定義書はきちんと読み込んでいたでしょうか? システム開発をベンダーに丸投げしていなかったでしょうか? ベンダーに要望を明確に伝えることも、ベンダーが開発しようとしているシステムについてしっかり理解しておくことも、開発中もきちんと要望したシステムができているかを確認することも、全部ユーザー側の仕事となります。それを放棄することを、「ベンダーへの丸投げ」といいます。ベンダーへの丸投げのシステム開発はほぼうまくいきません。 いかがでしょうか。「要件定義書」「要求仕様書・RFP」に重要性について、少し理解を深めていただくことができたかと思います。システム導入においては、ユーザー側にも要望を明確にする義務があります。「システムを使って自社のどのような課題を解決したいのか?」をまずは整理することから始めていきましょう。 4.要求仕様書に盛り込むべき内容 要求仕様書には、最低限下記の内容を盛り込みましょう。 システム導入の目的・背景:なぜこのシステム導入が必要なのか、システム導入を通じて解決したい課題は何か、導入の目標は何かなどの明確な定義。 期待される成果:システム導入を通じて達成したい具体的な成果や効果の列挙。 例えば、業務効率の向上、コスト削減、顧客満足度向上、売上増加など、数値化できる目標を設定することが重要です。 KPI (重要業績評価指標)を設定し、導入効果を測定できるようにしておきましょう。 セキュリティ対策に関する要件も忘れずに明記しましょう。 利用者の層や利用シーンを想定し、ユーザビリティを考慮した設計にする必要があります。 運用開始後の保守体制やサポート内容についても明確に定義しておきましょう。 要件定義書では、技術的な側面に焦点を当て、具体的な実現方法や進捗管理のポイントを明示しましょう。 技術的要件:システム導入/ロボット導入に必要な技術やプラットフォーム、開発言語などを具体的に指定。 クラウドサービスを利用する場合は、セキュリティレベルや可用性、拡張性などを考慮する必要があります。 ハードウェア要件を明確に定義し、必要なサーバー、ネットワーク機器などをリストアップしましょう。 機能仕様:システムやロボットが持つべき具体的な機能やモジュールを明確に定義。 ユーザーインターフェース(UI)や ユーザーエクスペリエンス(UX)に関する要件も盛り込み、使いやすさを考慮しましょう。 外部システムとの連携がある場合は、その範囲や方式、インターフェースなどを明確に定義する必要があります。 帳票出力やデータ分析など、必要な機能を網羅的に洗い出し、漏れがないようにしましょう。 検索機能やデータ表示に関する要件を明確にし、使いやすさを追求しましょう。 進捗管理と品質管理:プロジェクト進捗を管理する方法や品質を確保する手段を具体的に記載。 アジャイル開発のような柔軟な開発手法を採用する場合、その旨を明記し、進捗管理や品質管理の方法を具体的に示す必要があります。 プロジェクトのスケジュール、体制、担当、コミュニケーション方法などを明確にしておくことが重要です。 リスク管理計画を策定し、問題点が発生した場合の対応手順を明確化しておきましょう。 テスト段階では、想定される操作を網羅的に実施し、バグを発見し修正することで品質を確保しましょう。 これらの情報は、スムーズなプロジェクト進行に不可欠です。各文書の作成に充分な時間をかけ、関係者間での意見の一致を確認することがプロジェクト成功の鍵です。 5.まとめ システム導入を成功させるためには、「要件定義書」と「要求仕様書・RFP」が不可欠です。これらの文書は、プロジェクト関係者間で認識を共有し、スムーズな開発と運用を促進するための重要なツールとなります。 要求仕様書では、システム導入の目的や期待される成果、利用者層などを明確に定義し、要件定義書では、技術的な要件、機能仕様、進捗管理と品質管理の方法などを具体的に記述します。 システム導入の際は、これらの文書を適切に作成し、管理することで、プロジェクトの成功率を高めることができます。 しかし、要件定義書や要求仕様書の作成は専門的な知識を必要とし、多くの時間と労力を費やす作業となります。船井総研では、お客様のシステム導入を成功に導くため、豊富な経験とノウハウを持つコンサルタントが、要求仕様書の作成や要件定義事項の精査をサポートいたします。 システム導入を成功に導くために欠かせないのが「要件定義書」と「要求仕様書・RFP」です。 しかし、多くの中小企業ではこれらの文書が適切に管理されておらず、残念ながらシステム導入後にトラブルが発生することが少なくありません。 本記事では、これらのドキュメントの役割や違い、記載すべき内容を解説します。 1.