記事公開日:2025.06.23
最終更新日:2025.06.23
中堅・中小企業の経営者向け: 基幹システム+BI活用で、経営指標の即時見える化へ

目次
- 中小企業の成長を加速するMicrosoft Dynamics 365 Business Central とPower BIの可能性
- 中小企業が抱える成長の壁と Business Central の役割
- Business Central の主要機能:中小企業のあらゆるニーズに対応
- Microsoft Dynamics 365 Business Central と Power BI の強力な連携:データ「見える化」の真価とコスト効率
- 中小企業が Business Central を導入するメリット
- 中小企業が Business Central を導入する際の注意点
- まとめ:Business Central を中心としたデータドリブン経営の実現
中小企業の成長を加速するMicrosoft Dynamics 365 Business Central とPower BIの可能性
中小企業の皆様、日々の業務運営お疲れ様です。事業を成長させていく中で、煩雑な業務プロセス、部門間の連携不足、そして見えにくい経営状況といった課題に直面していませんか?もしそうであれば、Microsoft Dynamics
365 Business Central(以下、Business Central) が、あなたのビジネスを新たなステージへと導く鍵となるかもしれません。
Business Central は、マイクロソフトが提供するクラウドベースの包括的な ERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務システム)です。財務、サプライチェーン管理、営業、顧客管理、プロジェクト管理、サービス管理など、中小企業に必要なあらゆる業務機能を統合し、効率的なビジネス運営を支援します。本稿では、中小企業が Business Central を中心に据え、どのように成長を実現できるのか、その可能性と具体的な活用方法について深く掘り下げていきます。
中小企業が抱える成長の壁と Business Central の役割
中小企業が成長を目指す過程では、様々な壁に直面します。例えば、
- 情報の一元化の遅れ: 各部門で個別のシステムやExcelを利用しているため、データが分散し、全体像の把握に時間がかかる。
- 手作業による非効率: データ入力や集計作業に多くの時間を費やし、本来注力すべき業務にリソースを割けない。
- 部門間の連携不足: 情報共有がスムーズに行われず、意思決定の遅延や業務の重複が発生する。
- 変化への対応の遅さ: 市場の変化や顧客ニーズの多様化に迅速に対応するための柔軟なシステムがない。
- 将来の成長への不安: 事業拡大に伴い、現在のシステムでは対応しきれなくなるのではないかという懸念。
Business Central は、これらの課題に対し、以下のような役割を果たすことで、中小企業の成長を強力に後押しします。
- 業務プロセスの統合: 財務会計、販売、購買、在庫管理、生産管理(オプション)、顧客関係管理(CRM)、プロジェクト管理、サービス管理といった基幹業務を一つのプラットフォームで統合し、部門間の垣根をなくします。
- 情報の可視化とリアルタイム性: 全ての業務データが一元管理され、リアルタイムに最新の情報を把握することが可能になります。これにより、迅速かつ正確な意思決定を支援します。
- 業務効率の大幅な向上: 定型的な業務プロセスを自動化し、手作業によるミスを削減することで、従業員の負担を軽減し、生産性を向上させます。
- 柔軟性と拡張性: クラウドベースであるため、場所や時間を選ばずにアクセスでき、事業規模の拡大に合わせて柔軟に機能を追加・拡張することができます。
- データに基づいた洞察の獲得: Power BI との連携により、蓄積されたデータを分析・可視化し、経営判断に役立つインサイト(洞察)を得ることができます。
Business Central の主要機能:中小企業のあらゆるニーズに対応
Business Central は、中小企業の様々な業務ニーズに対応するための豊富な機能を標準搭載しています。
1. 財務管理
- 総勘定元帳: あらゆる財務取引を記録・管理し、正確な会計帳簿を作成します。これにより、企業の健全な財務状況を維持し、監査にも対応できる透明性の高い会計処理を実現します。
- 買掛金/売掛金管理: 請求書の発行、支払いの管理、債権・債務の状況把握を効率化します。期日管理を徹底することで、キャッシュフローの安定化に貢献し、資金繰りの予測精度を高めます。
