DX CONSULTING COLUMN 工場DXコンサルティングコラム

専門コンサルタントが執筆するAI・ロボットコラム
最新のAI・ロボット技術に精通したコンサルタントによる定期コラム

「動かない」ではなく「動かす!」基幹システム 導入成功への道!

2025.05.16

1.事例企業様の概要 【調理装置製造業 T社様】  ■所在地:茨城県  ■従業員数:約150名  ■事業内容:調理装置関連製品の製造・販売  T社様は、現状のアナログ手法での業務内容について、将来を見据えたシステム化を推進して、基幹システムの導入に成功いたしました。そんなT社様が導入時に直面した様々な課題を乗り越えて、「動かない」と思ったシステムを「動かした」事例をご紹介いたします。 2.現場任せの製造/属人化/進捗が見えない これまでT社様では、生産管理部として生産計画や指示を実施していましたが、「現場判断で生産される品目がある」、「熟練の担当者しか生産計画が組めず、熟練者に依存せずに指示が出せる仕組みがない」、「作業進捗が見えない」などの課題がありました。そのような中で、現状のアナログ業務から脱却し、基幹システム導入を通じた業務の一元化・可視化などを進めていくことを決断されます。そして、基幹システム導入を行う上で、最も重要である、目的/コンセプトを下記のように掲げ、基幹システム導入を進めます。 ■目的「業務標準化を推進し、持続可能な事業とする」 ・受発注業務、在庫管理、生産計画などをシステムで一元管理 ・在庫管理、棚卸しの時間短縮等による間接コスト削減と生産性改善 ・事務経理処理においての二重三重の業務を排除 ■コンセプト ・パッケージシステムに業務を合わせる。【業務標準化】 ・経営者を交えたプロジェクトメンバーを中心に全社で推進する。【担当者に任せきりにしない】 ・新業務開始にあたり時流に則ったルールを明確にしてこれを遵守する。   上記コンセプトを社長に宣言していただくことによって、「標準システム以外使用しない(新たに導入するパッケージシステムに業務を合わせる)」、「追加開発をしない」、「運用を変更しないということはしない」、「同じものを2度入力しない」という、プロジェクトルールの徹底化がなされました。 つまり、『パッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』ということです。 3.システム化への最大の課題 「マスタ化」 アナログ業務とシステム業務の最大の差は「マスタの有無」です。システムというのは基となるマスタがあることが前提となっています。マスタが予め設定されており、各人が自由に好きなように処理ができないからこそ、「業務が標準化される」という仕組みなわけです。  つまり、アナログ業務からマスタを作成するのは、非常に難しく、プロジェクトが行き詰まる最大の要因です。その中でも特に重要なのは「品目マスタ」であり、「自ら生産している品目の体系化」ができるかがキーとなります。 本事例においても、この「品目マスタ」を作成するのに、膨大な時間を要しました。更にマスタ作成後も現場からの理解を得られずに、活用してもらえなかった場面もありました。このような状況において、最悪のケース「今までのやり方のほうがよいのでは・・」という流れを断ち切るために、実践したのが徹底的な個別レクチャーです。各現場個々人の理解を深めるために、少人数制の研修会を毎週のように開催しました。時には完全な個別指導も含めて、3ヶ月間徹底的にトレーニングする期間に充てることによって、システムへの理解や操作の習熟につながり、次第に反対意見も薄れてきて、会社全体が1つにまとまり始めました。 4.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、生産管理の標準化、脱属人化、効率化を達成 前述のようなコンセプトを実現するために、T社様では Microsoft 社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを導入し、既存のアナログ業務のデジタル化を実現されました。   1)Dynamics導入後の効果 ①日々の生産実績計上は現場による手書き日報にて管理されていた ⇒Dynamicsにより、データが一元化され、生産現場と生産管理部の連携を実現 ②受発注状況が一覧で確認が行えていなかった ⇒Dynamics標準にて受注・発注入力を行うことにより案件状況検索性が格段に向上した ③棚卸作業については、エクセル、紙による手作業で行っていた ⇒Dynamicsにより、棚卸集計作業が自動化された (※今後、理論在庫の精度向上により実棚回数を減らすことも視野に) 2)現在進行中の取り組み ①Dynamicsへ蓄積されるデータを分析活用 ・「集計作業時間」を削減⇒データ分析を基に「考える時間」に置き換える ・データを取る(エクセル汎用性)⇒在庫状況を基に生産計画の見直し検討等を実施     ②システム汎用性が高い特性を活かし、他事業部への導入を進める ・現在、他事業部への導入が進行中⇒今後の売上増に耐えるための管理体制を築く ・将来的な販売戦略拡大に繋げる 3)成果に繋がったポイント 前述のように今回の基幹システム導入において、成果に繋がった最大のポイントは、『業務をパッケージに合わせる為に、現状の運用・ルールを柔軟に変える』を徹底されたことです。 システムを導入するにあたって非常に大事なポイントであり、目的/コンセプトの内容を遵守・実現するためにも、とても重要なことです。ただし、これは宣言をすればそのように進むということではなく、常に導入過程における各ポイントでキーマン(本プロジェクトでは社長)の指示が的確になされていたことを意味します。これにより現場メンバーが判断に迷うことなく、正しい導入を進めることができました。更に、プロジェクトメンバーからの徹底的な現場担当者指導を通じて、本プロジェクトの成功に向けて会社全体を巻き込む雰囲気を加速させることができました。 4)さいごに 基幹システムの導入において、「自分達では動かせない、活用できない」 というお声をよく耳にします。その要因として、「システムをプロダクトとして導入するだけで業務整理を実施しない」「カスタマイズを実施してしまっていて属人化したシステムになってしまっている」「操作方法やルールが分からず迷っている」などが挙げられると思います。このような状態になってしまっている場合、「稼働できないから今までのやり方でよいのでは・・・」という意識が各メンバーの中に生まれてしまいます。 会社全体として、全員が一丸となってシステムを使用できる(システムが稼働している)状態を作るためには、大前提として「一人一人が当事者という意識を持つこと」が求められます。加えて、「システムを動かすためのサポート環境」を整備していくこともまた重要です。「動かない」という状態から「動かす」方法があるということを本事例にて、お伝えさせていただきました。     【皆様の会社では以下のようなお悩みはありませんか?】 https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html ◆現行システムが老朽化し、サポートの終了も間近に迫っているため、現行システムの刷新を考えている ◆システムが複雑化・ブラックボックス化し、業務の全体像を把握できない ◆部門ごとに異なるシステムを利用しており、データ連携が困難 ◆情報システム部門やシステム担当者が不在、または専門知識を持つ人材が不足している ◆業務プロセスが標準化されておらず、非効率な業務が多い ◆属人的な業務が多く、担当者しか内容を理解していない ◆データ入力作業が多く、人的ミスが発生しやすい ◆データの可視化・分析が不足し、経営判断に役立てられない ◆部署間の連携がスムーズに行われず、情報共有が遅れる ◆在庫管理が正確に行えず、欠品や過剰在庫が発生しやすい ◆受注・発注管理が煩雑で、顧客対応に時間がかかる ◆会計処理が手作業中心で、時間と手間がかかる ◆経営状況をリアルタイムに把握できず、迅速な意思決定ができない ◆業務改善の必要性を感じているが、どこから手をつければ良いかわからない  上記のようなお悩みが1つでも当てはまる場合は、是非、船井総研の「無料オンライン相談」をご利用ください。基幹システム(ERP)導入をはじめとした、業務改革を専門とする経験豊富なコンサルタントが個別に対応させていただきます。 1.事例企業様の概要 【調理装置製造業 T社様】  ■所在地:茨城県  ■従業員数:約150名  ■事業内容:調理装置関連製品の製造・販売  T社様は、現状のアナログ手法での業務内容について、将来を見据えたシステム化を推進して、基幹システムの導入に成功いたしました。そんなT社様が導入時に直面した様々な課題を乗り越えて、「動かない」と思ったシステムを「動かした」事例をご紹介いたします。 2.現場任せの製造/属人化/進捗が見えない これまでT社様では、生産管理部として生産計画や指示を実施していましたが、「現場判断で生産される品目がある」、「熟練の担当者しか生産計画が組めず、熟練者に依存せずに指示が出せる仕組みがない」、「作業進捗が見えない」などの課題がありました。そのような中で、現状のアナログ業務から脱却し、基幹システム導入を通じた業務の一元化・可視化などを進めていくことを決断されます。そして、基幹システム導入を行う上で、最も重要である、目的/コンセプトを下記のように掲げ、基幹システム導入を進めます。 ■目的「業務標準化を推進し、持続可能な事業とする」 ・受発注業務、在庫管理、生産計画などをシステムで一元管理 ・在庫管理、棚卸しの時間短縮等による間接コスト削減と生産性改善 ・事務経理処理においての二重三重の業務を排除 ■コンセプト ・パッケージシステムに業務を合わせる。【業務標準化】 ・経営者を交えたプロジェクトメンバーを中心に全社で推進する。【担当者に任せきりにしない】 ・新業務開始にあたり時流に則ったルールを明確にしてこれを遵守する。   上記コンセプトを社長に宣言していただくことによって、「標準システム以外使用しない(新たに導入するパッケージシステムに業務を合わせる)」、「追加開発をしない」、「運用を変更しないということはしない」、「同じものを2度入力しない」という、プロジェクトルールの徹底化がなされました。 つまり、『パッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』ということです。 3.システム化への最大の課題 「マスタ化」 アナログ業務とシステム業務の最大の差は「マスタの有無」です。システムというのは基となるマスタがあることが前提となっています。マスタが予め設定されており、各人が自由に好きなように処理ができないからこそ、「業務が標準化される」という仕組みなわけです。  つまり、アナログ業務からマスタを作成するのは、非常に難しく、プロジェクトが行き詰まる最大の要因です。その中でも特に重要なのは「品目マスタ」であり、「自ら生産している品目の体系化」ができるかがキーとなります。 本事例においても、この「品目マスタ」を作成するのに、膨大な時間を要しました。更にマスタ作成後も現場からの理解を得られずに、活用してもらえなかった場面もありました。このような状況において、最悪のケース「今までのやり方のほうがよいのでは・・」という流れを断ち切るために、実践したのが徹底的な個別レクチャーです。各現場個々人の理解を深めるために、少人数制の研修会を毎週のように開催しました。時には完全な個別指導も含めて、3ヶ月間徹底的にトレーニングする期間に充てることによって、システムへの理解や操作の習熟につながり、次第に反対意見も薄れてきて、会社全体が1つにまとまり始めました。 4.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、生産管理の標準化、脱属人化、効率化を達成 前述のようなコンセプトを実現するために、T社様では Microsoft 社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを導入し、既存のアナログ業務のデジタル化を実現されました。   1)Dynamics導入後の効果 ①日々の生産実績計上は現場による手書き日報にて管理されていた ⇒Dynamicsにより、データが一元化され、生産現場と生産管理部の連携を実現 ②受発注状況が一覧で確認が行えていなかった ⇒Dynamics標準にて受注・発注入力を行うことにより案件状況検索性が格段に向上した ③棚卸作業については、エクセル、紙による手作業で行っていた ⇒Dynamicsにより、棚卸集計作業が自動化された (※今後、理論在庫の精度向上により実棚回数を減らすことも視野に) 2)現在進行中の取り組み ①Dynamicsへ蓄積されるデータを分析活用 ・「集計作業時間」を削減⇒データ分析を基に「考える時間」に置き換える ・データを取る(エクセル汎用性)⇒在庫状況を基に生産計画の見直し検討等を実施     ②システム汎用性が高い特性を活かし、他事業部への導入を進める ・現在、他事業部への導入が進行中⇒今後の売上増に耐えるための管理体制を築く ・将来的な販売戦略拡大に繋げる 3)成果に繋がったポイント 前述のように今回の基幹システム導入において、成果に繋がった最大のポイントは、『業務をパッケージに合わせる為に、現状の運用・ルールを柔軟に変える』を徹底されたことです。 システムを導入するにあたって非常に大事なポイントであり、目的/コンセプトの内容を遵守・実現するためにも、とても重要なことです。ただし、これは宣言をすればそのように進むということではなく、常に導入過程における各ポイントでキーマン(本プロジェクトでは社長)の指示が的確になされていたことを意味します。これにより現場メンバーが判断に迷うことなく、正しい導入を進めることができました。更に、プロジェクトメンバーからの徹底的な現場担当者指導を通じて、本プロジェクトの成功に向けて会社全体を巻き込む雰囲気を加速させることができました。 4)さいごに 基幹システムの導入において、「自分達では動かせない、活用できない」 というお声をよく耳にします。その要因として、「システムをプロダクトとして導入するだけで業務整理を実施しない」「カスタマイズを実施してしまっていて属人化したシステムになってしまっている」「操作方法やルールが分からず迷っている」などが挙げられると思います。このような状態になってしまっている場合、「稼働できないから今までのやり方でよいのでは・・・」という意識が各メンバーの中に生まれてしまいます。 会社全体として、全員が一丸となってシステムを使用できる(システムが稼働している)状態を作るためには、大前提として「一人一人が当事者という意識を持つこと」が求められます。加えて、「システムを動かすためのサポート環境」を整備していくこともまた重要です。「動かない」という状態から「動かす」方法があるということを本事例にて、お伝えさせていただきました。     【皆様の会社では以下のようなお悩みはありませんか?】 https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html ◆現行システムが老朽化し、サポートの終了も間近に迫っているため、現行システムの刷新を考えている ◆システムが複雑化・ブラックボックス化し、業務の全体像を把握できない ◆部門ごとに異なるシステムを利用しており、データ連携が困難 ◆情報システム部門やシステム担当者が不在、または専門知識を持つ人材が不足している ◆業務プロセスが標準化されておらず、非効率な業務が多い ◆属人的な業務が多く、担当者しか内容を理解していない ◆データ入力作業が多く、人的ミスが発生しやすい ◆データの可視化・分析が不足し、経営判断に役立てられない ◆部署間の連携がスムーズに行われず、情報共有が遅れる ◆在庫管理が正確に行えず、欠品や過剰在庫が発生しやすい ◆受注・発注管理が煩雑で、顧客対応に時間がかかる ◆会計処理が手作業中心で、時間と手間がかかる ◆経営状況をリアルタイムに把握できず、迅速な意思決定ができない ◆業務改善の必要性を感じているが、どこから手をつければ良いかわからない  上記のようなお悩みが1つでも当てはまる場合は、是非、船井総研の「無料オンライン相談」をご利用ください。基幹システム(ERP)導入をはじめとした、業務改革を専門とする経験豊富なコンサルタントが個別に対応させていただきます。

製造業DX「何から始めるか」を解決する実践手法

2025.05.12

このコラムでは、製造業の経営者・製造業リーダーの皆様がDX推進の初期段階で直面しやすい「一体、何から始めたら良いのだろう?」という切実な疑問に焦点を当て、その解決策を分かりやすくお伝えします。多くの企業様がDXの重要性を認識されながらも、具体的な一歩を踏み出せないでいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、私たち船井総合研究所がご提供する「実践!製造業幹部社員向けDX推進研修2025」が、どのように皆様の課題解決のお役に立てるのかを解説いたします。研修のポイントである(簡易版)DX戦略の立て方、IoTやAI、ロボットといった最新技術の賢い使い方、さらには属人化しがちな業務や熟練技能をAIでどう継承していくか、といった具体的なテーマに触れながら、実際の成功事例も交えてご紹介します。DX推進の確かな道筋と実践手法を具体的に示し、このコラムが皆様にとっての羅針盤となれば幸いです。 1. はじめに:製造業DX推進でぶつかる「最初の壁」とは? デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を耳にしない日はないほど、その波は製造業の皆様にも大きな影響を与えています。そして、DXへの対応は、もはや企業が存続していくための重要な経営課題の一つと言えるでしょう。グローバルでの競争はますます激しくなり、国内では働き手が減少し、お客様のニーズはより高度で多様になっています。このような厳しい環境変化の中で、多くの製造業経営者・製造業リーダーの皆様が、「DXで業務を新しくしたり、新しい価値を生み出したりしなければ」と強く感じていらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、「DXを進めよう!」と意気込んではみたものの、「具体的に、まず何から手を付けたらいいのか、さっぱり分からない…」そんなお悩みの声を私たちは非常によくお聞きします。新しいデジタル技術の情報はたくさんありますし、他社がDXで成功したという話もよく見聞きします。ですが、いざ自社のこととなると、どこから始めて、どう進めていけば良いのか、具体的な進め方が見えずに困ってしまう。この「最初の一歩がなかなか踏み出せない」という状況こそ、多くの製造業の皆様がDX推進で最初にぶつかる「大きな壁」なのではないでしょうか。 この壁は、単に情報が足りないとか、技術のことがよく分からない、というだけが原因ではありません。むしろ、自社の今の課題とDXでできることを具体的に結びつけて考えられないことや、投資して本当に効果があるのかという不安、そして何よりも、会社全体を巻き込んで変化を進めていくことの難しさなど、色々な要因が複雑に絡み合っていることが多いのです。このコラムでは、この「最初の壁」をどう乗り越え、確実にDXを進めていくための実践的な方法について、私たち船井総合研究所の経験や知識を交えながら、分かりやすくお話ししていきたいと思います。 2. なぜ進まない?:「何から始めるか」を難しくする3つの理由 製造業の皆様がDXを進めようとする時、「何から始めるか」という問いの答えがすぐに見つからない背景には、実はいくつかの典型的な「つまずきの石」があります。これらをまず知っていただくことが、解決への大切な一歩になります。 一つ目は、「何のためにDXをやるのか、目的がハッキリしていない」ということです。DXはあくまでも手段であって、DXをやること自体がゴールではありません。ですが、「DXでウチの会社は何を実現したいんだろう?」という具体的な目的や将来像が社内で共有されていないと、取り組みがバラバラになったり、途中で方向が分からなくなったりしがちです。「生産性を今の2割アップさせるぞ!」とか「お客様に新しいサービスを提供できる会社になる!」といった、具体的な目標設定がとても大切です。 二つ目は、「自社の今の状況を、実はよく分かっていない」という点です。自社の業務のやり方、技術のレベル、会社の雰囲気、そしてデジタルに強い社員がどれくらいいるのか、といった現状を客観的に把握できていないケースが意外と多いのです。例えば、まだ紙でやり取りしている仕事や、特定の人しかできない作業がどれだけ効率を下げているか、社内にあるデータが十分に活用されていない、といった課題が具体的に見えていないと、DXでどこを改善すれば良いのかも分かりません。 三つ目は、「どの技術を選べばいいのか難しい」ということです。IoT、AI、クラウド、ビッグデータなど、DXに関わる技術は本当にたくさんありますし、どんどん新しいものが出てきます。どの技術が自社の課題解決にピッタリなのか、導入するのにどれくらいお金がかかるのか、使いこなせるのか、といった判断は専門的な知識も必要なので、多くの企業様にとってハードルが高いのが現状です。とりあえず話題の技術を導入してみたものの、上手くいかなかった…というお話も残念ながら耳にします。 これらの理由が一つ、あるいは複数重なることで、多くの製造業経営者・製造業リーダーの皆様が、DXをどう進めていけば良いのか、なかなか見通しを立てられずにいらっしゃるのです。 これらを解決するヒントは・・・ 3. 解決のヒントはここに!:DX推進研修がお伝えする「実践手法」のすべて "前の章でお話しした、DX推進を難しくしている要因に対して、私たち船井総合研究所がご提供する「実践!製造業幹部社員向けDX推進研修2025」は、はっきりとした解決のヒントをお示しします。この研修の一番のポイントは、単に知識を覚えていただくことだけが目的ではない、ということです。参加される製造業経営者・製造業リーダーの皆様ご自身が、自社のDX戦略を具体的に考え、そして実際に進めていくための「実践できるやり方(実践手法)」を身につけていただくことにあります。 まず研修では、DXを進める上での「目的設定」がいかに大切かをお伝えし、自社の経営課題とDXをどう結びつけるかを考えるワークショップを行います。これによって、「自分たちの会社は何のためにDXをやるのか」という一番大事な問いに対する答えを、各社様がしっかりと持ち帰れるようにサポートします。 次に、自社の現状を正しく知るための方法です。私たちが持っている独自の考え方や診断ツールを使って、自社の強みや弱み、仕事の進め方の課題、デジタル化がどれくらい進んでいるかなどを客観的に見る方法を学んでいただきます。これにより、DX推進のスタートラインとなる、今の自社の姿を正確に捉えることができます。 技術を選ぶことについては、最新の技術トレンドや製造業での活用事例をたくさんご紹介します。同時に、それぞれの技術がどんな特徴を持っていて、導入する時にはどんな点に気をつければ良いのかを分かりやすく解説します。これにより、たくさんの技術情報に振り回されることなく、自社の課題解決に本当に役立つ技術を見極める力を養っていただけます。 そして何よりも大切なのが、DXを進めていくための「具体的な計画書(ロードマップ)作り」です。研修の中では、いつまでに、誰が、何をするのか、そしてどうやって成果を測るのか、といった具体的なステップを盛り込んだ、実行可能なロードマップを作る演習を行います。このロードマップが、研修後に自社でDXを進めていく上での、確かな道しるべになるはずです。私たち船井総合研究所のコンサルタントが、その計画作りをしっかりとお手伝いし、各社様の状況に合わせたアドバイスをしますので、より現実的で効果的な計画を立てることができます。この一連の体験こそが、この研修でお伝えしたい「実践手法」の最も大切な部分なのです。 4. 研修で何が学べるの?:戦略から最新技術、成功事例まで具体的に解説 "この研修プログラムは、製造業経営者・製造業リーダーの皆様がDX推進の舵取りをしていく上で、絶対に欠かせないポイントを幅広く、そして実践的に学んでいただけるように作られています。研修で特に力を入れている内容を、具体的にお話ししますね。 まず一つ目の柱は、「DX戦略の立て方とロードマップの作り方」です。先ほどもお話ししましたが、自社の今の状況を分析して課題を見つけ出し、DXによってどんな会社になりたいか、将来の姿を具体的に描きます。そして、それを実現するための具体的な行動プラン、途中の目標地点、必要な投資などを盛り込んだロードマップを作る方法を、じっくりと学んでいただきます。これはただ話を聞くだけでなく、ご自身の会社の状況を考えながら進めるワークショップ形式なので、すぐに実践で役立ちます。 二つ目の柱は、「IoT・AI・ロボットといった最新技術のうまい使い方」を身につけていただくことです。例えば、製造現場でIoTを使って生産ラインの状況を見えるようにして最適化する方法や、AIを使って製品の見た目検査を自動化したり故障を予測したりする方法、人と一緒に働けるロボットを導入して人手を減らしたり自動化を進めたりする方法など、具体的な技術の特徴や導入の効果、そして導入する際のポイントを分かりやすく解説します。特に注目していただきたいのは、特定の人に頼りがちな熟練した技術をAIで分析・データ化して、若い世代へうまく伝えていく方法など、製造業ならではの課題解決に役立つ内容もたくさん盛り込んでいます。 三つ目の柱は、「製造業におけるDX成功事例の共有」です。実際にDXを進めて、大きな成果を上げている企業様が、具体的にどんな取り組みをされたのかをご紹介します。例えば、工場内の人の動きやモノの流れを分析するシステムを導入して、製品完成までの時間を大幅に短縮した事例や、AIを使った外観検査を導入して、検査にかかる手間を劇的に減らしつつ品質も向上させた事例など、具体的な成果とその過程を学ぶことで、自社でDXを進めるイメージがよりはっきりと見えてくるはずです。これらの事例は、私たち船井総合研究所が長年にわたって製造業のコンサルティングをさせていただく中で得た、現場の生きた情報ばかりです。 これら「戦略を立てる力」「最新技術を使いこなす知識」「成功から学ぶヒント」という3つの学びを通じて、参加される皆様は、自社のDXを力強く進めていくための羅針盤と実行力をきっと手に入れられるはずです。 5. さあ、DX実現へ:確かな一歩を踏み出すために "このコラムでは、製造業の皆様がDXを進める上で最初にぶつかりやすい「壁」とその理由、そして、私たち船井総合研究所がご提供する研修が、その壁を乗り越えるためにどんな「実践手法」をお伝えしているのか、というお話をしてきました。DXは、残念ながら魔法のように一日でできるものではありません。はっきりとした将来像を持ち、戦略的なやり方で、そして会社全体で力を合わせて続けていく努力が必要です。 大切なのは、「何から始めたらいいんだろう」という問いに対して、最初から完璧な答えを求めすぎないことです。まずは、ご自身の会社の今の状況を正しく理解し、どこを目指すのか方向性を決め、小さな成功体験を積み重ねながら、状況に合わせて柔軟にやり方を変えていく、そんな姿勢が重要なのではないでしょうか。この研修は、そのための最初の、そして最も大切な一歩を踏み出すための、力強いきっかけになることを目指しています。 DX推進は、もはや「やってもやらなくても良い」ものではなく、製造業の皆様が変化の激しい時代を生き抜き、これからも成長を続けていくための「必須科目」と言えるでしょう。技術はどんどん新しくなりますし、競争もますます厳しくなっていきます。このような状況で、ただ様子を見ているだけでは、残念ながら少しずつ取り残されてしまうかもしれません。 この研修で得られるDX戦略を立てるノウハウや、最新技術の知識、そして具体的なロードマップは、皆様が抱える漠然とした危機感を、「よし、やってみよう!」という具体的な行動へと変える力を持っています。製造業経営者・製造業リーダーの皆様が、この「実践手法」を手に、ご自身の会社の未来を切り拓くDXの旅へと、自信を持って踏み出されることを、私たちは心から応援しています。 このコラムを読んだ後に取るべき行動 https://www.funaisoken.co.jp/seminar/129681 "このコラムをお読みいただき、DX推進の「最初の一歩」がいかに大切か、そしてどう踏み出せば良いか、具体的なイメージが湧いてきましたでしょうか。もしそうであれば、次に皆様に取っていただきたい行動は、もうお分かりかもしれません。 それは、「実践!製造業幹部社員向けDX推進研修2025」に、ぜひご参加いただくことです。 この研修は、皆様の会社が抱える「何から始めるべきか」という課題を解決し、具体的なDX戦略とロードマップを作り上げるための、またとない機会となるはずです。コラムだけではお伝えしきれない詳細なノウハウや、講師や他の参加者の皆様との交流から生まれる新しい気づき、そして何よりも、ご自身の会社のDXを加速させるという強い意志と具体的な計画を、ぜひ持ち帰っていただきたいと願っています。 まずはセミナーの詳細ページをご覧いただき、貴社の未来を左右するかもしれないDX推進の第一歩として、この研修へのご参加を真剣にご検討いただければ幸いです。ご連絡をお待ちしております。 このコラムでは、製造業の経営者・製造業リーダーの皆様がDX推進の初期段階で直面しやすい「一体、何から始めたら良いのだろう?」という切実な疑問に焦点を当て、その解決策を分かりやすくお伝えします。多くの企業様がDXの重要性を認識されながらも、具体的な一歩を踏み出せないでいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、私たち船井総合研究所がご提供する「実践!製造業幹部社員向けDX推進研修2025」が、どのように皆様の課題解決のお役に立てるのかを解説いたします。研修のポイントである(簡易版)DX戦略の立て方、IoTやAI、ロボットといった最新技術の賢い使い方、さらには属人化しがちな業務や熟練技能をAIでどう継承していくか、といった具体的なテーマに触れながら、実際の成功事例も交えてご紹介します。DX推進の確かな道筋と実践手法を具体的に示し、このコラムが皆様にとっての羅針盤となれば幸いです。 1. はじめに:製造業DX推進でぶつかる「最初の壁」とは? デジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉を耳にしない日はないほど、その波は製造業の皆様にも大きな影響を与えています。そして、DXへの対応は、もはや企業が存続していくための重要な経営課題の一つと言えるでしょう。グローバルでの競争はますます激しくなり、国内では働き手が減少し、お客様のニーズはより高度で多様になっています。このような厳しい環境変化の中で、多くの製造業経営者・製造業リーダーの皆様が、「DXで業務を新しくしたり、新しい価値を生み出したりしなければ」と強く感じていらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、「DXを進めよう!」と意気込んではみたものの、「具体的に、まず何から手を付けたらいいのか、さっぱり分からない…」そんなお悩みの声を私たちは非常によくお聞きします。新しいデジタル技術の情報はたくさんありますし、他社がDXで成功したという話もよく見聞きします。ですが、いざ自社のこととなると、どこから始めて、どう進めていけば良いのか、具体的な進め方が見えずに困ってしまう。この「最初の一歩がなかなか踏み出せない」という状況こそ、多くの製造業の皆様がDX推進で最初にぶつかる「大きな壁」なのではないでしょうか。 この壁は、単に情報が足りないとか、技術のことがよく分からない、というだけが原因ではありません。むしろ、自社の今の課題とDXでできることを具体的に結びつけて考えられないことや、投資して本当に効果があるのかという不安、そして何よりも、会社全体を巻き込んで変化を進めていくことの難しさなど、色々な要因が複雑に絡み合っていることが多いのです。このコラムでは、この「最初の壁」をどう乗り越え、確実にDXを進めていくための実践的な方法について、私たち船井総合研究所の経験や知識を交えながら、分かりやすくお話ししていきたいと思います。 2. なぜ進まない?:「何から始めるか」を難しくする3つの理由 製造業の皆様がDXを進めようとする時、「何から始めるか」という問いの答えがすぐに見つからない背景には、実はいくつかの典型的な「つまずきの石」があります。これらをまず知っていただくことが、解決への大切な一歩になります。 一つ目は、「何のためにDXをやるのか、目的がハッキリしていない」ということです。DXはあくまでも手段であって、DXをやること自体がゴールではありません。ですが、「DXでウチの会社は何を実現したいんだろう?」という具体的な目的や将来像が社内で共有されていないと、取り組みがバラバラになったり、途中で方向が分からなくなったりしがちです。「生産性を今の2割アップさせるぞ!」とか「お客様に新しいサービスを提供できる会社になる!」といった、具体的な目標設定がとても大切です。 二つ目は、「自社の今の状況を、実はよく分かっていない」という点です。自社の業務のやり方、技術のレベル、会社の雰囲気、そしてデジタルに強い社員がどれくらいいるのか、といった現状を客観的に把握できていないケースが意外と多いのです。例えば、まだ紙でやり取りしている仕事や、特定の人しかできない作業がどれだけ効率を下げているか、社内にあるデータが十分に活用されていない、といった課題が具体的に見えていないと、DXでどこを改善すれば良いのかも分かりません。 三つ目は、「どの技術を選べばいいのか難しい」ということです。IoT、AI、クラウド、ビッグデータなど、DXに関わる技術は本当にたくさんありますし、どんどん新しいものが出てきます。どの技術が自社の課題解決にピッタリなのか、導入するのにどれくらいお金がかかるのか、使いこなせるのか、といった判断は専門的な知識も必要なので、多くの企業様にとってハードルが高いのが現状です。とりあえず話題の技術を導入してみたものの、上手くいかなかった…というお話も残念ながら耳にします。 これらの理由が一つ、あるいは複数重なることで、多くの製造業経営者・製造業リーダーの皆様が、DXをどう進めていけば良いのか、なかなか見通しを立てられずにいらっしゃるのです。 これらを解決するヒントは・・・ 3. 解決のヒントはここに!:DX推進研修がお伝えする「実践手法」のすべて "前の章でお話しした、DX推進を難しくしている要因に対して、私たち船井総合研究所がご提供する「実践!製造業幹部社員向けDX推進研修2025」は、はっきりとした解決のヒントをお示しします。この研修の一番のポイントは、単に知識を覚えていただくことだけが目的ではない、ということです。参加される製造業経営者・製造業リーダーの皆様ご自身が、自社のDX戦略を具体的に考え、そして実際に進めていくための「実践できるやり方(実践手法)」を身につけていただくことにあります。 まず研修では、DXを進める上での「目的設定」がいかに大切かをお伝えし、自社の経営課題とDXをどう結びつけるかを考えるワークショップを行います。これによって、「自分たちの会社は何のためにDXをやるのか」という一番大事な問いに対する答えを、各社様がしっかりと持ち帰れるようにサポートします。 次に、自社の現状を正しく知るための方法です。私たちが持っている独自の考え方や診断ツールを使って、自社の強みや弱み、仕事の進め方の課題、デジタル化がどれくらい進んでいるかなどを客観的に見る方法を学んでいただきます。これにより、DX推進のスタートラインとなる、今の自社の姿を正確に捉えることができます。 技術を選ぶことについては、最新の技術トレンドや製造業での活用事例をたくさんご紹介します。同時に、それぞれの技術がどんな特徴を持っていて、導入する時にはどんな点に気をつければ良いのかを分かりやすく解説します。これにより、たくさんの技術情報に振り回されることなく、自社の課題解決に本当に役立つ技術を見極める力を養っていただけます。 そして何よりも大切なのが、DXを進めていくための「具体的な計画書(ロードマップ)作り」です。研修の中では、いつまでに、誰が、何をするのか、そしてどうやって成果を測るのか、といった具体的なステップを盛り込んだ、実行可能なロードマップを作る演習を行います。このロードマップが、研修後に自社でDXを進めていく上での、確かな道しるべになるはずです。私たち船井総合研究所のコンサルタントが、その計画作りをしっかりとお手伝いし、各社様の状況に合わせたアドバイスをしますので、より現実的で効果的な計画を立てることができます。この一連の体験こそが、この研修でお伝えしたい「実践手法」の最も大切な部分なのです。 4. 研修で何が学べるの?:戦略から最新技術、成功事例まで具体的に解説 "この研修プログラムは、製造業経営者・製造業リーダーの皆様がDX推進の舵取りをしていく上で、絶対に欠かせないポイントを幅広く、そして実践的に学んでいただけるように作られています。研修で特に力を入れている内容を、具体的にお話ししますね。 まず一つ目の柱は、「DX戦略の立て方とロードマップの作り方」です。先ほどもお話ししましたが、自社の今の状況を分析して課題を見つけ出し、DXによってどんな会社になりたいか、将来の姿を具体的に描きます。そして、それを実現するための具体的な行動プラン、途中の目標地点、必要な投資などを盛り込んだロードマップを作る方法を、じっくりと学んでいただきます。これはただ話を聞くだけでなく、ご自身の会社の状況を考えながら進めるワークショップ形式なので、すぐに実践で役立ちます。 二つ目の柱は、「IoT・AI・ロボットといった最新技術のうまい使い方」を身につけていただくことです。例えば、製造現場でIoTを使って生産ラインの状況を見えるようにして最適化する方法や、AIを使って製品の見た目検査を自動化したり故障を予測したりする方法、人と一緒に働けるロボットを導入して人手を減らしたり自動化を進めたりする方法など、具体的な技術の特徴や導入の効果、そして導入する際のポイントを分かりやすく解説します。特に注目していただきたいのは、特定の人に頼りがちな熟練した技術をAIで分析・データ化して、若い世代へうまく伝えていく方法など、製造業ならではの課題解決に役立つ内容もたくさん盛り込んでいます。 三つ目の柱は、「製造業におけるDX成功事例の共有」です。実際にDXを進めて、大きな成果を上げている企業様が、具体的にどんな取り組みをされたのかをご紹介します。例えば、工場内の人の動きやモノの流れを分析するシステムを導入して、製品完成までの時間を大幅に短縮した事例や、AIを使った外観検査を導入して、検査にかかる手間を劇的に減らしつつ品質も向上させた事例など、具体的な成果とその過程を学ぶことで、自社でDXを進めるイメージがよりはっきりと見えてくるはずです。これらの事例は、私たち船井総合研究所が長年にわたって製造業のコンサルティングをさせていただく中で得た、現場の生きた情報ばかりです。 これら「戦略を立てる力」「最新技術を使いこなす知識」「成功から学ぶヒント」という3つの学びを通じて、参加される皆様は、自社のDXを力強く進めていくための羅針盤と実行力をきっと手に入れられるはずです。 5. さあ、DX実現へ:確かな一歩を踏み出すために "このコラムでは、製造業の皆様がDXを進める上で最初にぶつかりやすい「壁」とその理由、そして、私たち船井総合研究所がご提供する研修が、その壁を乗り越えるためにどんな「実践手法」をお伝えしているのか、というお話をしてきました。DXは、残念ながら魔法のように一日でできるものではありません。はっきりとした将来像を持ち、戦略的なやり方で、そして会社全体で力を合わせて続けていく努力が必要です。 大切なのは、「何から始めたらいいんだろう」という問いに対して、最初から完璧な答えを求めすぎないことです。まずは、ご自身の会社の今の状況を正しく理解し、どこを目指すのか方向性を決め、小さな成功体験を積み重ねながら、状況に合わせて柔軟にやり方を変えていく、そんな姿勢が重要なのではないでしょうか。この研修は、そのための最初の、そして最も大切な一歩を踏み出すための、力強いきっかけになることを目指しています。 DX推進は、もはや「やってもやらなくても良い」ものではなく、製造業の皆様が変化の激しい時代を生き抜き、これからも成長を続けていくための「必須科目」と言えるでしょう。技術はどんどん新しくなりますし、競争もますます厳しくなっていきます。このような状況で、ただ様子を見ているだけでは、残念ながら少しずつ取り残されてしまうかもしれません。 この研修で得られるDX戦略を立てるノウハウや、最新技術の知識、そして具体的なロードマップは、皆様が抱える漠然とした危機感を、「よし、やってみよう!」という具体的な行動へと変える力を持っています。製造業経営者・製造業リーダーの皆様が、この「実践手法」を手に、ご自身の会社の未来を切り拓くDXの旅へと、自信を持って踏み出されることを、私たちは心から応援しています。 このコラムを読んだ後に取るべき行動 https://www.funaisoken.co.jp/seminar/129681 "このコラムをお読みいただき、DX推進の「最初の一歩」がいかに大切か、そしてどう踏み出せば良いか、具体的なイメージが湧いてきましたでしょうか。もしそうであれば、次に皆様に取っていただきたい行動は、もうお分かりかもしれません。 それは、「実践!製造業幹部社員向けDX推進研修2025」に、ぜひご参加いただくことです。 この研修は、皆様の会社が抱える「何から始めるべきか」という課題を解決し、具体的なDX戦略とロードマップを作り上げるための、またとない機会となるはずです。コラムだけではお伝えしきれない詳細なノウハウや、講師や他の参加者の皆様との交流から生まれる新しい気づき、そして何よりも、ご自身の会社のDXを加速させるという強い意志と具体的な計画を、ぜひ持ち帰っていただきたいと願っています。 まずはセミナーの詳細ページをご覧いただき、貴社の未来を左右するかもしれないDX推進の第一歩として、この研修へのご参加を真剣にご検討いただければ幸いです。ご連絡をお待ちしております。