システム導入で必要な「要件定義書」「要求仕様書・RFP」 全国各地の中小企業様に訪問やヒアリングをさせていただく機会が多くある中で、既存システムの現状把握の際に伺うのは【既存システムにおける「要件定義書」「要求仕様書・RFP」】に関するお話です。 「システムをどのようなコンセプトで導入したのか」「どのような機能が実装されているのか」把握するために伺います。システム導入時には当然のようにあるべきドキュメントですが、残念ながら現実として、この資料がすぐに出てこないケースが多いです。「要求仕様書が存在しないパターン」は大変よくありますが(良いことではありませんが)、まれに「要件定義書もないパターン」ということもお聞きします。「一体どうやってシステム導入したのか⁉」と思いますが、様々なベンダーさんがいる中でこれが実情とも感じます。 皆様の会社でも、これまでに何らかのシステム導入を行ってきたと思います。改めてですが、今、お手元に過去のシステム導入で作成した「要件定義書」「要求仕様書・RFP」はありますでしょうか? 両方ない場合は、ほぼ間違いなく納品後にベンダーとトラブルになってきた経緯があると察しますが、いかがでしょうか。パッケージシステムを導入する際にも、カスタマイズ込みのシステムを導入する際には、このドキュメントがないとほぼ間違いなくベンダーとのトラブルになる、と感じています。 今回はなぜシステム導入で「要件定義書」「要求仕様書・RFP」が必要になるのかを解説してきたいと思います。 2.「要件定義書」「要求仕様書・RFP」の違いとは?? 要件定義書・・・要件定義とは、開発者がシステム開発をするための仕様を定義したものです。要件定義を明文化した「要件定義書」は、ユーザー側の合意・了承を得るためのもので開発者側が作成します。 • 要求仕様書・RFP・・・要求定義はユーザーがシステムに求める仕様を定義したものです。要求定義の内容を明文化した「要求仕様書」は、システム開発に対するオーダーを記したものになるため、ユーザー側が作成します。 要求定義は、システム開発の上流工程として最も重要なプロセスです。 主な順番としては、「要求定義→ベンダー決定→要件定義→基本設計→詳細設計→開発→テスト→リリース/運用」となります。 ユーザーが作成する要求仕様書とRFPも実は異なるドキュメントになるので、説明していきます。 RFPとは「Request for Proposal(提案依頼書)」の頭文字3文字を取っており、外部のベンダー(システム開発業者)へシステムを発注しようとしている企業の担当者が、外部のベンダーからシステム開発の提案をもらうために必要な要件をまとめた書類のことです。 RFPと要求仕様書の違いは、提案の求め方です。要求仕様書は、企業が「自社で開発・導入するソフトウェアやシステムの要件や仕様を明確にすること」を目的に使用されます。一方で、RFPは、「外部業者からのシステム開発提案を求めるために使用される文書」であり、提案内容や提出期限、提案方法、評価方法などを明確に記載する必要があります。RFPの内容が明確かつ詳細に記載されていると、外部業者側はどのような要件に基づいて提案すれば良いのかが明確になるため、自社の課題に沿った内容の提案を組み立てやすくなるとともに、正確性の高い見積もりを導き出すことにもつながります。 3.「要件定義書」「要求仕様書・RFP」がないトラブル事例 このように、システム導入において、「要件定義書」「要求仕様書・RFP」は非常に重要なドキュメントとなります。 「要求仕様書・RFPがない」=開発者に伝えられるべきユーザーの要望が文書化されていない(ユーザー側でまとまっていない)。開発者にも明確に伝わっていない可能性が高い。 「要件定義書」=開発者が開発すべき機能が明確になっていない。ユーザー側もどのようなものを開発者側が作ろうとしているかをわかっていない。ということです。 要求仕様も要件定義書がない場合、ほぼ間違いなくシステムの納品後に以下のようなトラブルが起こります。 (口頭で)要望した機能が実装されていないことに、システムを使い始めて気づいた。 機能は実装されているが気がするが、非常に使い勝手が悪い。 システムが現場の運用に即していない。 当初イメージしたシステムでない。(例:もっとスタイリッシュな画面を想像していた) たとえシステム納品後に、ユーザー側にこのような不満があっても、要求仕様・要件定義書を作成していなければ、お互いに立ち返る根拠がありません。ドキュメントにしていれば「○○に明記されている」と伝えることができますが、ドキュメント化されていなければ「言った言わない」という話に終始して、お互いに歩み寄ることができなくなります。 この場合、泥沼化しながらユーザー側があきらめるか、開発側が作り直すか。二者択一になります。非常に怖い話ですが、実際に各地でよく起きているのが実情です。 