記事公開日:2025.12.03
最終更新日:2025.12.03

「倒産とAIと火縄銃」フライデーコラム:シオタ

AI を使わないのは、火縄銃の時代に槍を持って戦うようなものです。
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船井総研の塩田です。
最近の私の関心事は、「どのような企業が倒産するのか」ということです。

船井総研では成功事例を紹介することが多いですが、「失敗事例」の方が学習効果が高いと言われています。他社の失敗から学び、反面教師として自社の生存戦略に活かす取り組みは非常に重要です。

そこで今回は、ある老舗企業の事例と、そこから見えてくる「今の時代に私たちが取るべき戦略」について共有させてください。

1.帝国データバンクに学ぶ「倒産の前兆」

『倒産の前兆』(帝国データバンク情報部著,2019)という書籍をご存じでしょうか。ここには、数多の企業を見てきたデータから導き出された「7つの経営破綻の公式」が記されています。

  1. 業界構造・市況変化の波を打破できない
  2. 大ヒット商品が綻びを生む
  3. 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる
  4. ベンチャー企業の急成長は急転落の序章である
  5. 攻めの投資で上場企業が破綻する
  6. 経営陣と現場の乖離は取引先の離反の元
  7. 信頼構築のためにトップが不正行為に手を染める

この中で、私が今、最も危機感を覚えているのが 「③ 旧来型ビジネスモデルにしがみつく老舗は潰れる」 です。
書籍の中では、「株式会社吉年」 という企業の事例が紹介されています。

可鍛鋳鉄継手の製造で国内トップシェアを誇り、創業から約300年もの歴史を
持つ超名門企業。しかし、そんな老舗でさえも一度倒産してしまいました。
同書には、この事例について次のような記述があります。

「歴史と技術があっても変化し続けなければ生き残れない」

300年続いたのれんがあっても、確かな技術があっても、時代の変化に対応できなければ企業は倒産する。これは私たちにとって非常に重い教訓です。

今、デジタル化やAI化がこれほど叫ばれているにもかかわらず、昭和の時代からやり方が変わっていない、あるいはシステムを導入しても使いこなせていない例は枚挙に暇がありません。

デジタル化・AI化の波に乗れている企業とそうでない企業では、事業競争力に重大な乖離が発生していると強く感じます。(ポジショントークではなく、本当に感じています。)

2.米国で起きている「AIによる雇用破壊」の現実

では、今直面している「変化」とは何か。
それは、世界の最先端である米国で起きている現象を見れば明らかです。
一少し前の日経新聞に、衝撃的な記事が掲載されました。

「AI猛進の米国、若者の働き口に異変 学位あっても就職難」(日本経済新聞)

要約すると、米国ではAIの浸透によってホワイトカラーの仕事が代替され、若者の就職難が深刻化しています。企業は今、「人」ではなく「AI」への投資を優先しているのです。

Newsweekでも「AI就職氷河期が米Z世代を直撃している」と報じられており、実際に米国を視察した方からも、「広告などのクリエイティブはAIばかり。人間の仕事がAIに奪われる現象が現実化している」との話を聞きます。

3.日本でも「3年後」に同じことが起こる

「それはアメリカの話だろう」と思われるかもしれません。
しかし、日本のトレンドは米国の数年遅れでやってくるのが通例です。

現在、日本でも求人数が減少傾向にあります(日経新聞:求人広告、9月10%減)。現在は「賃上げによる採用控え」が主な要因とされていますが、これは米国のインフレ初期(約3年前)と状況が酷似しています。

つまり、これから数年以内に、日本でも「AI浸透による採用減(仕事の代替)」が本格化する可能性が高いということです。

4.全社員が「AIを使える人材」になるしかない

この流れは不可逆です。「歴史があるから」「技術力があるから」といって変化を拒めば、淘汰されていくことは間違いないでしょう。

では、どうすべきか?

答えは一つです。
「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを使って生産性を爆発的に上げる」側に回ることです。

これからの時代、一部の専門家だけがAIを使えれば良いのではありません。
経理も、営業も、総務も、「全社員」が当たり前のようにAIを使いこなし、自分たちの仕事を効率化・高度化できる状態を作る必要があります。CopilotやGeminiの導入に二の足を踏んでいる場合ではないのです。

  • AIでできる業務はAIに任せる
  • 人は、人間にしかできない付加価値の高い業務に集中する

この体制を組織全体で築けるかどうかが、数年後の企業の生存率を分けるはずです。

願わくば、「うちはまだ早い」ではなく、「今変わらなければ手遅れになる」という危機感を共有し、ぜひ全社一丸となってAI活用に取り組んでいっていただきたい。

AI を使わないのは、火縄銃の時代に槍を持って戦うようなものです。

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船井総研では、「製造現場における生成AI活用研修」支援を行っております。

製造現場における生成AI活用はまだまだ難しい…と感じていませんか?
実は、CopilotやGeminiなどの生成AIがあれば、以下のようなことができるようになります。

    ■トラブル履歴分析: 複数のトラブル報告書データを読み込ませ、原因の傾向分析、共通点の抽出、対策案の立案をおこなう。
    ■ NCプログラム作成支援: 加工したい内容を自然言語で指示し、たたき台となるコードを生成。対話を通じて修正・最適化していく。
    ■ 類似図面の検索・図面情報の言語化: 「急な仕様変更」「特定設備の故障」といったシナリオを提示し、AIと対話しながら影響範囲の特定や代替案のブレインストーミングをおこなう。
    ■ 技術伝承の効率化:熟練技術者の作業手順書やノウハウメモを読み込ませ、若手社員向けのQ&Aチャットボットのように活用する。

“製造現場”に特化した生成AI活用研修をご希望の方は、船井総研お問い合わせフォームよりお問い合わせをお願いいたします。

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