記事公開日:2025.10.22
最終更新日:2025.10.22
損益計算書(P/L)だけでは会社は潰れる。DXを「コスト」と考える経営者が知らない、不都合な真実

月末に経理から上がってくる、一枚の損益計算書(P/L)。
売上高、売上原価、販売管理費…そして、最終的な利益。多くの経営者は、このP/L上の数字を見て、「今月は儲かった」「今月は厳しかった」と一喜一憂し、次の月の経営方針を考えます。
もちろん、P/Lは会社の成績表として非常に重要です。しかし、もしあなたが、このP/L上の利益だけを見て経営判断を下しているとしたら、それは非常に危険な状態かもしれません。なぜなら、P/Lは会社の「過去」を写す鏡ではあっても、「未来」を照らすライトではないからです。そして、DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資を、P/L上の「コスト(販管費)」としか見ていないとしたら、その危険度はさらに増します。
目次
P/Lの数字に隠された「3つの罠」
1. 「平均の罠」:どの製品が本当に儲かっているか分からない
P/Lに記載されている「売上原価」は、会社全体でかかった原価の合計です。ここからは、「どの製品を作るのに、いくらコストがかかったのか」という個別の情報は一切読み取れません。
例えば、A製品は非常に利益率が高い“孝行息子”である一方、B製品は実は作れば作るほど赤字になっている“問題児”かもしれません。しかし、P/L上ではそれらが合算され、平均化されてしまうため、問題が見えなくなってしまいます。「会社全体では利益が出ているから大丈夫」という思い込みが、不採算事業を温存させ、会社の体力を静かに奪っていくのです。
2. 「タイムラグの罠」:問題に気づいた時には手遅れ
P/Lが確定するのは、早くても翌月の中旬以降です。そこで初めて「原価が想定より高かった」「利益が出ていない」と気づいても、すでに一ヶ月以上の時間が経過しています。その間にも、現場では非効率な生産が続けられ、損失が拡大していたかもしれません。変化の激しい現代において、この一ヶ月というタイムラグは致命的です。
3. 「機会損失の罠」:見えないコストが利益を圧迫
P/Lには、目に見える費用しか計上されません。しかし、会社の利益を蝕んでいるのは、目に見えない「ムダ」なコストであることが非常に多いのです。
- 「あの図面、どこだっけ?」と探している時間(人件費の浪費)
- 古い図面で製造してしまい、手戻りになった(材料費・工数の浪費)
- 見積り作成に時間がかかり、競合に負けた(機会損失)
- ベテランの退職で、ノウハウが失われた(無形の資産損失)
これらは全て、P/Lには直接現れないコストですが、確実に会社の利益を削り取っています。
DXは「コスト」ではなく「未来への投資」である
ここで、DXの話に戻ります。
「データ管理システムを導入したいが、月々の費用が販管費を圧迫する…」
「IoTセンサーなんて、高価なだけで利益に繋がらないのではないか…」
このように、DXを単なるコストとして捉えてしまうと、その本質を見誤ります。
DX、すなわちデータ活用の仕組みを導入することは、上記のようなP/Lの罠から脱却し、見えなかったコストを可視化・削減するための、最も効果的な「投資」なのです。
- リアルタイム原価管理の導入 → 製品ごとの本当の収益性が分かり、「平均の罠」から抜け出せる
- 図面管理システムの導入 → 「探す時間」や「手戻り」という見えないコストを削減できる。
- 見積AIツールの導入 → 見積工数を削減し、受注の機会損失を防ぐ。
。
これらは全て、P/L上の数字を改善することに直結します。DX投資は、販管費という「費用」の項目で計上されるかもしれませんが、その実態は、売上原価を低減し、売上総利益を増大させるための、極めて戦略的な「原価低減活動」なのです。
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もしあなたが、今もP/Lの最終利益の数字だけを睨みながら、DXへの一歩を「コストがかかるから」と躊躇しているのなら、ぜひこのセミナーに参加してください。その躊躇こそが、あなたの会社にとって最大の「機会損失」であることに、気づかされるはずです。
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