記事公開日:2024.05.22
最終更新日:2024.09.05

AI見積り導入の費用感やAI選定方法は?導入効果や進め方についても解説!

いつも当コラムをご愛読頂きましてありがとうございます。
今回は製造業における見積りのAI活用について紹介させて頂きます。

1.製造業における見積りの課題 

<見積の精度・効率が低い>
特に、個別受注生産(新規品の多い)の企業では原価精度が低くなる傾向にあります。
顧客ごとに要件や仕様が異なると、見積りが複雑になるためです。
見積りの作成に時間がかかったり、適切な納期や単価の設定ができなかったりする恐れがあります。

<見積りデータが管理されていない>
見積りをExcelで作成していたり、さらにそのExcelを個人PCで管理している場合、過去に請け負ったデータがすぐに参照できないという課題があります。
類似案件や過去の事例が見つからないため、見積り作成に時間がかかるのです。
過去案件などを周りに聞いて回るような作業が発生してしまいます。

<見積方法が統一されていない>
見積りの作成業務が属人化しやすくなる点も課題です。
見積りの作成プロセスが標準化されていない場合、社長や工場長などのごく限られた経験者しか見積りができないという事態に陥ります。
一部のベテラン担当者しか見積りが出来ないという状況は、中小製造業だけでなく、大企業でも起こりやすいため注意が必要です。

見積業務は、会社に利益をもたらす根源でもある為、非常に重要な業務ですが、一方でベテランしか出来ないブラックボックス化してしまっているという状況はよく耳にする話です。

2.AIを活用した見積りの自動化とは


見積りを自動化する上でまず重要なことは、図面を含めた過去案件を一元で管理データするということです。
Excelのままでは、作成した担当者はわかっても、他の担当者からではわかりません。

これでは、情報が共有されていないのと同じ状況です。
大事なことは全部の情報をデータベース化することで、「いつでも」「誰でも」「簡単に」情報が閲覧できる仕組みが出来ることです。

昨今では、AIを活用して過去の類似した図面を検索できるような「類似図面検索システム」が利用されるようになっています。

このようなシステムで、PDFや3Dデータをアップロードすることで、その形状と類似した図面(案件)を誰でも簡単に取得することができるようになります。
これにより、過去の担当者を探し回るような作業も発生せずに「それがわかっていたら簡単に見積りができたのに・・」という情報を共有の不備から発生する、作業のムダもなくなります。

また、AIにより見積価格を予測するシステム開発も行われています。
これは、新規品の多い受注生産がメインの企業で取組みが見られます。
個別受注製品は見積りが複雑でベテランの担当者しか出来ない領域になっている場合が多くあります。
これは、工程の予測やそれぞれの工程工数を予測するのは長年の経験が必要となる為です。
過去の実績データを分析して、見積りに重要な必要な項目を再定義して、工数を予測するモデルを構築します。
この場合、実績工数をもとに、重量やサイズなどをパラメータとして、それぞれの相関関係などを検証していきます。
精度が高い予測モデルが構築出来れば、見積りを算出することが出来ます。
(リピート品はコストテーブルなどをシステムで持つことで見積りすることが可能です)

3.AI見積りシステム費用と導入事例3選


1.3D図面類似図面検索を導入した事例
【業種】
プラスチック試作

【問題】
複雑形状の試作(一品モノ)の受注が多く、過去の類似案件から生産時間を割り出し、見積もり
を作成していました。
見積データが一元化されていなかった為、過去の図面情報・製作情報の検索
に多くの時間と労力がかかり、「わかる人はわかる」という状況で作業が属人化していました。

【システム導入】
3D図面での類似図面検索システムを導入しました。
3D図面と過去の営業情報・加工情報を紐づけることで、3D図面をアップロードするだけで簡単にシステム上にて類似図面、案件情報が取得できるようになりました。
なお、この類似図面検索システムは図面との紐づけ項目が多くあり、画面設計にもこだわりがあった為、オリジナル開発としました。

【効果】
情報が一元化され、図面検索により検索時間が75%削減されまた。
過去案件の見積・営業情報の
共有化されたので、「それを知っていたらすぐに対応できたのに」といったムダがなくなり、業務全
体の効率化に繋がりました。

2.PDF類似図面検索を既存の基幹システムを連携しながら導入した事例
【業種】
金属加工

【問題】
類似形状が非常に多く、わかる人しかわからない、過去の案件を探すのに苦労していました。

【システム導入】
客先支給はPDF図面の為、PDF図面における類似図面検索システムを導入しました。
図面に紐づいたデータは既存の基幹システムにある為、図面と基幹システムをキーNoで紐づけ、類似図面を検索システムで検索して、DBは基幹システムを参照できるようにシステムを構築しました。
なお、この類似図面検索システムはお客様の要望でオリジナル開発としました。

【効果】
過去の類似図面が簡単に検索でき、また、図面も閲覧しやすいように画面設計したため、業務で多く利用されるシステムとなりました。
このシステムは営業部門だけでなく、設計・生産管理・製造など様々な部門で利用するシステムになっています。