中小製造業のDX〜ITカイゼンで実現する「輝ける職人」〜

2025.05.12

従業員の意識改革と業務改善を両立!IT初心者だった町工場、株式会社エー・アイ・エスが、見える化と情報共有で生産性と働きがいを高めた軌跡を公開します。 ▼エー・アイ・エス様の紹介動画はこちら   このコラムをお勧めしたい経営者の皆様 従業員のモチベーション向上や主体的な行動を促したい経営者様 多品種小ロット生産における情報共有や進捗管理に課題を感じている経営者様 IT導入に苦手意識がある、または導入効果に悩んでいる経営者様 現場主導のボトムアップ改善や、働きがいのある企業文化を醸成したい経営者様 DXの第一歩として、身近なツールから業務改善を始めたい経営者様   このコラムの内容の要約 本コラムは、株式会社エー・アイ・エスが直面した従業員のモチベーション低下や、多品種小ロット化に伴う管理の限界といった課題に対し、ITツールを活用した「ITカイゼン」によってどのように変革を遂げたかを解説するものです。同社は、石岡和紘社長が掲げる経営理念「社員の成長と進化と輝き」を実現するため、まず町工場同士の連携を通じて改善の糸口を見つけました 。その後、生産管理アプリ「コンテキサー」の導入を皮切りに、Google Workspace(カレンダー、スプレッドシート)やSlackといったツールを段階的に導入し、業務の「見える化」と情報共有を徹底 。ITに不慣れな従業員と共に、システムの課題や導入の壁を乗り越えながら、約10年をかけて現場主導の改善文化を醸成しました 。結果として、生産性向上、納期遅延の削減、従業員の主体性向上、そして「輝ける職人」が育つ職場環境を実現しています。成功の背景には、トップ(石岡社長)の粘り強い関与、外部連携、そして「まずやってみる」という段階的な導入がありました。 このコラムを読むメリット 本コラムをお読みいただくことで、中小製造業、特にIT活用にこれから取り組む企業が直面する課題への具体的な解決策のヒントを得られます。株式会社エー・アイ・エスの事例を通じて、生産管理システムの導入、クラウドツールの活用、コミュニケーションツールの導入といった、ITカイゼンを成功に導くための実践的なステップを学ぶことが可能です 。また、ITカイゼンが単なる効率化に留まらず、従業員の意識改革、主体性の向上、部門間の連携強化、ひいては「働きがい」のある企業文化の醸成にまで繋がるプロセスを具体的に理解できます 。IT導入時の従業員の抵抗感への対処法、ツールの定着化に向けた工夫、そして外部リソースの活用法など、自社でITカイゼンを推進する上で不可欠な視点が得られるでしょう 。さらに、アナログな管理手法から脱却し、身近なITツールを活用してDXの基礎を築いていく道筋を知ることで、自社の変革に向けた具体的なアクションプランを構想する一助となります。 第1章 なぜ今、ITカイゼンなのか? エー・アイ・エスが直面した壁と目指す姿 1. 町工場を取り巻く課題と従業員のホンネ 多くの中小製造業と同様に、株式会社エー・アイ・エス(以下、エー・アイ・エス)もかつては厳しい現実に直面していました。「ものづくり現場」で働く人々が、懸命に働いているにも関わらず、時に軽んじられるような風潮を石岡社長は感じていました 。経営理念として「社員の成長と進化と輝きを以て、お客様の繫栄に貢献します。」を掲げるものの、従業員のモチベーションを高く維持することは容易ではありませんでした。 特に2010年頃、多品種小ロット化に対応するための「多能工化」を進めた際には、「仕事を覚えた分、仕事が増えるから覚えない」「たくさん仕事をしても評価が大きく変わらないなら損」といった、経営者にとっては辛い言葉が従業員から聞かれました 。背景には、業績が伸び悩み、十分な昇給ができなかったという現実がありました。 2. アナログ管理の限界 当時は、ホワイトボードに案件を書き出し、朝礼でその日の作業を決めるというアナログな管理が中心でした 。創業当初はロット数がまとまっていたため、それでも対応できましたが、徐々に案件数が増え、小ロット化が進むにつれて、ホワイトボード管理では追いつかなくなりました 。結果として納期遅延が頻発し、その対応のための急な段取り変更や長時間残業が常態化 。「忙しいのに利益が出ない」という負のスパイラルに陥っていました。 3. 目指す姿 – 「輝ける職人」 石岡社長の課題意識は明確でした。「どうしたら現場で働く人たちがモチベーション高く働けるか」。エー・アイ・エスが目指すのは、従業員一人ひとりが自身の仕事に誇りを持ち、成長を実感し、主体的に輝ける「輝ける職人」となることです 。そのためには、単に精神論を唱えるだけでなく、働きがいを阻害している構造的な問題、すなわち情報共有の不足、非効率な業務プロセス、評価への不満といった課題を解決する必要がありました。その解決策として着目したのが「ITカイゼン」による業務変革でした。 第2章 転機 – 外部連携と「見える化」への第一歩 1. きっかけは同業者との出会い 変革の直接的な転機となったのは2012年頃、東京都中小企業振興公社の異業種グループでの出会いでした 。同じく町工場でありながら先進的な取り組みを進めていた今野製作所の今野社長の講演を聞き、その取り組みに参加させてもらったことが大きなきっかけとなります 。共通の課題を持つ町工場の経営者として、共に改善活動に取り組むことになりました。 2. 共同での学びと信頼関係構築 職業能力開発センターの専門家派遣事業などを活用し、共同で溶接技術や6S改善(5S+安全)を学びました 。特に6S改善では、互いの工場を訪問し合い、改善を進める中で、それぞれの強みや弱みを客観的に把握することができました 。重要なのは、このプロセスを通じて、社長同士だけでなく、従業員同士の間に直接的な繋がりと信頼関係が生まれたことです 。この従業員レベルでの関係構築が、後々のITカイゼン導入においても、互いに励まし合い、困難を乗り越える上で大きな支えとなりました。 3. ITカイゼンの導入決定 – 生産管理アプリ「コンテキサー」 今野製作所の先進的な取り組みの一つが、生産管理アプリ「コンテキサー」の活用でした。中小企業は独自の生産文化を持つため、パッケージソフトに業務を合わせるか、自社に合わせてアプリを構築する必要があると専門家からアドバイスを受け、エー・アイ・エスも、町工場連携による「共同受注体」を前提として、「コンテキサー」の導入を決定しました。 個社の業務に合わせつつ、共同受注で機能するようにデータをクラウド型で管理するという、当時としては先進的な選択でした 。しかし、システムの未熟さもあり、データの消失が頻発するなど、ITカイゼンの道のりは前途多難なスタートを切りました。 第3章 ITカイゼンの実践 – 試行錯誤と浸透への道のり 1. ITアレルギーとの戦い ITカイゼンを開始した2013年頃、最大の壁は従業員のITに対する抵抗感でした。当時の社員はパソコン操作経験がほとんどなく、「生産管理システム」という言葉自体に強い拒否反応を示す人も少なくありませんでした。パソコンの起動すら億劫がる従業員もいる中で、全員がシステムを使うようになるまでには、実に3年以上の歳月を要しました 。システムの不安定さ(データ消失、反映遅延、フリーズなど)も、普及を妨げる一因となりました。 2. 「見える化」による意識の変化 導入当初、特に意識したのは「見える化」です 。小規模工場では、製造リーダーが全ての生産調整を行うのは困難であり、各工程担当者にある程度任せる必要があります。しかし、当時は担当者育成も十分ではなく、個々の生産性が優先されがちでした。 コンテキサー導入により、まず受注内容(得意先、数量、納期、図面など)を文字情報だけでなく、システム上でリアルタイムに共有できるようにしました 。これにより、担当者は図面が手元に来る前に受注内容を把握できるようになり、社内での納期調整に関するトラブルが徐々に減り始めました。 さらに、各工程での「完了」処理をシステム入力することで、製品全体の進捗状況がリアルタイムで見えるようになりました 。以前は進捗確認のために担当者一人ひとりに聞いて回る必要があり、1件あたり10分以上かかることもザラでしたが、システム化により事務員でも容易に進捗確認や納期回答ができるようになりました。 3. 現場からの改善要求 – TODOリストの誕生 システム活用が進むにつれて、従業員の改善意識が徐々に芽生えてきました 。2017年頃には、従業員から「予定リストを作成できるようカスタマイズしてほしい」という要望が上がりました。これに応えてコンテキサーにTODOリスト作成機能を追加したことは、エー・アイ・エスにとって画期的な出来事でした。10年以上、社長が言い続けても実現できなかった「作業の事前計画」が、ITカイゼンをきっかけに現場主導で実現したのです 。当初は前日の予定を立てることから始まりましたが、現在では1週間単位のスケジュールを立て、業務の平準化による納期対応力向上に繋がっています。 第4章 ITカイゼンがもたらした変革 – 業務改善、意識改革、そして働きがい 1. さらなる情報共有の深化 (2020年頃〜) ITカイゼンの効果を実感したエー・アイ・エスは、さらなる情報共有ツールの活用へと進みます。 Google Workspace (カレンダー, スプレッドシート): 全社員にスマートフォン(WiFi環境下)を支給し、Googleカレンダーで来客、納品、出荷、外注(塗装出し)などの予定を色分けして共有 。完了タスクの色を変えることで、進捗状況が一目でわかるようになり、検査漏れや出荷前のバタバタが劇的に減少しました(以前は3日に1回は宅急便に持ち込み)。スプレッドシートは、Excelから切り替え、設備稼働記録、共通部品の在庫管理、不具合対策書の共同編集などに活用し、リアルタイムでの共同作業を実現しました 。 Slack / Zoom: 朝礼・昼礼や会議をZoomで実施(感染症対策とPC操作習熟目的)。情報伝達はSlackに移行し、「言った・聞いてない」問題を解消 。写真や画像を添付できるため情報が伝わりやすく、不在者への情報共有漏れもなくなりました 。課題をチャンネルで共有することで、多くの意見が集まるようになり、内向的な社員が発言しやすくなるという効果も見られました 。万が一のテレワークにも備え、リモートアクセス環境(シンテレワークシステム)も整備しました。 2. 働く人に起きた変化 – 主体性と成長 一連のITカイゼンを通じて、エー・アイ・エスの従業員の働き方は大きく変わりました。情報がオープンに共有されることで、担当者は自身の業務だけでなく、前後の工程や会社全体の状況を把握できるようになりました 。進捗の見える化や予定管理により、受け身の作業から、自ら計画し、調整する主体的な働き方へと変化しました。 Slackでの課題共有やZoom会議では、役職や経験に関わらず、誰もが意見を言いやすくなり、ボトムアップでの改善提案が増加しました 。これまでITに触れてこなかった従業員も、ツールの利便性を実感する中で、「もっとこうしたら良いのでは?」といった積極的な意見が出るようになったことは、大きな進歩です。 3. 利益への意識改革 (2024年〜) 近年、石岡社長が面談で語るのは「心豊かな生活を」という言葉です 。かつては長時間労働も厭わず、それなりの賞与を支給していましたが、真のワークライフバランス実現のためには、従業員一人ひとりが「利益」を意識したものづくりをする必要があると考えました 。 多品種小ロット生産では、どの製品が利益を生んでいるのかが見えにくいという課題がありました 。「忙しい=儲かっている」という単純な考え方を改めるため、コンテキサーに見積もり機能を追加し、生産管理システムと連携 。加工前に、その作業の予定工数や目標コストを作業者が確認できる仕組みを導入し、利益への意識を高める取り組みを進めています 。さらに、スプレッドシートを活用し、予定工数(見積もり時間)と実績時間(コンテキサーの着手・完了時間)を比較するレポートを作成し、担当者ごとの生産性を見える化しています。 第5章 未来へ – エー・アイ・エスが目指す「輝ける職人」が育つ職場 エー・アイ・エスが目指すのは、単なる生産性向上や効率化ではありません。その根底にあるのは、石岡社長が掲げる経営理念「社員の成長と進化と輝き」であり、「ものづくり現場で働く人たちが『輝ける職人』になる」ことです 。 ITカイゼンは、その目標を実現するための強力な「手段」でした。見える化から始まった取り組みは、情報共有を円滑にし、「言った・言わない」といった不毛な対立をなくしました 。従業員は、自社の状況をより深く理解し、課題解決に主体的に関わるようになりました 。その結果として、生産性が向上し、より働きがいのある環境が実現しつつあります。 2012年の転機から約5年間かけてITツールを浸透させ、その後、今日に至るまで活用レベルを高めてきた道のりは、決して平坦ではありませんでした 。しかし、従業員のモチベーション向上を常に念頭に置き、外部との連携や段階的な導入といった工夫を重ねることで、着実に変革を進めてきました 。 エー・アイ・エスの取り組みは、ITに不慣れな中小製造業であっても、身近なツールを活用し、従業員と共に汗を流すことで、大きな変革を成し遂げられることを示しています。重要なのは、高価なシステムや最先端技術を導入することだけではなく、自社の課題に真摯に向き合い、従業員が輝ける場を作るために、ITを「どう活かすか」を考え続けることなのかもしれません。 【編集後記】 今回の株式会社エー・アイ・エスの事例は、DXの第一歩が必ずしも大規模な投資や専門的な知識を必要とするわけではないことを教えてくれます。日々の業務の中に潜む非効率やコミュニケーションの壁に対し、クラウドツールやコミュニケーションアプリといった比較的身近なITツールを導入し、粘り強く活用していくこと。そして何より、そのプロセスを通じて従業員の主体性を引き出し、共に成長していくこと。これこそが、多くの中小製造業にとって現実的かつ効果的な変革の進め方なのかもしれません。この記事が、皆様の会社の「ITカイゼン」の一助となれば幸いです。 船井総研では、企業の皆様向けに、ITカイゼン、IoT導入、データ活用による業務改革・生産性向上のコンサルティングをおこなっております。現状の課題分析・データ活用の可能性診断から、最適なITツール・システムの選定、補助金活用支援、導入後の定着化・効果最大化に向けた運用支援まで、一貫したコンサルティングを提供いたします。 多様な業種・企業のIT戦略立案やデジタル化に携わり、具体的な成果に繋げてきた、ITカイゼン・IoT・データ活用専門のコンサルタントが、貴社の状況に合わせて最適なご提案をさせていただきます。 ご興味をお持ちの方は、まずは1時間程度の無料オンライン相談会をご活用ください。 従業員の意識改革と業務改善を両立!IT初心者だった町工場、株式会社エー・アイ・エスが、見える化と情報共有で生産性と働きがいを高めた軌跡を公開します。 ▼エー・アイ・エス様の紹介動画はこちら   このコラムをお勧めしたい経営者の皆様 従業員のモチベーション向上や主体的な行動を促したい経営者様 多品種小ロット生産における情報共有や進捗管理に課題を感じている経営者様 IT導入に苦手意識がある、または導入効果に悩んでいる経営者様 現場主導のボトムアップ改善や、働きがいのある企業文化を醸成したい経営者様 DXの第一歩として、身近なツールから業務改善を始めたい経営者様   このコラムの内容の要約 本コラムは、株式会社エー・アイ・エスが直面した従業員のモチベーション低下や、多品種小ロット化に伴う管理の限界といった課題に対し、ITツールを活用した「ITカイゼン」によってどのように変革を遂げたかを解説するものです。同社は、石岡和紘社長が掲げる経営理念「社員の成長と進化と輝き」を実現するため、まず町工場同士の連携を通じて改善の糸口を見つけました 。その後、生産管理アプリ「コンテキサー」の導入を皮切りに、Google Workspace(カレンダー、スプレッドシート)やSlackといったツールを段階的に導入し、業務の「見える化」と情報共有を徹底 。ITに不慣れな従業員と共に、システムの課題や導入の壁を乗り越えながら、約10年をかけて現場主導の改善文化を醸成しました 。結果として、生産性向上、納期遅延の削減、従業員の主体性向上、そして「輝ける職人」が育つ職場環境を実現しています。成功の背景には、トップ(石岡社長)の粘り強い関与、外部連携、そして「まずやってみる」という段階的な導入がありました。 このコラムを読むメリット 本コラムをお読みいただくことで、中小製造業、特にIT活用にこれから取り組む企業が直面する課題への具体的な解決策のヒントを得られます。株式会社エー・アイ・エスの事例を通じて、生産管理システムの導入、クラウドツールの活用、コミュニケーションツールの導入といった、ITカイゼンを成功に導くための実践的なステップを学ぶことが可能です 。また、ITカイゼンが単なる効率化に留まらず、従業員の意識改革、主体性の向上、部門間の連携強化、ひいては「働きがい」のある企業文化の醸成にまで繋がるプロセスを具体的に理解できます 。IT導入時の従業員の抵抗感への対処法、ツールの定着化に向けた工夫、そして外部リソースの活用法など、自社でITカイゼンを推進する上で不可欠な視点が得られるでしょう 。さらに、アナログな管理手法から脱却し、身近なITツールを活用してDXの基礎を築いていく道筋を知ることで、自社の変革に向けた具体的なアクションプランを構想する一助となります。 第1章 なぜ今、ITカイゼンなのか? エー・アイ・エスが直面した壁と目指す姿 1. 町工場を取り巻く課題と従業員のホンネ 多くの中小製造業と同様に、株式会社エー・アイ・エス(以下、エー・アイ・エス)もかつては厳しい現実に直面していました。「ものづくり現場」で働く人々が、懸命に働いているにも関わらず、時に軽んじられるような風潮を石岡社長は感じていました 。経営理念として「社員の成長と進化と輝きを以て、お客様の繫栄に貢献します。」を掲げるものの、従業員のモチベーションを高く維持することは容易ではありませんでした。 特に2010年頃、多品種小ロット化に対応するための「多能工化」を進めた際には、「仕事を覚えた分、仕事が増えるから覚えない」「たくさん仕事をしても評価が大きく変わらないなら損」といった、経営者にとっては辛い言葉が従業員から聞かれました 。背景には、業績が伸び悩み、十分な昇給ができなかったという現実がありました。 2. アナログ管理の限界 当時は、ホワイトボードに案件を書き出し、朝礼でその日の作業を決めるというアナログな管理が中心でした 。創業当初はロット数がまとまっていたため、それでも対応できましたが、徐々に案件数が増え、小ロット化が進むにつれて、ホワイトボード管理では追いつかなくなりました 。結果として納期遅延が頻発し、その対応のための急な段取り変更や長時間残業が常態化 。「忙しいのに利益が出ない」という負のスパイラルに陥っていました。 3. 目指す姿 – 「輝ける職人」 石岡社長の課題意識は明確でした。「どうしたら現場で働く人たちがモチベーション高く働けるか」。エー・アイ・エスが目指すのは、従業員一人ひとりが自身の仕事に誇りを持ち、成長を実感し、主体的に輝ける「輝ける職人」となることです 。そのためには、単に精神論を唱えるだけでなく、働きがいを阻害している構造的な問題、すなわち情報共有の不足、非効率な業務プロセス、評価への不満といった課題を解決する必要がありました。その解決策として着目したのが「ITカイゼン」による業務変革でした。 第2章 転機 – 外部連携と「見える化」への第一歩 1. きっかけは同業者との出会い 変革の直接的な転機となったのは2012年頃、東京都中小企業振興公社の異業種グループでの出会いでした 。同じく町工場でありながら先進的な取り組みを進めていた今野製作所の今野社長の講演を聞き、その取り組みに参加させてもらったことが大きなきっかけとなります 。共通の課題を持つ町工場の経営者として、共に改善活動に取り組むことになりました。 2. 共同での学びと信頼関係構築 職業能力開発センターの専門家派遣事業などを活用し、共同で溶接技術や6S改善(5S+安全)を学びました 。特に6S改善では、互いの工場を訪問し合い、改善を進める中で、それぞれの強みや弱みを客観的に把握することができました 。重要なのは、このプロセスを通じて、社長同士だけでなく、従業員同士の間に直接的な繋がりと信頼関係が生まれたことです 。この従業員レベルでの関係構築が、後々のITカイゼン導入においても、互いに励まし合い、困難を乗り越える上で大きな支えとなりました。 3. ITカイゼンの導入決定 – 生産管理アプリ「コンテキサー」 今野製作所の先進的な取り組みの一つが、生産管理アプリ「コンテキサー」の活用でした。中小企業は独自の生産文化を持つため、パッケージソフトに業務を合わせるか、自社に合わせてアプリを構築する必要があると専門家からアドバイスを受け、エー・アイ・エスも、町工場連携による「共同受注体」を前提として、「コンテキサー」の導入を決定しました。 個社の業務に合わせつつ、共同受注で機能するようにデータをクラウド型で管理するという、当時としては先進的な選択でした 。しかし、システムの未熟さもあり、データの消失が頻発するなど、ITカイゼンの道のりは前途多難なスタートを切りました。 第3章 ITカイゼンの実践 – 試行錯誤と浸透への道のり 1. ITアレルギーとの戦い ITカイゼンを開始した2013年頃、最大の壁は従業員のITに対する抵抗感でした。当時の社員はパソコン操作経験がほとんどなく、「生産管理システム」という言葉自体に強い拒否反応を示す人も少なくありませんでした。パソコンの起動すら億劫がる従業員もいる中で、全員がシステムを使うようになるまでには、実に3年以上の歳月を要しました 。システムの不安定さ(データ消失、反映遅延、フリーズなど)も、普及を妨げる一因となりました。 2. 「見える化」による意識の変化 導入当初、特に意識したのは「見える化」です 。小規模工場では、製造リーダーが全ての生産調整を行うのは困難であり、各工程担当者にある程度任せる必要があります。しかし、当時は担当者育成も十分ではなく、個々の生産性が優先されがちでした。 コンテキサー導入により、まず受注内容(得意先、数量、納期、図面など)を文字情報だけでなく、システム上でリアルタイムに共有できるようにしました 。これにより、担当者は図面が手元に来る前に受注内容を把握できるようになり、社内での納期調整に関するトラブルが徐々に減り始めました。 さらに、各工程での「完了」処理をシステム入力することで、製品全体の進捗状況がリアルタイムで見えるようになりました 。以前は進捗確認のために担当者一人ひとりに聞いて回る必要があり、1件あたり10分以上かかることもザラでしたが、システム化により事務員でも容易に進捗確認や納期回答ができるようになりました。 3. 現場からの改善要求 – TODOリストの誕生 システム活用が進むにつれて、従業員の改善意識が徐々に芽生えてきました 。2017年頃には、従業員から「予定リストを作成できるようカスタマイズしてほしい」という要望が上がりました。これに応えてコンテキサーにTODOリスト作成機能を追加したことは、エー・アイ・エスにとって画期的な出来事でした。10年以上、社長が言い続けても実現できなかった「作業の事前計画」が、ITカイゼンをきっかけに現場主導で実現したのです 。当初は前日の予定を立てることから始まりましたが、現在では1週間単位のスケジュールを立て、業務の平準化による納期対応力向上に繋がっています。 第4章 ITカイゼンがもたらした変革 – 業務改善、意識改革、そして働きがい 1. さらなる情報共有の深化 (2020年頃〜) ITカイゼンの効果を実感したエー・アイ・エスは、さらなる情報共有ツールの活用へと進みます。 Google Workspace (カレンダー, スプレッドシート): 全社員にスマートフォン(WiFi環境下)を支給し、Googleカレンダーで来客、納品、出荷、外注(塗装出し)などの予定を色分けして共有 。完了タスクの色を変えることで、進捗状況が一目でわかるようになり、検査漏れや出荷前のバタバタが劇的に減少しました(以前は3日に1回は宅急便に持ち込み)。スプレッドシートは、Excelから切り替え、設備稼働記録、共通部品の在庫管理、不具合対策書の共同編集などに活用し、リアルタイムでの共同作業を実現しました 。 Slack / Zoom: 朝礼・昼礼や会議をZoomで実施(感染症対策とPC操作習熟目的)。情報伝達はSlackに移行し、「言った・聞いてない」問題を解消 。写真や画像を添付できるため情報が伝わりやすく、不在者への情報共有漏れもなくなりました 。課題をチャンネルで共有することで、多くの意見が集まるようになり、内向的な社員が発言しやすくなるという効果も見られました 。万が一のテレワークにも備え、リモートアクセス環境(シンテレワークシステム)も整備しました。 2. 働く人に起きた変化 – 主体性と成長 一連のITカイゼンを通じて、エー・アイ・エスの従業員の働き方は大きく変わりました。情報がオープンに共有されることで、担当者は自身の業務だけでなく、前後の工程や会社全体の状況を把握できるようになりました 。進捗の見える化や予定管理により、受け身の作業から、自ら計画し、調整する主体的な働き方へと変化しました。 Slackでの課題共有やZoom会議では、役職や経験に関わらず、誰もが意見を言いやすくなり、ボトムアップでの改善提案が増加しました 。これまでITに触れてこなかった従業員も、ツールの利便性を実感する中で、「もっとこうしたら良いのでは?」といった積極的な意見が出るようになったことは、大きな進歩です。 3. 利益への意識改革 (2024年〜) 近年、石岡社長が面談で語るのは「心豊かな生活を」という言葉です 。かつては長時間労働も厭わず、それなりの賞与を支給していましたが、真のワークライフバランス実現のためには、従業員一人ひとりが「利益」を意識したものづくりをする必要があると考えました 。 多品種小ロット生産では、どの製品が利益を生んでいるのかが見えにくいという課題がありました 。「忙しい=儲かっている」という単純な考え方を改めるため、コンテキサーに見積もり機能を追加し、生産管理システムと連携 。加工前に、その作業の予定工数や目標コストを作業者が確認できる仕組みを導入し、利益への意識を高める取り組みを進めています 。さらに、スプレッドシートを活用し、予定工数(見積もり時間)と実績時間(コンテキサーの着手・完了時間)を比較するレポートを作成し、担当者ごとの生産性を見える化しています。 第5章 未来へ – エー・アイ・エスが目指す「輝ける職人」が育つ職場 エー・アイ・エスが目指すのは、単なる生産性向上や効率化ではありません。その根底にあるのは、石岡社長が掲げる経営理念「社員の成長と進化と輝き」であり、「ものづくり現場で働く人たちが『輝ける職人』になる」ことです 。 ITカイゼンは、その目標を実現するための強力な「手段」でした。見える化から始まった取り組みは、情報共有を円滑にし、「言った・言わない」といった不毛な対立をなくしました 。従業員は、自社の状況をより深く理解し、課題解決に主体的に関わるようになりました 。その結果として、生産性が向上し、より働きがいのある環境が実現しつつあります。 2012年の転機から約5年間かけてITツールを浸透させ、その後、今日に至るまで活用レベルを高めてきた道のりは、決して平坦ではありませんでした 。しかし、従業員のモチベーション向上を常に念頭に置き、外部との連携や段階的な導入といった工夫を重ねることで、着実に変革を進めてきました 。 エー・アイ・エスの取り組みは、ITに不慣れな中小製造業であっても、身近なツールを活用し、従業員と共に汗を流すことで、大きな変革を成し遂げられることを示しています。重要なのは、高価なシステムや最先端技術を導入することだけではなく、自社の課題に真摯に向き合い、従業員が輝ける場を作るために、ITを「どう活かすか」を考え続けることなのかもしれません。 【編集後記】 今回の株式会社エー・アイ・エスの事例は、DXの第一歩が必ずしも大規模な投資や専門的な知識を必要とするわけではないことを教えてくれます。日々の業務の中に潜む非効率やコミュニケーションの壁に対し、クラウドツールやコミュニケーションアプリといった比較的身近なITツールを導入し、粘り強く活用していくこと。そして何より、そのプロセスを通じて従業員の主体性を引き出し、共に成長していくこと。これこそが、多くの中小製造業にとって現実的かつ効果的な変革の進め方なのかもしれません。この記事が、皆様の会社の「ITカイゼン」の一助となれば幸いです。 船井総研では、企業の皆様向けに、ITカイゼン、IoT導入、データ活用による業務改革・生産性向上のコンサルティングをおこなっております。現状の課題分析・データ活用の可能性診断から、最適なITツール・システムの選定、補助金活用支援、導入後の定着化・効果最大化に向けた運用支援まで、一貫したコンサルティングを提供いたします。 多様な業種・企業のIT戦略立案やデジタル化に携わり、具体的な成果に繋げてきた、ITカイゼン・IoT・データ活用専門のコンサルタントが、貴社の状況に合わせて最適なご提案をさせていただきます。 ご興味をお持ちの方は、まずは1時間程度の無料オンライン相談会をご活用ください。

基幹システムリニューアルを通じて、月300万円相当の大幅なコストダウンに成功した事例とは?