- 固定資産管理: 資産の取得から償却、売却まで、ライフサイクル全体を管理します。減価償却費の自動計算機能なども備え、正確な資産価値の把握と会計処理をサポートします。
- 予算管理: 予算の設定、実績との比較分析を行い、健全な財務運営を支援します。予実差異をリアルタイムで把握することで、早期に経営上の課題を発見し、改善策を講じることができます。
- キャッシュフロー管理: 現金の流れを把握し、資金繰りの最適化に貢献します。将来の入出金を予測することで、運転資金の不足を防ぎ、安定した企業運営を可能にします。
2. サプライチェーン管理
- 在庫管理: 製品の入庫・出庫、在庫数の調整、棚卸しなどを効率的に管理し、過剰在庫や欠品を防ぎます。適切な在庫レベルを維持することで、保管コストの削減と販売機会損失の最小化を実現します。
- 購買管理: 仕入先の管理、見積依頼、発注書の作成、入荷処理などをスムーズに行います。複数の仕入れ先からの見積もり比較も容易になり、最適な仕入れ戦略を立てることができます。
- 販売管理: 顧客管理、見積作成、受注処理、出荷指示、請求書発行などを一元的に管理します。営業から出荷、請求までのプロセスがシームレスに連携し、顧客への迅速な対応を可能にします。
- 製造管理(オプション): 生産計画、作業指示、BOM(部品構成表)管理、製造実績管理など、製造業特有のプロセスをサポートします。多品種少量生産の現場においても、複雑な生産工程を効率的に管理し、生産性の向上に貢献します。
3. サービス管理
- サービス契約管理: ご支援先とのサービス契約内容を管理し、契約に基づいたサービス提供を支援します。契約更新漏れを防ぎ、安定的な収益確保に貢献します。
- サービスオーダー管理: サービス要求の受付から完了までのプロセスを管理します。ご支援先からの問い合わせに対して迅速かつ的確に対応し、ご支援先満足度を高めます。
- ディスパッチ管理: サービス担当者のスケジュール管理や割り当てを最適化します。フィールドサービス業務の効率化を図り、移動時間の削減や対応件数の増加に繋げます。
Microsoft Dynamics 365 Business Central と Power BI の強力な連携:データ「見える化」の真価とコスト効率
Business Central の真価を発揮させる上で欠かせないのが、マイクロソフトが提供するビジネスインテリジェンスツール Power BI との連携です。BusinessCentral に蓄積された豊富な業務データを Power BI で分析・可視化することで、これまで見えなかった企業の状況や課題が明確になり、データに基づいた意思決定が可能になります。
Power BI によるデータ「見える化」の真価
Power BI の最大の魅力は、複雑な数値データを直感的で視覚的な情報に変える「見える化」の能力にあります。多品種少量生産を行う中小製造業では、日々膨大なデータが生成されますが、それらのデータがExcelシートに羅列されているだけでは、真の価値を引き出すことは困難です。
Power BI を活用することで、以下のような「見える化」を実現し、経営判断の精度を高めることができます。
- リアルタイムな経営状況のダッシュボード: 売上、利益、生産進捗、在庫状況、不良発生率、ご支援先満足度など、経営の重要指標(KPI)を、リアルタイムに更新されるグラフやチャートで一目で確認できるようになります。例えば、「今、どの製品の製造が遅れているのか」「どのラインで不良が多いのか」といった現場の状況から、「今月の売上目標達成度はどのくらいか」といった経営指標まで、鮮度の高い情報を常に把握できます。
- 多角的なデータ分析と深掘り: 製品別、ご支援先別、担当者別、期間別など、様々な切り口でデータを分析できます。例えば、売上データを見ながら特定のご支援先層にドリルダウンし、そのご支援先がどの製品をいつ、どれくらい購入しているのかを深掘りすることで、次の営業戦略や新製品開発のヒントを得られます。視覚的に分かりやすいフィルター機能やスライサー機能を使うことで、誰でも簡単に必要なデータだけを抽出して分析を進めることが可能です。
- 異常値の早期発見とトレンドの可視化: データの推移を時系列でグラフ化することで、売上の急減、不良率の異常な上昇、特定の製品の在庫滞留といった「異常値」を早期に発見できます。また、季節変動や特定のイベントによる売上増減など、過去のトレンドを可視化することで、将来の需要予測の精度を高めることができます。