システム導入が上手くいかなかった企業は多くあります。振り返ってみて、要求仕様書・要件定義書があったかどうかを確認してみてください。もし、トラブルが起こった場合、自社は悪くない。ベンダーに問題があったと思いがちですが、 ユーザー側の要望は齟齬ないように明確に伝えられていたでしょうか? ベンダーが作成した要件定義書はきちんと読み込んでいたでしょうか? システム開発をベンダーに丸投げしていなかったでしょうか? ベンダーに要望を明確に伝えることも、ベンダーが開発しようとしているシステムについてしっかり理解しておくことも、開発中もきちんと要望したシステムができているかを確認することも、全部ユーザー側の仕事となります。それを放棄することを、「ベンダーへの丸投げ」といいます。ベンダーへの丸投げのシステム開発はほぼうまくいきません。 いかがでしょうか。「要件定義書」「要求仕様書・RFP」に重要性について、少し理解を深めていただくことができたかと思います。システム導入においては、ユーザー側にも要望を明確にする義務があります。「システムを使って自社のどのような課題を解決したいのか?」をまずは整理することから始めていきましょう。 4.要求仕様書に盛り込むべき内容 要求仕様書には、最低限下記の内容を盛り込みましょう。 システム導入の目的・背景:なぜこのシステム導入が必要なのか、システム導入を通じて解決したい課題は何か、導入の目標は何かなどの明確な定義。 期待される成果:システム導入を通じて達成したい具体的な成果や効果の列挙。 例えば、業務効率の向上、コスト削減、顧客満足度向上、売上増加など、数値化できる目標を設定することが重要です。 KPI (重要業績評価指標)を設定し、導入効果を測定できるようにしておきましょう。 セキュリティ対策に関する要件も忘れずに明記しましょう。 利用者の層や利用シーンを想定し、ユーザビリティを考慮した設計にする必要があります。 運用開始後の保守体制やサポート内容についても明確に定義しておきましょう。 要件定義書では、技術的な側面に焦点を当て、具体的な実現方法や進捗管理のポイントを明示しましょう。 技術的要件:システム導入/ロボット導入に必要な技術やプラットフォーム、開発言語などを具体的に指定。 クラウドサービスを利用する場合は、セキュリティレベルや可用性、拡張性などを考慮する必要があります。 ハードウェア要件を明確に定義し、必要なサーバー、ネットワーク機器などをリストアップしましょう。 機能仕様:システムやロボットが持つべき具体的な機能やモジュールを明確に定義。 ユーザーインターフェース(UI)や ユーザーエクスペリエンス(UX)に関する要件も盛り込み、使いやすさを考慮しましょう。 外部システムとの連携がある場合は、その範囲や方式、インターフェースなどを明確に定義する必要があります。 帳票出力やデータ分析など、必要な機能を網羅的に洗い出し、漏れがないようにしましょう。 検索機能やデータ表示に関する要件を明確にし、使いやすさを追求しましょう。 進捗管理と品質管理:プロジェクト進捗を管理する方法や品質を確保する手段を具体的に記載。 アジャイル開発のような柔軟な開発手法を採用する場合、その旨を明記し、進捗管理や品質管理の方法を具体的に示す必要があります。 プロジェクトのスケジュール、体制、担当、コミュニケーション方法などを明確にしておくことが重要です。 リスク管理計画を策定し、問題点が発生した場合の対応手順を明確化しておきましょう。 テスト段階では、想定される操作を網羅的に実施し、バグを発見し修正することで品質を確保しましょう。 これらの情報は、スムーズなプロジェクト進行に不可欠です。各文書の作成に充分な時間をかけ、関係者間での意見の一致を確認することがプロジェクト成功の鍵です。 5.まとめ システム導入を成功させるためには、「要件定義書」と「要求仕様書・RFP」が不可欠です。これらの文書は、プロジェクト関係者間で認識を共有し、スムーズな開発と運用を促進するための重要なツールとなります。 要求仕様書では、システム導入の目的や期待される成果、利用者層などを明確に定義し、要件定義書では、技術的な要件、機能仕様、進捗管理と品質管理の方法などを具体的に記述します。 システム導入の際は、これらの文書を適切に作成し、管理することで、プロジェクトの成功率を高めることができます。 しかし、要件定義書や要求仕様書の作成は専門的な知識を必要とし、多くの時間と労力を費やす作業となります。船井総研では、お客様のシステム導入を成功に導くため、豊富な経験とノウハウを持つコンサルタントが、要求仕様書の作成や要件定義事項の精査をサポートいたします。

生産管理とは?システム導入のメリットや成功事例を解説!