2025.05.01

1.事例企業様の概要 【ダイカスト製品製造業 J社様】 ■所在地:山梨県 ■従業員数:約100名 ■事業内容:鋳造・機械加工、表面処理など  J社様では近年、全社共通で使用する基幹システム(ERP)を刷新しました。また、システム刷新に伴い、既存のアナログ業務の見直し・整理も併せて実行したことで、結果として「月300万円相当の大幅なコストダウン」という驚異的な成果を出すことに成功されました。  そんなJ社様ですが、元々はさまざまな種類の業務システムをバラバラに導入して使っておりました。以下、基幹システム(ERP)リニューアル前の主な既存システム一覧です。 ◆独自システム①(受注入力、製造指示・計画、注文書出力、納品など) ◆独自システム②(原価管理) ◆独自システム③(勤怠管理) ◆独自システム④(出張旅費・経費精算) ◆パッケージシステム①(会計:P/L、B/S、T/Bなど) ◆Access(受注データ、納品済みデータ、在庫管理、製造計画指示データなど) ◆Excel(購買の注文書)  上記内容の通り、異なるシステムをバラバラに導入し、かつそれぞれのシステムがシームレスに連携されていなかったために、さまざまな課題が出てきていました。 2.非効率なアナログ業務の常態化+煩雑かつバラバラなシステム管理体制に課題  J社様では主に次のような業務課題が顕在化していました。 ①各業務システム・ツール・Excel をバラバラに活用していた(データの入力先&管理先がバラバラ) ②異なるシステム間でデータの連携がスムーズに行えず、度重なる転記・手入力業務が発生していた ③属人的な Excel 管理・紙帳票管理が常態化していた ④製造指示書をはじめとした帳票作成の属人化が顕著になっていた ⑤製造指示書の作成について、リードタイムなどを「勘や経験」に基づいて手書きで作成していた ⑥社内会議のための資料作成やデータ収集など、間接業務の工数過多に悩まされていた ⑦それ単体では付加価値を生みにくい「棚卸結果のまとめ作業」に時間がかかっていた  このように、会社全体の業務プロセスの中でさまざまな課題が出てきていました。キーワードとしては、「Excel依存」「属人化」などの言葉で表すことができますが、「Excel依存」と「属人化」を放置しておくことのリスクとして、大きく2点挙げられます。 【「Excel依存」「属人化」の放置に潜む2つのリスク】 ①データの一貫性と信頼性の低下  Excelは手軽に使用できる反面、手動によるデータ入力や加工がどうしても多くなりがちです。そのため、入力ミスや計算ミスが発生しやすく、 データの一貫性や信頼性が低下するリスクがあります。  特に製造業では、正確なデータが製品品質や生産効率に直結するため、このようなミスは重大なトラブルを引き起こす可能性があります。 ②業務の非効率化とブラックボックス化  属人化が進むと、特定の社員だけが業務の詳細を把握している状態が生まれてしまいます。この状況は「業務のブラックボックス化」を招き、その社員が休暇や退職した場合に、業務の引き継ぎがスムーズに行えなくなるリスクがあります。結果として、業務が遅延し、全体の効率が低下するリスクが高まってしまいます。  上記のような課題やリスクがあった中で、J社様では基幹システムのリニューアルも交えた全社的な業務プロセスの改革に取り組むことを決断。また、刷新後の基幹システムとして、今回は Microsoft 社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを選択し、導入を進めていきました。 3.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』を導入し、「システムの統合一元管理」「全社的な業務データの見える化」「帳票作成の自動化」などを実現  前述のような課題が顕在化していた中で、J社様ではMicrosoft社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを導入し、「システムの統合一元管理」「全社的な業務データの見える化」「帳票作成の自動化」などを実現されました。 【基幹システムリニューアル(全社的な業務改革)の主な成果】 ①既存業務や既存ルール、既存帳票の積極的な断捨離を通じて、 「脱・Excel」「脱・紙帳票」 を実現! ②不良率・製品別原価率・得意先別売上などの重点指標・データを一元管理システム上で可視化! ③手書きかつ属人的な製造指示書作成業務を自動化! ④製造指示書作成業務を「1時間/件」⇒「10分/件」へ大幅に短縮! ⑤紙コスト&作業コストなどの合計で毎月約 300 万円以上のコストダウンを実現! ⑥社内会議や社内報告用に使う資料の作成にかかる時間の大幅短縮を実現!(間接業務の圧縮)  また、J社様では上記のような成果と併せて、 「属人的な勘や経験に依存した業務体制」から脱却 ↓ 定量的なデータを1つのシステムに集約(一元管理) ↓ 1つのシステムに集約したデータを経営判断・現場判断に活かす という流れを作ることに成功されました。 4.「目的・コンセプト」を明確化し、プロジェクトの最後まで守り抜いたことが成功のポイント  今回の基幹システム(ERP)リニューアルに関する取り組みのポイントの1つとして、「目的・コンセプト」を明確化し、プロジェクトの最後まで守り抜いたことが挙げられます。J社様では、以下のような「目的・コンセプト」を掲げて、プロジェクトを進めていきました。 【目的:プロジェクトを通じて達成したいこと】 ①バラバラな業務システムを統合一元管理することで、二重三重の入力を排除する(生産性を上げる・ミスを低減する) ②ブラックボックス(属人化)を排除する ③製造工程(仕掛含む)の可視化を行う ④在庫管理を正確に実施するで、適正在庫および適正発注を行う(棚卸時間の短縮および期末在庫低減によりキャッシュフローを向上させる) ⑤生産計画を組んで生産を進めていく ⑥原価の差異分析を実施し、原価管理のPDCAを回し、営業利益を向上させる 【コンセプト:目的達成のために必要なプロジェクトの”あり方”】 ①パッケージシステムに業務を合わせる。(業務標準化) ②他のシステムおよびExcelを極力パッケージシステムに踏襲する。 ③新業務開始にあたりルールを明確にしてこれを遵守する。  よくある事例として、プロジェクトの中盤に差し掛かったタイミングで、知らず知らずのうちに関係者間の考え方にギャップが生じてしまうというケースがあります。プロジェクトが進むにつれて、次第に各々の本音や不満が表出し、結果として意思疎通が図れなくなり、プロジェクトが頓挫してしまう…。そのような事態に陥ることを防ぐためにも、「プロジェクトの途中で各関係者が立ち返る原点」として、「目的」と「コンセプト」を明確にしておくことが重要となります。  また、自社の課題の解消に寄与するシステムを選定することはもちろん大切ですが、新たに導入するシステムの性能以上に、プロジェクトに対する関係者の姿勢や座組、組織としての一体感などに代表される「スタンス面」がプロジェクトの成功にはより大きな影響を与えます。経営者をはじめとして、現場担当者やシステム担当者が一体となって、同じ目的やコンセプトのもとにプロジェクトを進めることができれば、プロジェクトの成功確度は飛躍的に高まることでしょう。 【皆様の会社では以下のようなお悩みはありませんか?】 https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html ◆現行システムが老朽化し、サポートの終了も間近に迫っているため、現行システムの刷新を考えている ◆システムが複雑化・ブラックボックス化し、業務の全体像を把握できない ◆部門ごとに異なるシステムを利用しており、データ連携が困難 ◆情報システム部門やシステム担当者が不在、または専門知識を持つ人材が不足している ◆業務プロセスが標準化されておらず、非効率な業務が多い ◆属人的な業務が多く、担当者しか内容を理解していない ◆データ入力作業が多く、人的ミスが発生しやすい ◆データの可視化・分析が不足し、経営判断に役立てられない ◆部署間の連携がスムーズに行われず、情報共有が遅れる ◆在庫管理が正確に行えず、欠品や過剰在庫が発生しやすい ◆受注・発注管理が煩雑で、顧客対応に時間がかかる ◆会計処理が手作業中心で、時間と手間がかかる ◆経営状況をリアルタイムに把握できず、迅速な意思決定ができない ◆業務改善の必要性を感じているが、どこから手をつければ良いかわからない  上記のようなお悩みが1つでも当てはまる場合は、是非、船井総研の「無料オンライン相談」をご利用ください。基幹システム(ERP)導入をはじめとした、業務改革を専門とする経験豊富なコンサルタントが個別に対応させていただきます。 1.事例企業様の概要 【ダイカスト製品製造業 J社様】 ■所在地:山梨県 ■従業員数:約100名 ■事業内容:鋳造・機械加工、表面処理など  J社様では近年、全社共通で使用する基幹システム(ERP)を刷新しました。また、システム刷新に伴い、既存のアナログ業務の見直し・整理も併せて実行したことで、結果として「月300万円相当の大幅なコストダウン」という驚異的な成果を出すことに成功されました。  そんなJ社様ですが、元々はさまざまな種類の業務システムをバラバラに導入して使っておりました。以下、基幹システム(ERP)リニューアル前の主な既存システム一覧です。 ◆独自システム①(受注入力、製造指示・計画、注文書出力、納品など) ◆独自システム②(原価管理) ◆独自システム③(勤怠管理) ◆独自システム④(出張旅費・経費精算) ◆パッケージシステム①(会計:P/L、B/S、T/Bなど) ◆Access(受注データ、納品済みデータ、在庫管理、製造計画指示データなど) ◆Excel(購買の注文書)  上記内容の通り、異なるシステムをバラバラに導入し、かつそれぞれのシステムがシームレスに連携されていなかったために、さまざまな課題が出てきていました。 2.非効率なアナログ業務の常態化+煩雑かつバラバラなシステム管理体制に課題  J社様では主に次のような業務課題が顕在化していました。 ①各業務システム・ツール・Excel をバラバラに活用していた(データの入力先&管理先がバラバラ) ②異なるシステム間でデータの連携がスムーズに行えず、度重なる転記・手入力業務が発生していた ③属人的な Excel 管理・紙帳票管理が常態化していた ④製造指示書をはじめとした帳票作成の属人化が顕著になっていた ⑤製造指示書の作成について、リードタイムなどを「勘や経験」に基づいて手書きで作成していた ⑥社内会議のための資料作成やデータ収集など、間接業務の工数過多に悩まされていた ⑦それ単体では付加価値を生みにくい「棚卸結果のまとめ作業」に時間がかかっていた  このように、会社全体の業務プロセスの中でさまざまな課題が出てきていました。キーワードとしては、「Excel依存」「属人化」などの言葉で表すことができますが、「Excel依存」と「属人化」を放置しておくことのリスクとして、大きく2点挙げられます。 【「Excel依存」「属人化」の放置に潜む2つのリスク】 ①データの一貫性と信頼性の低下  Excelは手軽に使用できる反面、手動によるデータ入力や加工がどうしても多くなりがちです。そのため、入力ミスや計算ミスが発生しやすく、 データの一貫性や信頼性が低下するリスクがあります。  特に製造業では、正確なデータが製品品質や生産効率に直結するため、このようなミスは重大なトラブルを引き起こす可能性があります。 ②業務の非効率化とブラックボックス化  属人化が進むと、特定の社員だけが業務の詳細を把握している状態が生まれてしまいます。この状況は「業務のブラックボックス化」を招き、その社員が休暇や退職した場合に、業務の引き継ぎがスムーズに行えなくなるリスクがあります。結果として、業務が遅延し、全体の効率が低下するリスクが高まってしまいます。  上記のような課題やリスクがあった中で、J社様では基幹システムのリニューアルも交えた全社的な業務プロセスの改革に取り組むことを決断。また、刷新後の基幹システムとして、今回は Microsoft 社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを選択し、導入を進めていきました。 3.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』を導入し、「システムの統合一元管理」「全社的な業務データの見える化」「帳票作成の自動化」などを実現  前述のような課題が顕在化していた中で、J社様ではMicrosoft社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを導入し、「システムの統合一元管理」「全社的な業務データの見える化」「帳票作成の自動化」などを実現されました。 【基幹システムリニューアル(全社的な業務改革)の主な成果】 ①既存業務や既存ルール、既存帳票の積極的な断捨離を通じて、 「脱・Excel」「脱・紙帳票」 を実現! ②不良率・製品別原価率・得意先別売上などの重点指標・データを一元管理システム上で可視化! ③手書きかつ属人的な製造指示書作成業務を自動化! ④製造指示書作成業務を「1時間/件」⇒「10分/件」へ大幅に短縮! ⑤紙コスト&作業コストなどの合計で毎月約 300 万円以上のコストダウンを実現! ⑥社内会議や社内報告用に使う資料の作成にかかる時間の大幅短縮を実現!(間接業務の圧縮)  また、J社様では上記のような成果と併せて、 「属人的な勘や経験に依存した業務体制」から脱却 ↓ 定量的なデータを1つのシステムに集約(一元管理) ↓ 1つのシステムに集約したデータを経営判断・現場判断に活かす という流れを作ることに成功されました。 4.「目的・コンセプト」を明確化し、プロジェクトの最後まで守り抜いたことが成功のポイント  今回の基幹システム(ERP)リニューアルに関する取り組みのポイントの1つとして、「目的・コンセプト」を明確化し、プロジェクトの最後まで守り抜いたことが挙げられます。J社様では、以下のような「目的・コンセプト」を掲げて、プロジェクトを進めていきました。 【目的:プロジェクトを通じて達成したいこと】 ①バラバラな業務システムを統合一元管理することで、二重三重の入力を排除する(生産性を上げる・ミスを低減する) ②ブラックボックス(属人化)を排除する ③製造工程(仕掛含む)の可視化を行う ④在庫管理を正確に実施するで、適正在庫および適正発注を行う(棚卸時間の短縮および期末在庫低減によりキャッシュフローを向上させる) ⑤生産計画を組んで生産を進めていく ⑥原価の差異分析を実施し、原価管理のPDCAを回し、営業利益を向上させる 【コンセプト:目的達成のために必要なプロジェクトの”あり方”】 ①パッケージシステムに業務を合わせる。(業務標準化) ②他のシステムおよびExcelを極力パッケージシステムに踏襲する。 ③新業務開始にあたりルールを明確にしてこれを遵守する。  よくある事例として、プロジェクトの中盤に差し掛かったタイミングで、知らず知らずのうちに関係者間の考え方にギャップが生じてしまうというケースがあります。プロジェクトが進むにつれて、次第に各々の本音や不満が表出し、結果として意思疎通が図れなくなり、プロジェクトが頓挫してしまう…。そのような事態に陥ることを防ぐためにも、「プロジェクトの途中で各関係者が立ち返る原点」として、「目的」と「コンセプト」を明確にしておくことが重要となります。  また、自社の課題の解消に寄与するシステムを選定することはもちろん大切ですが、新たに導入するシステムの性能以上に、プロジェクトに対する関係者の姿勢や座組、組織としての一体感などに代表される「スタンス面」がプロジェクトの成功にはより大きな影響を与えます。経営者をはじめとして、現場担当者やシステム担当者が一体となって、同じ目的やコンセプトのもとにプロジェクトを進めることができれば、プロジェクトの成功確度は飛躍的に高まることでしょう。 【皆様の会社では以下のようなお悩みはありませんか?】 https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html ◆現行システムが老朽化し、サポートの終了も間近に迫っているため、現行システムの刷新を考えている ◆システムが複雑化・ブラックボックス化し、業務の全体像を把握できない ◆部門ごとに異なるシステムを利用しており、データ連携が困難 ◆情報システム部門やシステム担当者が不在、または専門知識を持つ人材が不足している ◆業務プロセスが標準化されておらず、非効率な業務が多い ◆属人的な業務が多く、担当者しか内容を理解していない ◆データ入力作業が多く、人的ミスが発生しやすい ◆データの可視化・分析が不足し、経営判断に役立てられない ◆部署間の連携がスムーズに行われず、情報共有が遅れる ◆在庫管理が正確に行えず、欠品や過剰在庫が発生しやすい ◆受注・発注管理が煩雑で、顧客対応に時間がかかる ◆会計処理が手作業中心で、時間と手間がかかる ◆経営状況をリアルタイムに把握できず、迅速な意思決定ができない ◆業務改善の必要性を感じているが、どこから手をつければ良いかわからない  上記のようなお悩みが1つでも当てはまる場合は、是非、船井総研の「無料オンライン相談」をご利用ください。基幹システム(ERP)導入をはじめとした、業務改革を専門とする経験豊富なコンサルタントが個別に対応させていただきます。

印刷・製本業界の次世代戦略:DXで実現する“脱・下請け”と高付加価値経営

2025.05.12

いつもコラムをご愛読いただきありがとうございます。 船井総合研究所の熊谷です。 斜陽産業と呼ばれている印刷業、製本業において、今までの取り組みだけではなく、特にコスト削減による利益確保が急務となっています。 さらにデジタル化の波、原材料価格の高騰、そして小ロット・多品種化への要求など、印刷・製本業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。 特に、大手印刷会社や出版社からの受注に依存する従来の下請け構造では、利益確保がますます困難になっていると感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。 しかし、このような時代だからこそ、旧来のビジネスモデルを見つめ直し、変革を推進することで、新たな成長機会を掴むことが可能です。 本記事では、印刷・製本業の中小企業が、DX(デジタルトランスフォーメーション)を駆動力として“脱・下請け”を果たし、高付加価値な事業モデルへと転換するための具体的な戦略を探ります。 【この記事のターゲット読者】 印刷業および製本業の中小企業の経営者や経営企画担当者で、現状のビジネスモデル(特に大手印刷会社や出版社の“下請け”としての立ち位置)に課題を感じており、事業再構築やDXを通じた変革に関心がある方。 印刷・製本業界における「下請け」構造の課題 長年にわたり、印刷・製本業界では、大手出版社や大手印刷会社を頂点とした分業体制、すなわち下請け構造が一般的でした。 この構造は、安定した仕事量を確保できるというメリットがあった一方で、以下のような構造的な課題を抱えています。 価格交渉力の弱さ:発注元からのコストダウン要求は厳しく、適正な加工料金を提示・維持することが難しい。結果、技術や品質に見合った収益を上げにくい状況にあります。 情報格差と提案機会の喪失:最終的な顧客ニーズや市場トレンドに関する情報が限定的で、自社から積極的に企画提案を行う機会が少ない。これにより、独自の強みを活かした価値創造が阻害されがちです。 収益性の低い業務への偏り:価格競争が激しい標準的な印刷・製本業務に集中しやすく、高付加価値な特殊加工や小ロット案件への対応が遅れることがあります。 「待ち」の経営体質:仕事が来るのを待つ受け身の経営になりやすく、市場の変化に能動的に対応していく力が育ちにくい側面があります。 利益構造の不透明さ:特に多工程にわたる製本業務などでは、案件ごとの正確な原価把握が難しく、どの仕事が本当に利益に貢献しているのかが見えづらいケースも散見されます。 これらの課題は、企業の持続的な成長や、新たな市場ニーズへの対応を難しくしています。 戦略転換:「ダイレクト顧客」と「高付加価値製本」へのシフト 下請け構造から脱却し、収益性を高めるための鍵は、事業の軸足を「ダイレクトな顧客との関係構築」と「高付加価値な製本・加工サービスの提供」へとシフトすることです。 これは、従来の印刷会社経由の受注だけでなく、出版社、デザイン事務所、一般企業、さらには個人といった最終顧客と直接取引を拡大し、自社が主体となって企画提案から納品までを一貫して手がける「元請け」としてのポジションを目指すことを意味します。 特に、技術力を要する製本加工は利益率も高く、戦略の核となり得ます。 この戦略転換がもたらす主なメリットは以下の通りです。 利益率の大幅改善:中間マージンを排除し、自社の技術やサービスに見合った価格で直接販売することで、収益性を高めることができます。 多様な顧客ニーズへの対応:顧客と直接対話することで、細かな要望や潜在的なニーズを汲み取り、きめ細やかなサービス提供や新たな商品開発に繋げられます。 独自の強みの発揮:特殊な製本技術、小ロット対応力、短納期対応、環境対応印刷など、自社の強みを直接アピールし、価格以外の価値で選ばれる存在を目指せます。 事業の安定化と成長:特定の取引先に依存するリスクを分散し、多様な顧客基盤を構築することで、経営の安定化と持続的な成長が期待できます。 この変革を実現するためには、従来の生産体制の見直しに加え、マーケティング・営業力の強化、そして新たな顧客体験を提供する仕組みづくりが不可欠です。 DX:印刷・製本業の変革を加速するエンジン この事業モデル変革を力強く推進するのがDXです。 印刷・製本業においてDXは、単なる業務効率化ツールではなく、新たな価値創造とビジネスモデル変革を実現するための戦略的手段となります。 精緻な原価管理と利益の「見える化」: 案件ごと、工程ごとに材料費、労務費、機械稼働時間などを正確に把握・分析できるシステムを導入することで、ブラックボックス化しがちなコスト構造を透明化します。 これにより、個々の案件の採算性を正確に評価し、適正な見積もり作成や価格交渉に役立てることができます。 「どの製本方法が一番利益率が高いのか」「どの顧客層が収益に貢献しているのか」といったデータに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。 新たな顧客獲得チャネルの構築: 自社の技術や実績を紹介する魅力的なウェブサイトの構築、オンライン見積もりシステムの導入、SNSやコンテンツマーケティングによる情報発信など、デジタルツールを活用して新規顧客との接点を創出します。 Web to Printの仕組みを導入し、小ロットの注文やパーソナライズされた印刷物の受注を自動化することも有効です。 生産プロセスの最適化と自動化: 受注から製造指示、進捗管理、品質管理、納品までの一連のワークフローをデジタルで一元管理し、情報共有の迅速化と手戻りの削減を図ります。 MIS(経営情報システム)やERP(統合基幹業務システム)を導入し、生産計画の精度向上、資材調達の最適化、在庫管理の効率化などを実現します。 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを活用し、定型的な事務作業を自動化することで、従業員が付加価値の高い業務に集中できる環境を整えます。 DXは、経験や勘に頼った経営から脱却し、データに基づいた客観的で迅速な意思決定を可能にする、まさに「DX経営」への転換を促します。 変革実現へのロードマップ:印刷・製本業版 印刷・製本業が“脱・下請け”と高付加価値経営を実現するためのDX推進は、以下のステップで進めることが考えられます。 1.現状把握と課題の明確化:まず、自社の強み・弱み、現在の取引構造、案件ごとの収益性を徹底的に分析します。特に、製本加工における工程別の実際にかかったコストや、印刷物の種類別利益率などを正確に把握することが重要です。 2.目指す事業モデルの具体化と戦略立案:どのような顧客層に、どのような高付加価値な印刷・製本サービスを直接提供していくのかを明確にし、そのための具体的な事業戦略(例:特殊製本技術の強化、小ロット高品質市場への注力、Webを通じたダイレクト販売チャネルの構築など)を策定します。 3.DX基盤の整備とスモールスタート:原価管理システムの導入や顧客管理システム(CRM)の整備など、データ活用のための基盤を整えます。最初から大規模なシステム導入を目指すのではなく、特定の課題解決に繋がる領域からスモールスタートし、効果を検証しながら段階的に対象を広げていくことが成功の秘訣です。 4.実行体制の構築と人材育成:社長直轄のDX推進チームを設置し、外部の専門家の支援を受けながら、全社的にDXへの理解を深め、必要なスキルを習得していく体制を整えます。 このプロセスでは、経営層の強いリーダーシップと、変化を恐れず挑戦する企業文化の醸成が不可欠です。 おわりに 印刷・製本業界は、大きな変革期を迎えています。 しかし、変化は新たなチャンスでもあります。 従来の下請け構造から一歩踏み出し、自社の技術力と創造性を最大限に活かして顧客と直接繋がることで、価格競争から脱却し、より高い収益性と成長性を実現することが可能です。 その変革の実現には、DXという強力な武器を戦略的に活用することが鍵となります。この記事が、貴社が未来を切り拓くためのヒントとなれば幸いです。 いつもコラムをご愛読いただきありがとうございます。 船井総合研究所の熊谷です。 斜陽産業と呼ばれている印刷業、製本業において、今までの取り組みだけではなく、特にコスト削減による利益確保が急務となっています。 さらにデジタル化の波、原材料価格の高騰、そして小ロット・多品種化への要求など、印刷・製本業界を取り巻く環境は厳しさを増しています。 特に、大手印刷会社や出版社からの受注に依存する従来の下請け構造では、利益確保がますます困難になっていると感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。 しかし、このような時代だからこそ、旧来のビジネスモデルを見つめ直し、変革を推進することで、新たな成長機会を掴むことが可能です。 本記事では、印刷・製本業の中小企業が、DX(デジタルトランスフォーメーション)を駆動力として“脱・下請け”を果たし、高付加価値な事業モデルへと転換するための具体的な戦略を探ります。 【この記事のターゲット読者】 印刷業および製本業の中小企業の経営者や経営企画担当者で、現状のビジネスモデル(特に大手印刷会社や出版社の“下請け”としての立ち位置)に課題を感じており、事業再構築やDXを通じた変革に関心がある方。 印刷・製本業界における「下請け」構造の課題 長年にわたり、印刷・製本業界では、大手出版社や大手印刷会社を頂点とした分業体制、すなわち下請け構造が一般的でした。 この構造は、安定した仕事量を確保できるというメリットがあった一方で、以下のような構造的な課題を抱えています。 価格交渉力の弱さ:発注元からのコストダウン要求は厳しく、適正な加工料金を提示・維持することが難しい。結果、技術や品質に見合った収益を上げにくい状況にあります。 情報格差と提案機会の喪失:最終的な顧客ニーズや市場トレンドに関する情報が限定的で、自社から積極的に企画提案を行う機会が少ない。これにより、独自の強みを活かした価値創造が阻害されがちです。 収益性の低い業務への偏り:価格競争が激しい標準的な印刷・製本業務に集中しやすく、高付加価値な特殊加工や小ロット案件への対応が遅れることがあります。 「待ち」の経営体質:仕事が来るのを待つ受け身の経営になりやすく、市場の変化に能動的に対応していく力が育ちにくい側面があります。 利益構造の不透明さ:特に多工程にわたる製本業務などでは、案件ごとの正確な原価把握が難しく、どの仕事が本当に利益に貢献しているのかが見えづらいケースも散見されます。 これらの課題は、企業の持続的な成長や、新たな市場ニーズへの対応を難しくしています。 戦略転換:「ダイレクト顧客」と「高付加価値製本」へのシフト 下請け構造から脱却し、収益性を高めるための鍵は、事業の軸足を「ダイレクトな顧客との関係構築」と「高付加価値な製本・加工サービスの提供」へとシフトすることです。 これは、従来の印刷会社経由の受注だけでなく、出版社、デザイン事務所、一般企業、さらには個人といった最終顧客と直接取引を拡大し、自社が主体となって企画提案から納品までを一貫して手がける「元請け」としてのポジションを目指すことを意味します。 特に、技術力を要する製本加工は利益率も高く、戦略の核となり得ます。 この戦略転換がもたらす主なメリットは以下の通りです。 利益率の大幅改善:中間マージンを排除し、自社の技術やサービスに見合った価格で直接販売することで、収益性を高めることができます。 多様な顧客ニーズへの対応:顧客と直接対話することで、細かな要望や潜在的なニーズを汲み取り、きめ細やかなサービス提供や新たな商品開発に繋げられます。 独自の強みの発揮:特殊な製本技術、小ロット対応力、短納期対応、環境対応印刷など、自社の強みを直接アピールし、価格以外の価値で選ばれる存在を目指せます。 事業の安定化と成長:特定の取引先に依存するリスクを分散し、多様な顧客基盤を構築することで、経営の安定化と持続的な成長が期待できます。 この変革を実現するためには、従来の生産体制の見直しに加え、マーケティング・営業力の強化、そして新たな顧客体験を提供する仕組みづくりが不可欠です。 DX:印刷・製本業の変革を加速するエンジン この事業モデル変革を力強く推進するのがDXです。 印刷・製本業においてDXは、単なる業務効率化ツールではなく、新たな価値創造とビジネスモデル変革を実現するための戦略的手段となります。 精緻な原価管理と利益の「見える化」: 案件ごと、工程ごとに材料費、労務費、機械稼働時間などを正確に把握・分析できるシステムを導入することで、ブラックボックス化しがちなコスト構造を透明化します。 これにより、個々の案件の採算性を正確に評価し、適正な見積もり作成や価格交渉に役立てることができます。 「どの製本方法が一番利益率が高いのか」「どの顧客層が収益に貢献しているのか」といったデータに基づいた戦略的な意思決定が可能になります。 新たな顧客獲得チャネルの構築: 自社の技術や実績を紹介する魅力的なウェブサイトの構築、オンライン見積もりシステムの導入、SNSやコンテンツマーケティングによる情報発信など、デジタルツールを活用して新規顧客との接点を創出します。 Web to Printの仕組みを導入し、小ロットの注文やパーソナライズされた印刷物の受注を自動化することも有効です。 生産プロセスの最適化と自動化: 受注から製造指示、進捗管理、品質管理、納品までの一連のワークフローをデジタルで一元管理し、情報共有の迅速化と手戻りの削減を図ります。 MIS(経営情報システム)やERP(統合基幹業務システム)を導入し、生産計画の精度向上、資材調達の最適化、在庫管理の効率化などを実現します。 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを活用し、定型的な事務作業を自動化することで、従業員が付加価値の高い業務に集中できる環境を整えます。 DXは、経験や勘に頼った経営から脱却し、データに基づいた客観的で迅速な意思決定を可能にする、まさに「DX経営」への転換を促します。 変革実現へのロードマップ:印刷・製本業版 印刷・製本業が“脱・下請け”と高付加価値経営を実現するためのDX推進は、以下のステップで進めることが考えられます。 1.現状把握と課題の明確化:まず、自社の強み・弱み、現在の取引構造、案件ごとの収益性を徹底的に分析します。特に、製本加工における工程別の実際にかかったコストや、印刷物の種類別利益率などを正確に把握することが重要です。 2.目指す事業モデルの具体化と戦略立案:どのような顧客層に、どのような高付加価値な印刷・製本サービスを直接提供していくのかを明確にし、そのための具体的な事業戦略(例:特殊製本技術の強化、小ロット高品質市場への注力、Webを通じたダイレクト販売チャネルの構築など)を策定します。 3.DX基盤の整備とスモールスタート:原価管理システムの導入や顧客管理システム(CRM)の整備など、データ活用のための基盤を整えます。最初から大規模なシステム導入を目指すのではなく、特定の課題解決に繋がる領域からスモールスタートし、効果を検証しながら段階的に対象を広げていくことが成功の秘訣です。 4.実行体制の構築と人材育成:社長直轄のDX推進チームを設置し、外部の専門家の支援を受けながら、全社的にDXへの理解を深め、必要なスキルを習得していく体制を整えます。 このプロセスでは、経営層の強いリーダーシップと、変化を恐れず挑戦する企業文化の醸成が不可欠です。 おわりに 印刷・製本業界は、大きな変革期を迎えています。 しかし、変化は新たなチャンスでもあります。 従来の下請け構造から一歩踏み出し、自社の技術力と創造性を最大限に活かして顧客と直接繋がることで、価格競争から脱却し、より高い収益性と成長性を実現することが可能です。 その変革の実現には、DXという強力な武器を戦略的に活用することが鍵となります。この記事が、貴社が未来を切り拓くためのヒントとなれば幸いです。

基幹システム刷新を通じて「脱・属人化」を実現!既存のExcel帳票を活かしたERP活用とは?