- 部門横断的な情報共有と共通認識の醸成: 作成したレポートやダッシュボードは、簡単に組織内で共有できます。営業、製造、経理など、異なる部門のメンバーが同じデータソースに基づいた情報を共有することで、部門間の認識のズレをなくし、共通の目標に向かって協力体制を強化できます。
私自身のコンサルティング経験でも、とある中小製造業のご支援先様で、これまでExcelでバラバラに管理されていた生産実績と品質データをPower BIで一元的に「見える化」したことがあります。すると、特定の製造ラインで、特定の時間帯に、特定の不良が集中して発生していることが一目で判明しました。これまでは「なんとなく」しか把握できていなかった課題が、「数字とグラフ」として明確になったことで、現場担当者も納得し、具体的な改善策をすぐに実行することができました。この「見える化」が、彼らの意識を変え、問題解決のスピードを劇的に向上させたのです。
同じMicrosoft製品だからこその連携メリットとコスト効率
Business Central と Power BI は、どちらもマイクロソフトが提供するソリューションであるため、非常に高い親和性を持っています。この同じベンダーであるという点が、中小企業にとって大きなメリットとなります。
- シームレスなデータ連携: Business Central と Power BI は、標準で強力なデータ連携機能を持っています。特別なプログラミングや複雑な設定を必要とせず、Business Central の豊富なデータを Power BI に直接取り込むことが可能です。これにより、データ連携のための開発コストや時間を大幅に削減できます。一般的なBIツールと異なる基幹システムを連携させる場合、連携モジュールの開発やAPI連携のためのカスタマイズ費用が発生することが少なくありませんが、Microsoft製品同士であれば、その必要性が格段に低くなります。
- 統一されたユーザーインターフェースと操作性: 両製品はマイクロソフトの製品デザイン思想を共有しているため、ユーザーインターフェースや操作感に一貫性があります。Business Central の利用者が Power BI を学ぶ際も、比較的スムーズに操作に慣れることができます。これにより、従業員の学習コストを抑え、早期にBIツールを業務に定着させることが可能です。
- 統合されたセキュリティと管理: 両製品はマイクロソフトのクラウドインフラ上で運用されるため、統一されたセキュリティ基準と管理体制のもとにあります。ユーザー認証やアクセス権限の管理も一元的に行いやすく、セキュリティリスクを低減し、IT管理者の負担を軽減できます。
- 将来的な拡張性と互換性: マイクロソフトは、両製品の継続的な機能強化と互換性維持に取り組んでいます。将来的にBusiness Central や Power BI のバージョンアップが行われた際も、連携が途絶える心配が少なく、安心して長期的に利用できます。また、Microsoft 365(旧Office 365)などの他のマイクロソフト製品との連携も容易であり、Microsoft エコシステム全体で業務効率を高めることが可能です。
- 情報収集とサポートのしやすさ: 多くの企業で利用されている製品であるため、オンライン上での情報やコミュニティが豊富に存在します。また、マイクロソフトおよびそのパートナーからのサポートも充実しており、困ったときに解決策を見つけやすいという点も大きなメリットです。
このように、Business Central と Power BI の組み合わせは、単に高機能なシステムを導入するだけでなく、導入・運用フェーズにおけるコスト効率とスムーズさという点でも、中小企業にとって非常に魅力的な選択肢となります。
中小企業が Business Central を導入するメリット
中小企業が Business Central を導入することで、以下のような具体的なメリットが期待できます。
- 業務効率の大幅な向上: 手作業の削減、プロセスの自動化により、従業員の生産性が向上し、残業時間の削減にもつながります。例えば、受発注から請求までのプロセスが自動化されることで、営業担当者や経理担当者のデータ入力作業が大幅に削減されます。
- コスト削減: 無駄な在庫の削減、人的ミスの減少、ITインフラの維持コスト削減など、様々な面でコスト削減効果が期待できます。クラウドベースのため、自社でサーバーを設置・運用する必要がなく、初期投資を抑えられます。
- 迅速な意思決定: リアルタイムなデータに基づいた意思決定が可能になり、市場の変化やご支援先ニーズに迅速に対応できます。これにより、競合他社に先駆けて新たなビジネスチャンスを掴むことが可能になります。