2024.06.05

製造業が抱える課題 製造業においては、効率と品質を追求する中で様々な課題が存在します。その中でも特に以下の点が挙げられます。 需要変動への対応 市場の需要は常に変動しており、それに迅速に対応することが求められますが、非常に困難です。 需要予測が難しい場合、過剰な在庫を抱えるリスクや、逆に欠品のリスクが生じてしまいます。 適正在庫の維持 適正在庫の維持は、コスト削減と効率的な生産活動に直結します。 過剰在庫は保管コストを増加させ収益性を悪化させますし、欠品は顧客満足度の低下を引き起こし、どちらも経営状況を悪化させてしまう要因となります。 リードタイム短縮 顧客の期待に応えるためには、生産から納品までのリードタイムを短縮することが必要です。 実際の工数はどれくらいで、どこにボトルネックがあるのか、それを基にどのような改善活動をしてリードタイムを短縮していくのか。 このような具体的なディスカッションを行うことで、競争力は向上していきます。 作業効率の改善 日本の労働人口はどんどん減少していっています。 この状況を加味すれば、より少ない人数で現状の生産を担保しないといけない時代がやってくることが予想されます。工場内の作業効率を高め、無駄な動きや待ち時間を最小限に抑えるための改善活動が重要です。 生産管理システムとは 上記のような課題を抱える製造業において、生産管理システムというのはこれらの課題を解決するための強力なツールであると言えます。 以下にシステム概要と、主な機能を説明しておきます。 生産管理システムの概要 生産管理システムとは、生産プロセス全体を効率的に管理・コントロールするためのソフトウェアです。 需要予測から生産計画、在庫管理、品質管理まで、多岐にわたる業務を統合的に管理します。 生産管理システムの主な機能 生産管理システムの機能として、主要な機能は以下のようなものが挙げられます。 需要予測:市場データを基に将来の需要を予測し、生産計画を立てます。 生産計画:効率的な生産スケジュールを作成し、リソースを最適に配分します。 在庫管理:リアルタイムで在庫状況を監視し、適正在庫を維持します。 品質管理:品質基準を設定し、製品がその基準を満たしているかを検査します。 工程管理:各工程の進捗を監視し、問題が発生した場合に迅速に対応します。 生産管理システムの導入方法 生産管理システムの導入は、以下のステップで進める必要があります。 現状分析:現在の生産プロセスを詳細に分析し、課題を明確にします。 要件定義:システムに求める機能や要件を定義します。 ベンダー選定:要件を満たすシステムを提供するベンダーを選定します。 導入計画:導入スケジュールやトレーニング計画を策定します。 システム導入:実際の導入作業を行い、テストを実施します。 運用開始:操作者・管理者向けのトレーニングを行い、システムの運用を開始します。 生産管理システム導入のメリット 生産管理システムを導入することで、多くのメリットが得られます。以下にその具体例をいくつか挙げます。 手作業の削減と間違い防止 手作業によるデータ入力や管理業務を自動化することで、人的ミスを減少させ、業務の正確性が向上します。 適正在庫の維持と過剰在庫抑制 リアルタイムで在庫状況を把握し、適正在庫を維持することで、過剰在庫や欠品のリスクを抑えることができます。 リードタイム短縮と納期遵守向上 生産プロセス全体を効率化することで、リードタイムを短縮し、納期遵守率を向上させます。 生産性と作業効率の大幅改善 各工程の無駄を排除し、作業効率を大幅に改善します。これにより、生産性が向上し、コスト削減が実現します。 ムダな動きや待ち時間の削減 リアルタイム監視とデータ分析により、ムダな動きや待ち時間を最小限に抑えることができます。 成功事例 事例 1.食品加工 X 社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X 社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。 発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が 5%から 2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例 2.建材製造販売 Y 社 Y 社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPI や閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例 3.機械部品加工 Z 社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を 30%削減しつつ、欠品率を 5%から 1%に改善することができました。 生産管理システム導入の成功事例 事例 1.食品加工 X 社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X 社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。 発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が 5%から 2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例 2.