2025.05.01

1.事例企業様の概要 【建築用製品製造業 S社様】  ■所在地:岐阜県  ■従業員数:約50名    S社様は基幹システム刷新にあたり、「既存のシステムにて追加開発した帳票」を活かした運用を望んでいました。そんなS社様が既存の帳票を活かして基幹システム(ERP)を刷新した取り組み事例を簡単にご紹介いたします。 2.「既存システムとExcelの二重・三重管理」および「システム運用の属人化」が大きな課題となっていた  これまでS社様では、基幹システム+Excelの組み合わせにより業務を行ってきましたが、下記のような課題があり、基幹システムの刷新を決断されます。 ①既存システムとExcelにおいて二重三重入力が発生している。 ②現場担当者がそれぞれ異なるフォーマットのExcelや紙伝票を使用している。 ③データがバラバラに管理されている。 ④発注は別管理。 ⑤製品に紐づく材料費・労務費・経費等の「製品別原価」が十分に管理できていない。 ⑥在庫の把握は別管理。 ⑦月末在庫金額の計算もExcel上で計算しており、Excelのメンテナンスが必要。 ⑧社内資料は複数Excelを合算して作成している。 ⑨システム運用ルールが明確でない。  また、刷新後の基幹システムとして、今回はMicrosoft社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを選択し、導入を進めていきました。 3.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、業務全体可視化、脱属人化、効率化を達成 主な改善点は下記のとおりですが、基幹システムの導入をきっかけとして、発注管理や在庫管理もシステム内で行うこととし、属人業務の標準化を進めていきました。 既存の帳票を活かすため、『Dynamics 365 Business Central』にある「Webサービス」という機能を用いて、システム内に存在するデータをボタン1つで抽出。その抽出したデータを活用し、既存の帳票にプロットさせることで、これまでと同様の運用を行うことが可能になりました。 【『Dynamics 365 Business Central』導入後の主な成果】 ①各種データを一元化&二重三重入力を排除し業務を効率化! ②ERP導入をきっかけに、既存のExcelや既存伝票の見直し・標準化・効率化を推進! ③社内に散在していたデータを一元管理! ④システムにて発注登録。売上と原価の紐づけに成功! ⑤「製品別の個別原価管理」が可能に! ⑥システム内で理論在庫の把握が可能に! ⑦在庫金額もシステムにて自動計算が可能に! ⑧ボタン1つでデータ出力が可能に! ⑨ERP導入をきっかけに運用ルールを定めることで、誰でも同じ作業が出来るように!(標準化/属人化の排除) 今回の基幹システム刷新において、最も成果に繋がったポイントは、『既存の運用(帳票)を活かしながらも、データの入り口を一本化すべく、パッケージに合わせた入力』を徹底されたことです。 システムを導入するにあたって大事なポイントであり、システムを標準とすることで、業務の脱属人化・効率化を実現することが可能となります。 さいごに、基幹システム刷新にあたってネックとなるのが、既存の帳票類です。可能な限り既存の帳票を活かせると、現場での運用に変更がなくなり、基幹システム刷新に伴う現場からの抵抗感も少なくなります。 データの根幹は変更しつつ、枝の部分は変わらない刷新を行った事例」として、ご紹介させていただきました。 製造業 基幹システム導入 成功事例連発セミナー 【特別ゲスト講座】 多品種少量生産製造業 基幹システム導入による生産性アップの成功事例を大公開! 基幹システム導入を通じて「業務の統合一元管理」「脱・縦割り組織」「業務データの見える化」を実現! バラバラなシステムを一元管理することで二重三重業務を排除! 散在するExcel・紙伝票管理から脱却し高生産性を実現! 脱属人化を推進!「熟練者頼みの伝票作成業務」の自動化を実現!  指示書作成業務を「1件あたり1時間」から「1件あたり10分」へ大幅短縮! 手書きの紙の日報を廃止!タブレット端末へ直接データ入力&基幹システムへ自動連携!二度手間・二重入力を排除! 基幹システム上で在庫一覧データをボタン1つで即座に確認できる仕組みを構築! 基幹システム導入と併せて業務改革を実行!月300万円以上の大幅コストダウンを実現! 基幹システム導入をきっかけに「営業活動の見える化」を実現! 基幹システム導入をきっかけに「工程管理・生産管理等のムダ」を大幅に削減! 基幹システム導入をきっかけに「製品個別の原価管理」を実践! 手作業で行っていた社内会議資料の作成をボタン1つで自動作成! 基幹システム導入と併せて業務の運用ルールを適正化!ムダな業務を大幅削減! 1.事例企業様の概要 【建築用製品製造業 S社様】  ■所在地:岐阜県  ■従業員数:約50名    S社様は基幹システム刷新にあたり、「既存のシステムにて追加開発した帳票」を活かした運用を望んでいました。そんなS社様が既存の帳票を活かして基幹システム(ERP)を刷新した取り組み事例を簡単にご紹介いたします。 2.「既存システムとExcelの二重・三重管理」および「システム運用の属人化」が大きな課題となっていた  これまでS社様では、基幹システム+Excelの組み合わせにより業務を行ってきましたが、下記のような課題があり、基幹システムの刷新を決断されます。 ①既存システムとExcelにおいて二重三重入力が発生している。 ②現場担当者がそれぞれ異なるフォーマットのExcelや紙伝票を使用している。 ③データがバラバラに管理されている。 ④発注は別管理。 ⑤製品に紐づく材料費・労務費・経費等の「製品別原価」が十分に管理できていない。 ⑥在庫の把握は別管理。 ⑦月末在庫金額の計算もExcel上で計算しており、Excelのメンテナンスが必要。 ⑧社内資料は複数Excelを合算して作成している。 ⑨システム運用ルールが明確でない。  また、刷新後の基幹システムとして、今回はMicrosoft社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを選択し、導入を進めていきました。 3.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、業務全体可視化、脱属人化、効率化を達成 主な改善点は下記のとおりですが、基幹システムの導入をきっかけとして、発注管理や在庫管理もシステム内で行うこととし、属人業務の標準化を進めていきました。 既存の帳票を活かすため、『Dynamics 365 Business Central』にある「Webサービス」という機能を用いて、システム内に存在するデータをボタン1つで抽出。その抽出したデータを活用し、既存の帳票にプロットさせることで、これまでと同様の運用を行うことが可能になりました。 【『Dynamics 365 Business Central』導入後の主な成果】 ①各種データを一元化&二重三重入力を排除し業務を効率化! ②ERP導入をきっかけに、既存のExcelや既存伝票の見直し・標準化・効率化を推進! ③社内に散在していたデータを一元管理! ④システムにて発注登録。売上と原価の紐づけに成功! ⑤「製品別の個別原価管理」が可能に! ⑥システム内で理論在庫の把握が可能に! ⑦在庫金額もシステムにて自動計算が可能に! ⑧ボタン1つでデータ出力が可能に! ⑨ERP導入をきっかけに運用ルールを定めることで、誰でも同じ作業が出来るように!(標準化/属人化の排除) 今回の基幹システム刷新において、最も成果に繋がったポイントは、『既存の運用(帳票)を活かしながらも、データの入り口を一本化すべく、パッケージに合わせた入力』を徹底されたことです。 システムを導入するにあたって大事なポイントであり、システムを標準とすることで、業務の脱属人化・効率化を実現することが可能となります。 さいごに、基幹システム刷新にあたってネックとなるのが、既存の帳票類です。可能な限り既存の帳票を活かせると、現場での運用に変更がなくなり、基幹システム刷新に伴う現場からの抵抗感も少なくなります。 データの根幹は変更しつつ、枝の部分は変わらない刷新を行った事例」として、ご紹介させていただきました。 製造業 基幹システム導入 成功事例連発セミナー 【特別ゲスト講座】 多品種少量生産製造業 基幹システム導入による生産性アップの成功事例を大公開! 基幹システム導入を通じて「業務の統合一元管理」「脱・縦割り組織」「業務データの見える化」を実現! バラバラなシステムを一元管理することで二重三重業務を排除! 散在するExcel・紙伝票管理から脱却し高生産性を実現! 脱属人化を推進!「熟練者頼みの伝票作成業務」の自動化を実現!  指示書作成業務を「1件あたり1時間」から「1件あたり10分」へ大幅短縮! 手書きの紙の日報を廃止!タブレット端末へ直接データ入力&基幹システムへ自動連携!二度手間・二重入力を排除! 基幹システム上で在庫一覧データをボタン1つで即座に確認できる仕組みを構築! 基幹システム導入と併せて業務改革を実行!月300万円以上の大幅コストダウンを実現! 基幹システム導入をきっかけに「営業活動の見える化」を実現! 基幹システム導入をきっかけに「工程管理・生産管理等のムダ」を大幅に削減! 基幹システム導入をきっかけに「製品個別の原価管理」を実践! 手作業で行っていた社内会議資料の作成をボタン1つで自動作成! 基幹システム導入と併せて業務の運用ルールを適正化!ムダな業務を大幅削減!

中小製造業におけるAI活用×技術伝承事例:株式会社シンワバネスに学ぶ若手育成術

2025.04.30

今回は、2025年4月24日に開催された、スマートファクトリー経営部会 第1講座に登壇いただいた、株式会社シンワバネス 技術開発部 部長 石川智之氏の講演内容をご紹介させていただきます。 スマートファクトリー経営部会では、最新の製造業DX事例の勉強会を隔月でおこなっております。製造業経営者を中心に、製造業におけるDXを学ぶ会となっております。無料お試し参加をご希望の方は、以下のURLをご確認ください。 スマートファクトリー経営部会の詳細はこちら   電気ヒーター専門メーカーのシンワバネス様(従業員70名)は、技術者不足とキーマン退職による納期遅延という危機に対し、AIチャットボット導入を中心としたDXを推進しました。製品情報やノウハウをテキスト化し、RAGシステムとAIを組み合わせたチャットボットを導入。その結果、OJT負担軽減、新人教育支援、ナレッジ検索効率向上といった効果が得られ、年間約414時間の人件費削減にも繋がりました。技術伝承と若手育成にAIが貢献した事例です。 このレポートを読むメリット: 中小製造業における技術伝承の具体的な方法が学べます。 AIチャットボット導入による業務改善と効率化のヒントが得られます。 若手技術者の早期育成を実現するためのステップが理解できます。 デジタル技術を活用した組織変革の可能性が発見できます。 シンワバネス様の成功事例から、自社への応用イメージを描けます。 1.技術継承の危機とDX推進の必然性 近年、多くの製造業が共通して抱える課題として、熟練技術者の高齢化や退職による技術伝承の危機が挙げられます。特に中小企業においては、長年培ってきた貴重なノウハウが失われることは、競争力低下に直結する深刻な問題です。今回ご紹介する株式会社シンワバネス様も、まさにこの課題に直面していました。 シンワバネス様は、1978年設立、従業員70名の電気ヒーター専門メーカーであり、半導体製造装置に使われるヒーターなどの設計・開発を請け負うファブレスメーカーです。受注のほぼ100%がオーダーメイド製品であり、顧客の要望を共に考え、設計から携わる点が強みです。しかしながら、2021年度にキーマンが退職したことにより、一時的に業務が回らなくなるという事態が発生しました。 設計期間の長期化は納期遅延を招き、顧客からの信用失墜という危機的な状況に陥りました。この状況を打開するため、人員の増強や補充が行われましたが、結果として新入社員の割合が増加し、教育という新たな課題が生じ、生産性の悪化を招きました。 このような背景から、シンワバネス様は、特定の専任者に依存しない体制づくり、すなわち退職リスクの回避と、経験の浅いメンバーを早期に戦力化するための効率的な教育システムの構築が急務となりました。そこで着目されたのが、デジタル技術を活用した変革、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進でした。 2.シンワバネス様の事業概要と抱えていた課題 改めて、株式会社シンワバネス様の事業概要と、DX推進に至るまでの具体的な課題についてご説明いたします。 シンワバネス様は、東京都品川区に本社を構え、資本金3,000万円、代表取締役社長は新井昇様です。工業用ヒーターを主力製品とし、主に半導体製造装置向けの熱源を設計・開発、委託製造し販売する事業を展開されています。センサー、治工具、素材、コントロールBOXなどの関連製品も扱っており、顧客の細かなニーズに応えるオーダーメイド製品の提供が大きな特徴です。 このような事業を展開される中で、シンワバネス様は、2018年度の新事業立ち上げに伴う人員異動、そして2021年度のキーマンの退職という二つの大きな出来事に直面しました。これらの出来事は、設計期間の長期化、納期遅延、そして顧客からの信用失墜という一連の負の連鎖を引き起こしました。 さらに、市場の拡大と成長に伴い、組織体制の強化として新たな社員を採用する機会が増えましたが、その都度、新入社員の教育が大きな課題となりました。過去10年間で3年ごとに社員の増減が大きく変化しており、新入社員が増えるたびに、その教育に多くの時間と労力が割かれていたのです。 また、特定の経験豊富な社員に業務が集中しがちな状況は、その社員が不在になった際のリスクを高めます。業務のシェア方法や継続性の確保も重要な課題として認識されていました。これらの課題を解決し、持続的な成長を実現するため、シンワバネス様は抜本的な対策としてDXの推進を検討し始めたのです。 3.AIチャットボット導入による技術伝承と業務効率化 株式会社シンワバネス様が課題解決のために具体的に取り組んだのが、AI(チャットボット)の導入による技術伝承と業務効率化でした。当時、世界的に話題となっていたChatGPT3.5の登場が、対話型AIの可能性に着目するきっかけとなりました。 シンワバネス様は、DXの取り組みを以下の3つの段階で捉え、推進しました。 アナログ→デジタル化(デジタイゼーション) テクノロジーによる業務改善(デジタライゼーション) 組織変革と価値創出 (デジタルトランスフォーメーション) まず、デジタイゼーションとして、製品の基本構造、仕様、スペックなどの情報、設計工程や社内業務プロセス、そして設計ノウハウやヒヤリハット事例などをテキストデータとして蓄積しました。これにより、頭の中にあった見えない情報が可視化され、業務の流れが明確になり、入社教育の資料としても活用できる基盤が整備されました。 次に、デジタライゼーションとして、「RAG(Retrieval-Augmented Generation)システム」と「AI」を組み合わせた、設計業務に特化したAIチャットボットの導入に踏み切りました。RAGシステムとは、自社の業務文書や規定などの社内情報、さらには外部の最新情報を活用し、質問内容に合致する外部データを検索して情報を抽出し、それに基づいてAIが回答を生成する仕組みです。 当時、「RAG」という言葉自体を知らなかったシンワバネス様は、生成AIが社内リソースを参照して対応できる仕組みが必ずあると考え、サービスを提供している企業の調査を開始しました。その結果、RAGを用いたAIシステムであれば、同社が実現したいことが可能であると確信し、AIチャットボットの導入を決定しました。 2023年8月に社内稟議を経て、9月にはシステム契約と準備を開始し、わずか1ヶ月後の10月には運用を開始するという、驚異的なスピードで導入を実現しました。運用開始前の主な準備作業としては、社内リソースのテキストデータ化(当時は画像認識機能がなかったため、徹底的にテキストで表現)と、カテゴリ別に「質問」と「答え」のデータセットを10組準備することでした。社内にある情報の所在、業務に必要な情報、判断基準、ルール化の有無、仕事のインプットとアウトプットなど、詳細な情報を収集・整理し、技術者の頭の中にある情報や技術をテキスト化する作業が行われました。 運用開始当初は50ファイルだったRAG用のリソースも、現在では300ファイルまで拡充されています。 4.AI導入の効果 AIチャットボットの導入は、株式会社シンワバネス様に多岐にわたる効果をもたらしました。 まず、新入社員の「わからない…」を補える環境が構築できたことが挙げられます。周囲のメンバーが忙しい状況でも、「いつでも聞ける」環境が実現し、新入社員は気兼ねなく質問し、必要な情報を迅速に得られるようになりました。 また、社内ナレッジを探す手間が省けるようになったことも大きな効果です。必要な情報をAIが自動的に引き出してくれるため、従業員は情報検索にかける時間を大幅に削減し、本来の業務に集中できるようになりました।回答速度が速いため、テンポよく業務を進められるようになったという声も聞かれます。 定量的な効果としては、2024年の年間応答回数が6,850回に達しています。1応答あたり、OJTで応対する平均的な時間を10分と仮定すると、年間で約414時間の削減効果があったと試算できます。仮に利用者一人当たりの時間単価を3,000円とした場合、年間約124万2,000円の人件費削減効果があったことになります。 さらに、業務に付随する対応の幅が広がったことも見逃せない効果です。例えば、翻訳作業の効率化や、プログラミングによる自動化など、AIの活用によって新たな業務効率化の可能性が生まれています。 管理者側から見ても、OJTの負担軽減や、情報・技術の継承に対する安心感といったメリットが得られています。ユーザー側からは、「いつでも気兼ねなく聞ける」「質問しても怒られたり、嫌な顔をされない」といった心理的な安心感も得られているようです。 このように、AIチャットボットの導入は、シンワバネス様において、若手育成の加速、ナレッジ共有の促進、業務効率の大幅な向上、そしてコスト削減という顕著な効果をもたらしました。 5.中小製造業におけるAI活用の可能性と今後の展望 株式会社シンワバネス様の事例は、中小製造業においてもAIを積極的に活用することで、様々な課題を解決できる可能性を示唆しています。 シンワバネス様は、今後、AI活用スキルを標準スキルとすることを目指しており、エージェントAIやAGI(汎用人工知能)の進化にも注目し、実用性の向上、コスト低減、日常アプリへの浸透といった潮流を見据えています。 今回の事例を通じて、中小製造業がDXを推進する上で重要なポイントは、以下の3点であると考えられます。 明確な課題認識:なぜDXを推進する必要があるのか、具体的な課題を明確にすること。 自社に合ったDXの検討と取り組み:課題解決に向けて、どのようなDXが自社に必要なのかを検討し、具体的な取り組みを実行すること。 スモールスタートと迅速な実行: 大規模な投資を伴うことなく、まずは小さく始め、効果検証を行いながら改善を進めていくこと。シンワバネス様の事例のように、わずか1ヶ月で社内運用を開始したスピード感は、中小企業にとって非常に参考になるでしょう。 技術者不足は多くの製造業にとって深刻な課題ですが、AIをはじめとするデジタル技術を賢く活用することで、人材育成を加速させ、技術伝承を確実なものとし、ひいては企業の持続的な成長に繋げることが可能です。 今回は、2025年4月24日に開催された、スマートファクトリー経営部会 第1講座に登壇いただいた、株式会社シンワバネス 技術開発部 部長 石川智之氏の講演内容をご紹介させていただきます。 スマートファクトリー経営部会では、最新の製造業DX事例の勉強会を隔月でおこなっております。製造業経営者を中心に、製造業におけるDXを学ぶ会となっております。無料お試し参加をご希望の方は、以下のURLをご確認ください。 スマートファクトリー経営部会の詳細はこちら   電気ヒーター専門メーカーのシンワバネス様(従業員70名)は、技術者不足とキーマン退職による納期遅延という危機に対し、AIチャットボット導入を中心としたDXを推進しました。製品情報やノウハウをテキスト化し、RAGシステムとAIを組み合わせたチャットボットを導入。その結果、OJT負担軽減、新人教育支援、ナレッジ検索効率向上といった効果が得られ、年間約414時間の人件費削減にも繋がりました。技術伝承と若手育成にAIが貢献した事例です。 このレポートを読むメリット: 中小製造業における技術伝承の具体的な方法が学べます。 AIチャットボット導入による業務改善と効率化のヒントが得られます。 若手技術者の早期育成を実現するためのステップが理解できます。 デジタル技術を活用した組織変革の可能性が発見できます。 シンワバネス様の成功事例から、自社への応用イメージを描けます。 1.技術継承の危機とDX推進の必然性 近年、多くの製造業が共通して抱える課題として、熟練技術者の高齢化や退職による技術伝承の危機が挙げられます。特に中小企業においては、長年培ってきた貴重なノウハウが失われることは、競争力低下に直結する深刻な問題です。今回ご紹介する株式会社シンワバネス様も、まさにこの課題に直面していました。 シンワバネス様は、1978年設立、従業員70名の電気ヒーター専門メーカーであり、半導体製造装置に使われるヒーターなどの設計・開発を請け負うファブレスメーカーです。受注のほぼ100%がオーダーメイド製品であり、顧客の要望を共に考え、設計から携わる点が強みです。しかしながら、2021年度にキーマンが退職したことにより、一時的に業務が回らなくなるという事態が発生しました。 設計期間の長期化は納期遅延を招き、顧客からの信用失墜という危機的な状況に陥りました。この状況を打開するため、人員の増強や補充が行われましたが、結果として新入社員の割合が増加し、教育という新たな課題が生じ、生産性の悪化を招きました。 このような背景から、シンワバネス様は、特定の専任者に依存しない体制づくり、すなわち退職リスクの回避と、経験の浅いメンバーを早期に戦力化するための効率的な教育システムの構築が急務となりました。そこで着目されたのが、デジタル技術を活用した変革、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進でした。 2.シンワバネス様の事業概要と抱えていた課題 改めて、株式会社シンワバネス様の事業概要と、DX推進に至るまでの具体的な課題についてご説明いたします。 シンワバネス様は、東京都品川区に本社を構え、資本金3,000万円、代表取締役社長は新井昇様です。工業用ヒーターを主力製品とし、主に半導体製造装置向けの熱源を設計・開発、委託製造し販売する事業を展開されています。センサー、治工具、素材、コントロールBOXなどの関連製品も扱っており、顧客の細かなニーズに応えるオーダーメイド製品の提供が大きな特徴です。 このような事業を展開される中で、シンワバネス様は、2018年度の新事業立ち上げに伴う人員異動、そして2021年度のキーマンの退職という二つの大きな出来事に直面しました。これらの出来事は、設計期間の長期化、納期遅延、そして顧客からの信用失墜という一連の負の連鎖を引き起こしました。 さらに、市場の拡大と成長に伴い、組織体制の強化として新たな社員を採用する機会が増えましたが、その都度、新入社員の教育が大きな課題となりました。過去10年間で3年ごとに社員の増減が大きく変化しており、新入社員が増えるたびに、その教育に多くの時間と労力が割かれていたのです。 また、特定の経験豊富な社員に業務が集中しがちな状況は、その社員が不在になった際のリスクを高めます。業務のシェア方法や継続性の確保も重要な課題として認識されていました。これらの課題を解決し、持続的な成長を実現するため、シンワバネス様は抜本的な対策としてDXの推進を検討し始めたのです。 3.AIチャットボット導入による技術伝承と業務効率化 株式会社シンワバネス様が課題解決のために具体的に取り組んだのが、AI(チャットボット)の導入による技術伝承と業務効率化でした。当時、世界的に話題となっていたChatGPT3.5の登場が、対話型AIの可能性に着目するきっかけとなりました。 シンワバネス様は、DXの取り組みを以下の3つの段階で捉え、推進しました。 アナログ→デジタル化(デジタイゼーション) テクノロジーによる業務改善(デジタライゼーション) 組織変革と価値創出 (デジタルトランスフォーメーション) まず、デジタイゼーションとして、製品の基本構造、仕様、スペックなどの情報、設計工程や社内業務プロセス、そして設計ノウハウやヒヤリハット事例などをテキストデータとして蓄積しました。これにより、頭の中にあった見えない情報が可視化され、業務の流れが明確になり、入社教育の資料としても活用できる基盤が整備されました。 次に、デジタライゼーションとして、「RAG(Retrieval-Augmented Generation)システム」と「AI」を組み合わせた、設計業務に特化したAIチャットボットの導入に踏み切りました。RAGシステムとは、自社の業務文書や規定などの社内情報、さらには外部の最新情報を活用し、質問内容に合致する外部データを検索して情報を抽出し、それに基づいてAIが回答を生成する仕組みです。 当時、「RAG」という言葉自体を知らなかったシンワバネス様は、生成AIが社内リソースを参照して対応できる仕組みが必ずあると考え、サービスを提供している企業の調査を開始しました。その結果、RAGを用いたAIシステムであれば、同社が実現したいことが可能であると確信し、AIチャットボットの導入を決定しました。 2023年8月に社内稟議を経て、9月にはシステム契約と準備を開始し、わずか1ヶ月後の10月には運用を開始するという、驚異的なスピードで導入を実現しました。運用開始前の主な準備作業としては、社内リソースのテキストデータ化(当時は画像認識機能がなかったため、徹底的にテキストで表現)と、カテゴリ別に「質問」と「答え」のデータセットを10組準備することでした。社内にある情報の所在、業務に必要な情報、判断基準、ルール化の有無、仕事のインプットとアウトプットなど、詳細な情報を収集・整理し、技術者の頭の中にある情報や技術をテキスト化する作業が行われました。 運用開始当初は50ファイルだったRAG用のリソースも、現在では300ファイルまで拡充されています。 4.AI導入の効果 AIチャットボットの導入は、株式会社シンワバネス様に多岐にわたる効果をもたらしました。 まず、新入社員の「わからない…」を補える環境が構築できたことが挙げられます。周囲のメンバーが忙しい状況でも、「いつでも聞ける」環境が実現し、新入社員は気兼ねなく質問し、必要な情報を迅速に得られるようになりました。 また、社内ナレッジを探す手間が省けるようになったことも大きな効果です。必要な情報をAIが自動的に引き出してくれるため、従業員は情報検索にかける時間を大幅に削減し、本来の業務に集中できるようになりました।回答速度が速いため、テンポよく業務を進められるようになったという声も聞かれます。 定量的な効果としては、2024年の年間応答回数が6,850回に達しています。1応答あたり、OJTで応対する平均的な時間を10分と仮定すると、年間で約414時間の削減効果があったと試算できます。仮に利用者一人当たりの時間単価を3,000円とした場合、年間約124万2,000円の人件費削減効果があったことになります。 さらに、業務に付随する対応の幅が広がったことも見逃せない効果です。例えば、翻訳作業の効率化や、プログラミングによる自動化など、AIの活用によって新たな業務効率化の可能性が生まれています。 管理者側から見ても、OJTの負担軽減や、情報・技術の継承に対する安心感といったメリットが得られています。ユーザー側からは、「いつでも気兼ねなく聞ける」「質問しても怒られたり、嫌な顔をされない」といった心理的な安心感も得られているようです。 このように、AIチャットボットの導入は、シンワバネス様において、若手育成の加速、ナレッジ共有の促進、業務効率の大幅な向上、そしてコスト削減という顕著な効果をもたらしました。 5.中小製造業におけるAI活用の可能性と今後の展望 株式会社シンワバネス様の事例は、中小製造業においてもAIを積極的に活用することで、様々な課題を解決できる可能性を示唆しています。 シンワバネス様は、今後、AI活用スキルを標準スキルとすることを目指しており、エージェントAIやAGI(汎用人工知能)の進化にも注目し、実用性の向上、コスト低減、日常アプリへの浸透といった潮流を見据えています。 今回の事例を通じて、中小製造業がDXを推進する上で重要なポイントは、以下の3点であると考えられます。 明確な課題認識:なぜDXを推進する必要があるのか、具体的な課題を明確にすること。 自社に合ったDXの検討と取り組み:課題解決に向けて、どのようなDXが自社に必要なのかを検討し、具体的な取り組みを実行すること。 スモールスタートと迅速な実行: 大規模な投資を伴うことなく、まずは小さく始め、効果検証を行いながら改善を進めていくこと。シンワバネス様の事例のように、わずか1ヶ月で社内運用を開始したスピード感は、中小企業にとって非常に参考になるでしょう。 技術者不足は多くの製造業にとって深刻な課題ですが、AIをはじめとするデジタル技術を賢く活用することで、人材育成を加速させ、技術伝承を確実なものとし、ひいては企業の持続的な成長に繋げることが可能です。

「現場が使える基幹生産システム」 導入成功要因を徹底解説!

2025.04.28

1.事例企業様の概要 【食品加工製造業 F社様】 ■所在地:静岡県 ■従業員数:約 120 名 ■事業内容:食材、食品包材の製造・販売 F社様は、現状のアナログ手法での業務内容について、将来を見据えたシステム化を推進し、自分たちが使えるシステムの導入に成功いたしました。そんなF社様が社内の反対意見など様々な阻害要因を乗り越えて「基幹システム」を導入した事例をご紹介いたします。 2.現場任せの調達/属人化/原価が見えづらい/過酷な実棚作業 これまでF社様では、原価軽減の為の一括仕入れを実施していましたが、「リアルタイムでの原価実態が不明確」、「現場任せの調達により在庫が膨らむ」、「過酷な環境(冷凍庫内)での実棚作業」といった課題があり、基幹システム導入を決断されます。   そして、基幹システム導入を行う上で、最も重要である、目的/コンセプトを下記のように掲げ、基幹システム導入を進めます。 ■目的 「属人化の排除と生産性向上を推進し、持続可能な事業とする」 ⇒ 受発注業務、原価・在庫管理、商品トレースなどシステムで一元管理 ⇒ 在庫管理、棚卸しの時間短縮等による間接コスト削減と生産性改善 ⇒ 事務経理処理においての二重三重の業務を排除 ■コンセプト ・パッケージシステムに業務を合わせる。【1つのツールに統一する】 ・経営者を交えたプロジェクトメンバーを中心に全社で推進する。【経営者が俯瞰的にプロジェクトをみることで業務の棚卸を実施できる】 ・新業務開始にあたり時流に則ったルールを明確にしてこれを遵守する。【事務職の在り方・リモートの導入】  上記コンセプトを社長に宣言していただくことによって、「標準システム以外使用しない(パッケージに業務を合わせる)」、「追加開発をしない」、「運用を変更しないということはしない」、「同じものを2度入力しない」という、プロジェクトルールの徹底化がなされました。つまり、『パッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』、ということです。 また、今回はMicrosoft社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを選択し、導入を進めていきました 3.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、原価の可視化、脱属人化、効率化を達成  前述のような課題が顕在化していた中で、F社様では Microsoft 社の『Dynamics 365 BusinessCentral』というパッケージ基幹システムを導入し、「データの一元管理」「業務データの可視化」「実棚卸回数の削減」を実現されました。 1)Dynamics導入後の効果 ①日々の生産実績計上は職人による手書きメモレベルにて管理されていた ⇒Dynamicsにより、データが一元化され、生産現場と管理部リモート作業での連携を実現。 作業時間=40時間→20時間へ(月) ②生産実績のロット管理(商品トレース)が行えていなかった ⇒Dynamics標準のロット管理機能により、出荷製品からの商品トレースを実現した。更に新チャネルへの販売戦略にも挑戦できるようになった。 ③歩留り集計、棚卸作業については、エクセル、紙による手作業で行っていた ⇒Dynamicsにより、歩留り集計作業が自動化され、実棚卸作業も回数を減らす。 歩留り集計=半年に1回→毎月実施(リアルタイム) 実棚卸回数=毎月実施→2か月1回に変更 ※今後、理論在庫の精度向上により更に減らすことも視野に ④会計ソフトへの入力作業完了まで時間がかかっていた ⇒Dynamicsにより会計データの集計出力を行い、会計ソフトへ取り込むことで、作業効率化を実現した。 作業時間=40時間→20時間(月)へ50%削減 2)現在進行中の取り組み 【Dynamicsへ蓄積されるデータを分析活用】 ・集計作業時間を削減⇒考える時間に置き換える【調達方法の改善】 ・データを取る(エクセル汎用性)⇒有効在庫を基に販売促進への企画 ・根拠ある値決めの実行 【システム汎用性が高い特性を活かし、他事業部への導入を進める】 ・現在、他事業部への導入が進行中 ⇒今後の売上増に耐えるための管理体制を築く ・将来的な販売戦略拡大に繋げる 【各種入力作業の標準化】 ・リモート作業者へ入力作業を集約する ⇒既存人員での売上最大化へ   3)成果に繋がったポイント  前述のように今回の基幹システム導入において、成果に繋がった最大のポイントは、『業務をパッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』を徹底されたことです。  システムを導入するにあたって非常に大事なポイントであり、目的/目標にもあった、属人化・効率化を達成するためにも、とても重要なことです。ただし、これは宣言をすればそのように進むということではなく、常に導入のポイントポイントでキーマン(本プロジェクトでは社長)の指示が的確になされていたことを意味します。これにより現場メンバーが判断に迷うことなく、正しい導入に進むことができました。 4)さいごに  基幹システムの導入において、なぜ成功しないのか?というお声をよく耳にします。それは、システムをプロダクトとして導入するだけで業務整理を実施しない、カスタマイズを実施してしまっていて属人化したシステムになってしまっている、入力ルールがバラバラなので活用できるデータになってない、などが挙げられると思います。  このような状態になってしまっていると「使えていないシステム」が日々の業務に寄り添ってしまいます。データを正しく一元管理させ、業務にシステムを合わせるのではなく、システムに業務を合わせるスタンスがいかに大事であるか、「現場が使えるシステム」こそ、本当に導入を果たしたシステムであるということを本事例にて、お伝えさせていただきました。 製造業 基幹システム導入 成功事例連発セミナー 【特別ゲスト講座】 多品種少量生産製造業 基幹システム導入による生産性アップの成功事例を大公開! 基幹システム導入を通じて「業務の統合一元管理」「脱・縦割り組織」「業務データの見える化」を実現! バラバラなシステムを一元管理することで二重三重業務を排除! 散在するExcel・紙伝票管理から脱却し高生産性を実現! 脱属人化を推進!「熟練者頼みの伝票作成業務」の自動化を実現!  指示書作成業務を「1件あたり1時間」から「1件あたり10分」へ大幅短縮! 手書きの紙の日報を廃止!タブレット端末へ直接データ入力&基幹システムへ自動連携!二度手間・二重入力を排除! 基幹システム上で在庫一覧データをボタン1つで即座に確認できる仕組みを構築! 基幹システム導入と併せて業務改革を実行!月300万円以上の大幅コストダウンを実現! 基幹システム導入をきっかけに「営業活動の見える化」を実現! 基幹システム導入をきっかけに「工程管理・生産管理等のムダ」を大幅に削減! 基幹システム導入をきっかけに「製品個別の原価管理」を実践! 手作業で行っていた社内会議資料の作成をボタン1つで自動作成! 基幹システム導入と併せて業務の運用ルールを適正化!ムダな業務を大幅削減! 1.事例企業様の概要 【食品加工製造業 F社様】 ■所在地:静岡県 ■従業員数:約 120 名 ■事業内容:食材、食品包材の製造・販売 F社様は、現状のアナログ手法での業務内容について、将来を見据えたシステム化を推進し、自分たちが使えるシステムの導入に成功いたしました。そんなF社様が社内の反対意見など様々な阻害要因を乗り越えて「基幹システム」を導入した事例をご紹介いたします。 2.現場任せの調達/属人化/原価が見えづらい/過酷な実棚作業 これまでF社様では、原価軽減の為の一括仕入れを実施していましたが、「リアルタイムでの原価実態が不明確」、「現場任せの調達により在庫が膨らむ」、「過酷な環境(冷凍庫内)での実棚作業」といった課題があり、基幹システム導入を決断されます。   そして、基幹システム導入を行う上で、最も重要である、目的/コンセプトを下記のように掲げ、基幹システム導入を進めます。 ■目的 「属人化の排除と生産性向上を推進し、持続可能な事業とする」 ⇒ 受発注業務、原価・在庫管理、商品トレースなどシステムで一元管理 ⇒ 在庫管理、棚卸しの時間短縮等による間接コスト削減と生産性改善 ⇒ 事務経理処理においての二重三重の業務を排除 ■コンセプト ・パッケージシステムに業務を合わせる。【1つのツールに統一する】 ・経営者を交えたプロジェクトメンバーを中心に全社で推進する。【経営者が俯瞰的にプロジェクトをみることで業務の棚卸を実施できる】 ・新業務開始にあたり時流に則ったルールを明確にしてこれを遵守する。【事務職の在り方・リモートの導入】  上記コンセプトを社長に宣言していただくことによって、「標準システム以外使用しない(パッケージに業務を合わせる)」、「追加開発をしない」、「運用を変更しないということはしない」、「同じものを2度入力しない」という、プロジェクトルールの徹底化がなされました。つまり、『パッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』、ということです。 また、今回はMicrosoft社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを選択し、導入を進めていきました 3.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、原価の可視化、脱属人化、効率化を達成  前述のような課題が顕在化していた中で、F社様では Microsoft 社の『Dynamics 365 BusinessCentral』というパッケージ基幹システムを導入し、「データの一元管理」「業務データの可視化」「実棚卸回数の削減」を実現されました。 1)Dynamics導入後の効果 ①日々の生産実績計上は職人による手書きメモレベルにて管理されていた ⇒Dynamicsにより、データが一元化され、生産現場と管理部リモート作業での連携を実現。 作業時間=40時間→20時間へ(月) ②生産実績のロット管理(商品トレース)が行えていなかった ⇒Dynamics標準のロット管理機能により、出荷製品からの商品トレースを実現した。更に新チャネルへの販売戦略にも挑戦できるようになった。 ③歩留り集計、棚卸作業については、エクセル、紙による手作業で行っていた ⇒Dynamicsにより、歩留り集計作業が自動化され、実棚卸作業も回数を減らす。 歩留り集計=半年に1回→毎月実施(リアルタイム) 実棚卸回数=毎月実施→2か月1回に変更 ※今後、理論在庫の精度向上により更に減らすことも視野に ④会計ソフトへの入力作業完了まで時間がかかっていた ⇒Dynamicsにより会計データの集計出力を行い、会計ソフトへ取り込むことで、作業効率化を実現した。 作業時間=40時間→20時間(月)へ50%削減 2)現在進行中の取り組み 【Dynamicsへ蓄積されるデータを分析活用】 ・集計作業時間を削減⇒考える時間に置き換える【調達方法の改善】 ・データを取る(エクセル汎用性)⇒有効在庫を基に販売促進への企画 ・根拠ある値決めの実行 【システム汎用性が高い特性を活かし、他事業部への導入を進める】 ・現在、他事業部への導入が進行中 ⇒今後の売上増に耐えるための管理体制を築く ・将来的な販売戦略拡大に繋げる 【各種入力作業の標準化】 ・リモート作業者へ入力作業を集約する ⇒既存人員での売上最大化へ   3)成果に繋がったポイント  前述のように今回の基幹システム導入において、成果に繋がった最大のポイントは、『業務をパッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』を徹底されたことです。  システムを導入するにあたって非常に大事なポイントであり、目的/目標にもあった、属人化・効率化を達成するためにも、とても重要なことです。ただし、これは宣言をすればそのように進むということではなく、常に導入のポイントポイントでキーマン(本プロジェクトでは社長)の指示が的確になされていたことを意味します。これにより現場メンバーが判断に迷うことなく、正しい導入に進むことができました。 4)さいごに  基幹システムの導入において、なぜ成功しないのか?というお声をよく耳にします。それは、システムをプロダクトとして導入するだけで業務整理を実施しない、カスタマイズを実施してしまっていて属人化したシステムになってしまっている、入力ルールがバラバラなので活用できるデータになってない、などが挙げられると思います。  このような状態になってしまっていると「使えていないシステム」が日々の業務に寄り添ってしまいます。データを正しく一元管理させ、業務にシステムを合わせるのではなく、システムに業務を合わせるスタンスがいかに大事であるか、「現場が使えるシステム」こそ、本当に導入を果たしたシステムであるということを本事例にて、お伝えさせていただきました。 製造業 基幹システム導入 成功事例連発セミナー 【特別ゲスト講座】 多品種少量生産製造業 基幹システム導入による生産性アップの成功事例を大公開! 基幹システム導入を通じて「業務の統合一元管理」「脱・縦割り組織」「業務データの見える化」を実現! バラバラなシステムを一元管理することで二重三重業務を排除! 散在するExcel・紙伝票管理から脱却し高生産性を実現! 脱属人化を推進!「熟練者頼みの伝票作成業務」の自動化を実現!  指示書作成業務を「1件あたり1時間」から「1件あたり10分」へ大幅短縮! 手書きの紙の日報を廃止!タブレット端末へ直接データ入力&基幹システムへ自動連携!二度手間・二重入力を排除! 基幹システム上で在庫一覧データをボタン1つで即座に確認できる仕組みを構築! 基幹システム導入と併せて業務改革を実行!月300万円以上の大幅コストダウンを実現! 基幹システム導入をきっかけに「営業活動の見える化」を実現! 基幹システム導入をきっかけに「工程管理・生産管理等のムダ」を大幅に削減! 基幹システム導入をきっかけに「製品個別の原価管理」を実践! 手作業で行っていた社内会議資料の作成をボタン1つで自動作成! 基幹システム導入と併せて業務の運用ルールを適正化!ムダな業務を大幅削減!

