記事公開日:2025.09.26
最終更新日:2025.09.26
「”製品標準化”が拓く、製造業の自動化と高収益化【未来予測】」フライデーコラム:シオタ

いつもお世話になっております。
船井総研の塩田です。
貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、多くのメーカー製造業様が「多品種少量」を強みとして、顧客の細かな要望に応えることで、他社との差別化を図ってこられました。
さて、多くの製造業様が「多品種少量生産」を強みとして、顧客の細かな要望に応えることで事業を拡大されてきました。しかしその一方で、
- 増え続ける段取り替えによる生産効率の低下
- 複雑化する在庫管理とコストの増大
- 激化する価格競争による利益率の圧迫
といった課題に直面されているケースも少なくないのではないでしょうか。
もし、これらの課題を解決し、生産効率と利益率を同時に向上させる方法があるとしたら、ご興味はおありでしょうか?
本日は、今後の製造業のあり方を考える上での、一つの「仮説」としてお聞きいただきたい未来予測についてお話しします。
1.未来への布石としての「標準品」という発想
その仮説とは、顧客対応力を維持しつつ、あえて一部の製品を「標準品」として定義し、生産体制を再構築するという戦略です。
これは、すべての製品を画一化するということではありません。
貴社の「売れ筋製品」や「顧客要望の多い仕様」を徹底的に分析し、それらを『標準品』として定めるのです。そして、それ以外を「特注品」として明確に切り分ける。
このシンプルな一手が、会社の未来を大きく変える二つの可能性を秘めているのではないかと、私は考えています。
◆可能性1:生産効率のブレークスルー「自動化」への道
標準品を定める最大のメリットの一つは、将来的な「生産の自動化」への道が拓けることです。
- 作業の単純化・固定化: 標準品の生産プロセスを固定化することで、繰り返し作業が生まれます。これは、ロボットや専用機を導入する「自動化」と非常に相性が良いのです。
- 段取り替えの削減: 標準品をまとめて生産することで、生産性を最も阻害する要因の一つである段取り替えの時間を劇的に削減できます。
- 技術伝承の効率化: 標準化されたプロセスは、若手従業員への技術伝承を容易にし、属人化のリスクを低減します。
多品種少量生産のままでは難しかった本格的な自動化投資が、標準品の存在によって初めて現実的な選択肢となり、生産性を飛躍的に向上させる未来が描けるのではないでしょうか。
◆可能性2:競争力と利益率を高める「戦略的価格設定」
もう一つの大きな可能性は、価格設定の主導権を握れるようになることです。
- 標準品:「価格競争力」を武器に
効率化された生産ラインで作られる標準品は、製造コストを大幅に抑えることができます。これにより、競合に対してより魅力的な価格を提示し、マーケットシェアを拡大する武器となり得ます。 - 特注品:「付加価値」で高利益率を
一方で、標準品以外の特別なご要望には「特注品」として、その技術力や柔軟な対応力に見合った付加価値価格(プレミアム価格)を設定します。「何でも作る」のではなく「特別なものを作る」という位置付けにすることで、顧客からの納得感も得やすくなります。
このように価格設定を二極化させることで、「売上数量を確保しつつ、会社全体としての利益率も高める」という、理想的な収益構造を構築できるかもしれません。
2.まとめ
今回お話しした「標準品戦略」は、あくまで数ある打ち手の中の一つの未来予測、一つの仮説に過ぎません。
しかし、人手不足が深刻化し、より一層の生産性向上が求められるこれからの時代において、非常に有効な一手となり得る可能性を秘めています。
まずは第一歩として、貴社の製品ラインナップを「標準にできそうなもの」と「特別な対応が必要なもの」という視点で見つめ直してみてはいかがでしょうか。
その先に、会社の新たな成長の道筋が見えてくるかもしれません。
本日の内容が、貴社の今後の事業戦略を考える上での一助となれば幸いです。
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