記事公開日:2025.10.16
最終更新日:2025.10.16
「管理をやめると、アイデアが生まれる」フライデーコラム:シオタ

お世話になっております。船井総研の塩田です。
会議で「何か意見は?」と問いかけても沈黙が続く…。多くの経営者やリーダーが抱えるこの悩み、その原因は社員の意欲のなさや能力不足ではないかもしれません。真犯人は、「こんなことを言ったらどう思われるだろう?」「的外れな意見だと否定されないだろうか?」という、目に見えない「心理的な壁」です。
人は「正しいこと」が求められる真面目な場であるほど、失敗を恐れて発言に慎重になります。この心理的な壁を取り払い、社員が安心してアイデアのキャッチボールを楽しめる環境をつくる鍵こそ、今回のテーマである「遊び心」なのです。
「遊び心」は、職場に「失敗しても大丈夫」「まずは言ってみよう」という心理的な安全性を生み出します。真面目な議論に、少しのユーモアや余白が加わることで、プレッシャーが和らぎ、普段は出てこないような斬新なアイデアや素直な意見が顔を出すのです。
1. 「遊び心」が育む主体性:3つの事例に学ぶ
今回は、この「遊び心」をうまく活用して、社員が主体的に動きたくなる素晴らしい環境をつくっている企業の事例を3つご紹介します。
- 社員手作りの「イカした喫煙所」(東洋工作所様)
「どうせなら、かっこいい喫煙所にしたい」。そんな社員の「遊び心」から、東洋工作所様ではアンティーク風の素敵な喫煙所が生まれました。驚くべきことに、これは社員の皆さんが自らデザインし、作り上げたものです。コンセントも完備され、リラックスした雰囲気の中で雑談が生まれます。正直、かなりカッコいい。 - 「制服代」を「自分への投資」に。社員を信じる姿勢が主体性を育む(未来工業様)
ご存じ超優良製造業。多くの会社が「統一感を出すため」「管理しやすいため」に制服を採用しますが、未来工業様では、「制服廃止」と「年間1万円の被服手当支給」を採用しています。この1万円は、単なる手当ではありません。「仕事にふさわしい服装は、プロとして自分で考えて選んでください。私たちはあなたの判断を信頼しています」という会社からの強力なメッセージなのです。
会社が細かく管理するのではなく、何を買うか、どう活用するかは社員の判断に任せる。この小さな成功体験の積み重ねが、「言われたことをやる」のではなく「自分で考えて動く」という主体性を育んでいます。 - 「好き」を仕事に活かす。月1回の「工場解放日」(浜野製作所様)
普段の業務とは別に、月に1回、社員が工場の機械を自由に使って自分の好きなものを作れる「工場開放日」を設けているのが浜野製作所様です。業務の評価から切り離されたこの場では、誰もが失敗を恐れずに自由に挑戦できます。この「何を言っても、やっても大丈夫」という経験が、普段の業務でも「もっとこうしたら良くなるかも」と積極的に意見を言える自信に繋がっています。
2.まとめ
いかがでしたでしょうか。ご紹介した3社に共通するのは、社員をルールで管理するのではなく、信じて任せることで心理的な安全性を確保し、主体性を引き出している点です。社員に意見を求める前に、まずは私たちが「どんな意見でも歓迎だよ」「失敗したって大丈夫」という雰囲気、すなわち「遊び心」のある環境を用意することが大切なのかもしれません。
大きな制度改革は難しくても、まずは「会議の冒頭で少し雑談の時間をつくる」「日報に『今週の面白かったこと』という欄を追加してみる」など、本当に小さなことからで構いません。その小さな「遊び心」が、社員の心の壁を溶かし、活発な意見が飛び交う風通しの良い職場づくりの第一歩となるはずです。
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