記事公開日:2020.10.19
最終更新日:2023.01.20
製造業におけるAIの歴史
製造業の世界において、今後さまざまな形で「AI」の導入・活用シーンが増えていくことが
現在各種メディアによって謳われています。
最近でこそ、「AI」という言葉については、
あらゆるビジネス環境において馴染みが出てきておりますが、
実のところ、AIという概念はこれまでの歴史の過程の中で、
「ブーム」と「下火」になることを繰り返し、現在に至ります。
今回のコラムでは、今後、製造業における「AIの活用」や
「AIとの共存」というテーマを考えていくにあたって、
その基盤となる「AIの歴史」について、簡単にご紹介いたします。
1.第一次AIブーム
第一次AIブームは、1950年代後半~1960年代に起こったと言われています。
この時代におけるAIの具体的な機能としては、
コンピューターによる「推論」や「探索」が実現できるようになったという点が挙げられます。
推論とは
⇒ある事実をもとにして、未知の事柄をおしはかり論じること。
探索とは
⇒蓄積された情報の集合から、特定の情報要求を満たすような情報を探し出すこと。
しかしながら、当時のAIの力の及ぶ範囲としては、
例えばコンピューターによってゲームやパズルを解かせることや、
迷路のゴールを探させる程度のものに留まっていたとされており、
「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」以上の複雑な問題を解くことはできませんでした。
当時の社会における現実的かつ複合的な課題に対しては適応することができず、
AIが社会に果たす役割としては極めて限定的なものになるとのことから、
AIブーム自体は下火となり、その後“冬の時代”が続くことになります。
2.第二次AIブーム
第二次AIブームは、1980年代であると言われています。
この時代に起こった顕著な動きとして、専門家の知識をAIに教え込む
「エキスパートシステム」の開発が目指されたことが挙げられます。
各分野の専門家特有の知識をAIに教え込み、
その道の専門家のごとくAIが振る舞うというプログラムの開発が進みました。
しかしながら、AIへ知識を教え込むにあたって、
膨大な量の情報を人が教え込む必要があったことから、
AIの実社会への適用自体はこの時点でも十分には進みませんでした。
コスト・時間・運用面での課題を十分にクリアできなかったことから、
この時代以降、再びAIは、しばらく“冬の時代”へと突入します。
3.第三次AIブーム
第三次AIブームは、2000年代から現在まで続いていると言われています。
この時代における特筆事項として、
①「機械学習」が実用化された
②「ディープラーニング」が登場した
という大きく2つの技術革新が起こったことが挙げられます。
「機械学習」とは、人工知能のプログラム自身が
自律的に学習する仕組みのことを表します。
ここでいう「学習」の根幹は、
「認識・判断の対象となる物事を分類する」という処理のことですが、
人がAIに対してすべての知識をインプットしなくても、
一定のデータを蓄積すれば、そのデータをもとに機械が学習することによって、
解答の精度を上げるという仕組みがこの時代に発展・浸透してきました。
一方、「ディープラーニング」とは、
「第三次AIブーム到来の火付け役」とも言われており、
位置づけとしては「機械学習の一種」ということになります。
従来型の機械学習は、
人による特徴の定義が多くの場合に必要とされていましたが、
一方で、ディープラーニングの場合は、
人が特徴の定義をしなくても、マシンそのものが自律的に特徴づけを行い、
高い精度のもとに自ら学習を進めていくことができます。
元々、ディープラーニングを活用するためには
膨大な情報を長時間にわたって取り扱う必要があったため、
2000年代初頭の段階ではまだまだ実用的でないという
評価・判断が一定数存在しました。
しかし、2016年以降、ビックデータに関する取り組みの広がりや、
マシンの処理速度の高性能化によって、
ディープラーニングの取り組みが急速に広がっていきました。
大量の学習データを確保できることに加えて、
それらを学習するための時間も大幅に短縮することができるようになったことから、
ディープラーニングの導入・活用の機会が増え、第三次AIブームはさらに過熱しました。
このディープラーニングの登場により、AIは単なる一時的なブームではなく、
社会全体の発展を支えるための重要なツール・基盤としての役割を拡大させていきます。
また、このディープラーニングについては、
①画像・動画識別力(⇒人でいう“眼”の代わり)
②自然言語・会話制御力(⇒人でいう“耳と口”の代わり)
③物体制御力(⇒人でいう“身体”の代わり)
という大きく3つの点でAIの力を高め、
社会の中でのAIの実用範囲を広げたと言われています。
以上、ここまでAIの歴史について簡単にお伝えしてきました。
AIについては今後もさらに技術的な発展が見込める中、
現代の技術として「AIでできること」と「AIでできないこと」を見極めた上で、
・何のためにAIを活用するのか?(AIの活用目的)
・いかにして自社のビジネスに活用していくか?(AIの活用方法)
という2点について、積極的に追求していきたいところです。
(参考文献)
『人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの』 松尾 豊 (著)
『文系AI人材になる―統計・プログラム知識は不要』 野口 竜司 (著)
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