IoT・エッジコンピューティング展から見る最新DXのトレンドとは?

2025.04.28

みなさま、こんにちは! 先日開催されたIoT・エッジコンピューティングEXPOはご覧になりましたでしょうか。 今年は例年よりも、さらにAIを活用したソリューションが多く出店されていた印象です。 また、海外企業の出展も非常に多く、AI技術の高さを感じました。 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/jy-cost_S045 ● AIの成長は凄まじい! 中でも、画像認識や映像認識のAIは成長が目覚ましく、エッジAIを活用することでデータを即時処理することができ、ハイスピードな作業もリアルタイムで検知が可能になっていました。 これらは製造業においても稼働監視や品質管理・予知保全に大きな効率化メリットがあると考えられます。 ただし、エッジAIは端末上でデータを処理するため、従来のクラウドを利用したAIよりもデータの処理能力は劣ります。 この部分は今後の進化に期待したいところです。 ● IoTも事例がかなり増えている! 今回の展示会ではIoTのハード機器、ソフト共に多く出展されていました。 事例の業種としては製造業から建築、農業と多岐にわたって活用されており、この先もさらに拡大することは間違いありません。 ここからはいくつか実際にお話を聞いた企業をご紹介します。 ■ ソナス株式会社はIoTセンサの設置コストを大幅削減! ソナス株式会社は主にプラント・建築現場の点検や検知をIoTシステムを通じて無線で行うソリューションを展開しています。従来はセンサの設置には大幅なコストがかかっていましたが、ソナス株式会社では設置工事時間が従来の1/18まで削減。また、UNISONetを活用すると消費電力はWi-Fiと比べて年間で1/10以下に抑えられるとのことでした。ついにIoT機器もここまで身近になったか、と衝撃を受けました。 センサから取得できる情報は振動・傾斜・接点・BLEと多岐にわたり、製造業で活用できる内容も多くあり、実際に工場に導入された実績もありました。 従来はIoTツール導入というと高額なイメージがありましたが、どんどん低コストのツールが出てきています。中堅・中小が手軽に手を伸ばせるようになるのも時間の問題でしょう。 ■ 株式会社Braveridgeは企画構想から製造・回線・プラットフォームまでIoT周りを一気通貫で提供! 株式会社Braveridgeは自社工場を持ち、ハードウェアの製造・販売を行っており、企画・開発・量産・販売までワンストップで行っています。また、そのハードウェアを活用するためのクラウドのプラットフォームも提供することでスピード感を一気に加速。顧客のニーズにマッチしたソリューションを展開しています。 センサの種類は非常に多く、農業・製造業・公共インフラなど活用事例は多岐にわたります。 また、給電方法も選択可能で、設置もワンタッチ・ペアリングもワンタッチとありがたいポイントもばっちりです。 ■ 株式会社コシダテックは自社クラウドサービスで遠隔監視・遠隔運用IoTに特化! 株式会社コシダテックでは20年近く前から独自のサービス基盤を構築・運用しており、現在は「クラウドサービスGENES」へと進化を遂げ、遠隔監視や遠隔運用、映像配信に特化しました。生産現場でのメータ点検ではAIを搭載したシステムを導入し、リアルタイム異常検知を行うことで夜間の運用も可能に。 また、RFIDを活用した在庫管理など、今後の製造業では必ず大きなニーズとなる部分も網羅している印象です。 ■ 株式会社トップシステムプロダクツでは生産管理のオールインパッケージが驚きの低価格! 少しIoTとはずれますが、私が今回一番驚いたのは株式会社トップシステムプロダクツの生産管理パッケージです。 このシステムは従来の見積から会計管理までオールインで搭載されているうえに、新たに類似図面検索・EDI取込・文書検索・スキャン取込が標準機能として搭載されるそうです。そしてその価格は予想をはるかに下回るもので、驚愕しました。(ここでは費用感は言えませんが。。) 現在は数多くの生産管理パッケージが各企業からリリースされていますが、この機能量でこの価格は今後中小製造業にとって心強いものになること間違いなしでしょう。 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/smart-factory_smart-factory_02507_S045?media=smart-factory_S045 ● まとめ IoT・エッジコンピューティングEXPOに行って感じたことは、「AIの成長スピードがとてつもない」ということです。思い返し見ると、生成AIにおいてもおととしの今頃はまだまだハルシネーションが多く、画像・映像生成はネタにされるほどでした。しかし今はぱっと見では実際の映像かAIが生成した映像か判別がつかないほどになっています。 製造業にもAI活用の波は確実に広まっており、今後もさらに拡大することは間違いありません。見積業務や図面・文書管理など、データ化できる部分がAIに置き換わり、効率化されるのは時間の問題でしょう。 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/smart-factory_smart-factory_03546_S045?media=smart-factory_S045     https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html?siteno=S045 みなさま、こんにちは! 先日開催されたIoT・エッジコンピューティングEXPOはご覧になりましたでしょうか。 今年は例年よりも、さらにAIを活用したソリューションが多く出店されていた印象です。 また、海外企業の出展も非常に多く、AI技術の高さを感じました。 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/jy-cost_S045 ● AIの成長は凄まじい! 中でも、画像認識や映像認識のAIは成長が目覚ましく、エッジAIを活用することでデータを即時処理することができ、ハイスピードな作業もリアルタイムで検知が可能になっていました。 これらは製造業においても稼働監視や品質管理・予知保全に大きな効率化メリットがあると考えられます。 ただし、エッジAIは端末上でデータを処理するため、従来のクラウドを利用したAIよりもデータの処理能力は劣ります。 この部分は今後の進化に期待したいところです。 ● IoTも事例がかなり増えている! 今回の展示会ではIoTのハード機器、ソフト共に多く出展されていました。 事例の業種としては製造業から建築、農業と多岐にわたって活用されており、この先もさらに拡大することは間違いありません。 ここからはいくつか実際にお話を聞いた企業をご紹介します。 ■ ソナス株式会社はIoTセンサの設置コストを大幅削減! ソナス株式会社は主にプラント・建築現場の点検や検知をIoTシステムを通じて無線で行うソリューションを展開しています。従来はセンサの設置には大幅なコストがかかっていましたが、ソナス株式会社では設置工事時間が従来の1/18まで削減。また、UNISONetを活用すると消費電力はWi-Fiと比べて年間で1/10以下に抑えられるとのことでした。ついにIoT機器もここまで身近になったか、と衝撃を受けました。 センサから取得できる情報は振動・傾斜・接点・BLEと多岐にわたり、製造業で活用できる内容も多くあり、実際に工場に導入された実績もありました。 従来はIoTツール導入というと高額なイメージがありましたが、どんどん低コストのツールが出てきています。中堅・中小が手軽に手を伸ばせるようになるのも時間の問題でしょう。 ■ 株式会社Braveridgeは企画構想から製造・回線・プラットフォームまでIoT周りを一気通貫で提供! 株式会社Braveridgeは自社工場を持ち、ハードウェアの製造・販売を行っており、企画・開発・量産・販売までワンストップで行っています。また、そのハードウェアを活用するためのクラウドのプラットフォームも提供することでスピード感を一気に加速。顧客のニーズにマッチしたソリューションを展開しています。 センサの種類は非常に多く、農業・製造業・公共インフラなど活用事例は多岐にわたります。 また、給電方法も選択可能で、設置もワンタッチ・ペアリングもワンタッチとありがたいポイントもばっちりです。 ■ 株式会社コシダテックは自社クラウドサービスで遠隔監視・遠隔運用IoTに特化! 株式会社コシダテックでは20年近く前から独自のサービス基盤を構築・運用しており、現在は「クラウドサービスGENES」へと進化を遂げ、遠隔監視や遠隔運用、映像配信に特化しました。生産現場でのメータ点検ではAIを搭載したシステムを導入し、リアルタイム異常検知を行うことで夜間の運用も可能に。 また、RFIDを活用した在庫管理など、今後の製造業では必ず大きなニーズとなる部分も網羅している印象です。 ■ 株式会社トップシステムプロダクツでは生産管理のオールインパッケージが驚きの低価格! 少しIoTとはずれますが、私が今回一番驚いたのは株式会社トップシステムプロダクツの生産管理パッケージです。 このシステムは従来の見積から会計管理までオールインで搭載されているうえに、新たに類似図面検索・EDI取込・文書検索・スキャン取込が標準機能として搭載されるそうです。そしてその価格は予想をはるかに下回るもので、驚愕しました。(ここでは費用感は言えませんが。。) 現在は数多くの生産管理パッケージが各企業からリリースされていますが、この機能量でこの価格は今後中小製造業にとって心強いものになること間違いなしでしょう。 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/smart-factory_smart-factory_02507_S045?media=smart-factory_S045 ● まとめ IoT・エッジコンピューティングEXPOに行って感じたことは、「AIの成長スピードがとてつもない」ということです。思い返し見ると、生成AIにおいてもおととしの今頃はまだまだハルシネーションが多く、画像・映像生成はネタにされるほどでした。しかし今はぱっと見では実際の映像かAIが生成した映像か判別がつかないほどになっています。 製造業にもAI活用の波は確実に広まっており、今後もさらに拡大することは間違いありません。見積業務や図面・文書管理など、データ化できる部分がAIに置き換わり、効率化されるのは時間の問題でしょう。 https://www.funaisoken.co.jp/dl-contents/smart-factory_smart-factory_03546_S045?media=smart-factory_S045     https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html?siteno=S045

初期投資0、営業1名で4年8億円達成! 商社のFA事業参入!「専門家連携」で実現する高収益戦略

2025.04.28

【このコラムをお勧めしたい経営者のイメージ】 既存事業に加えて、新たな成長エンジンとしてFA事業への参入を検討されている経営者様 FAの専門知識不足を理由に、有望な市場への参入を躊躇されている経営者様 リスクを最小限に抑え、効率的に新規事業を立ち上げたいとお考えの経営者様 顧客の経営課題解決に貢献し、高付加価値・高単価なビジネスモデルを構築したい経営者様 外部の専門家やネットワークを戦略的に活用し、自社の事業成長を加速させたい経営者様 本コラムでは、生産財商社や機械工具商社がFA(ファクトリーオートメーション)事業に新規参入し、高単価受注を実現するための具体的な戦略「専門家連携モデル」を解説します。多くの商社が直面する技術・投資・人材の壁を乗り越え、「初期投資0・営業1名」というリーンな体制でも成功を収めた専門商社A社の事例を基に、その再現性のある手法を紐解きます。FA市場の現状と商社の勝機、連携モデルの具体的な仕組み、そして顧客の潜在ニーズを引き出し高単価受注に繋げるための「キーエンス流」アプローチ(課題発見力×専門家連携)まで、明日から実践できるヒントを満載してお届けします。貴社の新たな成長戦略を描くための一助となれば幸いです。 【このコラムを読むメリット】 このコラムをお読みいただくことで、なぜ今FA事業が商社にとって魅力的な成長市場であり、戦略的に取り組むべき分野なのかを深くご理解いただけます。同時に、多くの企業が陥りがちなFA事業参入の障壁と、それを乗り越えるための極めて効果的な「専門家連携モデル」という具体的な手法を知ることができます。専門知識や多額の初期投資が無くとも、既存の顧客接点という強みを最大限に活かし、外部の専門家と連携することで、高単価なソリューション提案が可能になるメカニズムを学べます。さらに、実際にこのモデルで4年8億円を達成した企業のリアルな事例や、顧客の潜在ニーズを掴むための具体的な質問例を通じて、商社がFA事業を成功させるための実践的な行動計画を描くことが可能になります。 1:なぜ今、商社はFA事業に参入すべきなのか? ~市場機会と戦略的必要性~ 昨今、日本の製造業は、深刻な人手不足、生産性の伸び悩み、熟練技術者の高齢化といった構造的な課題に直面しています。このような状況下で、製造現場の自動化・省人化・効率化を実現するFA(ファクトリーオートメーション)への投資意欲は、かつてないほど高まっています。特に、協働ロボットやIoT、AIといった技術の進化は、これまで自動化が難しかった領域への適用を可能にし、市場は今後も着実な成長が見込まれます。 では、なぜこの成長市場が、商社である貴社にとって大きなチャンスとなるのでしょうか?それは、商社が持つ「顧客との強固な関係性」と「現場へのアクセス頻度」という、他の業態にはない強力な武器を持っているからです。多くの商社様は、日々の営業活動を通じて、顧客である製造業の現場担当者や経営層と密接なコミュニケーションを取られています。これは、単に製品を納入するだけでなく、顧客が抱える潜在的な課題やニーズを直接見聞きできる、またとない機会です。 しかしながら、FA事業への参入には「技術・ノウハウの壁」「初期投資リスクの壁」「専門人材の壁」が存在することも事実です。これらの壁を前に、多くの商社様が参入を躊躇されたり、思うような成果を上げられずにいたりする現状も、私たちは数多く目の当たりにしてきました。 だからこそ、私たちは声を大にしてお伝えしたいのです。FA事業への参入は、もはや単なる新規事業の選択肢の一つではありません。顧客の課題解決に深く貢献し、自社の提供価値を高め、持続的な成長を実現するための「戦略的必然」である、と。そして、その参入障壁を乗り越え、成功を掴むための鍵こそが、次章で詳述する「専門家連携モデル」なのです。 2:「初期投資0・営業1名」を可能にする「専門家連携モデル」とは? FA事業参入における技術・投資・人材の壁を乗り越え、「初期投資0・営業1名」という体制での成功を可能にする戦略。それが「専門家連携モデル」です。これは、自社ですべてを賄う「自前主義」から脱却し、外部の専門家や技術パートナーの力を戦略的に活用することで、商社本来の強みを最大限に活かすビジネスモデルと言えます。 このモデルにおける登場人物とその役割は、以下の通りです。 商社: 主役であり、プロジェクトのハブとなります。最大の武器である「顧客接点」を活かし、FA化に繋がる可能性のある顧客の課題やニーズを発掘します(案件発掘・窓口)。掴んだ情報を専門家パートナーに連携し、専門家が作成した構想やパートナーSIerからの見積もりを顧客に提示し、商流を管理します(見積提示・商流管理)。必要な専門知識や構想策定支援は、専門家パートナーに協力を依頼し、適切な対価でその知見を活用します。案件が成功した際には、成果に応じた形で連携の価値を共有することで、パートナーとの強固な関係を築きます。 専門家パートナー: 商社からの要請に基づき、豊富な知見と分析力で最適なFA化構想を作成します(専門的コンサルティング・企画)。構想実現に最適な技術パートナー(SIer)を自社のネットワークから紹介します(パートナーネットワーク提供)。また、補助金活用など、案件化を後押しする付加価値情報も提供します。その貢献に対して、商社と合意した形で価値を得ることで、継続的なサポート体制を維持します。 技術パートナー(SIer): 専門家や商社を通じて、具体的な案件情報を得ます。専門家が描いた構想に基づき、詳細な技術検討、システム設計、そして見積もり作成(商社に対して)を行います(技術提供・実行部隊)。受注後は、FAシステムの構築・導入・保守といった実務を担当します。 このモデルでは、商社はに関する高度な技術知識や開発能力、専門人材を自社で抱える必要がありません。必要な時に、必要な分だけ、外部の専門家の「頭脳」とSIerの「実行力」を活用するのです。これにより、初期投資を限りなくゼロに近づけ、営業担当者は顧客との関係構築と課題発見、そして連携のハブ役に集中できるため、「営業1名」でも高効率な事業展開が可能になります。まさに、商社の強みを活かし、弱みを補う、合理的な戦略と言えるでしょう。 3:【事例研究】愛知県の専門商社A社は、いかにして4年8億円を達成したのか? 「専門家連携モデル」が絵に描いた餅ではなく、実際に大きな成果を上げている事例をご紹介します。愛知県に本社を置く専門商社A社は、まさにこのモデルを活用し、営業1名体制、そして実質的な初期投資ゼロでFA事業に参入。4年間で累計8億円もの高単価なFAソリューション案件を受注するという、目覚ましい成果を上げられています。 A社の社長は、既存事業に加え、顧客である製造業の人手不足や生産性向上といった課題解決への貢献を強く意識し、FA事業への参入を決断されました。しかし、当初は社内にFAの専門知識も技術者もいない状態。そこで着目されたのが、外部の専門家との連携でした。 A社の具体的な取り組みは、以下のステップで進められました。 課題発見と連携: まず、既存顧客との日々のコミュニケーションの中で、生産現場の困りごと(「この作業が大変」「人手が足りない」など)に注意深く耳を傾けました。そして、FA化に繋がりそうな「種」を見つけると、技術的な詳細には踏み込まず、まずは「顧客が何に困っていて、どうなりたいのか」という情報を持って、連携先の専門家に相談しました。 構想策定とパートナー選定: 専門家は、その情報をもとに顧客を訪問(時にはA社の営業担当者と同行)。現場を診断し、具体的なFA化構想と投資対効果(ROI)を策定しました。さらに、その構想を実現するのに最適な技術を持つSIerを、専門家のネットワークの中から選定し、A社に紹介しました。 提案と受注: A社は、専門家が作成した構想と、紹介されたSIerからの見積もりをもとに、自信を持って顧客に課題解決策を提案。専門家による裏付けと具体的な効果試算により、説得力のある提案となり、競合との価格競争に陥ることなく、高単価での受注に成功されました。 実行と展開: 受注後は、SIerがシステム構築・導入を担当。A社は、顧客との窓口役として、またプロジェクト全体のコーディネーターとして、円滑な導入を支援しました。一つの成功体験を基に、同様のモデルで他の顧客への提案も展開し、継続的に大型案件を獲得されていったのです。 このA社の事例は、「専門家連携モデル」が、商社にとってFA事業参入の強力な武器となり得ることを明確に示しています。自社のリソースに限界があっても、外部の力を戦略的に活用することで、大きな成果を上げることが可能なのです。 4:高単価受注の鍵!キーエンス流「課題発見力」×「専門家連携」の実践 専門商社A社の事例からもわかるように、「専門家連携モデル」を成功させる上で最も重要な要素の一つが、商社の営業担当者による「顧客の課題発見力」です。どれだけ強力な専門家やSIerと連携しても、そもそもの案件の「種」を見つけられなければ、モデルは機能しません。 ここで参考にしたいのが、高収益企業として知られるキーエンス社の営業スタイルです。彼らは単に製品を売るのではなく、顧客の工場に入り込み、現場を観察し、鋭い質問を投げかけることで、顧客自身も気づいていないような潜在的な課題を発見し、その解決策を提案することで圧倒的な価値を提供しています。 「専門家連携モデル」を活用する商社も、これと同様のアプローチ、すなわち「コンサルティング営業(課題解決型提案)」を実践することが、高単価受注への鍵となります。 しかし、 「キーエンスのような専門知識がないと無理だ・・・」 と考える必要はありません。 なぜなら、貴社には「専門家パートナー」という強力な存在がいるからです。 貴社に求められるのは、まず顧客の懐に入り込み、課題の「芽」を見つけることです。 そのための具体的なアクションが、 「5つの魔法の質問」 です。 これは、顧客との日常会話の中で、自然な形でFA化に繋がる可能性のあるニーズを引き出すためのシンプルな問いかけです。 「今、工場の中で『人がやるには大変だな』『しんどいな』と感じる作業は、具体的にどんなことですか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:作業負担の軽減 / 労働環境の改善 「最近、『ここは人手が足りないな』『募集してもなかなか人が来ないな』と感じる工程や部署はありますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:人手不足の解消 / 省人化 「もし、今よりもっと生産量を増やせるとしたら、どの工程の能力アップが必要になりますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:生産能力の向上 / ボトルネック解消 「品質面で、『ここの精度が安定しない』『不良が多くて困る』といった課題はありますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:品質改善・安定化 / 不良率削減 「『このデータ、もっと活用できないかな?』『現場の状況がリアルタイムで見えたらいいのに』と思うことはありますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:生産状況の見える化 / データ活用 これらの質問を通じて得られた顧客の「困りごと」や「もっとこうしたい」という生の情報を、たとえそれが断片的であっても、すぐに専門家パートナーに連携する。これが極めて重要です。専門家はその情報(=課題の芽)を基に、深い分析と知見で具体的な解決策(=FA化構想)へと育て上げます。つまり、商社が「課題発見(キーエンス流の入り口)」を担い、専門家が「ソリューション構築(キーエンス流の提案力)」を担う。この連携こそが、商社単独では難しかった高付加価値な提案を可能にするのです。 5:明日から始める!FA事業成功へのファーストステップ さて、FA市場の大きな可能性と、「専門家連携モデル」という具体的な戦略、そして成功事例と実践のポイントをご理解いただけたことと思います。重要なのは、この知識をインプットで終わらせず、実際のアクションに繋げることです。FA事業は、貴社の未来を切り拓く新たな成長エンジンとなる可能性を秘めています。その第一歩を、ぜひ明日から踏み出してください。 では、具体的に何から始めるべきか? 複雑に考える必要はありません。まずは、以下のシンプルなステップで始めてみましょう。 ステップ1:意識を変え、顧客の声に耳を澄ます 明日からの顧客訪問や電話での会話で、少しだけ意識を変えてみてください。単なる製品の受注や納品の話だけでなく、「5つの魔法の質問」を参考に、お客様の工場の「不」(不便、不満、不足、不安)や「もっとこうしたい」という願望に、注意深く耳を傾けてみましょう。「何かお困りごとはありませんか?」という漠然とした問いではなく、具体的な作業や状況について質問することがポイントです。今日紹介した5つの質問は、そのためのきっかけとなるはずです。 ステップ2:小さな「種」を見つけたら、すぐに専門家に相談する 完璧な情報や深い技術知識は不要です。「〇〇作業で人手が足りないらしい」「△△工程の品質が安定しないようだ」「□□のデータ活用に関心があるみたいだ」…このような断片的な情報、顧客のちょっとした一言、それがFA案件に繋がる貴重な「種」となります。重要なのは、その種を自分の中だけで温めておくのではなく、できるだけ早く、信頼できる専門家パートナーに相談することです。「こんな話を聞いたのですが、何か提案の可能性はありますか?」と、気軽に壁打ち相手として活用してください。 ステップ3:専門家と共に、最初の成功体験を創る 専門家は、貴社が掴んだ「種」を基に、具体的な提案の可能性を探ります。必要であれば顧客に同行し、現状分析や構想策定を行います。最適なSIerを紹介し、ROI(投資対効果)を示せる提案資料の作成も支援します。貴社は、そのプロセスに顧客との窓口役・調整役として関わりながら、専門家のノウハウを吸収し、最初の成功体験を共に創り上げていきます。この最初の成功が、貴社のFA事業における自信と実績となり、次の展開への大きな推進力となるでしょう。 FA事業への挑戦は、決して容易な道のりではありません。しかし、適切な戦略と信頼できるパートナーがいれば、必ず乗り越えられます。「専門家連携モデル」は、まさにそのための効果的な処方箋です。 【このコラムを読んだ後に取るべき行動】 本コラムを読み、FA事業への可能性を感じられた商社の経営者様、ご担当者様。最初の一歩は、決して大きなものである必要はありません。 顧客リストの見直しとヒアリング対象の選定: まずは、FA化のニーズがありそうな既存顧客を数社リストアップし、「5つの魔法の質問」を投げかけてみてください。 専門家への相談: 顧客から得られた情報や、貴社が漠然と感じているFA事業への課題・可能性について、私たち専門家(船井総合研究所)にぶつけてみませんか? 初回のご相談は無料です。貴社に最適なFA事業参入・拡大の進め方について、具体的なアドバイスをさせていただきます。 貴社の挑戦を、私たち船井総合研究所が全力でサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。 【お問い合わせはこちら】 https://www.funaisoken.co.jp/solution/maker_smartfactory_703_S045 【このコラムをお勧めしたい経営者のイメージ】 既存事業に加えて、新たな成長エンジンとしてFA事業への参入を検討されている経営者様 FAの専門知識不足を理由に、有望な市場への参入を躊躇されている経営者様 リスクを最小限に抑え、効率的に新規事業を立ち上げたいとお考えの経営者様 顧客の経営課題解決に貢献し、高付加価値・高単価なビジネスモデルを構築したい経営者様 外部の専門家やネットワークを戦略的に活用し、自社の事業成長を加速させたい経営者様 本コラムでは、生産財商社や機械工具商社がFA(ファクトリーオートメーション)事業に新規参入し、高単価受注を実現するための具体的な戦略「専門家連携モデル」を解説します。多くの商社が直面する技術・投資・人材の壁を乗り越え、「初期投資0・営業1名」というリーンな体制でも成功を収めた専門商社A社の事例を基に、その再現性のある手法を紐解きます。FA市場の現状と商社の勝機、連携モデルの具体的な仕組み、そして顧客の潜在ニーズを引き出し高単価受注に繋げるための「キーエンス流」アプローチ(課題発見力×専門家連携)まで、明日から実践できるヒントを満載してお届けします。貴社の新たな成長戦略を描くための一助となれば幸いです。 【このコラムを読むメリット】 このコラムをお読みいただくことで、なぜ今FA事業が商社にとって魅力的な成長市場であり、戦略的に取り組むべき分野なのかを深くご理解いただけます。同時に、多くの企業が陥りがちなFA事業参入の障壁と、それを乗り越えるための極めて効果的な「専門家連携モデル」という具体的な手法を知ることができます。専門知識や多額の初期投資が無くとも、既存の顧客接点という強みを最大限に活かし、外部の専門家と連携することで、高単価なソリューション提案が可能になるメカニズムを学べます。さらに、実際にこのモデルで4年8億円を達成した企業のリアルな事例や、顧客の潜在ニーズを掴むための具体的な質問例を通じて、商社がFA事業を成功させるための実践的な行動計画を描くことが可能になります。 1:なぜ今、商社はFA事業に参入すべきなのか? ~市場機会と戦略的必要性~ 昨今、日本の製造業は、深刻な人手不足、生産性の伸び悩み、熟練技術者の高齢化といった構造的な課題に直面しています。このような状況下で、製造現場の自動化・省人化・効率化を実現するFA(ファクトリーオートメーション)への投資意欲は、かつてないほど高まっています。特に、協働ロボットやIoT、AIといった技術の進化は、これまで自動化が難しかった領域への適用を可能にし、市場は今後も着実な成長が見込まれます。 では、なぜこの成長市場が、商社である貴社にとって大きなチャンスとなるのでしょうか?それは、商社が持つ「顧客との強固な関係性」と「現場へのアクセス頻度」という、他の業態にはない強力な武器を持っているからです。多くの商社様は、日々の営業活動を通じて、顧客である製造業の現場担当者や経営層と密接なコミュニケーションを取られています。これは、単に製品を納入するだけでなく、顧客が抱える潜在的な課題やニーズを直接見聞きできる、またとない機会です。 しかしながら、FA事業への参入には「技術・ノウハウの壁」「初期投資リスクの壁」「専門人材の壁」が存在することも事実です。これらの壁を前に、多くの商社様が参入を躊躇されたり、思うような成果を上げられずにいたりする現状も、私たちは数多く目の当たりにしてきました。 だからこそ、私たちは声を大にしてお伝えしたいのです。FA事業への参入は、もはや単なる新規事業の選択肢の一つではありません。顧客の課題解決に深く貢献し、自社の提供価値を高め、持続的な成長を実現するための「戦略的必然」である、と。そして、その参入障壁を乗り越え、成功を掴むための鍵こそが、次章で詳述する「専門家連携モデル」なのです。 2:「初期投資0・営業1名」を可能にする「専門家連携モデル」とは? FA事業参入における技術・投資・人材の壁を乗り越え、「初期投資0・営業1名」という体制での成功を可能にする戦略。それが「専門家連携モデル」です。これは、自社ですべてを賄う「自前主義」から脱却し、外部の専門家や技術パートナーの力を戦略的に活用することで、商社本来の強みを最大限に活かすビジネスモデルと言えます。 このモデルにおける登場人物とその役割は、以下の通りです。 商社: 主役であり、プロジェクトのハブとなります。最大の武器である「顧客接点」を活かし、FA化に繋がる可能性のある顧客の課題やニーズを発掘します(案件発掘・窓口)。掴んだ情報を専門家パートナーに連携し、専門家が作成した構想やパートナーSIerからの見積もりを顧客に提示し、商流を管理します(見積提示・商流管理)。必要な専門知識や構想策定支援は、専門家パートナーに協力を依頼し、適切な対価でその知見を活用します。案件が成功した際には、成果に応じた形で連携の価値を共有することで、パートナーとの強固な関係を築きます。 専門家パートナー: 商社からの要請に基づき、豊富な知見と分析力で最適なFA化構想を作成します(専門的コンサルティング・企画)。構想実現に最適な技術パートナー(SIer)を自社のネットワークから紹介します(パートナーネットワーク提供)。また、補助金活用など、案件化を後押しする付加価値情報も提供します。その貢献に対して、商社と合意した形で価値を得ることで、継続的なサポート体制を維持します。 技術パートナー(SIer): 専門家や商社を通じて、具体的な案件情報を得ます。専門家が描いた構想に基づき、詳細な技術検討、システム設計、そして見積もり作成(商社に対して)を行います(技術提供・実行部隊)。受注後は、FAシステムの構築・導入・保守といった実務を担当します。 このモデルでは、商社はに関する高度な技術知識や開発能力、専門人材を自社で抱える必要がありません。必要な時に、必要な分だけ、外部の専門家の「頭脳」とSIerの「実行力」を活用するのです。これにより、初期投資を限りなくゼロに近づけ、営業担当者は顧客との関係構築と課題発見、そして連携のハブ役に集中できるため、「営業1名」でも高効率な事業展開が可能になります。まさに、商社の強みを活かし、弱みを補う、合理的な戦略と言えるでしょう。 3:【事例研究】愛知県の専門商社A社は、いかにして4年8億円を達成したのか? 「専門家連携モデル」が絵に描いた餅ではなく、実際に大きな成果を上げている事例をご紹介します。愛知県に本社を置く専門商社A社は、まさにこのモデルを活用し、営業1名体制、そして実質的な初期投資ゼロでFA事業に参入。4年間で累計8億円もの高単価なFAソリューション案件を受注するという、目覚ましい成果を上げられています。 A社の社長は、既存事業に加え、顧客である製造業の人手不足や生産性向上といった課題解決への貢献を強く意識し、FA事業への参入を決断されました。しかし、当初は社内にFAの専門知識も技術者もいない状態。そこで着目されたのが、外部の専門家との連携でした。 A社の具体的な取り組みは、以下のステップで進められました。 課題発見と連携: まず、既存顧客との日々のコミュニケーションの中で、生産現場の困りごと(「この作業が大変」「人手が足りない」など)に注意深く耳を傾けました。そして、FA化に繋がりそうな「種」を見つけると、技術的な詳細には踏み込まず、まずは「顧客が何に困っていて、どうなりたいのか」という情報を持って、連携先の専門家に相談しました。 構想策定とパートナー選定: 専門家は、その情報をもとに顧客を訪問(時にはA社の営業担当者と同行)。現場を診断し、具体的なFA化構想と投資対効果(ROI)を策定しました。さらに、その構想を実現するのに最適な技術を持つSIerを、専門家のネットワークの中から選定し、A社に紹介しました。 提案と受注: A社は、専門家が作成した構想と、紹介されたSIerからの見積もりをもとに、自信を持って顧客に課題解決策を提案。専門家による裏付けと具体的な効果試算により、説得力のある提案となり、競合との価格競争に陥ることなく、高単価での受注に成功されました。 実行と展開: 受注後は、SIerがシステム構築・導入を担当。A社は、顧客との窓口役として、またプロジェクト全体のコーディネーターとして、円滑な導入を支援しました。一つの成功体験を基に、同様のモデルで他の顧客への提案も展開し、継続的に大型案件を獲得されていったのです。 このA社の事例は、「専門家連携モデル」が、商社にとってFA事業参入の強力な武器となり得ることを明確に示しています。自社のリソースに限界があっても、外部の力を戦略的に活用することで、大きな成果を上げることが可能なのです。 4:高単価受注の鍵!キーエンス流「課題発見力」×「専門家連携」の実践 専門商社A社の事例からもわかるように、「専門家連携モデル」を成功させる上で最も重要な要素の一つが、商社の営業担当者による「顧客の課題発見力」です。どれだけ強力な専門家やSIerと連携しても、そもそもの案件の「種」を見つけられなければ、モデルは機能しません。 ここで参考にしたいのが、高収益企業として知られるキーエンス社の営業スタイルです。彼らは単に製品を売るのではなく、顧客の工場に入り込み、現場を観察し、鋭い質問を投げかけることで、顧客自身も気づいていないような潜在的な課題を発見し、その解決策を提案することで圧倒的な価値を提供しています。 「専門家連携モデル」を活用する商社も、これと同様のアプローチ、すなわち「コンサルティング営業(課題解決型提案)」を実践することが、高単価受注への鍵となります。 しかし、 「キーエンスのような専門知識がないと無理だ・・・」 と考える必要はありません。 なぜなら、貴社には「専門家パートナー」という強力な存在がいるからです。 貴社に求められるのは、まず顧客の懐に入り込み、課題の「芽」を見つけることです。 そのための具体的なアクションが、 「5つの魔法の質問」 です。 これは、顧客との日常会話の中で、自然な形でFA化に繋がる可能性のあるニーズを引き出すためのシンプルな問いかけです。 「今、工場の中で『人がやるには大変だな』『しんどいな』と感じる作業は、具体的にどんなことですか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:作業負担の軽減 / 労働環境の改善 「最近、『ここは人手が足りないな』『募集してもなかなか人が来ないな』と感じる工程や部署はありますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:人手不足の解消 / 省人化 「もし、今よりもっと生産量を増やせるとしたら、どの工程の能力アップが必要になりますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:生産能力の向上 / ボトルネック解消 「品質面で、『ここの精度が安定しない』『不良が多くて困る』といった課題はありますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:品質改善・安定化 / 不良率削減 「『このデータ、もっと活用できないかな?』『現場の状況がリアルタイムで見えたらいいのに』と思うことはありますか?」 ○ → 質問から探れるFAニーズ:生産状況の見える化 / データ活用 これらの質問を通じて得られた顧客の「困りごと」や「もっとこうしたい」という生の情報を、たとえそれが断片的であっても、すぐに専門家パートナーに連携する。これが極めて重要です。専門家はその情報(=課題の芽)を基に、深い分析と知見で具体的な解決策(=FA化構想)へと育て上げます。つまり、商社が「課題発見(キーエンス流の入り口)」を担い、専門家が「ソリューション構築(キーエンス流の提案力)」を担う。この連携こそが、商社単独では難しかった高付加価値な提案を可能にするのです。 5:明日から始める!FA事業成功へのファーストステップ さて、FA市場の大きな可能性と、「専門家連携モデル」という具体的な戦略、そして成功事例と実践のポイントをご理解いただけたことと思います。重要なのは、この知識をインプットで終わらせず、実際のアクションに繋げることです。FA事業は、貴社の未来を切り拓く新たな成長エンジンとなる可能性を秘めています。その第一歩を、ぜひ明日から踏み出してください。 では、具体的に何から始めるべきか? 複雑に考える必要はありません。まずは、以下のシンプルなステップで始めてみましょう。 ステップ1:意識を変え、顧客の声に耳を澄ます 明日からの顧客訪問や電話での会話で、少しだけ意識を変えてみてください。単なる製品の受注や納品の話だけでなく、「5つの魔法の質問」を参考に、お客様の工場の「不」(不便、不満、不足、不安)や「もっとこうしたい」という願望に、注意深く耳を傾けてみましょう。「何かお困りごとはありませんか?」という漠然とした問いではなく、具体的な作業や状況について質問することがポイントです。今日紹介した5つの質問は、そのためのきっかけとなるはずです。 ステップ2:小さな「種」を見つけたら、すぐに専門家に相談する 完璧な情報や深い技術知識は不要です。「〇〇作業で人手が足りないらしい」「△△工程の品質が安定しないようだ」「□□のデータ活用に関心があるみたいだ」…このような断片的な情報、顧客のちょっとした一言、それがFA案件に繋がる貴重な「種」となります。重要なのは、その種を自分の中だけで温めておくのではなく、できるだけ早く、信頼できる専門家パートナーに相談することです。「こんな話を聞いたのですが、何か提案の可能性はありますか?」と、気軽に壁打ち相手として活用してください。 ステップ3:専門家と共に、最初の成功体験を創る 専門家は、貴社が掴んだ「種」を基に、具体的な提案の可能性を探ります。必要であれば顧客に同行し、現状分析や構想策定を行います。最適なSIerを紹介し、ROI(投資対効果)を示せる提案資料の作成も支援します。貴社は、そのプロセスに顧客との窓口役・調整役として関わりながら、専門家のノウハウを吸収し、最初の成功体験を共に創り上げていきます。この最初の成功が、貴社のFA事業における自信と実績となり、次の展開への大きな推進力となるでしょう。 FA事業への挑戦は、決して容易な道のりではありません。しかし、適切な戦略と信頼できるパートナーがいれば、必ず乗り越えられます。「専門家連携モデル」は、まさにそのための効果的な処方箋です。 【このコラムを読んだ後に取るべき行動】 本コラムを読み、FA事業への可能性を感じられた商社の経営者様、ご担当者様。最初の一歩は、決して大きなものである必要はありません。 顧客リストの見直しとヒアリング対象の選定: まずは、FA化のニーズがありそうな既存顧客を数社リストアップし、「5つの魔法の質問」を投げかけてみてください。 専門家への相談: 顧客から得られた情報や、貴社が漠然と感じているFA事業への課題・可能性について、私たち専門家(船井総合研究所)にぶつけてみませんか? 初回のご相談は無料です。貴社に最適なFA事業参入・拡大の進め方について、具体的なアドバイスをさせていただきます。 貴社の挑戦を、私たち船井総合研究所が全力でサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。 【お問い合わせはこちら】 https://www.funaisoken.co.jp/solution/maker_smartfactory_703_S045

