記事公開日:2025.04.07
最終更新日:2025.04.08
ずっと何かを探している作業員がいる…金型/端材管理で生産性を底上げしよう

多品種少量生産は、顧客の多様なニーズに応えるための鍵となる生産方式ですが、その柔軟性の裏側で、製造業の現場は常に多くの課題に直面しています。その中でも特に重要なのが、製品の品質と生産効率を左右する「金型管理」と、コスト削減と資源有効活用に不可欠な「端材管理」です。
「金型の所在が分からず、生産開始までに時間がかかる」
「金型のメンテナンス履歴が曖昧で、品質トラブルが頻発する」
「加工のたびに発生する端材が、有効活用されないまま廃棄されている」
もし、あなたがこのような課題に共感されるなら、本記事は必ずお役に立てます。今回は、多品種少量生産の現場において、ともすれば個別に対策が検討されがちな金型管理と端材管理を統合的に捉え、それぞれの管理手法を組み合わせることで、生産性向上、コスト削減、そして品質安定化を実現するための具体的な道筋をご紹介します。
この記事を読むことで、金型管理と端材管理がそれぞれ抱える課題の本質を理解し、両者を連携させることによって生まれる相乗効果を発見できるでしょう。また、具体的な事例やシステム導入のヒントを通じて、金型と端材という二つの「宝」を最適化し、企業の競争力強化に繋げるための実践的な知識を習得できます。
この記事は、以下のような方々に向けて執筆しています。
- 多品種少量生産方式を採用している中小製造業の経営者
- 工場長や生産管理、金型管理、資材管理の担当者
- 現在の金型管理と端材管理に課題を感じ、包括的な改善策を探している方
- 金型管理システムや端材管理システムの導入を検討しており、連携の可能性を知りたい方
- 生産性向上、コスト削減、品質安定化を同時に実現したい方
目次
1. 金型管理の手法
金型の管理手法は以下の通りです。4つのステップに分けて解説します。
STEP1:自社にある金型を把握する
まず、自社にどのような金型がどれだけあるのかを把握する必要があります。金型管理台帳を作成し、金型の保管場所、金型の名前、製造品名、製造品目コード、メンテナンス記録などを記載しましょう。最初は手書きやExcelなど、使いやすい形式で記録を始めましょう。
STEP2:金型の棚番を決める
金型の保管場所を決め、それぞれの金型に棚番を割り当てましょう。棚番を決めることで、金型の所在を特定しやすくなり、探す時間を短縮できます。金型の分類方法は、成型する樹脂製品ごと、サイズごと、使用頻度ごとなど、様々な方法があります。自社に合った方法で分類しましょう。
STEP3:金型メンテナンス情報を記録する
金型のメンテナンス情報は、金型の寿命を延ばし、品質を維持するために非常に重要です。メンテナンスを実施した日付、金型名、メンテナンス内容、累計ショット数、金型製造年月日などを記録しましょう。
STEP4:システムを導入する
金型管理システムを導入することで、金型管理を効率化し、正確性を向上させることができます。例えば、ICタグを活用した金型管理システムでは、金型の位置情報やメンテナンス履歴などを一元管理することができます。
金型管理システムには、以下のような機能を持つものがあります。
- 金型の登録・情報管理
- 金型の使用実績管理
- 金型のメンテナンス実績管理
- 金型の棚卸/在庫/廃棄/移動履歴管理
- リアルタイムな金型の状態表示
- データ活用機能
- また、金型管理システムを導入することで、以下のような効果が期待できます。
- 作業工数の削減
- 金型の所在把握の効率化
- メンテナンスの効率化
- 金型の使用状況の把握
- 金型寿命の延長
- データに基づいた管理
また、金型管理を円滑に進めるためには、取引先との連携も重要です。契約時に金型の管理方法について取り決めをし、必要に応じて覚書を交わすことで、後々のトラブルを避けることができます。経済産業省が公開している「型管理の適正化に向けたアクションプラン」も参考に、取引先と適切な管理方法について協議しましょう。
2. 端材管理の手法
端材管理の手法として手っ取り早いのは、端材管理システムの導入です。端材管理をシステム化することで、以下の効果が期待できます。
- 端材寸法計測工数/入力工数を削減できた
- 端材寸法・数量をすぐに把握できるようになった。
- 端材を探す工数を削減できた
- 工場にいない社員(管理者・営業担当者など)も、システムにアクセスすることで端材状況を把握することが可能になった
- 在庫管理属人化の解消ができた
続いて、端材管理システムを導入したA社における、システム導入前後の変化について、解説します。
船井総研では、システム導入支援のコンサルティングをおこなっております。
端材管理システム構築の詳細について知りたい方は、以下のフォームにてお問い合わせをお願い致します。
端材管理システム導入前
A社では、日々の生産において端材が大量に発生していました。
端材の量も多く、形状もさまざまであったことから、端材管理を適正におこなうことができず、年末に大量に廃棄していました。
当時の端材管理フローは以下の通りです。それぞれの材料に対して以下の作業をおこなっており、作業者の工数が多くかかっていました。
端材管理システム導入後
A社では、作業者工数削減&端材管理のため、端材管理システムを導入。
寸法計測をカメラ+画像処理でおこない、そのデータ入力をシステム化することで、作業者の工数を大幅に削減しました。
システム概要図は以下の通りです。
この施策により、材料入荷時作業フローは以下のように変化。寸法計測作業と端材情報入力作業の工数が大幅に削減されました。
また、端材使用時作業フローは以下のように変化。作業フローにおける大きな変更点は、エクセル管理⇒在庫管理システム管理となっている点です。これにより、端材寸法・数量をすぐに把握できるようになりました。また、端材の場所についても在庫管理システム上で把握することができるため、端材を探す工数も削減されています。
その他の効果としては、
- 工場にいない社員(管理者・営業担当者など)も、システムにアクセスすることで端材状況を把握することが可能になったこと
- 在庫管理属人化の解消ができたこと
が挙げられます。
3. まとめ
金型管理と端材管理は、多品種少量生産の現場において、それぞれが製品の品質、生産効率、コストに大きな影響を与える重要な要素です。これらの管理を個別に行うだけでなく、システム連携などを通じて統合的に捉え、効率化を図ることで、生産リードタイムの短縮、品質の安定化、コストの削減、そして資源の有効活用といった多岐にわたる効果が期待できます。
船井総研では、多品種少量生産を行う製造業のお客様に対し、本記事でご紹介した金型管理と端材管理の効率化に向けたコンサルティングサービスを提供しております。現状分析から最適なシステムの選定・導入支援、そして運用定着まで、お客様の課題やニーズに合わせてトータルにサポートいたします。「金型管理や端材管理に課題を感じている」「システム導入を検討しているが、何から始めれば良いか分からない」といったお悩みをお持ちでしたら、ぜひ一度船井総研にご相談ください。貴社の生産性向上、コスト削減、そして企業価値向上に向けて、お手伝いさせていただきます。
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