記事公開日:2023.12.12
最終更新日:2024.10.07
たった50万円のロボットも登場!?2024年ロボット最新技術7選!
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11/29~12/2、東京ビッグサイトで行われた、世界最大規模のロボット展示会、「国際ロボット展 (iREX2023)」。ロボット専門コンサルタントの筆者も参戦し、最新情報を収集してきました。
今回のコラムでは、「ロボットと生成AI」、「新世代ロボット」に焦点を当てて、出展社数615から厳選した7社の最新技術事例を紹介致します。貴社のお役に立てば幸いです。
1.ロボットにおける生成AI活用技術
ロボット活用においても、生成AIの利用が加速すると考えられます。
今回のロボット展の講演において、日立製作所の守屋氏は次の様に語っていました。「生成AIは、“目的の状態になることをコミットするもの“と定義することができ、これはすなわち”制御“である。ロボットの”制御“と生成AIは親和性が非常に高い。」。
このことから、ロボット分野においては、他の分野以上に生成AI活用の技術が進んでいくと考えられます。
1-1.Google Cloud社:検査AI (Visual Inspection AI)とロボットを使った検査の自動化
Googleが製造しているスマホ(Google Pixel)で写真を撮影すると、Google Pixelがその写真に映っている顔やモノを認識していることがわかるかと思います (iphoneも同様ですが)。この画像認識の技術はVision AIと呼ばれています。
Google Cloud社ではこの画像認識技術を製造業に転用し、検査の自動化ソリューションを提供しています。
検査できる項目は多岐に渡り、具体的には、OK/NG判定、へこみ、ひび割れ裂け目などの領域固有の不具合の検出、基板組み立ての不具合品がないかどうかの確認などを行うことができます。
外観検査AIに詳しい方であれば、その検査精度が非常に気になるところではないでしょうか。
Google Cloud社によると、「汎用の機械学習アプローチを使用した場合と比較して、Visual Inspection AI の使用によって正確さが最大で 10 倍も向上しました。」とのことで、従来の機械学習と比較して、高い検査精度を実現できていると言えます。
(引用:https://cloud.google.com/blog/ja/products/ai-machine-learning/improve-manufacturing-quality-control-with-visual-inspection-ai)。
またGoogle社では、Google Pixelを製造する際、Visual Inspection AIを利用して検査を行っています。自社での製造工程で使用していることが何より、検査精度の高さを物語っているのではないでしょうか。
こういった技術が産業用機械にも搭載される未来も近いと思われます。
1-2.DENSO社:AI模倣学習によるティーチングと音声認識によるプログラムの生成
今回のロボット展では、音声指示に従って自動でコーヒーの粉を調合することができる協働ロボットが展示されていました
“音声指示に従ってロボットが動く“といったコンセプトの展示が見られたのは、(見た限り)DENSO社だけが展示を行っていました。
音声指示に従ってロボットを動かすために、今回の機構では2つのAIが使われています。
1つ目は、ご存じChat GPT。今回の機構においては、人が自然言語で注文した内容を認識する役割を持っています。内容を認識後、下記の2つ目のAIに認識した音声指示内容を指示します。
2つ目は、アメリカのIntegral社が開発した模倣学習AI。模倣学習AIとは、すでに蓄積されている教示データやワークのモデルデータを用いて、実際に撮影した3Dデータから詳細のワーク形状・位置を推論します。
推論したデータを用いて、ロボットの軌道を生成します。
これにより、ティーチングにかかる時間を大幅に削ることができると考えられています。
DENSO社のHPを確認すると、ワークの位置が変わっても、カメラで位置を補正して把持する例や、適切な粉の量を認識し、特定の量を持ってくる例などが見られました。
(引用:https://www.denso-wave.com/ja/robot/product/software/aiil.html)
これらのティーチングは、今までは非常に困難なものでした。先述の例で言えば、毎作業ピッキングや粉を取る位置が異なり、いちいちティーチングを行う必要があったためです。
国際ロボット展で展示されていたGoogle Cloud社とDENSO社のAI活用事例を紹介しました。今後声だけでロボットに指示し、ロボットに稼働してもらう未来はそう遠くない、と思わせる展示内容でした。
2.新世代ロボット
世界最大規模のロボット展、ということもあり、新型のロボットが多数出展していました。今回は合計5社の新世代ロボットを紹介します。特に、今回紹介する海外の協働ロボットはどれも特徴的なので、是非ご覧ください。
2-1.ユニバーサルロボット社:30kgの可搬重量を持つ協働ロボット「UR30」
ユニバーサルロボットから、可搬重量30kgに対応した協働ロボット「UR30」が登場。ロボット展デモでは、積み荷のパレタイズや、タイヤを積む作業を行っていました。
有名どころで言えば、ファナックや安川電機に続いて、3番目となる可搬重量30kgに対応した協働ロボットの発売です。
UR30の特筆すべき点はその本体重量の軽さです。