中小製造業の未来モデル!有川製作所の自動化による企業変革コラム

2025.04.28

人手不足・小ロット多品種の壁を打ち破る!自動化で生産性と働きがいを両立し、DXへと進化を遂げた成功の秘訣を公開します。   このコラムをお勧めしたい経営者の皆様 深刻化する人手不足に対応し、持続的な成長を目指している経営者様 小ロット多品種生産における生産性向上に課題を感じている経営者様 従業員の働きがいを高め、魅力ある企業文化を醸成したい経営者様 自動化導入に踏み切れずにいる、あるいは導入効果に悩んでいる経営者様 自動化を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)に関心のある経営者様   このコラムの内容の要約 本コラムは、石川県に拠点を置く中小製造業、株式会社有川製作所の自動化への挑戦とその成果を解説するものです。同社は、深刻化する人手不足や小ロット多品種生産という課題に対し、「小人の靴屋プロジェクト」と銘打った自動化に着手。協調ロボットの導入と内製化、そして徹底した人材育成により、プレス工程や検査工程の生産性を大幅に向上させました。その結果、2年連続の残業ゼロ達成、従業員の働きがい向上、若手・キャリア採用の成功といった、経営全般にわたる好循環を生み出しています。成功の背景には、スモールスタート、事前検証、外部連携、そして何よりも経営者の強いリーダーシップがありました。さらに同社は、自動化で得た知見を活かし、「巨人の肩プロジェクト」として3Dバーチャル技術やChatGPT活用といったDXにも挑戦。自動化を起点に企業価値を高め続ける同社の取り組みは、多くの中小製造業にとって未来への羅針盤となるでしょう。 このコラムを読むメリット 本コラムをお読みいただくことで、中小製造業が直面する普遍的な課題、特に人手不足や小ロット多品種生産への対応について、具体的な解決策のヒントを得ることができます。有川製作所の事例を通じて、協調ロボット導入や自動化システムの内製化といった、自動化を成功に導くための実践的なノウハウを学ぶことが可能です。また、自動化が単なる生産性向上に留まらず、従業員の働きがい向上、採用力の強化、ひいては企業文化の変革にまで繋がるプロセスを具体的に理解できます。投資対効果の考え方、スモールスタートや事前検証といった導入プロセスの要諦、そして外部リソースの活用法など、自社で自動化を検討・推進する上で不可欠な視点が得られるでしょう。さらに、アナログな自動化からデジタル技術を活用したDXへとステップアップしていく道筋を知ることで、自社の将来像を描き、具体的なアクションプランを構想する一助となります。 第1章 なぜ今、自動化なのか? 中小製造業を取り巻く環境と有川製作所の挑戦 1. 中小製造業を取り巻く厳しい経営環境 現在、日本の製造業、特にその大多数を占める中小企業は、かつてない厳しい経営環境に直面しています。少子高齢化に伴う構造的な人手不足は深刻化の一途をたどり、多くの企業で受注機会の損失や既存従業員の負担増といった問題が顕在化しています。加えて、原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇は収益を圧迫し、価格転嫁も容易ではない状況です。 さらに、事業承継の問題も深刻です。経営者の高齢化が進む一方で、後継者が見つからない、あるいは事業の将来性への不安から承継を躊躇するケースも少なくありません。また、若い世代を中心に「働きがい」を重視する価値観が広がる中、旧態依然とした労働環境では優秀な人材の獲得・定着が困難になっています。 こうした状況を打開する鍵として期待されるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。しかし、多くの中小企業では、資金や人材、ノウハウの不足からDXへの取り組みが遅々として進んでいないのが実情です。「どこから手をつければ良いのか分からない」「導入効果が見えない」といった声も多く聞かれます。このままでは、企業間格差はますます拡大し、厳しい淘汰の時代を迎えることになりかねません。 2. 有川製作所の挑戦 – 危機感から生まれた変革への決意 このような厳しい事業環境は、石川県に拠点を置く株式会社有川製作所にとっても例外ではありませんでした。昭和15年創業、金型設計製作と金属プレス加工を主力とし、特に小ロット多品種生産において高い技術力を持つ同社もまた、人手不足という大きな課題に直面していました。熟練技術者の高齢化が進む一方で、若手人材の確保は難しく、増え続ける受注に対応しきれない場面も出始めていました。 「このままではジリ貧になる。会社を存続させ、さらに発展させていくためには、抜本的な変革が必要だ」 有川社長は強い危機感を抱いていました。現状維持は緩やかな衰退を意味します。変化に対応し、未来を切り拓くためには、従来のやり方にとらわれない新たな挑戦が不可欠でした。そこで着目したのが「自動化」です。 しかし、同社が目指したのは、単なる省人化やコスト削減ではありませんでした。自動化によって生産性を向上させることはもちろん、それ以上に、従業員が単純作業から解放され、より創造的で付加価値の高い仕事に取り組める環境を創り出すこと、そして、誰もが「この会社で働きたい」と思えるような、魅力あふれる企業へと変革することを目指したのです。 属人化していた作業を標準化し、若手でも活躍できる環境を整える。労働時間を短縮し、働きがいを高める。そして、変化に前向きな企業文化を醸成する。自動化は、これらの目標を実現するための重要な手段と位置づけられました。まさに、「モノづくりの未来を創る」という同社のビジョンを具現化するための挑戦の始まりでした。次章では、この変革への第一歩となった「小人の靴屋プロジェクト」の具体的な取り組みについて詳述します。 第2章 「小人の靴屋プロジェクト」始動 – 協調ロボット導入と内製化への道 1. プロジェクト発足 – 小ロット多品種の壁に挑む 有川製作所の自動化への挑戦は、「小人の靴屋プロジェクト」と名付けられました。これは、グリム童話『小人の靴屋』のように、「寝ている間に仕事が進んでいる」状態を目指すという想いが込められています。人手不足という課題に対し、自動化によって24時間稼働に近い体制を構築し、生産性を飛躍的に向上させようという意欲的な取り組みです。 プロジェクトの最初のターゲットとなったのは、プレス工程と検査工程でした。プレス工程は、まさに同社の主力事業でありながら、人手不足の影響を直接的に受けていました。一方、検査工程は、製品の品質を担保する重要な工程であるものの、人による作業のため負担が大きく、ボトルネックとなりやすい状況でした。これらの工程を自動化することが、生産性向上と従業員の負担軽減に直結すると判断されたのです。 しかし、有川製作所が得意とする小ロット多品種生産は、従来の産業用ロボットによる自動化には不向きとされてきました。品種ごとに段取り替えが必要となり、その手間とコストを考えると、自動化のメリットを享受しにくいと考えられていたためです。この「常識」を打ち破るために、同社が着目したのが「協調ロボット」でした。 2. 協調ロボットという選択肢 協調ロボットは、従来の産業用ロボットと比較して、いくつかの大きなメリットがあります。まず、安全柵なしで人と隣り合って作業できる安全性の高さです。これにより、限られたスペースでも導入しやすく、既存の生産ラインにも柔軟に組み込むことが可能です。また、プログラミングや操作が比較的容易であるため、専門のロボットエンジニアでなくても扱うことができる点も魅力でした。 さらに重要なのは、その柔軟性です。多様な製品に対応するためのハンド(ロボットの手先)交換や、品種ごとの動作プログラム変更が比較的容易に行えるため、小ロット多品種生産への適性が高いのです。有川製作所は、この協調ロボットの特性を活かせば、自社の生産体制に合った自動化が実現できると考えました。 もちろん、導入は決して平坦な道のりではありませんでした。最適なロボットや周辺機器の選定、効果的なシステム構成の検討、そして実際の導入と立ち上げには、多くの試行錯誤が必要でした。ここで大きな力となったのが、技術商社である山崎電機や、ロボットメーカーであるオムロンといった外部パートナーとの連携でした。彼らの専門的な知見やサポートを得ながら、一つひとつの課題を乗り越えていきました。 3. 内製化への挑戦 – 自動化を自社の力に 自動化システムを導入する上で、有川製作所が特に重視したのが「内製化」です。システムインテグレーター(SIer)に全てを任せるのではなく、可能な限り自社の従業員の手でシステム構築や改善を行える体制を目指したのです。 内製化には、いくつかの大きなメリットがあります。第一に、トラブル発生時の迅速な対応が可能になることです。外部業者に依頼すると時間もコストもかかりますが、社内に対応できる人材がいれば、ダウンタイムを最小限に抑えられます。第二に、生産品目の変更や改善要求に対して、柔軟かつスピーディーに対応できることです。自分たちでシステムを改変できれば、外部に頼ることなく、継続的な改善活動が可能になります。 そして第三に、最も重要なのが、ノウハウの蓄積と人材育成です。自動化システムの構築・運用を通じて、従業員はロボット技術やプログラミング、システム設計に関する知識・スキルを習得します。これは、単に自動化を進めるだけでなく、従業員の多能工化やスキルアップ、ひいては会社全体の技術力向上に繋がります。 有川製作所では、ポリテクセンター(石川職業能力開発促進センター)が提供する研修プログラムを積極的に活用したり、社内でのOJT(On-the-Job Training)を通じて、ゼロからロボットを扱える人材を育成しました。当初は「自分たちにできるだろうか」という不安もあったと言いますが、経営陣の強い後押しと、挑戦を奨励する風土の中で、従業員は着実にスキルを身につけていきました。この内製化への取り組みが、後に大きな成果を生む原動力となります。 第3章 自動化がもたらした変革 – 生産性向上、残業ゼロ、そして働きがい 1. 目に見える成果 – 生産性と品質の劇的向上 「小人の靴屋プロジェクト」による自動化の導入は、有川製作所に目覚ましい成果をもたらしました。まず、定量的な効果として、生産性が大幅に向上しました。プレス工程では、協調ロボットによる24時間稼働も視野に入れた自動化により、生産能力が従来比で9%向上。検査工程においても、ロボットと画像検査システムを組み合わせることで、検査能力が22%向上しました。これは、単に人手不足を補うだけでなく、企業の成長エンジンとなる生産能力の増強を実現したことを意味します。 さらに特筆すべきは、2年連続で「残業ゼロ」を達成したことです。自動化によって生まれた時間的な余裕は、従業員の負担軽減に直結しました。長時間労働が常態化しやすい製造業において、これは画期的な成果と言えるでしょう。 品質面でも大きな改善が見られました。自動化により作業のばらつきがなくなり、製品品質が安定しました。特に検査工程では、従来の人間の目による官能検査から、画像検査システムによる数値的なデータに基づいた検査へと移行したことで、検査精度が向上し、顧客からの信頼も高まりました。 2. 働く人に起きた変化 – 働きがいと成長実感 自動化のインパクトは、生産性や品質といった数値的な指標にとどまりません。むしろ、働く人々の意識や働き方にこそ、より大きな変化が表れたと言えます。 これまで単純作業や負担の大きな作業に従事していた従業員は、自動化によってそれらの業務から解放され、より付加価値の高い仕事、例えば、自動化設備の運用管理、改善活動、新たな技術の習得などに時間を割けるようになりました。これは、従業員のスキルアップと多能工化を促進し、「やらされ仕事」から「自ら考え、工夫する仕事」へと、仕事の質そのものを変えるきっかけとなりました。 こうした変化は、従業員の「働きがい」の向上に直結します。自分の仕事が会社の成長に貢献しているという実感、新しいスキルを習得する喜び、そして自らの手で職場をより良くしていく達成感。これらが、従業員のモチベーションを高め、組織全体の活性化に繋がっていきました。 さらに、自動化への先進的な取り組みや「残業ゼロ」といった魅力的な労働環境は、採用活動にも好影響を与えました。製造業、特に地方の中小企業では採用難が叫ばれる中、有川製作所には意欲ある若手人材やキャリア人材が集まるようになり、実際に6名の若手と2名のキャリア採用に成功しています。また、社内でゼロから育成したシステムエンジニア(SE)が2名誕生するなど、人材育成の面でも着実な成果を上げています。 3. 企業文化の変容 – 未来への期待感が醸成 自動化プロジェクトの成功体験は、有川製作所の企業文化にもポジティブな影響を与えました。「自分たちでもできる」「やれば変わる」という自信が社内に広がり、変化に対する前向きな姿勢、新しいことに挑戦しようという意欲が醸成されていったのです。 経営陣と従業員の間でのコミュニケーションも活発になり、一体感が高まりました。自動化という共通の目標に向かって協力し、困難を乗り越えた経験が、組織としての結束力を強めたと言えるでしょう。 社外からの評価も高まりました。先進的な取り組みはメディアにも取り上げられ、多くの企業から視察や講演の依頼が舞い込むようになりました。これは、従業員の誇りを高めるとともに、企業のブランドイメージ向上にも大きく貢献しています。 このように、有川製作所の自動化は、単なる設備投資ではなく、生産性、品質、コストといった経営指標の改善はもちろんのこと、従業員の働きがい、人材育成、採用力強化、そして企業文化の変革といった、組織全体の進化を促す起爆剤となったのです。 第4章 成功の秘訣 – スモールスタート、人材育成、そして経営者の覚悟 有川製作所の自動化プロジェクトが大きな成功を収めた背景には、いくつかの重要な成功要因が存在します。これらは、同様の課題を抱える多くの中小製造業にとって、貴重な示唆を与えてくれるものです。 1. 「まずやってみる」精神と徹底した事前検証 自動化導入には、不安がつきものです。「本当に効果があるのか」「投資に見合うのか」「自分たちに使いこなせるのか」。有川製作所も例外ではありませんでした。しかし、同社は「まずやってみる」という精神で、最初から大規模な投資に踏み切るのではなく、比較的小規模で実現可能性の高いところから着手する「スモールスタート」を選択しました。 具体的には、プレス工程と検査工程という、効果が見えやすく、かつ自社の技術で対応できそうな範囲から始めました。そして、導入前には徹底した事前検証を行いました。例えば、検査工程の自動化では、実際にカメラテストを繰り返し行い、要求される精度が出せるかを確認。また、ワーク(加工対象物)をロボットが確実に掴めるかどうかの「バラ積み検証」なども実施しました。これにより、導入後のリスクを最小限に抑え、「これならいける」という確信を持ってプロジェクトを進めることができたのです。 2. 多面的な視点での投資対効果判断 自動化への投資判断において、単純な「省人化効果=人件費削減効果」だけでROI(投資収益率)を計算してしまうと、多くの場合、「投資対効果が見合わない」という結論になりがちです。特に、協調ロボットなどは、従来の産業用ロボットほどの高速性を求められないケースもあり、単純なタクトタイム短縮効果だけでは投資回収が難しい場合があります。 しかし、有川製作所では、投資対効果をより多面的に捉えました。生産能力向上による売上増への貢献、品質安定化による不良率低減や顧客信頼向上、労働環境改善による従業員の定着率向上や採用コスト削減、そして何よりも、従業員の働きがい向上やスキルアップといった、数値化しにくい「見えない効果」も考慮に入れたのです。 もちろん、定量的な評価も重要です。プレス自動化の投資回収期間は当初6.1年と試算されましたが、補助金を活用することで4.0年に短縮できる見込みとなりました。このように、利用可能な制度を最大限活用しつつ、短期的なコスト削減効果だけでなく、中長期的な企業価値向上に繋がるかどうかという視点で投資判断を行うことが、自動化成功の鍵となります。 3. 内製化と外部連携の戦略的な使い分け 前述の通り、有川製作所は自動化システムの「内製化」に積極的に取り組みました。しかし、全てを自社だけで賄おうとしたわけではありません。自社の強み・弱みを冷静に分析し、コアとなる部分は内製化を目指しつつ、専門的な知識や技術が必要な部分、あるいは一時的にリソースが不足する部分については、外部パートナーとの連携を効果的に活用しました。 技術商社である山崎電機は、最新の技術動向や製品情報を提供し、最適なシステム構成の提案を支援。ロボットメーカーのオムロンは、技術的なサポートやトレーニングを提供。ポリテクセンターは、社員向けの研修プログラムを提供しました。こうした外部の知見やリソースを戦略的に活用することで、自社だけでは乗り越えられなかったであろう壁を突破し、プロジェクトを加速させることができたのです。 4. 人こそが主役 – 徹底した人材育成 自動化システムを導入しても、それを使いこなし、改善していくのは「人」です。有川製作所は、自動化プロジェクトの開始当初から、人材育成を最重要課題の一つと位置づけていました。 重要なのは、単に操作方法を教えるだけでなく、「なぜ自動化に取り組むのか」「自動化によって何を目指すのか」という目的意識を経営者自らが繰り返し伝え、従業員と共有することです。これにより、従業員は自動化を「自分ごと」として捉え、主体的に関わるようになります。 また、失敗を恐れずに挑戦できる環境づくりも不可欠です。トライ&エラーを奨励し、たとえ失敗しても、そこから学び、次に活かすことを評価する文化を醸成しました。外部研修への参加や資格取得支援など、学びの機会も積極的に提供しました。こうした地道な取り組みが、従業員のスキル向上とモチベーション維持に繋がり、結果として2名のSEを育成するという大きな成果を生み出したのです。 5. 経営者の覚悟とリーダーシップ これら全ての成功要因の根底にあるのは、有川社長の強いリーダーシップと「会社を変える」という覚悟です。「モノづくりの未来を創る」という明確なビジョンを掲げ、自動化プロジェクトを自ら牽引し、その意義や進捗状況を社内外に積極的に発信し続けました。時には、導入に際して生じる不安や疑問に対して、粘り強く対話を重ね、従業員の理解と協力を得ていきました。 経営者が明確な方向性を示し、本気で取り組む姿勢を見せること。それが、従業員の意識を変え、組織全体を動かす原動力となるのです。有川製作所の事例は、自動化プロジェクトの成否は、技術や設備だけでなく、経営者の覚悟とリーダーシップに大きく左右されることを改めて示しています。 第5章 「巨人の肩プロジェクト」へ – 自動化からDXへ、未来を創る挑戦 1. 「小人の靴屋」から「巨人の肩」へ – 新たなステージへの進化 有川製作所の挑戦は、「小人の靴屋プロジェクト」によるアナログ工程の自動化だけにとどまりません。自動化によって得られた成果と自信を土台に、同社は次なるステージ、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)による本格的なデジタルイノベーションへと歩みを進めています。その取り組みが「巨人の肩プロジェクト」です。 このプロジェクト名は、「先人(巨人)の知恵や実績(肩)の上に立つことで、より遠くまで見渡せる」という言葉に由来します。「小人の靴屋プロジェクト」で培った自動化技術やノウハウ、そして挑戦する企業文化という「肩」の上に立ち、AIや3D、IoTといった最先端のデジタル技術を活用することで、これまでにない新たな価値を創造し、モノづくりの未来を切り拓こうという意欲的な試みです。 なぜ、アナログの自動化の次にDXが必要なのでしょうか。それは、個別の工程を自動化するだけでは、その効果は限定的であり、企業全体の競争力を抜本的に高めるには限界があるからです。製造現場で生成される様々なデータを収集・分析・活用し、設計から生産、検査、さらには経営判断に至るまで、バリューチェーン全体をデジタルで繋ぎ、最適化していくこと。そして、デジタル技術を駆使して、従来にはなかった新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出していくこと。これこそが、DXの本質であり、持続的な成長を実現するための鍵となります。 2. 企業間連携によるDXの加速 – 3DバーチャルとChatGPT活用 「巨人の肩プロジェクト」における具体的な取り組みとして、注目すべきは、外部企業との積極的な連携によるDXの推進です。自社だけのリソースに固執せず、優れた技術やアイデアを持つ他社と協業することで、よりスピーディーかつ効果的にDXを実現しようとしています。 その一つが、3Dバーチャル技術を活用した事業です。airoo合同会社とフォア株式会社との連携により、自社の工場やオフィスをリアルに再現した3Dバーチャル空間を構築しました。これにより、遠隔地にいる顧客や就職希望者に対して、臨場感あふれる工場見学や会社説明を提供することが可能になります。将来的には、この仮想空間を活用した研修や、製品のバーチャル展示、さらには新たなeコマース展開なども視野に入れています。これは、単なる技術導入に留まらず、マーケティングや人材採用、教育といった企業活動全般をデジタルで変革しようとする試みです。 もう一つの注目すべき取り組みが、ChatGPTとOffice365を連携させた業務改善アプリケーションの開発です。これは、DX支援プラットフォームを提供する株式会社INDUSTRIAL-X、DXコンサルティングを行うナカタケテック株式会社との共同プロジェクトとして進められています。従来は紙ベースで行われていた作業報告や日報作成などを、対話型AIであるChatGPTを活用してデジタル化・効率化することを目指しています。これにより、従業員の事務作業負担を軽減するとともに、蓄積されたデータを分析し、さらなる業務改善やノウハウの共有、技術伝承に繋げていくことが期待されます。 3. 自動化・DXが拓く「未来のモノづくり」 これらの先進的な取り組みは、有川製作所が目指す「未来のモノづくり」の姿を具体的に示しています。それは、単に効率化・省人化された工場ではなく、デジタル技術を駆使することで、人がより創造性を発揮し、新たな価値を生み出すことができる工場です。 自動化された生産ラインが効率的に製品を生み出す一方で、従業員はAIやデータの支援を受けながら、より高度な改善活動や新製品開発、顧客との価値共創といった業務に注力する。仮想空間と現実空間が融合し、時間や場所の制約を超えて、多様な人材が連携し、イノベーションを創出する。有川製作所の挑戦は、そのような未来のモノづくりへの確かな一歩と言えるでしょう。 重要なのは、これらの取り組みが、決して大企業だけのものではないということです。有川製作所は、従業員30名規模の中小企業でありながら、明確なビジョンと強い意志、そして柔軟な発想と実行力によって、自動化、そしてDXへの道を切り拓いています。その根底には、「小人の靴屋プロジェクト」を通じて培われた「自分たちで未来を創る」という自信と、内製化によって蓄積された技術力があります。 有川製作所の事例は、多くの中小製造業にとって、自動化・DXは決して遠い未来の話ではなく、今すぐ取り組むべき喫緊の課題であり、そして大きなチャンスでもあることを示唆しています。変化を恐れず、未来への一歩を踏み出すこと。その先にこそ、持続的な成長と発展の道が拓けているのです。     このコラムを読んだ後に取るべき行動 今回の有川製作所の事例は、自動化やDXが、単なる技術トレンドではなく、中小製造業が厳しい経営環境を乗り越え、持続的な成長を実現するための強力な武器となり得ることを示しています。この貴重な学びを自社の経営に活かしていただくために、コラムをお読み頂いた経営者の皆様に、ぜひ取っていただきたい行動を以下に提案いたします。   1. 自社の課題と自動化・DXの可能性を再認識する: まずは、自社が抱える本質的な課題(人手不足、生産性、品質、コスト、働きがい、採用、事業承継など)を改めて洗い出してください。 その上で、有川製作所の事例を参考に、どの課題に対して自動化やデジタル技術が有効な解決策となり得るか、具体的な可能性を探ってみましょう。固定観念にとらわれず、柔軟な発想で検討することが重要です。   2. 情報収集を積極的に行う: 自動化やDXに関する情報は日々進化しています。関連するセミナーへの参加、展示会への視察、専門書籍の購読などを通じて、最新の技術動向や他社の成功事例、利用可能な支援策などについて、積極的に情報を収集してください。   3. スモールスタートできる領域を探す: 最初から大規模な投資や全社的な改革を目指す必要はありません。有川製作所のように、比較的小さな範囲、例えば特定の工程や業務から、低リスクで始められる自動化・デジタル化がないか検討してみましょう。「まずやってみる」ことが重要です。   4. 信頼できるパートナーを見つける: 自社だけですべてを解決しようとせず、外部の専門家の知見やサポートを積極的に活用しましょう。技術商社、SIer、ロボットメーカー、コンサルタントなど、自社の状況や目的に合った信頼できるパートナーを見つけることが、成功への近道です。   5. 経営者自身が変革の旗手となる: 自動化・DXは、単なる設備導入やシステム導入ではありません。企業文化や働き方そのものを変える、全社的な取り組みです。経営者自身が強いリーダーシップを発揮し、明確なビジョンを示し、変革への強い意志を持って社内を牽引していくことが不可欠です。従業員との対話を重ね、理解と協力を得ながら、一丸となって取り組む姿勢が求められます。   これらの行動を通じて、皆様の会社が、有川製作所のように、変化を乗り越え、魅力あふれる企業へと進化されることを、私ども船井総合研究所としても心より願っております。ご不明な点や具体的なご相談がございましたら、いつでもお気軽にお声がけください。   さいごに 本コラムを最後までご覧頂きありがとうございます。 最後までお読みいただいた皆様に朗報です。 2025年06月26日 (木) 船井総研が主催するものづくり経営研究会スマートファクトリー経営部会にて有川製作所様のご登壇が決定いたしました。 今回、一度限りではございますが、無料でお試し参加のご招待をさせて頂きます。 【詳細はこちらhttps://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/】 ※お試し参加は 経営研究会の入会をご検討いただく為に 経営者のみ・初回のみ 無料でご参加いただけます。当社の判断で申し込みをお断りする場合もありますので予めご了承ください。 ※座席に限りがございますので、満席の場合は別の日をご案内させていただく事がございます。予めご了承ください。   【自動化のご相談はこちら】 船井総研が提供するスマートファクトリーコンサルティング【Funai-soken Smart Factory Connection】は、製造業の生産性向上・自動化を支援し、スマートファクトリー化を実現する総合支援サービスです。 現状分析に基づき、最適なソリューション(自動化、デジタル化、生産管理システム等)をご提案。豊富なネットワークと推進力で、計画策定から効果測定まで強力にサポートします。 