記事公開日:2020.03.26
最終更新日:2023.09.19
【投資対効果の考え方】多品種少量生産の自動化・ロボット化
近年、顧客ニーズの多様化に伴い、これらのニーズに応える手法として多品種少量生産に取り組む企業が増えています。
また労働人口減少の環境下で多品種少量生産体制の企業が生産工程の自動化に取り組む企業も増えています。
しかし、生産体制によって自動化の考え方は大きく異なってきます。特に多品種少量生産を行う生産体制の場合は、自動化する事が非常に困難なイメージを持たれている方も多く、自動化が進まない要因の一つとなっています。
目次
多品種少量生産のメリットとデメリットについて
メリット
・顧客のニーズに合わせた質と量の製品を供給する事が出来る
・必要なものを必要な数だけ生産する事で、在庫を抑制する事が出来る
・細かな仕様変更などにも対応できる。
・品質不具合発生時に細かくロット管理が出来る。
・設備の切り替え時短改善等が進み、質の高い生産が出来る
・作業者や技術者が多品種対応する事で著しく成長する。
・一部製品の需要が無くなり受注が無くなっても他製品でカバーする事が出来る。
デメリット
・切り替え性を高める事が出来なければ生産効率を低下させてしまう。
・品質再現性を高める事が出来なければ、品質が不安定になってしまう。
・原料、材料の保管にスペースが必要
・原料、材料の調達にシビアなコントロールが必要
・生産計画調整にシビアなコントロールが必要
・人員教育に時間が掛かる(技術、作業習得)
・一部の人間しか生産する事が出来ない等の技術的課題が発生する。
上記の様に多品種少量生産が大量生産システムに比べてはるかに難易度の高い仕事が求められるのが多品種少量生産です。
さらにメリットとデメリット比較すると、基本的にはデメリットを解消すればそれがすべてメリットになるという事が言えます。
そういう意味でも多品種少量生産が【質の高いものづくり】といわれる所以ですね。
多品種少量生産はロボット化に向かないと思われてる方も多いですが、上記デメリットを見ると自動化した方が解決する問題の方が多い事が分かると思います。
・設備の切り替え性
人が切り替え作業している工程を自動した場合、属人的な違いが無くなります。
・品質再現性
人よりも機械の方が同じ作業を繰り返すのは上手です。
・生産計画調整や原料、材料調達
計画をもとに自動で調達を行うシステムを導入すれば、属人的な能力差が発生しない。
・一部の人間しか生産出来ない
自動化する事で誰でもボタンを押せば生産する事が出来ます。
つまり多品種少量生産ほど自動化に向いているのです。
多品種生産工程の自動化課題
しかし、多品種少量生産のデメリットである点を自動機で克服していく為には、課題も多いです。
この課題を克服する自動機を投資回収できる範囲の投資で構築出来るかがポイントであり難しい所です。
直近では多様な製品、技術が開発されており、基本的に自動化出来ない工程は無いというレベルまで来てると思いますが、高額な費用を捻出する必要があります。
自社製品の工法や加工内容や受注ロット、切り替え頻度を加味した上で自動化設備の中身を取捨選択していく必要があります。
基本的に自動化設備に用いられる機器は高額なものが多く、機器単体では機能を果たせないものが多い為、生産システムとして成り立つ状態に仕上げるにはシステムインテグレーターの協力が必要であり、システムインテグレーターにも設計費用や工賃を支払う必要がありますので、どうしても費用全体は高額になってしまい、自動化設備の導入障壁となってしまうのです。
性能を維持したまま、価格を大幅に下げる事は難しい為、システム全体の費用を下げる為には機器の数を減らす必要が出てきます。そうすると求めるスペックが出ないという悪循環に落ちてしまいます。
この悪循環に陥らない為に最も必要な考え方は、自動化システム導入した際の効果算出にあるのではないでしょうか。
正しく導入効果を算出して長期的な視点で投資判断を行う事が肝要と思います。
投資対効果算出の考え方
定量的効果
人間が行っていた作業を自動化することで、労働時間を短縮させることができます。
自動化と作業配分の見直し等で残業代も削減できれば効果の上積みとなります。
自動化システムの導入により削減できた人件費が定量的効果にあたります。
定量的効果の具体的な値は、以下の計算式で求めることができます。
削減できた人件費(年)=1年間に自動化した工程の作業に掛けていた時間(単位:時間)×担当者の時給
となります。
しかし、自動化したからといってそれまで作業していた作業者が居なくなるという事では無い場合、自動化する事で浮いた時間を他作業に置き換えた場合の生産能力向上や作業配分された事での残業時間や休日出勤の抑制の効果を算出する必要があります。
つまり、自動化システムで如何に既存作業者の時間を浮かすか、そして浮いた時間で如何に付加価値を生むかが重要な要素です。
定性的効果
自動化システムを導入する効果は、定量的効果のほかに数値で表しにくい効果もあります。
(自動システム導入後には効果を算出しやすいが導入前段階での試算が難しいです。)
・特定のスキルを持った人材を確保、育成する必要がなくなる。
・生産能力が一定になる。(生産数のムラが無くなる)
・人的ミスの削減
・品質の安定
・人的ミスの削減と品質の安定により、加工ミスや不良品が発生した場合に必要になる後追い調査や再処理の手間とかかる人件費なども減らすことが可能
・一度自動化してしまえば、属人的な要素が限りなく減少するので、技術者の退職や人員の配置変更や人手不足の影響が受けなくなります。
・材料の供給方法を検討すれば24時間での稼働も可能です。夜間に翌日使用分の加工をさせておく事も可能です。
投資対効果を大きくするにはどうすればよいのか
投資対効果を最大限に発揮するには、前述したとおり、自動化して浮いた人手を如何に付加価値の高い業務にシフトさせる事が出来るかがカギとなります。
これまでに取り込めなかった新規分野での受注獲得する事で新たな収益を生み出す事などが最も良い例ですね。
平行して、自動化システムの稼働率向上や、切り替え時間の短縮、生産能力の向上も当然必須となります。
自動化システム導入の前の効果算出の段階で、自動機導入後の付加価値を生み出すシナリオを作成し、自動システムを導入した後にも継続して導入効果を最大限高める工夫と努力が必要です。
システム導入費用を削減するのは、自力では難しいですが、システム導入による効果は自力でいかようにも膨らませる事が出来ると思います。
まとめ
今回は、多品種少量生産の自動化について述べてきましたが如何でしょうか。
基本的に多品種少量生産こそ自動化に向いていると思います。
しかし導入障壁となっている多品種対応故の設備費用に対して、価格に注目してしまうと前に進めなくなってしまいます。
自動化システムを導入後に如何にして効果を生み出すかを正確に試算していく事で投資判断を進める事が肝要ではないかと考えます。
そして、自動システム導入後の継続した付加価値業務の推進で自動化システムの導入効果を最大限に高めていく取り組みを組織方針として打ち出し実行していく事が必要ではないでしょうか。
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