同じ30 kg可搬のFANACの協働ロボット(CRX-25iA)と安川電機の協働ロボット(MOTOMAN-HC30PL)の本体質量がそれぞれ135kg,140kgであるのに対し、UR30は本体質量が65kgと大幅に軽量仕様となっています。
これにより、扱いやすさが向上し、さらには壁や天井などにも設置して利用することも可能です(引用:https://www.mapion.co.jp/news/column/cobs2693821-1-all/)。
2-2.安川電機社:最新自律ロボット「MOTOMAN NEXT」
(引用元:https://www.yaskawa.co.jp/newsrelease/product/1154379)
今回のロボット展でも大々的に展示されていた、安川電機の最新自律ロボット「MOTOMAN NEXT」。“自律ロボット“の名の通り、ロボットが周囲の状況に合わせて自律的に判断し、駆動します。
具体的に特徴を説明致します。「MOTOMAN NEXT」はあらかじめ動作環境を入力したパスプランニングサービスを使って、目標点までのパスを自動生成することができます。さらに、ビジョンカメラや力覚センサなどを用いることで、状況に合わせた判断を行うことが可能になります。究極的には、使用するツールや、具体的な作業の指示を行うことで、ティーチレスでロボットへ動作の指示を行うことができます。
2-3.海外の協働ロボット① FAIR Innovation Robot System社:「FAIRINO Robot」
(引用元:https://www.frtech.fr/)
中国の新興協働ロボットメーカー。その特徴は「圧倒的な価格の安さ」です。
一般的な協働ロボットの価格帯が200万円~500万円であるのに対し、1台50万円で購入することができます。
圧倒的低コストの理由を担当者の方に確認したところ、「減速機を含め部品を全て自社製造しているから」とのことでした。
中国メーカーで且つ破格に安価な価格であることから一抹の不安感がありますが、他社の協働ロボット同様、一般的な溶接、パレタイズ、ピッキングなど用途で活用することができます。筆者は実際に溶接作業のティーチングのデモを拝見しましたが、見た目は他社製の協働ロボットの動きと遜色ないな、という感想を持ちました。(しかも、オプションのカメラで撮像した画像からティーチング箇所を判断し、ティーチングを自動生成していました。) 手軽に協働ロボットを導入をしたい方にオススメです。
2-4.海外の協働ロボット② Kassow Robots:「KRシリーズ」
(引用元:https://ksw-robots.co.jp/)
デンマークの協働ロボットメーカー。
「KRシリーズ」の特徴は、「7軸の協働ロボットであること」です。(FANACや安川電機など、現行の協働ロボットは6軸であることがほとんどです。)
軸が7つあることのメリットは、ロボットの可動域が広くなることです。
軸数が一つ増えることでそんなに可動域が変わるのか?とお思いの方は、添付の動画を是非ご覧になってください。
アーム本体に近いところや、入り組んだ場所にもアームが届いていることが理解できるはずです。
(引用:https://www.robot-digest.com/contents/?id=1539936027-885058&dp=2)
2-5.海外の協働ロボット③ BECKHOFF社:「ATRO」
(引用元:https://www.beckhoff.com/ja-jp/products/motion/atro-automation-technology-for-robotics/)
ドイツの協働ロボットメーカー。
BECKOFFの協働ロボット「ATRO」の特徴は、「ロボットアームが軸毎に独立した部品で構成されていること」です。
つまり、ロボットアームを軸毎に分解&組立することができます。
この特徴を擁する「ATRO」の強みは2つです。
1つ目はハード面での汎用性が高いことです。軸毎に独立した部品で構成されているため、生産方法に合わせてロボットアームを構築することができます。
例えば、4軸で組み立ててピッキングに使用することができる一方で、1軸のみ使用しターンテーブルの様に使用することもできます。
(引用記事に記載の動画をみていただくと非常にわかりやすいかと思います。)
https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2304/19/news076.html
つまり、ユーザーの発想次第で使い方を無限大に広げることができます。
2つ目はメンテナンスが容易であることです。
協働ロボットが故障した場合、従来であれば故障したロボットを修理する必要がありました。
修理するためには、メーカーからエンジニアを呼ぶ必要があるため、長い期間生産が止まってしまう可能性があります。
その点、「ATRO」は故障した部品を交換するだけで、正常状態に戻すことができます。
現場の作業者が簡単に分解&組立できるので、メーカーからエンジニアを呼ぶ必要もありません。
下記のページを見ていただければ、組付けが簡単に行えることがわかるでしょう。
https://www.beckhoff.com/ja-jp/products/motion/atro-automation-technology-for-robotics/
3.さいごに
今回は、生成AIと新世代ロボットに焦点を当てて、紹介させていただきました。貴社の情報収集の一助となれば幸いでございます。
国際ロボット展レポート第2弾は、“物流”に焦点を当てて、最新技術をご紹介致します。