- ご支援先満足度の向上: 業務効率化によるリードタイムの短縮、正確な情報提供、パーソナライズされたサービス提供により、ご支援先満足度が向上します。ご支援先からの問い合わせに対しても、迅速かつ正確な情報に基づいて対応できるようになります。
- コンプライアンス強化: 法規制や業界標準への準拠を支援する機能が搭載されており、リスク管理を強化できます。例えば、正確な財務データ管理により、監査対応がスムーズになります。
- 事業継続性の確保: クラウドベースであるため、災害時などでもインターネット環境があれば事業を継続できる可能性が高まります。データのバックアップやセキュリティ対策もマイクロソフトの堅牢なインフラによって担保されています。
- 将来の成長への対応: 事業規模の拡大に合わせて柔軟に機能を追加できるため、将来の成長にも安心して対応できます。ユーザー数の増加や機能拡張も比較的容易に行えます。
中小企業が Business Central を導入する際の注意点
Business Central は中小企業にとって多くのメリットをもたらしますが、導入にあたってはいくつかの注意点も存在します。
- 事前の要件定義の重要性: 自社の業務プロセスや課題を明確に洗い出し、Business Central に求める機能を具体的に定義する必要があります。曖昧なまま導入を進めると、システムが自社の業務にフィットせず、期待した効果が得られない可能性があります。徹底的なヒアリングと議論を通じて、現行業務の棚卸しを行うことが不可欠です。
- 導入パートナーの選定: Business Central の導入・運用を支援してくれる信頼できるパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。導入実績、業界知識、サポート体制、コミュニケーション能力などを総合的に評価し、自社に最適なパートナーを見つけることが重要です。パートナー選びは、システムの成功を左右すると言っても過言ではありません。
- データの移行とクレンジング: 既存システムからのデータ移行を計画的に行い、データの品質を確保する必要があります。古いデータや重複データ、誤ったデータが混入していると、新しいシステムでの分析結果が不正確になるため、データのクレンジング(データの整理・整形)作業も非常に重要です。
- 従業員へのトレーニング: 新しいシステムの使い方を従業員が習得するための十分なトレーニングを行うことが重要です。操作方法だけでなく、システム導入の目的や、それによって自分たちの業務がどのように効率化されるかを理解してもらうことで、システムへの抵抗感を減らし、積極的な利用を促すことができます。
- 段階的な導入: 最初から全ての機能を導入するのではなく、段階的に導入を進めることで、リスクを軽減し、スムーズな移行を目指しましょう。例えば、まず会計機能を導入し、次に販売管理、在庫管理と、徐々に範囲を広げていくアプローチは、現場の負担を軽減し、成功体験を積み重ねる上で有効です。
- カスタマイズの検討: 標準機能で対応できない業務がある場合は、カスタマイズを検討する必要がありますが、過度なカスタマイズはコスト増加やアップデート時の負担につながる可能性があるため、慎重に行う必要があります。まずは標準機能で対応できる部分を最大限に活用し、どうしても必要な部分のみに絞ってカスタマイズを検討することが賢明です。
まとめ:Business Central を中心としたデータドリブン経営の実現
Microsoft Dynamics 365 Business Central は、中小企業が抱える様々な経営課題を解決し、成長を加速させるための強力な基幹業務システムです。財務、サプライチェーン、営業、ご支援先管理など、企業の主要な業務プロセスを統合し、効率的な運営を支援します。
そして、その真価は、Power BI との強力な連携によって最大限に引き出されます。Business Central に蓄積された貴重な業務データは、Power BI の「見える化」機能によって、直感的で視覚的な情報へと変貌します。このリアルタイムなデータの可視化は、経営者や現場担当者が現状を正確に把握し、データに基づいた迅速な意思決定を行うための強力な武器となります。
さらに、両者が同じマイクロソフト製品であるという強みは、シームレスな連携を可能にし、データ連携やカスタマイズにかかるコストを大幅に抑制することに貢献します。これにより、中小企業は限られたリソースの中でも、高度なデータ活用と業務効率化を実現することが可能になります。
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