記事公開日:2024.05.13
最終更新日:2024.06.03

製造業における技術伝承とは?現状と課題

いつも当コラムをご愛読頂きましてありがとうございます。

組織を存続させていくために、研修などを通して従業員の育成をおこなっている企業様もいらっしゃるかと思います。
今回は製造業における技術伝承の現状と課題と題して紹介させていただきます。貴社の情報収集の一助になれば幸いです。

1.技術伝承とは?技術伝承の現状

技術伝承とは、熟練技術者の知識・経験・感覚(ノウハウ)などのスキルを若手技術者へ伝えていくことです。
一般的な知識も大切ですが、自社独自のノウハウを伝承することが重要であると考えます。

製造業では、熟練技術など属人化されている業務を抱えている会社が多くあります。
見積業務・生産計画・現場の段取り・修理や保守・在庫管理など様々あると思います。
業務が属人化されてしまうと、その担当者しか詳細が分からない、担当者がいないと仕事が進まない、担当者への業務負荷が高まる、担当者が辞めてしまうなどの問題が発生します。
これらの業務を遂行するための知識や技術を伝承しようと思っても、ここにも様々な問題が発生します。

令和4年 厚生労働省 能力開発基本調査によると、技能伝承に問題があるとする事業所は41.2%となっています。(能力開発基本調査では‘技術継承’と記載されていますが、本コラムでは‘技術伝承’と記載しています)


出典:厚生労働省 令和4年度「能力開発基本調査」

産業別にみると、

  • 建設業:63.1%
  • 学術研究,専門・技術サービス業:60.1%
  • 製造業:59.5%。

製造業では、60%近くの会社が技術伝承に問題を抱えていることが分かります。


出典:厚生労働省 令和4年度「能力開発基本調査」

2.技術伝承を進める上での5つの課題点

技術伝承を進める取り組みについて詳細な内容は下図となります。
退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い指導者として活用している:65.2%
中途採用を増やしている:46.4%
新規学卒者の採用を増やしている:29.2%


出典:厚生労働省 令和4年度「能力開発基本調査」

しかし、技術伝承を進める上で、中途人材や新卒採用を増やすだけでは技術の伝承は進みません。
また、

  • 不足している技能を補うために 契約社員、派遣社員を活用している:20.4%
  • 事業所外への外注を活用している:14.5%

上記の場合、自社のノウハウは蓄積されず、逆に流出してしまう可能性もあります。

技術伝承を行うためには、社内の体制を整え、会社一丸となって取り組むことが大切です。

  • 退職予定者の伝承すべき技能・ノウハウ等を 文書化、データベース化、マニュアル化している:21.5%
  • 技能伝承のための特別な教育訓練により、 若年・中堅層に対する技能・ノウハウ等を伝承している:19.1%

上記は非常によい取り組みであると思います。一方で、取り組めている会社は2割程度に過ぎません。
なぜ2割程度に過ぎないのか?

  • 技術伝承の重要性を理解していない
  • 技術伝承の適切な方法が分からない
  • 文書化、マニュアル化のやり方が分からない
  • 教育訓練する時間がない

など多岐に渡ると思います。

また、

  • マニュアルを作成しても全く活用されていない
  • 訓練を行っただけで、フォローがされていない

など、技術伝承に取り組んでみたが上手くいっていない場合もあると思います。

技術伝承が進まないと、生産性悪化や品質低下などを招き、結果的に企業の競争力が失われる可能性があります。自社ノウハウがブラックボックスになっている、もしくはブラックボックスになっていると感じている企業では今後、より大きな問題点となっていくでしょう。

3.AI時代における技術伝承課題の解決策5選

最後に簡単に、IT技術を活用した技術伝承方法をご紹介します。
①技能・ノウハウ等を文書化、マニュアル化する際、動画などを活用する
テキストでのマニュアルが活用しづらい場合、マニュアルの動画化は非常に有効です。作業がイメージしやくすなり、また、昨今のサービスではマニュアルが対象者に閲覧されたかどうかを管理することも出来ます。

②IoTセンサーなどのツールを活用し機械などの予知保全に活用する
保守員の技術伝承はかなり時間がかかるものです。これまで感覚的だった振動や異音などから判断する予防保全について、データを蓄積、活用することで機械の保守、修理など高度な知識・技術を伝承することが出来ます。

③IoTセンサーを活用し段取り時間の削減を行う
製造現場の課題である熟練作業者の段取りプロセスをデータ化・可視化することで、若手技術者でもベテラン同様のセットに早く持っていくことが出来るようになります。可視化することで、情報は共有化され、段取り時間を削減でき、稼働率向上にもつながります。

④AIシステムを活用し工具などの監視を行う
工具の振動データや画像診断により残り寿命は可視化することで、適切な工具交換の時期を明確にし、工具寿命を最大限活用することが出来ます。また、不良品を作ることが減少し、歩留り改善にも役立ちます

⑤AIシステムを検査工程に活用する
これまで従来のカメラやセンサーが利用できず、目視に頼らざるを得ない検査について、画像にAI処理を用いることで自動検査を行えるようになるかもしれません。AIによる判断の為、不良基準が統一化され、検査担当者毎に発生する不良品の基準の違いや、見落としによる不良流出減少が期待されます。当然ながら省人化にも役立ちます

先ほどもお伝えしましたが、技術伝承の方法には様々あります。
自社に合った手法を選ぶことが大切です。

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?適切な技術伝承を行うこと、これは非常に難しいテーマです。企業をこれからも存続させていくために、長年勤めた従業員の暗黙知を形式知に転換し、次世代の従業員に技術を伝える必要があります。

技術伝承に関して困りごとがございましたら、お気軽にご相談下さい。
技術伝承に限らず、
【製造業での悩み・困っていること・相談したい】について、何でもご相談下さい。

無料経営相談の際はフォームよりお気軽にお問い合わせください。お電話でのお問い合わせは 0120-958-270へ(平日9時45分~17時30分)