https://www.funaisoken.co.jp/solution/maker_smartfactory_703_S045 人手不足・小ロット多品種の壁を打ち破る!自動化で生産性と働きがいを両立し、DXへと進化を遂げた成功の秘訣を公開します。   このコラムをお勧めしたい経営者の皆様 深刻化する人手不足に対応し、持続的な成長を目指している経営者様 小ロット多品種生産における生産性向上に課題を感じている経営者様 従業員の働きがいを高め、魅力ある企業文化を醸成したい経営者様 自動化導入に踏み切れずにいる、あるいは導入効果に悩んでいる経営者様 自動化を起点としたDX(デジタルトランスフォーメーション)に関心のある経営者様   このコラムの内容の要約 本コラムは、石川県に拠点を置く中小製造業、株式会社有川製作所の自動化への挑戦とその成果を解説するものです。同社は、深刻化する人手不足や小ロット多品種生産という課題に対し、「小人の靴屋プロジェクト」と銘打った自動化に着手。協調ロボットの導入と内製化、そして徹底した人材育成により、プレス工程や検査工程の生産性を大幅に向上させました。その結果、2年連続の残業ゼロ達成、従業員の働きがい向上、若手・キャリア採用の成功といった、経営全般にわたる好循環を生み出しています。成功の背景には、スモールスタート、事前検証、外部連携、そして何よりも経営者の強いリーダーシップがありました。さらに同社は、自動化で得た知見を活かし、「巨人の肩プロジェクト」として3Dバーチャル技術やChatGPT活用といったDXにも挑戦。自動化を起点に企業価値を高め続ける同社の取り組みは、多くの中小製造業にとって未来への羅針盤となるでしょう。 このコラムを読むメリット 本コラムをお読みいただくことで、中小製造業が直面する普遍的な課題、特に人手不足や小ロット多品種生産への対応について、具体的な解決策のヒントを得ることができます。有川製作所の事例を通じて、協調ロボット導入や自動化システムの内製化といった、自動化を成功に導くための実践的なノウハウを学ぶことが可能です。また、自動化が単なる生産性向上に留まらず、従業員の働きがい向上、採用力の強化、ひいては企業文化の変革にまで繋がるプロセスを具体的に理解できます。投資対効果の考え方、スモールスタートや事前検証といった導入プロセスの要諦、そして外部リソースの活用法など、自社で自動化を検討・推進する上で不可欠な視点が得られるでしょう。さらに、アナログな自動化からデジタル技術を活用したDXへとステップアップしていく道筋を知ることで、自社の将来像を描き、具体的なアクションプランを構想する一助となります。 第1章 なぜ今、自動化なのか? 中小製造業を取り巻く環境と有川製作所の挑戦 1. 中小製造業を取り巻く厳しい経営環境 現在、日本の製造業、特にその大多数を占める中小企業は、かつてない厳しい経営環境に直面しています。少子高齢化に伴う構造的な人手不足は深刻化の一途をたどり、多くの企業で受注機会の損失や既存従業員の負担増といった問題が顕在化しています。加えて、原材料価格の高騰やエネルギーコストの上昇は収益を圧迫し、価格転嫁も容易ではない状況です。 さらに、事業承継の問題も深刻です。経営者の高齢化が進む一方で、後継者が見つからない、あるいは事業の将来性への不安から承継を躊躇するケースも少なくありません。また、若い世代を中心に「働きがい」を重視する価値観が広がる中、旧態依然とした労働環境では優秀な人材の獲得・定着が困難になっています。 こうした状況を打開する鍵として期待されるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。しかし、多くの中小企業では、資金や人材、ノウハウの不足からDXへの取り組みが遅々として進んでいないのが実情です。「どこから手をつければ良いのか分からない」「導入効果が見えない」といった声も多く聞かれます。このままでは、企業間格差はますます拡大し、厳しい淘汰の時代を迎えることになりかねません。 2. 有川製作所の挑戦 – 危機感から生まれた変革への決意 このような厳しい事業環境は、石川県に拠点を置く株式会社有川製作所にとっても例外ではありませんでした。昭和15年創業、金型設計製作と金属プレス加工を主力とし、特に小ロット多品種生産において高い技術力を持つ同社もまた、人手不足という大きな課題に直面していました。熟練技術者の高齢化が進む一方で、若手人材の確保は難しく、増え続ける受注に対応しきれない場面も出始めていました。 「このままではジリ貧になる。会社を存続させ、さらに発展させていくためには、抜本的な変革が必要だ」 有川社長は強い危機感を抱いていました。現状維持は緩やかな衰退を意味します。変化に対応し、未来を切り拓くためには、従来のやり方にとらわれない新たな挑戦が不可欠でした。そこで着目したのが「自動化」です。 しかし、同社が目指したのは、単なる省人化やコスト削減ではありませんでした。自動化によって生産性を向上させることはもちろん、それ以上に、従業員が単純作業から解放され、より創造的で付加価値の高い仕事に取り組める環境を創り出すこと、そして、誰もが「この会社で働きたい」と思えるような、魅力あふれる企業へと変革することを目指したのです。 属人化していた作業を標準化し、若手でも活躍できる環境を整える。労働時間を短縮し、働きがいを高める。そして、変化に前向きな企業文化を醸成する。自動化は、これらの目標を実現するための重要な手段と位置づけられました。まさに、「モノづくりの未来を創る」という同社のビジョンを具現化するための挑戦の始まりでした。次章では、この変革への第一歩となった「小人の靴屋プロジェクト」の具体的な取り組みについて詳述します。 第2章 「小人の靴屋プロジェクト」始動 – 協調ロボット導入と内製化への道 1. プロジェクト発足 – 小ロット多品種の壁に挑む 有川製作所の自動化への挑戦は、「小人の靴屋プロジェクト」と名付けられました。これは、グリム童話『小人の靴屋』のように、「寝ている間に仕事が進んでいる」状態を目指すという想いが込められています。人手不足という課題に対し、自動化によって24時間稼働に近い体制を構築し、生産性を飛躍的に向上させようという意欲的な取り組みです。 プロジェクトの最初のターゲットとなったのは、プレス工程と検査工程でした。プレス工程は、まさに同社の主力事業でありながら、人手不足の影響を直接的に受けていました。一方、検査工程は、製品の品質を担保する重要な工程であるものの、人による作業のため負担が大きく、ボトルネックとなりやすい状況でした。これらの工程を自動化することが、生産性向上と従業員の負担軽減に直結すると判断されたのです。 しかし、有川製作所が得意とする小ロット多品種生産は、従来の産業用ロボットによる自動化には不向きとされてきました。品種ごとに段取り替えが必要となり、その手間とコストを考えると、自動化のメリットを享受しにくいと考えられていたためです。この「常識」を打ち破るために、同社が着目したのが「協調ロボット」でした。 2. 協調ロボットという選択肢 協調ロボットは、従来の産業用ロボットと比較して、いくつかの大きなメリットがあります。まず、安全柵なしで人と隣り合って作業できる安全性の高さです。これにより、限られたスペースでも導入しやすく、既存の生産ラインにも柔軟に組み込むことが可能です。また、プログラミングや操作が比較的容易であるため、専門のロボットエンジニアでなくても扱うことができる点も魅力でした。 さらに重要なのは、その柔軟性です。多様な製品に対応するためのハンド(ロボットの手先)交換や、品種ごとの動作プログラム変更が比較的容易に行えるため、小ロット多品種生産への適性が高いのです。有川製作所は、この協調ロボットの特性を活かせば、自社の生産体制に合った自動化が実現できると考えました。 もちろん、導入は決して平坦な道のりではありませんでした。最適なロボットや周辺機器の選定、効果的なシステム構成の検討、そして実際の導入と立ち上げには、多くの試行錯誤が必要でした。ここで大きな力となったのが、技術商社である山崎電機や、ロボットメーカーであるオムロンといった外部パートナーとの連携でした。彼らの専門的な知見やサポートを得ながら、一つひとつの課題を乗り越えていきました。 3. 内製化への挑戦 – 自動化を自社の力に 自動化システムを導入する上で、有川製作所が特に重視したのが「内製化」です。システムインテグレーター(SIer)に全てを任せるのではなく、可能な限り自社の従業員の手でシステム構築や改善を行える体制を目指したのです。 内製化には、いくつかの大きなメリットがあります。第一に、トラブル発生時の迅速な対応が可能になることです。外部業者に依頼すると時間もコストもかかりますが、社内に対応できる人材がいれば、ダウンタイムを最小限に抑えられます。第二に、生産品目の変更や改善要求に対して、柔軟かつスピーディーに対応できることです。自分たちでシステムを改変できれば、外部に頼ることなく、継続的な改善活動が可能になります。 そして第三に、最も重要なのが、ノウハウの蓄積と人材育成です。自動化システムの構築・運用を通じて、従業員はロボット技術やプログラミング、システム設計に関する知識・スキルを習得します。これは、単に自動化を進めるだけでなく、従業員の多能工化やスキルアップ、ひいては会社全体の技術力向上に繋がります。 有川製作所では、ポリテクセンター(石川職業能力開発促進センター)が提供する研修プログラムを積極的に活用したり、社内でのOJT(On-the-Job Training)を通じて、ゼロからロボットを扱える人材を育成しました。当初は「自分たちにできるだろうか」という不安もあったと言いますが、経営陣の強い後押しと、挑戦を奨励する風土の中で、従業員は着実にスキルを身につけていきました。この内製化への取り組みが、後に大きな成果を生む原動力となります。 第3章 自動化がもたらした変革 – 生産性向上、残業ゼロ、そして働きがい 1. 目に見える成果 – 生産性と品質の劇的向上 「小人の靴屋プロジェクト」による自動化の導入は、有川製作所に目覚ましい成果をもたらしました。まず、定量的な効果として、生産性が大幅に向上しました。プレス工程では、協調ロボットによる24時間稼働も視野に入れた自動化により、生産能力が従来比で9%向上。検査工程においても、ロボットと画像検査システムを組み合わせることで、検査能力が22%向上しました。これは、単に人手不足を補うだけでなく、企業の成長エンジンとなる生産能力の増強を実現したことを意味します。 さらに特筆すべきは、2年連続で「残業ゼロ」を達成したことです。自動化によって生まれた時間的な余裕は、従業員の負担軽減に直結しました。長時間労働が常態化しやすい製造業において、これは画期的な成果と言えるでしょう。 品質面でも大きな改善が見られました。自動化により作業のばらつきがなくなり、製品品質が安定しました。特に検査工程では、従来の人間の目による官能検査から、画像検査システムによる数値的なデータに基づいた検査へと移行したことで、検査精度が向上し、顧客からの信頼も高まりました。 2. 働く人に起きた変化 – 働きがいと成長実感 自動化のインパクトは、生産性や品質といった数値的な指標にとどまりません。むしろ、働く人々の意識や働き方にこそ、より大きな変化が表れたと言えます。 これまで単純作業や負担の大きな作業に従事していた従業員は、自動化によってそれらの業務から解放され、より付加価値の高い仕事、例えば、自動化設備の運用管理、改善活動、新たな技術の習得などに時間を割けるようになりました。これは、従業員のスキルアップと多能工化を促進し、「やらされ仕事」から「自ら考え、工夫する仕事」へと、仕事の質そのものを変えるきっかけとなりました。 こうした変化は、従業員の「働きがい」の向上に直結します。自分の仕事が会社の成長に貢献しているという実感、新しいスキルを習得する喜び、そして自らの手で職場をより良くしていく達成感。これらが、従業員のモチベーションを高め、組織全体の活性化に繋がっていきました。 さらに、自動化への先進的な取り組みや「残業ゼロ」といった魅力的な労働環境は、採用活動にも好影響を与えました。製造業、特に地方の中小企業では採用難が叫ばれる中、有川製作所には意欲ある若手人材やキャリア人材が集まるようになり、実際に6名の若手と2名のキャリア採用に成功しています。また、社内でゼロから育成したシステムエンジニア(SE)が2名誕生するなど、人材育成の面でも着実な成果を上げています。 3. 企業文化の変容 – 未来への期待感が醸成 自動化プロジェクトの成功体験は、有川製作所の企業文化にもポジティブな影響を与えました。「自分たちでもできる」「やれば変わる」という自信が社内に広がり、変化に対する前向きな姿勢、新しいことに挑戦しようという意欲が醸成されていったのです。 経営陣と従業員の間でのコミュニケーションも活発になり、一体感が高まりました。自動化という共通の目標に向かって協力し、困難を乗り越えた経験が、組織としての結束力を強めたと言えるでしょう。 社外からの評価も高まりました。先進的な取り組みはメディアにも取り上げられ、多くの企業から視察や講演の依頼が舞い込むようになりました。これは、従業員の誇りを高めるとともに、企業のブランドイメージ向上にも大きく貢献しています。 このように、有川製作所の自動化は、単なる設備投資ではなく、生産性、品質、コストといった経営指標の改善はもちろんのこと、従業員の働きがい、人材育成、採用力強化、そして企業文化の変革といった、組織全体の進化を促す起爆剤となったのです。 第4章 成功の秘訣 – スモールスタート、人材育成、そして経営者の覚悟 有川製作所の自動化プロジェクトが大きな成功を収めた背景には、いくつかの重要な成功要因が存在します。これらは、同様の課題を抱える多くの中小製造業にとって、貴重な示唆を与えてくれるものです。 1. 「まずやってみる」精神と徹底した事前検証 自動化導入には、不安がつきものです。「本当に効果があるのか」「投資に見合うのか」「自分たちに使いこなせるのか」。有川製作所も例外ではありませんでした。しかし、同社は「まずやってみる」という精神で、最初から大規模な投資に踏み切るのではなく、比較的小規模で実現可能性の高いところから着手する「スモールスタート」を選択しました。 具体的には、プレス工程と検査工程という、効果が見えやすく、かつ自社の技術で対応できそうな範囲から始めました。そして、導入前には徹底した事前検証を行いました。例えば、検査工程の自動化では、実際にカメラテストを繰り返し行い、要求される精度が出せるかを確認。また、ワーク(加工対象物)をロボットが確実に掴めるかどうかの「バラ積み検証」なども実施しました。これにより、導入後のリスクを最小限に抑え、「これならいける」という確信を持ってプロジェクトを進めることができたのです。 2. 多面的な視点での投資対効果判断 自動化への投資判断において、単純な「省人化効果=人件費削減効果」だけでROI(投資収益率)を計算してしまうと、多くの場合、「投資対効果が見合わない」という結論になりがちです。特に、協調ロボットなどは、従来の産業用ロボットほどの高速性を求められないケースもあり、単純なタクトタイム短縮効果だけでは投資回収が難しい場合があります。 しかし、有川製作所では、投資対効果をより多面的に捉えました。生産能力向上による売上増への貢献、品質安定化による不良率低減や顧客信頼向上、労働環境改善による従業員の定着率向上や採用コスト削減、そして何よりも、従業員の働きがい向上やスキルアップといった、数値化しにくい「見えない効果」も考慮に入れたのです。 もちろん、定量的な評価も重要です。プレス自動化の投資回収期間は当初6.1年と試算されましたが、補助金を活用することで4.0年に短縮できる見込みとなりました。このように、利用可能な制度を最大限活用しつつ、短期的なコスト削減効果だけでなく、中長期的な企業価値向上に繋がるかどうかという視点で投資判断を行うことが、自動化成功の鍵となります。 3. 内製化と外部連携の戦略的な使い分け 前述の通り、有川製作所は自動化システムの「内製化」に積極的に取り組みました。しかし、全てを自社だけで賄おうとしたわけではありません。自社の強み・弱みを冷静に分析し、コアとなる部分は内製化を目指しつつ、専門的な知識や技術が必要な部分、あるいは一時的にリソースが不足する部分については、外部パートナーとの連携を効果的に活用しました。 技術商社である山崎電機は、最新の技術動向や製品情報を提供し、最適なシステム構成の提案を支援。ロボットメーカーのオムロンは、技術的なサポートやトレーニングを提供。ポリテクセンターは、社員向けの研修プログラムを提供しました。こうした外部の知見やリソースを戦略的に活用することで、自社だけでは乗り越えられなかったであろう壁を突破し、プロジェクトを加速させることができたのです。 4. 人こそが主役 – 徹底した人材育成 自動化システムを導入しても、それを使いこなし、改善していくのは「人」です。有川製作所は、自動化プロジェクトの開始当初から、人材育成を最重要課題の一つと位置づけていました。 重要なのは、単に操作方法を教えるだけでなく、「なぜ自動化に取り組むのか」「自動化によって何を目指すのか」という目的意識を経営者自らが繰り返し伝え、従業員と共有することです。これにより、従業員は自動化を「自分ごと」として捉え、主体的に関わるようになります。 また、失敗を恐れずに挑戦できる環境づくりも不可欠です。トライ&エラーを奨励し、たとえ失敗しても、そこから学び、次に活かすことを評価する文化を醸成しました。外部研修への参加や資格取得支援など、学びの機会も積極的に提供しました。こうした地道な取り組みが、従業員のスキル向上とモチベーション維持に繋がり、結果として2名のSEを育成するという大きな成果を生み出したのです。 5. 経営者の覚悟とリーダーシップ これら全ての成功要因の根底にあるのは、有川社長の強いリーダーシップと「会社を変える」という覚悟です。「モノづくりの未来を創る」という明確なビジョンを掲げ、自動化プロジェクトを自ら牽引し、その意義や進捗状況を社内外に積極的に発信し続けました。時には、導入に際して生じる不安や疑問に対して、粘り強く対話を重ね、従業員の理解と協力を得ていきました。 経営者が明確な方向性を示し、本気で取り組む姿勢を見せること。それが、従業員の意識を変え、組織全体を動かす原動力となるのです。有川製作所の事例は、自動化プロジェクトの成否は、技術や設備だけでなく、経営者の覚悟とリーダーシップに大きく左右されることを改めて示しています。 第5章 「巨人の肩プロジェクト」へ – 自動化からDXへ、未来を創る挑戦 1. 「小人の靴屋」から「巨人の肩」へ – 新たなステージへの進化 有川製作所の挑戦は、「小人の靴屋プロジェクト」によるアナログ工程の自動化だけにとどまりません。自動化によって得られた成果と自信を土台に、同社は次なるステージ、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)による本格的なデジタルイノベーションへと歩みを進めています。その取り組みが「巨人の肩プロジェクト」です。 このプロジェクト名は、「先人(巨人)の知恵や実績(肩)の上に立つことで、より遠くまで見渡せる」という言葉に由来します。「小人の靴屋プロジェクト」で培った自動化技術やノウハウ、そして挑戦する企業文化という「肩」の上に立ち、AIや3D、IoTといった最先端のデジタル技術を活用することで、これまでにない新たな価値を創造し、モノづくりの未来を切り拓こうという意欲的な試みです。 なぜ、アナログの自動化の次にDXが必要なのでしょうか。それは、個別の工程を自動化するだけでは、その効果は限定的であり、企業全体の競争力を抜本的に高めるには限界があるからです。製造現場で生成される様々なデータを収集・分析・活用し、設計から生産、検査、さらには経営判断に至るまで、バリューチェーン全体をデジタルで繋ぎ、最適化していくこと。そして、デジタル技術を駆使して、従来にはなかった新しい製品やサービス、ビジネスモデルを生み出していくこと。これこそが、DXの本質であり、持続的な成長を実現するための鍵となります。 2. 企業間連携によるDXの加速 – 3DバーチャルとChatGPT活用 「巨人の肩プロジェクト」における具体的な取り組みとして、注目すべきは、外部企業との積極的な連携によるDXの推進です。自社だけのリソースに固執せず、優れた技術やアイデアを持つ他社と協業することで、よりスピーディーかつ効果的にDXを実現しようとしています。 その一つが、3Dバーチャル技術を活用した事業です。airoo合同会社とフォア株式会社との連携により、自社の工場やオフィスをリアルに再現した3Dバーチャル空間を構築しました。これにより、遠隔地にいる顧客や就職希望者に対して、臨場感あふれる工場見学や会社説明を提供することが可能になります。将来的には、この仮想空間を活用した研修や、製品のバーチャル展示、さらには新たなeコマース展開なども視野に入れています。これは、単なる技術導入に留まらず、マーケティングや人材採用、教育といった企業活動全般をデジタルで変革しようとする試みです。 もう一つの注目すべき取り組みが、ChatGPTとOffice365を連携させた業務改善アプリケーションの開発です。これは、DX支援プラットフォームを提供する株式会社INDUSTRIAL-X、DXコンサルティングを行うナカタケテック株式会社との共同プロジェクトとして進められています。従来は紙ベースで行われていた作業報告や日報作成などを、対話型AIであるChatGPTを活用してデジタル化・効率化することを目指しています。これにより、従業員の事務作業負担を軽減するとともに、蓄積されたデータを分析し、さらなる業務改善やノウハウの共有、技術伝承に繋げていくことが期待されます。 3. 自動化・DXが拓く「未来のモノづくり」 これらの先進的な取り組みは、有川製作所が目指す「未来のモノづくり」の姿を具体的に示しています。それは、単に効率化・省人化された工場ではなく、デジタル技術を駆使することで、人がより創造性を発揮し、新たな価値を生み出すことができる工場です。 自動化された生産ラインが効率的に製品を生み出す一方で、従業員はAIやデータの支援を受けながら、より高度な改善活動や新製品開発、顧客との価値共創といった業務に注力する。仮想空間と現実空間が融合し、時間や場所の制約を超えて、多様な人材が連携し、イノベーションを創出する。有川製作所の挑戦は、そのような未来のモノづくりへの確かな一歩と言えるでしょう。 重要なのは、これらの取り組みが、決して大企業だけのものではないということです。有川製作所は、従業員30名規模の中小企業でありながら、明確なビジョンと強い意志、そして柔軟な発想と実行力によって、自動化、そしてDXへの道を切り拓いています。その根底には、「小人の靴屋プロジェクト」を通じて培われた「自分たちで未来を創る」という自信と、内製化によって蓄積された技術力があります。 有川製作所の事例は、多くの中小製造業にとって、自動化・DXは決して遠い未来の話ではなく、今すぐ取り組むべき喫緊の課題であり、そして大きなチャンスでもあることを示唆しています。変化を恐れず、未来への一歩を踏み出すこと。その先にこそ、持続的な成長と発展の道が拓けているのです。     このコラムを読んだ後に取るべき行動 今回の有川製作所の事例は、自動化やDXが、単なる技術トレンドではなく、中小製造業が厳しい経営環境を乗り越え、持続的な成長を実現するための強力な武器となり得ることを示しています。この貴重な学びを自社の経営に活かしていただくために、コラムをお読み頂いた経営者の皆様に、ぜひ取っていただきたい行動を以下に提案いたします。   1. 自社の課題と自動化・DXの可能性を再認識する: まずは、自社が抱える本質的な課題(人手不足、生産性、品質、コスト、働きがい、採用、事業承継など)を改めて洗い出してください。 その上で、有川製作所の事例を参考に、どの課題に対して自動化やデジタル技術が有効な解決策となり得るか、具体的な可能性を探ってみましょう。固定観念にとらわれず、柔軟な発想で検討することが重要です。   2. 情報収集を積極的に行う: 自動化やDXに関する情報は日々進化しています。関連するセミナーへの参加、展示会への視察、専門書籍の購読などを通じて、最新の技術動向や他社の成功事例、利用可能な支援策などについて、積極的に情報を収集してください。   3. スモールスタートできる領域を探す: 最初から大規模な投資や全社的な改革を目指す必要はありません。有川製作所のように、比較的小さな範囲、例えば特定の工程や業務から、低リスクで始められる自動化・デジタル化がないか検討してみましょう。「まずやってみる」ことが重要です。   4. 信頼できるパートナーを見つける: 自社だけですべてを解決しようとせず、外部の専門家の知見やサポートを積極的に活用しましょう。技術商社、SIer、ロボットメーカー、コンサルタントなど、自社の状況や目的に合った信頼できるパートナーを見つけることが、成功への近道です。   5. 経営者自身が変革の旗手となる: 自動化・DXは、単なる設備導入やシステム導入ではありません。企業文化や働き方そのものを変える、全社的な取り組みです。経営者自身が強いリーダーシップを発揮し、明確なビジョンを示し、変革への強い意志を持って社内を牽引していくことが不可欠です。従業員との対話を重ね、理解と協力を得ながら、一丸となって取り組む姿勢が求められます。   これらの行動を通じて、皆様の会社が、有川製作所のように、変化を乗り越え、魅力あふれる企業へと進化されることを、私ども船井総合研究所としても心より願っております。ご不明な点や具体的なご相談がございましたら、いつでもお気軽にお声がけください。   さいごに 本コラムを最後までご覧頂きありがとうございます。 最後までお読みいただいた皆様に朗報です。 2025年06月26日 (木) 船井総研が主催するものづくり経営研究会スマートファクトリー経営部会にて有川製作所様のご登壇が決定いたしました。 今回、一度限りではございますが、無料でお試し参加のご招待をさせて頂きます。 【詳細はこちらhttps://lpsec.funaisoken.co.jp/study/smart-factory/047708/】 ※お試し参加は 経営研究会の入会をご検討いただく為に 経営者のみ・初回のみ 無料でご参加いただけます。当社の判断で申し込みをお断りする場合もありますので予めご了承ください。 ※座席に限りがございますので、満席の場合は別の日をご案内させていただく事がございます。予めご了承ください。   【自動化のご相談はこちら】 船井総研が提供するスマートファクトリーコンサルティング【Funai-soken Smart Factory Connection】は、製造業の生産性向上・自動化を支援し、スマートファクトリー化を実現する総合支援サービスです。 現状分析に基づき、最適なソリューション(自動化、デジタル化、生産管理システム等)をご提案。豊富なネットワークと推進力で、計画策定から効果測定まで強力にサポートします。 https://www.funaisoken.co.jp/solution/maker_smartfactory_703_S045