建材製造販売 Y 社 Y 社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPI や閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例 3.機械部品加工 Z 社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。 その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。 そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を 30%削減しつつ、欠品率を 5%から 1%に改善することができました。 生産管理システム導入の方法と注意点 生産管理システムを導入する際には、以下の点に注意することが重要です。 現状分析と課題の明確化:導入前に現状を詳細に分析し、解決すべき課題を明確にします。 要件定義の精度:システムに求める要件を正確に定義し、ベンダーとのコミュニケーションを密に行います。 トレーニングの徹底:システム導入後のトレーニングを徹底し、全社員がシステムを活用できるようにします。 継続的な改善:導入後も継続的にデータを分析し、システムの改善点を見つけて対応します。 システムを導入することがゴールではありません。あくまでシステムはツールのひとつですから、いかにどう活用するか、というのこそ重要なポイントと言えます。 まとめ 以上のように、生産管理は製造業において非常に重要な業務であり、その効率化や品質向上は企業の競争力を大きく左右します。 生産管理システムを導入することで、多くの課題を解決し、効率的な生産が実現可能です。 もちろん、システム導入には慎重な計画と実行が必要ですが、しっかりと導入効果を見据えた上で導入と活用が出来たのであれば、その効果は計り知れません。 今後の製造業の未来を考えれば、生産管理の重要性はますます高まることでしょう。 製造業が抱える課題 製造業においては、効率と品質を追求する中で様々な課題が存在します。その中でも特に以下の点が挙げられます。 需要変動への対応 市場の需要は常に変動しており、それに迅速に対応することが求められますが、非常に困難です。 需要予測が難しい場合、過剰な在庫を抱えるリスクや、逆に欠品のリスクが生じてしまいます。 適正在庫の維持 適正在庫の維持は、コスト削減と効率的な生産活動に直結します。 過剰在庫は保管コストを増加させ収益性を悪化させますし、欠品は顧客満足度の低下を引き起こし、どちらも経営状況を悪化させてしまう要因となります。 リードタイム短縮 顧客の期待に応えるためには、生産から納品までのリードタイムを短縮することが必要です。 実際の工数はどれくらいで、どこにボトルネックがあるのか、それを基にどのような改善活動をしてリードタイムを短縮していくのか。 このような具体的なディスカッションを行うことで、競争力は向上していきます。 作業効率の改善 日本の労働人口はどんどん減少していっています。 この状況を加味すれば、より少ない人数で現状の生産を担保しないといけない時代がやってくることが予想されます。工場内の作業効率を高め、無駄な動きや待ち時間を最小限に抑えるための改善活動が重要です。 生産管理システムとは 上記のような課題を抱える製造業において、生産管理システムというのはこれらの課題を解決するための強力なツールであると言えます。 以下にシステム概要と、主な機能を説明しておきます。 生産管理システムの概要 生産管理システムとは、生産プロセス全体を効率的に管理・コントロールするためのソフトウェアです。 需要予測から生産計画、在庫管理、品質管理まで、多岐にわたる業務を統合的に管理します。 生産管理システムの主な機能 生産管理システムの機能として、主要な機能は以下のようなものが挙げられます。 需要予測:市場データを基に将来の需要を予測し、生産計画を立てます。 生産計画:効率的な生産スケジュールを作成し、リソースを最適に配分します。 在庫管理:リアルタイムで在庫状況を監視し、適正在庫を維持します。 品質管理:品質基準を設定し、製品がその基準を満たしているかを検査します。 工程管理:各工程の進捗を監視し、問題が発生した場合に迅速に対応します。 生産管理システムの導入方法 生産管理システムの導入は、以下のステップで進める必要があります。 現状分析:現在の生産プロセスを詳細に分析し、課題を明確にします。 要件定義:システムに求める機能や要件を定義します。 ベンダー選定:要件を満たすシステムを提供するベンダーを選定します。 導入計画:導入スケジュールやトレーニング計画を策定します。 システム導入:実際の導入作業を行い、テストを実施します。 運用開始:操作者・管理者向けのトレーニングを行い、システムの運用を開始します。 生産管理システム導入のメリット 生産管理システムを導入することで、多くのメリットが得られます。以下にその具体例をいくつか挙げます。 手作業の削減と間違い防止 手作業によるデータ入力や管理業務を自動化することで、人的ミスを減少させ、業務の正確性が向上します。 適正在庫の維持と過剰在庫抑制 リアルタイムで在庫状況を把握し、適正在庫を維持することで、過剰在庫や欠品のリスクを抑えることができます。 リードタイム短縮と納期遵守向上 生産プロセス全体を効率化することで、リードタイムを短縮し、納期遵守率を向上させます。 生産性と作業効率の大幅改善 各工程の無駄を排除し、作業効率を大幅に改善します。