記事公開日:2020.11.02
最終更新日:2023.01.20

最新事例のご紹介(3Dスキャナを用いたティーチングレスなTIG溶接の自動化)

昨日、筆者は静岡県のとある企業様に視察に行ってきました。
その企業様では、制御BOXや配電盤等に使用される箱型の製品を製作されており、TIG溶接による成形工程にロボットを導入し自動化されていました。
そして多品種対応や製品の個体差による加工不良をとある方法で解決されていました。

本記事ではこちらの企業様が導入された自動化システムのポイントについて述べていきたいと思います。

1.システム構成

まずはロボットシステムの構成ですが、ハンドリング用ロボット1台+溶接用ロボット1台の合計ロボット2台の構成です。

ここまではよくあるロボットの事例ですが、こちらの企業様はリンクウィズ社製のL-ROBOTというレーザースキャナを用いたロボットの自動補正システムを導入されています。

ハンドリングロボットがコンベアから製品をピッキングし、溶接部の端面や角を決める為の治具に製品をセットします。その後溶接ロボットのハンドに取り付けられたレーザースキャナーにて溶接部の形状をサーチし得られたデータから専用のコンピューターが3Dモデルを作成します。そして3Dモデルから溶接する場所が自動的に算出されロボットに溶接位置の指令を出すというモノです。

2.何故、ロボットの補正システムを導入したのか?

フィラー無しのTIG溶接では、金属の接合面の合わせ面が非常に大事でシビアですが、前工程の曲げ加工や仮止めの工程で微妙に接合面の位置には歪みや反りも出てきます。

ロボットは基本的には同じ軌道の動作を繰り返すものですが、このロボットの軌道ではワークの歪みや反りに追従できず溶接不良を起こしてしまいます。

こちらの企業様ではもともと溶接用の自動機(溶接トーチが自動で垂直に動くもの)を使い溶接加工をされていましたが、接合部の合わせ面にトーチが通る様に人がワークを微調整しながら加工を行っていた為に、単純な動きの繰り返しでは上手く溶接が出来ない事を理解されていました。その為に自動で補正するシステムが絶対に必要と考えて導入に至った様です。

3.どのような補正システムなのか?

L-ROBOTの処理フローは簡易に書くと下記の様になります。

  • レーザースキャナ(キーエンス製レーザー式変位センサーを使用)をロボットハンドに持たせて加工物を一度スキャンします。
  • スキャンの結果、それぞれに座標を持った点が点群データがコンピュータに取り込まれます。
  • コンピュータ上でそれぞれの点群データが3Dモデルを形づくりワークを形状や位置を認識します。
  • その後その点群データから加工する場所を自動で判別します。
  • 加工させる場所の位置データをロボットに送り、ロボットはそれに従ってトーチを指定の位置に動かして溶接を開始する。

つまり、加工の度にワークの形状や加工面を調べてからそれぞれの個体差に合わせてロボットが動きますので、ロボットティーチングの修正が必要無いという事です。
ある程度の範囲の中で同形状のモノであればティーチングをしなくても同じ様に加工を行ってくれるという代物です。

溶接に限らずロボットで加工を行う際にワークの歪みや反りによる個体差が起因してロボットの加工が上手くいかない、その都度ロボットティーチングの修正を繰り返しているという企業様も多く、結果ロボットを使わなくなってしまう場合も少なからずあるようですが、このような補正システムがロボットに組み込まれていれば、多くの課題が解決されますね。

人間が作業を行う場合は必ず一度考えますよね。ワークの形状であったり加工方法であったりその場に適した加工を行うわけですが、ロボットにはこのようにものを考える頭脳がありません。この頭脳の代わりをしてくれるのが、リンクウィズ製のL-ROBOTだと思います。

4.多品種対応

こちらの企業様では多品種対応を進めており、現在約300種類の製品をロボットで生産出来る様にしておられました。
もちろん導入された時点では代表的な数品種のみ生産可能の状態で、その後自力で品種を追加していった結果です。

300種類の品種はほぼ同一形状ながらも大きさは数百ミリ以上違うモノですが、この300種類の製品を生産する為のプログラムは大体15種類程度だという事です。
普通ならそれぞれの品種専用のPRGを製作する必要がありますが、PRGを共通化しているという所もこのシステムならではだと思います。

そしてこのシステムの管理や品種追加を担当されている方が非常に若手の方でした。
これまでロボットは触った事が無く知識もなかったというこの担当者の方は、導入から半年たった今では、ロボットもL-ROBOTも使いこなしながら品種追加を今も継続していらっしゃいます。

このような若手社員が社内で育つ事で、ロボット活用のノウハウが蓄積し今後の展開にも波及していくでしょうし、会社全体にも良い影響が得られるとこの企業の社長様もおっしゃっていました。

このようにロボット化を進める事で様々な課題に挑戦し、若手の人材が新しい技術を習得する事で会社全体が変革していくという事が最大の成果なのかも知れません。

如何でしたでしょうか。
今回はレーザースキャナーを用いた最新のロボット補正システムを活用して自社のものづくりを自動化した企業様の事例をご紹介しました。

日本の中小製造業のほとんどの多品種少量生産を行う必要があり、自動化したいがロボットは多品種向きでは無いと考えていらっしゃる企業様も多いと思います。

しかし、今回ご紹介させて頂いた企業様の様に自社の製品の特長や癖を見抜き、それを自動化する為に必要な技術を選定し実際にテストを重ねながら導入し導入後も社内の若手社員を活用し多品種化を拡大させている企業様も実際にいます。
このような改善への前向きのスタンスとやりきる強い意志を持つ事が企業のデジタル化への第一歩ではないでしょうか。

昨今どんどん新しい技術が開発されてきています。
過去に自動化に挑戦したが、良い結果が得られず自社のモノ作りを自動化する事を諦めていた企業様にも、現在は違うアプローチでの自動化が可能な場合も十分にあると思います。

日本の労働人口減少が顕著になる中で、ものづくりのデジタルシフトは必ずと言っていいほど必須となってきます。
今回紹介したような様々な技術を活用してものづくりのデジタルシフトを進めていきましょう。

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