3.個別受注生産において工数の予測モデル(見積自動化システム)を導入した事例
【業種】
金型加工

【問題】
個別受注生産多く、ベテラン担当者が担当しているが、見積り算出がブラックボックス化し、
後継者問題がありました。

【システム導入】
新規品は工数を予測するのが、難しい為、過去のデータから様々なパラメータの分析を行い、工数を予測するモデルを構築しました。
ただし、モデルは将来的にデータが増えていき、フィードバックしていくことで、精度向上を図っていきます。

【効果】
見積り作業が標準化された為、「いつでも」「誰でも」「簡単に」同じ品質で見積り業務が出来るよ
うになりました。
また、見積り業務の負荷や後継者問題からも脱却することが出来ました。

上記は、船井総合研究所が支援に入った事例として紹介致しました。

また、類似図面検索システムの費用について、
パッケージ品であれば月額数万~十数万円(機能次第)となり、パッケージ品でもカスタマイズが可能な場合は、初期で数百万円~1,000万円(要件次第)が発生します。
オリジナル開発の場合では、システム開発費で800~2,000万円程度かかります。
(要件次第)

4.AI導入の進め方とAI選定時の3つの注意点


<AI導入の進め方>

1.目的とニーズの明確化
AIを導入する目的やニーズを明確に定義します。
類似図面検索システムは様々な部門で活用することが出来ます。
システム導入の対象範囲や目的(どこの何を改善したいか)を明確にしましょう。

2.データの収集と前処理
貴社の過去の見積データ、加工データや図面データが必須となります。
必要なデータを収集し、必要な前処理を行いましょう。
データの品質や量、形式にも注意を払いましょう。
データ数が多ければ多いほどAIシステムの質が向上しますが、一方で登録データが数十万件もあると登録に非常に多くの労力・コストがかかります。
その場合は、直近数年分を採用するのが良いでしょう。

3.パッケージ品やスクラッチ開発の選択
類似図面検索システムにおいては、近年パッケージ品のラインナップも増えてきており、機能も充実してきています。
これらは主にPDFや3D図面から類似図面を検索するものが主流となっています。
各ベンダーにてデモも相談できますので、自社の状況について相談するのも良いでしょう。
また、パッケージ品の場合は、機能拡張に制限がございますので、自社オリジナルで開発した場合は弊社にご相談ください。

見積の予測モデルについては、各社それぞれの対応となりパッケージ品では難しくなります。
こちらも弊社にご相談頂ければ幸いです。

4.モデルの学習と評価
選んだAIモデル(サービス)を自社のデータで学習させ、その性能を評価します。
学習方法やパラメータの調整によってモデルの精度を高めていきます。

5.導入と運用
学習したAIモデルを実際の業務に導入し、運用します。
トライアル期間を設け、結果を評価しながら適切な調整や改善を行いましょう。

これらのステップを踏みながら、AIを導入することで効果的な活用ができるでしょう。

<AI選定時の3つの注意点>

①「課題の抽出、目的とニーズの明確化」の注意点
AI導入おけるもっと重要な箇所は、冒頭の「課題の抽出、目的とニーズの明確化」です。
<どこが課題>で<何を目的に導入するのか>をユーザー側は明確にする必要があります。
<目的>が曖昧だったり、ブレてしまうと、どういうAIを選定するか?の際に、AIを当てはめることが優先され、結果的に導入されたものがさほど意味がない(当初の課題を解決してくれない)ものになってしまいます。
これを回避するには、課題抽出の時点からある程度のAIの知識(何が出来て何が出来ないか)を知っておく必要があります。
課題のすべてをAIが解決してくれるわけではないのです。

「うちの課題をAIで何か解決してくれないか?」という視点で始めると、AIを入れることが目的になるので、ほとんどの場合は、途中で頓挫しますので注意しましょう。

②「AIベンダーとの付き合い方」の注意点
AIベンダーはユーザーから与えられた要望に対して、自社製品を使って必死に知恵を絞り出します。
しかし、根本的に課題抽出から間違っている場合も多くあります。
それは「そもそもAIで解決すべきではない」という結論です。
課題に対して、解決方法(アプローチ方法)はいくつかあります。
課題抽出の段階で、どの方法なら出来そうか?技術的なハードルを目途つけながらやっていくことが必要です。
全く考えないまま(知識がないまま)実施していくと、いわゆる「ベンダーの言いなり」となり、ベンダーが主導権を握り、自社ではハンドリングが出来なくなっていきます。

③手元の「データ」の注意点
AIモデルを作る上で過去データは欠かせないものです。
データ分析をする場合、過去のデータがあるから問題ないというわけでもありません。
データ量(十分なデータ量があるか)、データ質(欠けたデータないか、信ぴょう性のあるデータか)データ構造(データ分析しやすいデータ構造になっているか)を事前に確認することが必要です。
使えると思っていたデータは実は、データ分析(モデル構築)の観点で見た場合、一部しか使うことが出来ない、もしくは全く使えない(いわゆるゴミデータ)ということはよくあることです。
これは「現場の言う<データがある>」「データサイエンティストが言う<データがある>」は意味が異なる為です。
データ分析は依頼する前に、きちんとデータ分析の依頼先に確認してもらいましょう。

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