これにより、生産性が向上し、コスト削減が実現します。 ムダな動きや待ち時間の削減 リアルタイム監視とデータ分析により、ムダな動きや待ち時間を最小限に抑えることができます。 成功事例 事例 1.食品加工 X 社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X 社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。 発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が 5%から 2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例 2.建材製造販売 Y 社 Y 社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPI や閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例 3.機械部品加工 Z 社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を 30%削減しつつ、欠品率を 5%から 1%に改善することができました。 生産管理システム導入の成功事例 事例 1.食品加工 X 社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X 社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。 発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が 5%から 2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例 2.建材製造販売 Y 社 Y 社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPI や閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例 3.機械部品加工 Z 社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。 その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。 そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を 30%削減しつつ、欠品率を 5%から 1%に改善することができました。 生産管理システム導入の方法と注意点 生産管理システムを導入する際には、以下の点に注意することが重要です。 現状分析と課題の明確化:導入前に現状を詳細に分析し、解決すべき課題を明確にします。 要件定義の精度:システムに求める要件を正確に定義し、ベンダーとのコミュニケーションを密に行います。 トレーニングの徹底:システム導入後のトレーニングを徹底し、全社員がシステムを活用できるようにします。 継続的な改善:導入後も継続的にデータを分析し、システムの改善点を見つけて対応します。 システムを導入することがゴールではありません。あくまでシステムはツールのひとつですから、いかにどう活用するか、というのこそ重要なポイントと言えます。 まとめ 以上のように、生産管理は製造業において非常に重要な業務であり、その効率化や品質向上は企業の競争力を大きく左右します。 生産管理システムを導入することで、多くの課題を解決し、効率的な生産が実現可能です。 もちろん、システム導入には慎重な計画と実行が必要ですが、しっかりと導入効果を見据えた上で導入と活用が出来たのであれば、その効果は計り知れません。 今後の製造業の未来を考えれば、生産管理の重要性はますます高まることでしょう。

生産管理とは?製造業における目的や業務内容・よくある課題とは?

2024.06.05

製造業における生産管理は、商品の品質や生産効率を最大化するために不可欠な業務です。 しかし、その具体的な内容や目的、そしてよくある課題について理解している人は意外と少ないかもしれません。 本コラムでは、生産管理の基本から、システム導入のメリット、さらに成功事例までを詳しく解説します。 生産管理とは? 生産管理とは、製造業において生産プロセス全体を計画・実行・監視・調整する業務を指します。 生産管理の目的としては、効率よく高品質な製品をタイムリーに過不足なく生産することです。 生産管理の目的 生産管理の主な目的は以下の通りです: 効率性の向上:無駄を排除し、リソースを最適に活用することで、生産コストを抑えます。 品質の確保:製品の品質を維持・向上させることで、顧客満足度を高めます。 納期の遵守:計画通りに製品を納品し、顧客の信頼を確保します。 生産管理と工程管理の違いとは 生産管理と工程管理は似ているようで異なる概念です。 生産管理では、工程を含めた全体のプロセスを管理するのに対し、工程管理は各工程を細か く監視し、問題が発生した際に迅速に対処することを指します。 生産管理の範囲と主な業務内容 生産管理は前述の通り、多岐にわたる業務を含みます。以下に主な業務内容を紹介します。 需要予測 市場や顧客の動向を分析し、将来的な需要を予測します。 これにより、無駄な在庫を抱えることなく、生産計画を立てることが可能です。 