記事公開日:2025.10.07
最終更新日:2025.10.07

失敗しない基幹システム導入・刷新成功の鍵は「マスター」と「コスト」にあり

お世話になっております。船井総合研究所の高階でございます。
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本コラムでは、基幹システム導入でよくある失敗パターンを分析し、失敗しないための具体的なアプローチを解説したいと思います。特に、プロジェクトの成否を分けると言っても過言ではない「マスターデータ」の重要性と、投資対効果を最大化するための「コストを抑える」考え方に焦点を当てています。
これからシステム化を検討されている企業の経営者様、プロジェクトご担当者様は、ぜひ最後までご覧ください。

さて、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な打ち手として、基幹システムの刷新や新規導入を検討しています。しかし、その大規模さと複雑さから、プロジェクトが計画通りに進まず、「失敗」に終わるケースが後を絶ちません。
多大なコストと時間を投じたにもかかわらず、期待した効果が得られないばかりか、かえって業務が非効率になってしまうことさえあるのです。

なぜ、基幹システムの導入は失敗しやすいのでしょうか?
そして、プロジェクトを「成功」に導き、企業の成長エンジンとするためには、何に気をつけるべきなのでしょうか。

なぜあなたの会社のシステム化は失敗するのか?よくある3つの落とし穴

基幹システム導入プロジェクトが頓挫する原因は、個別の技術的な問題というよりも、プロジェクトの進め方や準備段階に潜んでいることがほとんどです。ここでは、多くの企業が陥りがちな典型的な失敗の落とし穴を3つご紹介します。

落とし穴1:目的の曖昧化。「現状業務のシステム化」がゴールになってしまう
最も多い失敗パターンが、「現行の業務プロセスを、そのまま新しいシステムに置き換えること」が目的になってしまうケースです。これは「As-Is(現状)のシステム化」と呼ばれます。
長年使い続けた古いシステムや、Excel・紙媒体での管理に限界を感じ、「とりあえず新しくしよう」という動機だけでプロジェクトをスタートさせてしまうと、根本的な課題が解決されません。

このような状況で良くある失敗が以下です。

  • 「今のやり方を変えたくない」という現場の抵抗に遭い、新システムに旧システムの複雑な機能をそのまま再現しようとして、カスタマイズ費用が膨れ上がる。
  • 本来であればシステム化を機に撤廃・簡略化すべき非効率な業務プロセスが温存されてしまう。
  • 結果として、多額のコストをかけたにもかかわらず、導入前と何も変わらない、あるいはかえって使いにくいシステムが完成してしまう。

基幹システム導入の本来の目的は、業務を効率化し、経営判断のスピードを上げ、企業の競争力を高めることです。現状維持を目的としたシステム化は、失敗への第一歩と言えるでしょう。

落とし穴2:軽視されがちな「マスターデータ」
基幹システムという”器”がいかに立派でも、そこに入れる”中身”であるデータが不正確でバラバラでは、その真価を発揮することはできません。この”中身”の根幹をなすのが「マスターデータ」です。

マスターデータとは、企業活動の基礎となる情報(例:取引先マスター、品目マスター、顧客マスターなど)を指します。多くの企業では、このマスターデータが部署ごと、あるいは個人ごとに管理され、表記の揺れ(例:「株式会社A」「(株)A」)や重複、欠損が多数存在しているのが実情です。

このような汚れたマスターデータを放置したまま新しい基幹システムを導入すると、どうなるでしょうか。

  • 正確な売上集計や在庫管理ができない。
  • 顧客への請求書発行や、仕入先への支払い処理でミスが頻発する。
  • 経営層が見たいデータが、正確かつタイムリーに出てこない。

これはまさに「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れれば、ゴミしか出てこない)」の状態です。
マスターデータの整備を後回しにしたり、その重要性を軽視したりすることは、プロジェクトの成功確率を著しく低下させる致命的な失敗要因となりえます。

落とし穴3:見えないコスト。「TCO」を無視した安易なコスト削減
システム導入において、コスト管理が重要であることは言うまでもありません。しかし、目先の導入費用(イニシャルコスト)の安さだけでベンダーや製品を選んでしまうと、後々大きな失敗に繋がります。

注目すべきは、導入後の運用・保守、アップデート、機能追加などにかかる費用を含めた「総所有コスト(TCO: Total Cost of Ownership)」です。

  • 初期費用が安くても、自社の業務に合わせるためのカスタマイズが大量に必要になり、結果的に総額が高くつく。
  • 海外製の安価なパッケージを導入したものの、日本の商習慣に合わず、追加開発が多発する。
  • 法改正やOSのアップデートに対応するたびに、高額な改修費用を請求される。

「コストを抑える」ことは重要ですが、それは「安かろう悪かろう」を選ぶことではありません。自社の成長戦略を見据え、長期的な視点でTCOを最適化するという経営判断が求められます。安易な値引き交渉や相見積もりによる価格比較だけでは、本質的なコスト削減には繋がらないのです。

基幹システム刷新を「成功」に導く3つの鍵

では、これらの失敗の落とし穴を避け、基幹システム導入を「成功」させるためには、どのような点に注力すべきでしょうか。ここでは、プロジェクトを成功に導くための3つの鍵を解説します。

成功の鍵1:理想の姿「To-Be」を描き、経営がリーダーシップを発揮する
失敗しないシステム化の第一歩は、「システムを使って何を実現したいのか」という理想の業務プロセスや経営のあり方(To-Beモデル)を明確に描くことです。

  • 5年後、10年後、自社はどのような姿でありたいか?
  • そのために、業務プロセスはどのように変わるべきか?
  • 今回のシステム化によって、どの経営課題を解決するのか?