人手不足時代の製造業DX:経営成果に繋げるスマートファクトリー化とは

2025.04.24

「儲かる工場」への変革は待ったなし!計画倒れさせない、伴走型DX支援で生産性と利益を最大化する秘訣を公開! ■このコラムをお勧めしたい方 人手不足や生産性の伸び悩みに深刻な課題を感じている経営者様 DXやスマートファクトリー化に関心はあるが、何から着手すべきか、投資対効果に不安を感じている経営者様 部分的な自動化は進めたものの、全社的な生産性向上やコスト削減に繋がっていないと感じる経営者様 経営視点でDXを推進し、持続的な成長と競争優位性を確立したいと考える経営者様 計画だけでなく、実行まで確実に支援してくれるパートナーを探している経営者様   ■このコラムを読むメリット   本コラムをお読みいただくことで、製造業の経営者様は、自社が直面する課題解決の有効な手段として、スマートファクトリー化の重要性と可能性を深く理解することができる。単なる技術トレンドとしてではなく、経営戦略の一環としてDXを捉え、生産性向上やコスト削減といった具体的な経営成果に繋げるための道筋が見えるようになるだろう。特に、スマートファクトリー化プロジェクトを成功させるための具体的なポイントや、陥りやすい失敗とその回避策を知ることで、自社での取り組みにおけるリスクを低減できる。また、船井総合研究所がどのような思想を持ち、どのようなアプローチで企業のスマートファクトリー化を支援するのか、その特徴と提供価値を具体的に把握することが可能となる。これにより、自社の課題解決に最適なパートナーを選定する上での重要な判断材料を得られる。最終的には、自社の未来像を描き、持続的な成長を実現するための具体的なアクションプランを検討するきっかけとなるであろう。 1. はじめに:待ったなし!製造業を取り巻く環境変化とDXの潮流 近年、我が国の製造業は、かつてない構造的な変化の波に直面している。少子高齢化に伴う深刻な人手不足、生産性の伸び悩み、グローバル市場における競争激化、そして急速な技術革新。これらの課題は、もはや一過性のものではなく、企業の存続そのものを左右しかねない喫緊の経営テーマとなっている。特に、熟練技術者の高齢化と若手人材の不足は、技術・技能の継承を困難にし、日本のものづくりの根幹を揺るがしかねない状況を生み出している。 このような厳しい経営環境下で、多くの企業が活路を見出そうとしているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進である。DXとは、単にデジタル技術を導入することではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、組織文化そのものを変革し、新たな価値を創出し、競争上の優位性を確立することを目指す取り組みである。経済産業省も「DXレポート」等を通じてその重要性を訴え、様々な支援策を打ち出しているが、特に製造業においては、生産現場の革新、すなわち「スマートファクトリー化」がDX推進の中核を成すものとして注目されている。 スマートファクトリーとは、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボット、センサーなどの先端技術を駆使し、工場内のあらゆる機器や設備、人が繋がり、データを収集・分析・活用することで、生産プロセス全体の最適化、自動化、自律化を図る次世代型の工場モデルを指す。これにより、従来は熟練者の経験や勘に頼っていた作業の標準化・自動化、リアルタイムでの生産状況の把握と迅速な意思決定、予知保全によるダウンタイムの削減、エネルギー効率の最適化など、飛躍的な生産性向上とコスト削減、品質向上が期待できる。 しかしながら、スマートファクトリー化への関心は高まっているものの、「何から手をつければ良いかわからない」「導入コストが高すぎるのではないか」「投資対効果が見えにくい」「IT人材が不足している」といった声が多く聞かれるのも事実である。部分的な自動化や見える化は進めても、それが経営全体の成果に結びついていないケースも少なくない。 本コラムでは、船井総合研究所が長年にわたり培ってきた製造業コンサルティングの知見に基づき、なぜ今スマートファクトリー化が不可欠なのか、そして、それを成功させ、真の経営成果に繋げるためには何が必要なのか、その要諦を紐解いていく。環境変化への対応は待ったなしである。本稿が、貴社の未来を切り拓く一助となれば幸いである。 2. なぜスマートファクトリーか?経営課題解決のメカニズム スマートファクトリー化は、単なる技術導入の流行ではない。それは、現代の製造業が抱える根深い経営課題を解決するための、極めて有効かつ本質的なアプローチである。ここでは、スマートファクトリーが具体的にどのようにして「生産性向上」「コスト削減」「品質向上」「人手不足対応」「リードタイム短縮」といった重要課題の解決に貢献するのか、そのメカニズムを解説する。 第一に、生産性の飛躍的向上である。 スマートファクトリーでは、工場内のあらゆる機器や工程からリアルタイムにデータを収集・分析することが可能となる。これにより、ボトルネック工程の特定、設備の稼働率や作業者の動線の最適化、段取り替え時間の短縮などが実現し、生産プロセス全体の効率が劇的に向上する。例えば、IoTセンサーで設備の稼働状況を常時監視し、非効率な運転や停止時間を削減する。また、ロボットや自動搬送車(AGV)を導入し、従来人手に頼っていた単調作業や重量物の搬送を自動化することで、人はより付加価値の高い業務に集中できるようになる。AIを活用すれば、過去のデータから最適な生産計画を立案したり、需要変動に応じたリアルタイムなスケジュール調整を行ったりすることも可能となる。 第二に、徹底的なコスト削減である。 生産性の向上は、そのまま人件費や残業代の削減に繋がる。加えて、スマートファクトリーはエネルギー消費の最適化にも貢献する。工場内のエネルギー使用状況を詳細に把握し、AIが最適な運転制御を行うことで、無駄な電力消費を抑制できる。また、設備の予知保全が可能になる点も大きい。センサーデータから故障の兆候を事前に検知し、計画的なメンテナンスを行うことで、突発的な設備停止による生産ロスや緊急修理コストを防ぐことができる。材料の歩留まり改善や在庫の最適化も、データ活用によって実現可能となる。 第三に、品質の安定と向上である。 スマートファクトリーでは、製造プロセスにおける様々なデータをリアルタイムで収集・監視できる。温度、湿度、圧力、加工精度といったデータを常時チェックし、異常があれば即座に検知し、アラートを発する。これにより、不良品の発生を未然に防ぐ体制を構築できる。また、収集したデータを分析することで、品質に影響を与える要因を特定し、プロセスそのものを改善していくことも可能である。トレーサビリティの確保も容易になり、万が一不良品が発生した場合でも、迅速な原因究明と影響範囲の特定が可能となる。 第四に、深刻化する人手不足への対応である。 ロボットによる自動化は、人手不足が顕著な工程の省人化に直接的に貢献する。また、スマートグラスなどを活用した遠隔作業支援や、デジタル化されたマニュアルによる作業ナビゲーションは、若手作業者の早期戦力化や多能工化を促進し、熟練技術への依存度を低減させる。これにより、技術・技能継承の問題解決にも繋がる。 第五に、リードタイムの短縮である。 生産計画の最適化、工程間の連携強化、ボトルネックの解消、在庫の可視化などにより、製品完成までのリードタイムを大幅に短縮できる。これは、顧客満足度の向上や市場の変化への迅速な対応力強化に繋がり、企業の競争力を高める上で極めて重要である。 このように、スマートファクトリー化は、単一の課題解決に留まらず、複数の経営課題に対して複合的な効果を発揮する可能性を秘めている。重要なのは、これらの技術を個別に導入するのではなく、経営戦略と連携させ、全体最適の視点で導入・活用していくことである。 次にスマートファクトリー化 成功の分岐点と陥りがちな罠について解説する。 3. スマートファクトリー化 成功の分岐点:陥りがちな罠 スマートファクトリー化への期待は大きいものの、その導入プロジェクトが必ずしも成功するとは限らない。むしろ、「多額の投資をしたのに効果が出ない」「現場が使いこなせない」「システムが複雑すぎて維持できない」といった失敗事例も後を絶たないのが実情である。ここでは、スマートファクトリー化プロジェクトが陥りがちな「罠」と、それを乗り越え、成功へと導くための「要諦」について解説する。 陥りがちな罠: 目的の曖昧化:「スマート化」自体が目的になってしまう。 「競合がやっているから」「補助金が出るから」といった理由で、具体的な経営課題の解決や達成目標が明確でないままプロジェクトを開始してしまうケース。これでは、導入効果の測定も改善もできず、投資が無駄になりやすい。 ツール導入先行:技術ありきで現場のニーズを無視する。 最新のIoT機器やAIシステムを導入することに目が向き、現場の実際の業務プロセスや課題、作業者のスキルレベルを考慮しないまま進めてしまう。結果として、現場で使われない、あるいはかえって業務を煩雑にするシステムが出来上がってしまう。 現場の巻き込み不足:トップダウンのみで進め、現場の抵抗を招く。 経営層や一部の担当者だけで計画を進め、実際にシステムを使う現場の意見を聞かなかったり、導入の目的やメリットを十分に説明しなかったりすると、現場からの協力が得られず、導入後の定着が進まない。 データ活用の壁:データを収集するだけで活用できていない。 センサー等で大量のデータを集めることに成功しても、それを分析し、改善活動に繋げる体制やスキル、文化がなければ、データは宝の持ち腐れとなる。「見える化」だけで満足してしまい、具体的なアクションに繋がらないケースが多い。 スモールスタートの欠如:最初から大規模・完璧を目指しすぎる。 効果が見えにくい段階から大規模な投資を行い、複雑なシステムを一気に導入しようとすると、リスクが高く、失敗した場合のダメージも大きい。また、計画に時間がかかりすぎ、市場の変化に対応できなくなる可能性もある。 効果測定と改善サイクルの欠如:導入して終わりにしてしまう。 導入効果を定量的に測定し、その結果に基づいて改善を継続していく仕組みがなければ、投資対効果(ROI)を最大化することはできない。 成功への要諦: 明確な目的設定と経営層のコミットメント: 「何を解決したいのか」「どのような状態を目指すのか」を具体的に定義し、経営層がその目的達成に強くコミットメントする。KPIを設定し、進捗を継続的に確認する。 現場主導・ボトムアップの視点: 構想段階から現場のキーパーソンを巻き込み、課題やニーズを吸い上げる。導入プロセスにおいても、現場の意見を反映し、使いやすさを重視する。導入目的やメリットを丁寧に説明し、現場のモチベーションを高める。 スモールスタートと段階的展開: まずは特定の工程や課題に絞って小規模に導入し、効果検証を行う(PoC: Proof of Concept)。成功体験を積み重ねながら、対象範囲を段階的に拡大していくアプローチが有効である。 データ活用文化の醸成: 収集したデータを誰もが容易に確認でき、分析・活用できる環境を整備する。データに基づいた改善提案を奨励し、評価する文化を醸成する。 外部の知見・専門性の活用: 自社だけで全てのノウハウを賄うのは難しい。スマートファクトリー化に関する知見や導入経験が豊富な外部パートナー(コンサルタント、SIerなど)をうまく活用し、客観的な視点や専門的なアドバイスを得る。 継続的な効果測定と改善(PDCA): 導入効果を定期的に測定・評価し、目標達成度を確認する。課題があれば原因を分析し、改善策を実行するPDCAサイクルを回し続けることが重要である。 スマートファクトリー化は、単なる設備投資ではなく、経営改革そのものである。これらの要諦を意識し、戦略的にプロジェクトを推進することが、成功への鍵となる。 4. 船井総研が選ばれる理由:経営成果に繋げる伴走型支援の神髄 スマートファクトリー化を成功に導くためには、適切なパートナー選びが極めて重要である。数あるコンサルティング会社やシステムインテグレーターの中で、なぜ多くの製造業経営者様が船井総合研究所(以下、船井総研)を選ばれるのか。その理由は、単に技術的な知見を提供するに留まらない、独自の支援スタイルと経営成果への強いコミットメントにある。 第一の理由は、「経営視点」と「現場視点」の融合である。 我々船井総研は、特定の技術や製品を売ることを目的としていない。常に「お客様の業績をいかに向上させるか」という経営コンサルティングの視点を起点とする。スマートファクトリー化も、あくまで経営目標達成の手段と捉え、投資対効果(ROI)を最大化するための戦略を描く。しかし、戦略だけでは工場は変わらない。我々は、実際に生産現場に入り込み、泥臭く汗を流すことも厭わない。現場の課題を肌で感じ、働く人々の声に耳を傾け、現実的な改善策を共に考え、実行する。この「経営」と「現場」双方からのアプローチこそが、絵に描いた餅で終わらない、実効性のある変革を実現する力となる。 第二に、「伴走型」の徹底した実行支援である。 計画書や提案書を作成して終わり、ではない。スマートファクトリー化の構想策定から、具体的な機器やシステムの選定・導入、そして導入後の効果測定、改善活動の定着、さらにはそれを推進する人材の育成や組織文化の変革に至るまで、お客様と一体となってプロジェクトを推進する。週次での進捗会議、現場でのOJT、経営層への定期的な報告などを通じて、計画が確実に実行され、成果に結びつくまで責任を持ってサポートする。この「伴走型」スタイルが、計画倒れを防ぎ、着実な成果を生み出す原動力となる。 第三に、ベンダーニュートラル(中立的)な立場である。 船井総研は、特定のITベンダーや設備メーカーの系列に属さない、完全に独立したコンサルティングファームである。そのため、常にお客様にとって真に最適なソリューションは何か、という視点で機器やシステムを選定し、提案することが可能である。特定の製品に縛られることなく、最新技術動向を踏まえつつ、お客様の予算や現場の状況、将来的な拡張性などを総合的に勘案した、客観的で最適な選択を支援する。 第四に、豊富な実績と成功ノウハウである。 船井総研は、長年にわたり、多種多様な業種・規模の製造業のお客様をご支援してきた実績がある。スマートファクトリー化においても、その知見は豊富である。成功事例はもちろん、失敗事例から得られた教訓も踏まえ、お客様が陥りやすい落とし穴を回避し、成功確率を高めるための実践的なノウハウを提供する。また、各種補助金の活用に関する知見も豊富であり、お客様の投資負担を軽減するための具体的なアドバイスも可能である。 船井総研のスマートファクトリー化支援は、単なる技術コンサルティングではない。お客様の経営課題に真摯に向き合い、現場と共に汗を流し、目に見える成果を出すまで伴走する「業績向上パートナー」としての役割を果たすこと、それこそが我々の使命であり、多くのお客様に選ばれ続ける理由であると確信している。 5. 未来への羅針盤:データが導く持続的成長と次世代工場 スマートファクトリー化は、短期的な生産性向上やコスト削減を実現するだけでなく、製造業が未来に向けて持続的に成長していくための強固な基盤となる。その鍵を握るのは、工場内外から収集される膨大な「データ」の活用である。スマートファクトリー化を一過性の取り組みで終わらせず、次世代工場へと進化させていくためには、データを経営の羅針盤として活用する視点が不可欠となる。 データドリブン経営への進化: スマートファクトリーで収集・蓄積されたデータは、経営判断の質を飛躍的に高める可能性を秘めている。従来は経験や勘に頼らざるを得なかった意思決定が、客観的なデータに基づいて行えるようになる。例えば、製品別の収益性分析、工程別のコスト構造の可視化、需要予測精度向上による在庫最適化、顧客からのフィードバックと生産データの連携による製品開発への反映などが可能となる。これにより、より迅速かつ的確な経営判断を下し、市場の変化に柔軟に対応できる「データドリブン経営」へと進化することができる。 サプライチェーン全体の最適化: スマートファクトリーの取り組みは、自社工場内だけに留まらない。サプライヤーや顧客とのデータ連携を進めることで、サプライチェーン全体の効率化と最適化を図ることが可能となる。例えば、リアルタイムな生産進捗状況や在庫情報をサプライヤーと共有することで、部品調達のリードタイム短縮や欠品リスクの低減に繋がる。また、顧客からの注文情報や需要予測データを連携させることで、より精度の高い生産計画を立案し、サプライチェーン全体での無駄を削減できる。これにより、企業単体での競争力強化に留まらず、エコシステム全体としての価値向上を目指すことができる。 新たな付加価値の創出: 収集したデータを活用することで、従来の「モノ売り」に留まらない、新たな付加価値サービスを創出する可能性も広がる。例えば、製品の稼働データを遠隔監視し、予知保全サービスや稼働状況に応じたコンサルティングサービスを提供する。あるいは、顧客の使用状況データを分析し、パーソナライズされた製品やサービスを開発・提案するなど、サービス化(Servitization)によるビジネスモデル変革も視野に入ってくる。 環境変化への対応力強化: カーボンニュートラルへの対応や、頻発する自然災害、地政学リスクなど、企業を取り巻く環境はますます不確実性を増している。スマートファクトリー化によって得られるデータの可視化と分析能力は、これらの環境変化への対応力を強化する上でも重要となる。エネルギー消費量の正確な把握と最適化は、カーボンニュートラル目標達成に不可欠である。また、サプライチェーンの状況をリアルタイムで把握することは、リスク発生時の迅速な影響評価と代替策の検討を可能にする。 変化し続ける組織文化の醸成: 次世代工場への進化を持続させるためには、技術の導入だけでなく、変化に対応し続ける組織文化の醸成が不可欠である。データに基づいた改善活動が日常的に行われ、従業員一人ひとりが主体的に課題発見・解決に取り組む。新しい技術や働き方を積極的に受け入れ、学び続ける。船井総研では、スマートファクトリー化の技術的支援に留まらず、こうした組織文化の変革や人材育成についても、お客様と共に考え、支援していく。 スマートファクトリー化はゴールではなく、持続的成長に向けたスタートラインである。船井総研は、目先の課題解決だけでなく、その先にある未来を見据え、データという羅針盤を手に、お客様と共に次世代工場への航海を進めていくパートナーでありたいと考えている。 このコラムを読んだ後に取るべき行動 本コラムをお読みいただき、誠にありがとうございます。 スマートファクトリー化による経営課題解決の可能性、そして成功への道筋について、ご理解を深めていただけたのであれば幸いです。 もし、貴社において、 人手不足や生産性向上、コスト削減に具体的な手を打ちたい DXやスマートファクトリー化の進め方に悩んでいる 現在の取り組みの効果を最大化したい 経営視点でDXを推進できるパートナーを探している とお考えでしたら、ぜひ一度、船井総合研究所にご相談ください。 まずは、貴社の現状の課題やお考えをじっくりとお伺いする**「無料経営相談」**をご活用ください。経験豊富な専門コンサルタントが、貴社に最適なスマートファクトリー化の方向性や、具体的な第一歩について、共に検討させていただきます。 また、スマートファクトリーに関する最新動向や成功事例、補助金活用について解説する**「セミナー・ウェビナー」**も随時開催しております。こちらもぜひご参加ください。 貴社の持続的な成長と発展に向けた挑戦を、船井総合研究所が全力でサポートいたします。下記よりお気軽にお問い合わせください。 【Funai-soken Smart Factory Connection】 船井総研が提供するスマートファクトリーコンサルティング【Funai-soken Smart Factory Connection】は、製造業の生産性向上・自動化を支援し、スマートファクトリー化を実現する総合支援サービスです。 現状分析に基づき、最適なソリューション(自動化、デジタル化、生産管理システム等)をご提案。豊富なネットワークと推進力で、計画策定から効果測定まで強力にサポートします。 「儲かる工場」への変革は待ったなし!計画倒れさせない、伴走型DX支援で生産性と利益を最大化する秘訣を公開! ■このコラムをお勧めしたい方 人手不足や生産性の伸び悩みに深刻な課題を感じている経営者様 DXやスマートファクトリー化に関心はあるが、何から着手すべきか、投資対効果に不安を感じている経営者様 部分的な自動化は進めたものの、全社的な生産性向上やコスト削減に繋がっていないと感じる経営者様 経営視点でDXを推進し、持続的な成長と競争優位性を確立したいと考える経営者様 計画だけでなく、実行まで確実に支援してくれるパートナーを探している経営者様   ■このコラムを読むメリット   本コラムをお読みいただくことで、製造業の経営者様は、自社が直面する課題解決の有効な手段として、スマートファクトリー化の重要性と可能性を深く理解することができる。単なる技術トレンドとしてではなく、経営戦略の一環としてDXを捉え、生産性向上やコスト削減といった具体的な経営成果に繋げるための道筋が見えるようになるだろう。特に、スマートファクトリー化プロジェクトを成功させるための具体的なポイントや、陥りやすい失敗とその回避策を知ることで、自社での取り組みにおけるリスクを低減できる。また、船井総合研究所がどのような思想を持ち、どのようなアプローチで企業のスマートファクトリー化を支援するのか、その特徴と提供価値を具体的に把握することが可能となる。これにより、自社の課題解決に最適なパートナーを選定する上での重要な判断材料を得られる。最終的には、自社の未来像を描き、持続的な成長を実現するための具体的なアクションプランを検討するきっかけとなるであろう。 1. はじめに:待ったなし!製造業を取り巻く環境変化とDXの潮流 近年、我が国の製造業は、かつてない構造的な変化の波に直面している。少子高齢化に伴う深刻な人手不足、生産性の伸び悩み、グローバル市場における競争激化、そして急速な技術革新。これらの課題は、もはや一過性のものではなく、企業の存続そのものを左右しかねない喫緊の経営テーマとなっている。特に、熟練技術者の高齢化と若手人材の不足は、技術・技能の継承を困難にし、日本のものづくりの根幹を揺るがしかねない状況を生み出している。 このような厳しい経営環境下で、多くの企業が活路を見出そうとしているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進である。DXとは、単にデジタル技術を導入することではなく、デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセス、組織文化そのものを変革し、新たな価値を創出し、競争上の優位性を確立することを目指す取り組みである。経済産業省も「DXレポート」等を通じてその重要性を訴え、様々な支援策を打ち出しているが、特に製造業においては、生産現場の革新、すなわち「スマートファクトリー化」がDX推進の中核を成すものとして注目されている。 スマートファクトリーとは、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、ロボット、センサーなどの先端技術を駆使し、工場内のあらゆる機器や設備、人が繋がり、データを収集・分析・活用することで、生産プロセス全体の最適化、自動化、自律化を図る次世代型の工場モデルを指す。これにより、従来は熟練者の経験や勘に頼っていた作業の標準化・自動化、リアルタイムでの生産状況の把握と迅速な意思決定、予知保全によるダウンタイムの削減、エネルギー効率の最適化など、飛躍的な生産性向上とコスト削減、品質向上が期待できる。 しかしながら、スマートファクトリー化への関心は高まっているものの、「何から手をつければ良いかわからない」「導入コストが高すぎるのではないか」「投資対効果が見えにくい」「IT人材が不足している」といった声が多く聞かれるのも事実である。部分的な自動化や見える化は進めても、それが経営全体の成果に結びついていないケースも少なくない。 本コラムでは、船井総合研究所が長年にわたり培ってきた製造業コンサルティングの知見に基づき、なぜ今スマートファクトリー化が不可欠なのか、そして、それを成功させ、真の経営成果に繋げるためには何が必要なのか、その要諦を紐解いていく。環境変化への対応は待ったなしである。本稿が、貴社の未来を切り拓く一助となれば幸いである。 2. なぜスマートファクトリーか?経営課題解決のメカニズム スマートファクトリー化は、単なる技術導入の流行ではない。それは、現代の製造業が抱える根深い経営課題を解決するための、極めて有効かつ本質的なアプローチである。ここでは、スマートファクトリーが具体的にどのようにして「生産性向上」「コスト削減」「品質向上」「人手不足対応」「リードタイム短縮」といった重要課題の解決に貢献するのか、そのメカニズムを解説する。 第一に、生産性の飛躍的向上である。 スマートファクトリーでは、工場内のあらゆる機器や工程からリアルタイムにデータを収集・分析することが可能となる。これにより、ボトルネック工程の特定、設備の稼働率や作業者の動線の最適化、段取り替え時間の短縮などが実現し、生産プロセス全体の効率が劇的に向上する。例えば、IoTセンサーで設備の稼働状況を常時監視し、非効率な運転や停止時間を削減する。また、ロボットや自動搬送車(AGV)を導入し、従来人手に頼っていた単調作業や重量物の搬送を自動化することで、人はより付加価値の高い業務に集中できるようになる。AIを活用すれば、過去のデータから最適な生産計画を立案したり、需要変動に応じたリアルタイムなスケジュール調整を行ったりすることも可能となる。 第二に、徹底的なコスト削減である。 生産性の向上は、そのまま人件費や残業代の削減に繋がる。加えて、スマートファクトリーはエネルギー消費の最適化にも貢献する。工場内のエネルギー使用状況を詳細に把握し、AIが最適な運転制御を行うことで、無駄な電力消費を抑制できる。また、設備の予知保全が可能になる点も大きい。センサーデータから故障の兆候を事前に検知し、計画的なメンテナンスを行うことで、突発的な設備停止による生産ロスや緊急修理コストを防ぐことができる。材料の歩留まり改善や在庫の最適化も、データ活用によって実現可能となる。 第三に、品質の安定と向上である。 スマートファクトリーでは、製造プロセスにおける様々なデータをリアルタイムで収集・監視できる。温度、湿度、圧力、加工精度といったデータを常時チェックし、異常があれば即座に検知し、アラートを発する。これにより、不良品の発生を未然に防ぐ体制を構築できる。また、収集したデータを分析することで、品質に影響を与える要因を特定し、プロセスそのものを改善していくことも可能である。トレーサビリティの確保も容易になり、万が一不良品が発生した場合でも、迅速な原因究明と影響範囲の特定が可能となる。 第四に、深刻化する人手不足への対応である。 ロボットによる自動化は、人手不足が顕著な工程の省人化に直接的に貢献する。また、スマートグラスなどを活用した遠隔作業支援や、デジタル化されたマニュアルによる作業ナビゲーションは、若手作業者の早期戦力化や多能工化を促進し、熟練技術への依存度を低減させる。これにより、技術・技能継承の問題解決にも繋がる。 第五に、リードタイムの短縮である。 生産計画の最適化、工程間の連携強化、ボトルネックの解消、在庫の可視化などにより、製品完成までのリードタイムを大幅に短縮できる。これは、顧客満足度の向上や市場の変化への迅速な対応力強化に繋がり、企業の競争力を高める上で極めて重要である。 このように、スマートファクトリー化は、単一の課題解決に留まらず、複数の経営課題に対して複合的な効果を発揮する可能性を秘めている。重要なのは、これらの技術を個別に導入するのではなく、経営戦略と連携させ、全体最適の視点で導入・活用していくことである。 次にスマートファクトリー化 成功の分岐点と陥りがちな罠について解説する。 3. スマートファクトリー化 成功の分岐点:陥りがちな罠 スマートファクトリー化への期待は大きいものの、その導入プロジェクトが必ずしも成功するとは限らない。むしろ、「多額の投資をしたのに効果が出ない」「現場が使いこなせない」「システムが複雑すぎて維持できない」といった失敗事例も後を絶たないのが実情である。ここでは、スマートファクトリー化プロジェクトが陥りがちな「罠」と、それを乗り越え、成功へと導くための「要諦」について解説する。 陥りがちな罠: 目的の曖昧化:「スマート化」自体が目的になってしまう。 「競合がやっているから」「補助金が出るから」といった理由で、具体的な経営課題の解決や達成目標が明確でないままプロジェクトを開始してしまうケース。これでは、導入効果の測定も改善もできず、投資が無駄になりやすい。 ツール導入先行:技術ありきで現場のニーズを無視する。 最新のIoT機器やAIシステムを導入することに目が向き、現場の実際の業務プロセスや課題、作業者のスキルレベルを考慮しないまま進めてしまう。結果として、現場で使われない、あるいはかえって業務を煩雑にするシステムが出来上がってしまう。 現場の巻き込み不足:トップダウンのみで進め、現場の抵抗を招く。 経営層や一部の担当者だけで計画を進め、実際にシステムを使う現場の意見を聞かなかったり、導入の目的やメリットを十分に説明しなかったりすると、現場からの協力が得られず、導入後の定着が進まない。 データ活用の壁:データを収集するだけで活用できていない。 センサー等で大量のデータを集めることに成功しても、それを分析し、改善活動に繋げる体制やスキル、文化がなければ、データは宝の持ち腐れとなる。「見える化」だけで満足してしまい、具体的なアクションに繋がらないケースが多い。 スモールスタートの欠如:最初から大規模・完璧を目指しすぎる。 効果が見えにくい段階から大規模な投資を行い、複雑なシステムを一気に導入しようとすると、リスクが高く、失敗した場合のダメージも大きい。また、計画に時間がかかりすぎ、市場の変化に対応できなくなる可能性もある。 効果測定と改善サイクルの欠如:導入して終わりにしてしまう。 導入効果を定量的に測定し、その結果に基づいて改善を継続していく仕組みがなければ、投資対効果(ROI)を最大化することはできない。 成功への要諦: 明確な目的設定と経営層のコミットメント: 「何を解決したいのか」「どのような状態を目指すのか」を具体的に定義し、経営層がその目的達成に強くコミットメントする。KPIを設定し、進捗を継続的に確認する。 現場主導・ボトムアップの視点: 構想段階から現場のキーパーソンを巻き込み、課題やニーズを吸い上げる。導入プロセスにおいても、現場の意見を反映し、使いやすさを重視する。導入目的やメリットを丁寧に説明し、現場のモチベーションを高める。 スモールスタートと段階的展開: まずは特定の工程や課題に絞って小規模に導入し、効果検証を行う(PoC: Proof of Concept)。成功体験を積み重ねながら、対象範囲を段階的に拡大していくアプローチが有効である。 データ活用文化の醸成: 収集したデータを誰もが容易に確認でき、分析・活用できる環境を整備する。データに基づいた改善提案を奨励し、評価する文化を醸成する。 外部の知見・専門性の活用: 自社だけで全てのノウハウを賄うのは難しい。スマートファクトリー化に関する知見や導入経験が豊富な外部パートナー(コンサルタント、SIerなど)をうまく活用し、客観的な視点や専門的なアドバイスを得る。 継続的な効果測定と改善(PDCA): 導入効果を定期的に測定・評価し、目標達成度を確認する。課題があれば原因を分析し、改善策を実行するPDCAサイクルを回し続けることが重要である。 スマートファクトリー化は、単なる設備投資ではなく、経営改革そのものである。これらの要諦を意識し、戦略的にプロジェクトを推進することが、成功への鍵となる。 4. 船井総研が選ばれる理由:経営成果に繋げる伴走型支援の神髄 スマートファクトリー化を成功に導くためには、適切なパートナー選びが極めて重要である。数あるコンサルティング会社やシステムインテグレーターの中で、なぜ多くの製造業経営者様が船井総合研究所(以下、船井総研)を選ばれるのか。その理由は、単に技術的な知見を提供するに留まらない、独自の支援スタイルと経営成果への強いコミットメントにある。 第一の理由は、「経営視点」と「現場視点」の融合である。 我々船井総研は、特定の技術や製品を売ることを目的としていない。常に「お客様の業績をいかに向上させるか」という経営コンサルティングの視点を起点とする。スマートファクトリー化も、あくまで経営目標達成の手段と捉え、投資対効果(ROI)を最大化するための戦略を描く。しかし、戦略だけでは工場は変わらない。我々は、実際に生産現場に入り込み、泥臭く汗を流すことも厭わない。現場の課題を肌で感じ、働く人々の声に耳を傾け、現実的な改善策を共に考え、実行する。この「経営」と「現場」双方からのアプローチこそが、絵に描いた餅で終わらない、実効性のある変革を実現する力となる。 第二に、「伴走型」の徹底した実行支援である。 計画書や提案書を作成して終わり、ではない。スマートファクトリー化の構想策定から、具体的な機器やシステムの選定・導入、そして導入後の効果測定、改善活動の定着、さらにはそれを推進する人材の育成や組織文化の変革に至るまで、お客様と一体となってプロジェクトを推進する。週次での進捗会議、現場でのOJT、経営層への定期的な報告などを通じて、計画が確実に実行され、成果に結びつくまで責任を持ってサポートする。この「伴走型」スタイルが、計画倒れを防ぎ、着実な成果を生み出す原動力となる。 第三に、ベンダーニュートラル(中立的)な立場である。 船井総研は、特定のITベンダーや設備メーカーの系列に属さない、完全に独立したコンサルティングファームである。そのため、常にお客様にとって真に最適なソリューションは何か、という視点で機器やシステムを選定し、提案することが可能である。特定の製品に縛られることなく、最新技術動向を踏まえつつ、お客様の予算や現場の状況、将来的な拡張性などを総合的に勘案した、客観的で最適な選択を支援する。 第四に、豊富な実績と成功ノウハウである。 船井総研は、長年にわたり、多種多様な業種・規模の製造業のお客様をご支援してきた実績がある。スマートファクトリー化においても、その知見は豊富である。成功事例はもちろん、失敗事例から得られた教訓も踏まえ、お客様が陥りやすい落とし穴を回避し、成功確率を高めるための実践的なノウハウを提供する。また、各種補助金の活用に関する知見も豊富であり、お客様の投資負担を軽減するための具体的なアドバイスも可能である。 船井総研のスマートファクトリー化支援は、単なる技術コンサルティングではない。お客様の経営課題に真摯に向き合い、現場と共に汗を流し、目に見える成果を出すまで伴走する「業績向上パートナー」としての役割を果たすこと、それこそが我々の使命であり、多くのお客様に選ばれ続ける理由であると確信している。 5. 未来への羅針盤:データが導く持続的成長と次世代工場 スマートファクトリー化は、短期的な生産性向上やコスト削減を実現するだけでなく、製造業が未来に向けて持続的に成長していくための強固な基盤となる。その鍵を握るのは、工場内外から収集される膨大な「データ」の活用である。スマートファクトリー化を一過性の取り組みで終わらせず、次世代工場へと進化させていくためには、データを経営の羅針盤として活用する視点が不可欠となる。 データドリブン経営への進化: スマートファクトリーで収集・蓄積されたデータは、経営判断の質を飛躍的に高める可能性を秘めている。従来は経験や勘に頼らざるを得なかった意思決定が、客観的なデータに基づいて行えるようになる。例えば、製品別の収益性分析、工程別のコスト構造の可視化、需要予測精度向上による在庫最適化、顧客からのフィードバックと生産データの連携による製品開発への反映などが可能となる。これにより、より迅速かつ的確な経営判断を下し、市場の変化に柔軟に対応できる「データドリブン経営」へと進化することができる。 サプライチェーン全体の最適化: スマートファクトリーの取り組みは、自社工場内だけに留まらない。サプライヤーや顧客とのデータ連携を進めることで、サプライチェーン全体の効率化と最適化を図ることが可能となる。例えば、リアルタイムな生産進捗状況や在庫情報をサプライヤーと共有することで、部品調達のリードタイム短縮や欠品リスクの低減に繋がる。また、顧客からの注文情報や需要予測データを連携させることで、より精度の高い生産計画を立案し、サプライチェーン全体での無駄を削減できる。これにより、企業単体での競争力強化に留まらず、エコシステム全体としての価値向上を目指すことができる。 新たな付加価値の創出: 収集したデータを活用することで、従来の「モノ売り」に留まらない、新たな付加価値サービスを創出する可能性も広がる。例えば、製品の稼働データを遠隔監視し、予知保全サービスや稼働状況に応じたコンサルティングサービスを提供する。あるいは、顧客の使用状況データを分析し、パーソナライズされた製品やサービスを開発・提案するなど、サービス化(Servitization)によるビジネスモデル変革も視野に入ってくる。 環境変化への対応力強化: カーボンニュートラルへの対応や、頻発する自然災害、地政学リスクなど、企業を取り巻く環境はますます不確実性を増している。スマートファクトリー化によって得られるデータの可視化と分析能力は、これらの環境変化への対応力を強化する上でも重要となる。エネルギー消費量の正確な把握と最適化は、カーボンニュートラル目標達成に不可欠である。また、サプライチェーンの状況をリアルタイムで把握することは、リスク発生時の迅速な影響評価と代替策の検討を可能にする。 変化し続ける組織文化の醸成: 次世代工場への進化を持続させるためには、技術の導入だけでなく、変化に対応し続ける組織文化の醸成が不可欠である。データに基づいた改善活動が日常的に行われ、従業員一人ひとりが主体的に課題発見・解決に取り組む。新しい技術や働き方を積極的に受け入れ、学び続ける。船井総研では、スマートファクトリー化の技術的支援に留まらず、こうした組織文化の変革や人材育成についても、お客様と共に考え、支援していく。 スマートファクトリー化はゴールではなく、持続的成長に向けたスタートラインである。船井総研は、目先の課題解決だけでなく、その先にある未来を見据え、データという羅針盤を手に、お客様と共に次世代工場への航海を進めていくパートナーでありたいと考えている。 このコラムを読んだ後に取るべき行動 本コラムをお読みいただき、誠にありがとうございます。 スマートファクトリー化による経営課題解決の可能性、そして成功への道筋について、ご理解を深めていただけたのであれば幸いです。 もし、貴社において、 人手不足や生産性向上、コスト削減に具体的な手を打ちたい DXやスマートファクトリー化の進め方に悩んでいる 現在の取り組みの効果を最大化したい 経営視点でDXを推進できるパートナーを探している とお考えでしたら、ぜひ一度、船井総合研究所にご相談ください。 まずは、貴社の現状の課題やお考えをじっくりとお伺いする**「無料経営相談」**をご活用ください。経験豊富な専門コンサルタントが、貴社に最適なスマートファクトリー化の方向性や、具体的な第一歩について、共に検討させていただきます。 また、スマートファクトリーに関する最新動向や成功事例、補助金活用について解説する**「セミナー・ウェビナー」**も随時開催しております。こちらもぜひご参加ください。 貴社の持続的な成長と発展に向けた挑戦を、船井総合研究所が全力でサポートいたします。下記よりお気軽にお問い合わせください。 【Funai-soken Smart Factory Connection】 船井総研が提供するスマートファクトリーコンサルティング【Funai-soken Smart Factory Connection】は、製造業の生産性向上・自動化を支援し、スマートファクトリー化を実現する総合支援サービスです。 現状分析に基づき、最適なソリューション(自動化、デジタル化、生産管理システム等)をご提案。豊富なネットワークと推進力で、計画策定から効果測定まで強力にサポートします。