生産計画 需要予測を基に、生産スケジュールや必要なリソース(材料、人員、設備など)を計画します。 これにより、効率的な生産が可能となります。 調達・購買 必要な原材料や部品を適切なタイミングで調達することも、生産管理の重要な業務です。 遅延や不足が発生しないよう、供給チェーンを管理します。 工程管理 各生産工程が計画通りに進んでいるかを監視・管理します。 問題が発生した場合は迅速に対処し、生産ラインの停滞を防ぎます。 品質管理 製品の品質を維持・向上させるための管理業務です。 品質基準を設定し、製品がその基準を満たしているかを検査します。 在庫管理 原材料や製品の在庫を適切に管理し、過剰在庫や欠品を防ぎます。 在庫の最適化は、コスト削減と効率的な生産に直結します。 生産管理においてよくある課題 生産管理は多岐にわたる業務を含むため、以下のような課題が生じることがよくあります。 需要予測の不確実性: 需要予測は多くの場合、職人的な勘や経験がベースとなり行われています。 これが外れた場合、過剰在庫や欠品が発生するリスクがあります。 リソースの最適配分: リソースの配置についても、勘や経験で行われてしまうと人員や設備の過不足が生じてしまい、生産効率が低下することがあります。 品質管理の徹底: 品質基準を満たさない製品が出荷されてしまうと、当然顧客満足度が低下し、売り上げに影響が出てしまいます。 生産管理システム導入によるメリット 3 選 生産管理システムの導入は、これらの課題を解決する手段として非常に有効です。 以下にそのメリットを紹介します。 生産管理システム導入によるメリット①:データに基づいた判断・行動 収集したデータを基に分析を行い、改善点を特定することができます。 これにより、継続的な改善が実現し、生産効率や品質が向上します。 生産管理システム導入によるメリット②:リアルタイムでの稼働監視 リアルタイムで生産状況を監視できるため、問題が発生した際に迅速に対応できます。 これにより、生産ラインの停滞や不良品の生産などを最小限に抑えることが可能となります。 生産管理システム導入によるメリット③:業務効率の最適化 生産管理システムを導入することで、各工程の手で行われていた集計業務などが自動化され、効率が大幅に向上します。 手作業によるミスも減少し、正確なデータを基に最適な生産計画が立てられます。 生産管理システム導入までの流れ 生産管理システムの導入は、以下のステップで進めるとスムーズです。 現状分析:現在の生産プロセスを詳細に分析し、課題を洗い出します。 要件定義:解決すべき課題を基に、システムの要件や Tobe フロー図などを策定します。 ベンダー選定:要件を満たすシステムを提供するベンダーを選定します。 導入計画:導入スケジュールやトレーニング計画を策定します。 システム導入:実際の導入作業を行い、テストを実施します。 運用開始:トレーニングを行い、システムの運用を開始します。 生産管理システム導入の成功事例 事例 1.食品加工 X 社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X 社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。 発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が 5%から 2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例 2.建材製造販売 Y 社 Y 社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPI や閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例 3.機械部品加工 Z 社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。 その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。 そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を 30%削減しつつ、欠品率を 5%から 1%に改善することができました。 まとめ 以上のように、生産管理は製造業において非常に重要な業務です。 この効率化や品質向上という部分は、企業の競争力を大きく左右するポイントです。 生産管理システムを導入することで、重要な多くの課題を解決し、効率的な生産を実現できるようになります。 今後、どんどん労働人口が減少していく日本の製造業において、生産管理の重要性はますます高まることでしょう。 是非、必要に応じてご検討いただければと思います。 製造業における生産管理は、商品の品質や生産効率を最大化するために不可欠な業務です。 しかし、その具体的な内容や目的、そしてよくある課題について理解している人は意外と少ないかもしれません。 本コラムでは、生産管理の基本から、システム導入のメリット、さらに成功事例までを詳しく解説します。 生産管理とは? 生産管理とは、製造業において生産プロセス全体を計画・実行・監視・調整する業務を指します。 生産管理の目的としては、効率よく高品質な製品をタイムリーに過不足なく生産することです。 生産管理の目的 生産管理の主な目的は以下の通りです: 効率性の向上:無駄を排除し、リソースを最適に活用することで、生産コストを抑えます。 