これらの問いに対して、経営層が自らの言葉で答えを出し、全社に共有することが不可欠です。基幹システムの導入は、単なる情報システム部門のタスクではなく、全社を巻き込んだ「経営改革プロジェクト」であるという認識を、トップが示さなければなりません。

経営層の強いコミットメントがあれば、部門間の利害調整や、業務改革に伴う現場の抵抗といった障壁を乗り越える推進力が生まれます。これが、成功への最も重要な鍵となります。

成功の鍵2:プロジェクトの土台を築く「マスターデータ統合」
「失敗しない基幹システム導入は、マスターデータ整備に始まり、マスターデータ整備に終わる」と言っても過言ではありません。プロジェクトの成功を目指すなら、システム選定や要件定義と並行して、あるいはそれ以上に早い段階から「マスターデータ統合」に着手すべきです。

マスターデータ統合とは、社内に散在するマスターデータを収集し、重複や表記の揺れをなくして名寄せを行い、唯一無二の正しいデータとして一元管理する仕組みを構築することです。

マスターデータを統合・整備することで、以下のような大きなメリットが生まれます。

  • データ精度の向上: 全社で同じ「言葉」(データ)を使えるようになり、部門を横断した正確なデータ分析が可能になる。
  • 業務効率の劇的な改善: データ入力の重複や、部署間の問い合わせ・確認作業がなくなり、本来のコア業務に集中できる。
  • ガバナンスの強化: 誰が、いつ、どのデータを更新したのかという履歴が明確になり、データの品質を維持する体制(データガバナンス)が構築できる。

新しい基幹システムという高速道路を最大限に活用するためには、その上を走る車(データ)が整備されていなければなりません。マスターデータ統合は、まさにそのための最重要インフラ整備なのです。

成功の鍵3:「Fit to Standard」で賢くコストを抑える
コストを抑えつつ、システムの価値を最大化するためには、「Fit to Standard」という考え方が非常に有効です。

これは、自社の業務をパッケージシステムの標準機能に合わせていくアプローチです。前述した「As-Isのシステム化」とは真逆の発想であり、安易なカスタマイズを極力避け、業界のベストプラクティスが凝縮されたパッケージの機能を最大限に活用することを目指します。

「Fit to Standard」には、以下のようなメリットがあります。

  • 導入コスト・期間の削減: カスタマイズ開発が少ないため、コストを抑え、導入期間も短縮できる。
  • TCOの削減: システムのバージョンアップ時に、カスタマイズ部分の改修が不要または最小限で済むため、長期的な運用コストを抑えることができる。
  • 業務プロセスの標準化・高度化: 自社の独自ルールに固執するのではなく、先進的な業務プロセスをシステムに合わせて導入することで、業務全体のレベルアップが期待できる。

もちろん、企業の競争力の源泉となっている独自の業務プロセスまで無理に変える必要はありません。しかし、「そのやり方は本当に必要か?」「システムに合わせることで、より効率化できないか?」と常に問い直す姿勢が、賢くコストを抑え、成功を掴むための鍵となります。

まとめ:失敗しないために、まずは「知る」ことから始めよう

本コラムでは、基幹システム導入における失敗の原因と、それを乗り越え「成功」を収めるための3つの鍵(①To-Beモデルの明確化、②マスターデータ統合、③Fit to Standardによるコスト最適化)について解説しました。

基幹システムの刷新は、決して簡単なプロジェクトではありません。しかし、その目的を明確にし、マスターデータという土台を固め、賢いコスト意識を持って臨めば、失敗のリスクを大幅に低減し、企業を次のステージへと押し上げる強力な原動力とすることができます。

是非セミナーでご体感ください

とはいえ、これらの概念を自社に落とし込み、具体的なアクションプランに繋げていくには、さらに踏み込んだ知識やノウハウが必要となるでしょう。

「マスターデータ統合の具体的な進め方がわからない」
「自社に合ったシステムやベンダーの選び方を知りたい」
「コストを抑えながら成功している企業の事例を詳しく聞きたい」

もし、このような課題意識をお持ちでしたら、専門家の知見や他社の事例から学ぶことが、成功への一番の近道です。
船井総研では、本コラムで解説したテーマをさらに深く掘り下げ、貴社のプロジェクトを成功に導くための具体的なノウハウをご提供するセミナーを開催することとなりました。

数多くの企業の基幹システム導入を支援してきたNSW社のコンサルタントをゲストとしてお招きし、失敗しないためのプロジェクトマネジメント手法から、実践的なマスターデータ統合の進め方、賢くコストを抑えるための最新ソリューション動向まで、すぐに役立つ情報を惜しみなくお伝えいたします。

机上の空論ではない、明日から使える実践的な知識を、ぜひこの機会に手に入れていただきたく思います。
ご多忙の折とは存じますが、貴社の基幹システムプロジェクトを絶対に失敗させたくないご担当者様、経営者様のご参加を心よりお待ちしております。

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