記事公開日:2025.04.09
最終更新日:2025.04.09
世界で初めての自動化に成功し、生産性20倍を実現した事例に学ぶ-株式会社ウエノが自動化に成功した秘訣-

先日、船井総研主催 ものづくり経営研究会・スマートファクトリー経営部会にてご登壇いただいた、株式会社ウエノの自動化事例をご紹介させていただきます。
株式会社ウエノでは、自動化によってコイル一個あたりの製造時間を従来の1/50に短縮し、また累計2億個を超えるヒット商品を生み出しました。
本記事では、株式会社ウエノにおける自動化前の課題と、自動化施策とその結果、そしてなぜ自動化に成功したのか、紐解いていきます。
▼株式会社ウエノの紹介動画はこちら
1.自動化前の課題
株式会社ウエノが自動化に取り組む前には、以下のような課題が存在していました。
手作業による品質のばらつき: コイルの手巻き作業は、作業者の熟練度によって品質にばらつきが生じる可能性がありました。均一な品質を維持することが課題でした。
生産性の限界: 手作業によるコイル巻きは時間がかかり、大量生産のニーズに対応することが困難でした。特に、トロイダルコイルと呼ばれるリング状のコイルは、手作業で一つ一つ丁寧に巻く必要があり、時間がかかっていました。
対応できる種類の限界: 手作業では、複雑な形状や特殊な巻き方のコイルに対応することが難しい場合がありました。全てを手作業で巻き付けるわけではなく、一部は手作業で行う必要がありました。
コスト: 人件費が生産コストに影響を与えていました。
スピード: 手巻きは機械巻きに比べてスピードが遅く、納期対応に課題がありました。
2.自動化施策とその効果
これらの課題を克服するために、株式会社ウエノは以下の3つ取り組みを行いました。
世界初のトロイダルコイル自動巻線機の開発
5年の歳月を費やし、2005年に世界初となるロボットによるトロイダルコイルの自動巻線機を開発。これは、それまで手作業でしか不可能とされていたコイル巻きを機械で再現する画期的な自動機でした。自動化することで、現状作業の1割程度をロボットに代替することができました。また、自動巻線機を用いた完全自動化ラインを国内工場に導入し、24時間稼働体制を確立しました。
革新的な自動巻線機の開発
さらなる生産性向上を目指し、電線を押し出す原理を利用した新しいスタイルの自動巻線機を2011年に開発しました。この開発には、コイル自体のデザインや材料調達、巻線機の設計など、技術者たちの1からの開発と試行錯誤が必要とされました。生産性向上のために、コアの形状を丸型(トロイダル型)から四角い形状に変更し、巻線には丸線ではなく平角線を使用。平角線を隙間なく巻きつけることで、小型でありながら必要な巻数を確保することができました。これにより、ノイズ抑制性能が向上し、一個あたりのコイル製造時間を1/50に短縮することができました。これらの技術革新によって生まれた新しいコイルは「ウエノコイル」と名付けられ、自社ブランドとして展開しました。
3.自動化成功の秘訣
株式会社ウエノでは、なぜ自動化によって絶大なインパクトを出すことができたのでしょうか。その成功の秘訣は間違いなく自動機開発とともに、自動化対象(製品)を開発したことです。
ロボット導入において、自動機を開発するのは当たり前です。株式会社ウエノの特筆すべき点は、自動化対象(製品)も同時に開発したことです。ここで、株式会社ウエノでおこなった自動化施策を振り返りたいと思います。
株式会社ウエノでおこなった自動化施策をまとめると、大きく以下の3つに集約することができます。
Step1では、既存業務をベースに自動化をおこない、人がコイルを手巻きする作業をそのままロボットで再現しました。
Step2では、自動化に適した、全く新しい形状のコイル製品の開発をおこないました。
Step3では、開発したウエノコイルを自動で製造するためのウエノコイル巻き線機を開発しました。
非常に重要なポイントは、Step2の“ウエノコイル開発”です。株式会社ウエノではStep1の後、さらに生産性向上を見込むために次代の自動機開発をすぐにおこなうのではなく、自動化に適した製品の開発をおこないました。
ウエノコイルは従来の丸線ではなく平角線を活用し、ばね製造の方法をオマージュして設計された製品です。ばね製造の着想をコイルに落とし込み、さらに性能を上げることにも成功しました。
この自動化に適した“ウエノコイル”の製造を自動化することで、強力な自動化インパクトを出すことに成功しました。
それぞれの開発には数年をかけており、暗く長いトンネルを手探りで進むような、さまざまな苦労があったことと推察します。その中でも、社長の強い一念をもって、自動機の開発に成功しました。
株式会社ウエノの社訓は「求めよ、さらば与えられん」です。これは、新約聖書「マタイ伝」の一節に由来する慣用句で、「熱心に求めていけば、必ず与えられる」という意味ですが、株式会社ウエノはそれを地で体現している企業であると言えます。
4.まとめ
コイル製造の課題を抱えていた株式会社ウエノでは、自動化と製品開発の両輪で生産性を飛躍的に向上させました。
手巻き作業の自動化(Step1)に留まらず、自動化に適した新製品「ウエノコイル」を開発(Step2)。さらに、その専用自動巻線機を開発(Step3)することで、生産性を大幅に向上させました。同社の成功の秘訣は、Step2において、自動化対象の製品そのものを開発した点にあります。
船井総研では、製造業における、現場作業自動化のコンサルティングをおこなっております。自動化対象製品の調査から、SIer選定、補助金活用、ロボット導入後の運用まで、一貫したコンサルティングをおこなっております。
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