品質の確保:製品の品質を維持・向上させることで、顧客満足度を高めます。 納期の遵守:計画通りに製品を納品し、顧客の信頼を確保します。 生産管理と工程管理の違いとは 生産管理と工程管理は似ているようで異なる概念です。 生産管理では、工程を含めた全体のプロセスを管理するのに対し、工程管理は各工程を細か く監視し、問題が発生した際に迅速に対処することを指します。 生産管理の範囲と主な業務内容 生産管理は前述の通り、多岐にわたる業務を含みます。以下に主な業務内容を紹介します。 需要予測 市場や顧客の動向を分析し、将来的な需要を予測します。 これにより、無駄な在庫を抱えることなく、生産計画を立てることが可能です。 生産計画 需要予測を基に、生産スケジュールや必要なリソース(材料、人員、設備など)を計画します。 これにより、効率的な生産が可能となります。 調達・購買 必要な原材料や部品を適切なタイミングで調達することも、生産管理の重要な業務です。 遅延や不足が発生しないよう、供給チェーンを管理します。 工程管理 各生産工程が計画通りに進んでいるかを監視・管理します。 問題が発生した場合は迅速に対処し、生産ラインの停滞を防ぎます。 品質管理 製品の品質を維持・向上させるための管理業務です。 品質基準を設定し、製品がその基準を満たしているかを検査します。 在庫管理 原材料や製品の在庫を適切に管理し、過剰在庫や欠品を防ぎます。 在庫の最適化は、コスト削減と効率的な生産に直結します。 生産管理においてよくある課題 生産管理は多岐にわたる業務を含むため、以下のような課題が生じることがよくあります。 需要予測の不確実性: 需要予測は多くの場合、職人的な勘や経験がベースとなり行われています。 これが外れた場合、過剰在庫や欠品が発生するリスクがあります。 リソースの最適配分: リソースの配置についても、勘や経験で行われてしまうと人員や設備の過不足が生じてしまい、生産効率が低下することがあります。 品質管理の徹底: 品質基準を満たさない製品が出荷されてしまうと、当然顧客満足度が低下し、売り上げに影響が出てしまいます。 生産管理システム導入によるメリット 3 選 生産管理システムの導入は、これらの課題を解決する手段として非常に有効です。 以下にそのメリットを紹介します。 生産管理システム導入によるメリット①:データに基づいた判断・行動 収集したデータを基に分析を行い、改善点を特定することができます。 これにより、継続的な改善が実現し、生産効率や品質が向上します。 生産管理システム導入によるメリット②:リアルタイムでの稼働監視 リアルタイムで生産状況を監視できるため、問題が発生した際に迅速に対応できます。 これにより、生産ラインの停滞や不良品の生産などを最小限に抑えることが可能となります。 生産管理システム導入によるメリット③:業務効率の最適化 生産管理システムを導入することで、各工程の手で行われていた集計業務などが自動化され、効率が大幅に向上します。 手作業によるミスも減少し、正確なデータを基に最適な生産計画が立てられます。 生産管理システム導入までの流れ 生産管理システムの導入は、以下のステップで進めるとスムーズです。 現状分析:現在の生産プロセスを詳細に分析し、課題を洗い出します。 要件定義:解決すべき課題を基に、システムの要件や Tobe フロー図などを策定します。 ベンダー選定:要件を満たすシステムを提供するベンダーを選定します。 導入計画:導入スケジュールやトレーニング計画を策定します。 システム導入:実際の導入作業を行い、テストを実施します。 運用開始:トレーニングを行い、システムの運用を開始します。 生産管理システム導入の成功事例 事例 1.食品加工 X 社 食品製造業においては、消費期限の問題もあり、在庫の効率的なコントロールが必要でした。 X 社では、今まで専任スタッフの経験で在庫管理と発注を行ってきており、専任スタッフの方の定年が数年後というタイミングで生産管理システムの導入に踏み切りました。 発注タイミングと発注量の最適化を行った結果、欠品率が 5%から 2%まで改善。生産と在庫管理の最適化だけでなく、顧客満足度向上を果たし、売上アップにつながりました。 事例 2.建材製造販売 Y 社 Y 社は建材の製造・販売を全国的に行う会社です。 生産管理システムと在庫管理システムを活用する事でデータの一元管理を実現し、KPI や閾値を設定して改善活動を推進しました。 結果、無駄な在庫を大幅に削減でき、大幅にキャッシュフローが改善しました。 事例 3.機械部品加工 Z 社 Z社は自動車のエンジン部品を中心に製造している会社です。 製品ごとの適正在庫水準が不明確で、製造管理は属人的に行われていました。 その結果、過剰在庫と欠品が頻繁に起きてしまい、非常に悩んでいました。 そこで、需要予測システムを活用することに決め、製品別の最適在庫を算出し、計画的な生産を行うような改革を行いました。 結果、総在庫数を 30%削減しつつ、欠品率を 5%から 1%に改善することができました。 まとめ 以上のように、生産管理は製造業において非常に重要な業務です。 この効率化や品質向上という部分は、企業の競争力を大きく左右するポイントです。 生産管理システムを導入することで、重要な多くの課題を解決し、効率的な生産を実現できるようになります。 今後、どんどん労働人口が減少していく日本の製造業において、生産管理の重要性はますます高まることでしょう。 是非、必要に応じてご検討いただければと思います。