記事公開日:2025.11.07
最終更新日:2025.11.07

「DX内製化のメリット/デメリット」フライデーコラム:シオタ

お世話になっております。船井総研の塩田です。
本日のテーマは、「DX内製化のメリットデメリット」です。
近年、多くの企業がDX推進に取り組む中で、「外部のSIer(システムインテグレータ)に任せるか、それとも自社で内製化するか」は、経営を左右する重要な岐路となっています。
かつては外部委託が主流でしたが、最近はローコード/ノーコードツールの台頭により、「自社の業務は自社でデジタル化する」という内製化の追い風が強く吹いています。
弊社のセミナーや研究会に登壇いただく企業様の中にも、DXを内製でおこなった企業は多数存在し、どの企業も成功されています。
参考①:https://smart-factory.funaisoken.co.jp/250606/
参考②:https://smart-factory.funaisoken.co.jp/250428-2/
参考③:https://www.funaisoken.co.jp/seminar/132470

しかし、この流れに安易に乗ると思わぬ落とし穴にはまることもあります。本日は、DX内製化のメリットとデメリットをそれぞれ解説します。

1.DX内製化がもたらす3つのメリット

内製化に成功した企業は、単なる「デジタル化」を超えた、持続的な競争力を手に入れています。

  1. 圧倒的なコスト削減と投資対効果(ROI)の改善
    最大のメリットは、中長期的なコスト削減です。外部SIerに依頼すると、開発費に加え、要件定義のコンサルティング費用、プロジェクト管理費、そして将来の改修費用が重なります。
    例えば、ある製造現場で加工機へのワーク投入・取り出しに協働ロボットを導入するケース。SIerに見積もったところ1500万円と提示されたものが、現場をよく知る担当者が自らRPAやロボット制御を学習し、内製化することで500万円で実現できた、という事例は珍しくありません。初期投資だけでなく、運用開始後の小さな改善(PDCA)も自社で迅速に行えるため、ROI(投資対効果)が劇的に改善します。
  2.  

  3. 「本当に使える」業務に即したシステムの構築
    「高額なシステムを導入したが、現場の業務に合わず使われない」という失敗は、外部委託の典型的な課題です。これは、システム開発者(SIer)と、実際にシステムを使う現場担当者の間に「認識の齟齬」が生じるために起こります。
    内製化の強みは、「現場を知っている人」が「システム知識を持つ(または学ぶ)」ことで、この齟齬を最小限にできる点です。現場の「言葉にできない暗黙知」や「ちょっとした不便」を理解した担当者が開発に携わることで、痒い所に手が届く、本当に価値のあるシステムが生まれます。
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  5. 柔軟な仕様変更が可能
    ビジネス環境の変化が激しい現代において、スピードは命です。外部委託の場合、仕様の変更や機能の追加を依頼するたびに、見積もり、契約、再度の要件定義といった煩雑な手続きが発生し、数週間から数ヶ月のタイムラグが生じます。
    内製化していれば、「明日からこの仕様を変えたい」「このデータを追加で見たい」といった現場の要求に、即座に応えることが可能です。

2. 避けては通れない2つのデメリット(課題)

一方で、内製化は「魔法の杖」ではありません。メリットの裏側にあるデメリットを直視する必要があります。

  1. DX人材の採用・育成コストと「定着」の壁
    ご承知おきかと思いますが、最大の課題は「人材」です。内製化を実現するには、ITスキルと業務知識の両方を兼ね備えたDX人材が必要ですが、こうした人材は市場全体で不足しており、採用は困難を極めます。
    自社で育成するにしても、時間とコストがかかります。さらに深刻なのは「定着のリスク」です。多額のコストをかけて育成した人材が、スキルを身につけた途端に、より良い条件を求めて他社へ転職してしまうケースも後を絶ちません。企業は、スキル習得だけでなく、彼らが働き続けたいと思える環境(評価制度、キャリアパス、やりがい)を同時に整備する必要があります。
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  3. システムの「属人化」と継続的な運用保守の負荷
    内製化が進み、特定の「できる人」に開発が集中すると、「属人化」という新たな問題が発生します。その担当者がいなければ、システムの改修もトラブル対応もできない、という状態です。
    その担当者が退職・異動した途端、苦労して作ったシステムは「ブラックボックス」と化し、誰も触れない「技術的負債」になってしまいます。内製化は「作って終わり」ではなく、ドキュメントの整備、ノウハウの共有、継続的なアップデートといった運用保守体制を組織として構築することが不可欠です。

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DX内製化には、強力なメリットがある一方で、人材確保や属人化といった重大な課題も存在します。
しかし、冒頭で触れた「時流」——すなわち、ローコード/ノーコードツールの普及やAIによる開発支援は、まさにこの「人材」という最大の課題を乗り越えるための強力な追い風となっています。
これらの新しい技術は、専門家でなくてもシステム開発を可能にし、スキル習得のハードルを劇的に下げています。
自社でどのように活用できるのか?ご検討中の方は、船井総研の無料オンライン相談を活用ください。貴社の状況に適したご提案をさせていただきます。

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