記事公開日:2023.11.13
最終更新日:2023.11.13

中堅・中小製造業のDX・IoT活用:デジタルツインの導入と活用方法

いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。
本コラムでは、中堅・中小製造業の企業におけるDX・IoT活用について、まずはどこからどの様にDX・IoTを導入していくべきか、わかりやすく説明させていただきます。

1.はじめに

前回までのコラムで、“具体的にDXやIoT、AIを活用した業務の革新や改善を実施したいと考えたとき、まず『製造現場』へ導入すべき”と提案し、製造現場(工程)のIoT化手順に関し説明してきました。
今回からは、製造現場(工程)をIoT化して取得したデータの活用に関して説明して行きたいと思います。

ここ数年、“デジタルツイン”と言う言葉をよく耳にする様になりました。
工程や機器のIoT化によりセンサーや機器からの実際のデータ(情報)をIoT経由で取得できる様になってくると、実機のふるまいを大量のデジタルデータで表現できる様になります。
これは、実際の物理的な対象やプロセスの「ふるまい」(実機の動作や状態)をデジタルの世界で再現したものです。

具体的に説明すると、デジタルツインは、ある製品・設備・プロセス、またはシステムが現実世界でどのように動作し、機能するかを、デジタルモデルとして再現したものです。このデジタルモデルは、現実世界で収集したセンサーデータやリアルタイムデータを持ち、実機の動作状況を反映しています。
これにより、実機のふるまいをデジタル的に表現・モニタリングすることが可能となります。
例えば、工場の生産ラインのデジタルツインでは、実際の製品がどのように製造され、運搬され、検査されるかをデジタルモデルとして再現できます。
センサーが製品の進行状況や品質を監視し、この情報はデジタルツインに実機の情報として統合されます。
これにより、製品の製造過程がリアルタイムで可視化され、問題が発生した場合には、デジタルツインが警告を発し、生産プロセスに介入する様な事も可能になります。
デジタルツインは、シミュレーションや予測モデルの開発にも役立ちます。
デジタルツインを使用して、異なる設定や条件での製品やプロセスの挙動をシミュレートし、最適な設定を見つけ出すことが出来る様になります。
その結果、今までは、実際に製造工程を作りそれを動かして製造時間や製造時の問題点を抽出し改善、再度検証、これを数回繰り返すことで量産可能な状態まで作り上げていましたが、デジタルツインを用いるとシミュレーション上で想定できる条件全てを再現し、問題点抽出・改善までを行う事ができ、現実世界では最初から最適条件で製造工程を作り上げる事が出来、量産開始までの設備調整期間が大幅に短縮することが可能になります。

デジタルツインは、製造業の競争力向上と持続可能な成長に向けて非常に重要な役割を果たすテクノロジーとコンセプトとなりえます。
以下、デジタルツインの概念と中堅・中小製造業の経営者が考慮すべきポイントについて説明します。

2.デジタルツインとは何か?

デジタルツインは、前述の様に物理的な製品やプロセスをデジタルモデルとして再現する概念です。
つまり、製品やプロセスのデジタルなコピーを作成し、そのデジタルコピーを使用してリアルタイムでモニタリング、分析、シミュレーションを行うことができます。デジタルツインは、次のような要素で構成されます。

1.デジタルツインモデル: 物理的な対応物に対応するデジタルなモデルで、設計、機能、および動作を再現します。
2.データ連携: デジタルツインモデルは、センサー、アクチュエータ、IoTデバイスなどからのデータと連携し、リアルタイムデータを収集します。
3.データ分析: 収集されたデータを分析し、洞察を得て、製品やプロセスの改善を支援します。
4.シミュレーション: デジタルツインは、将来の状況やシナリオをシミュレートし、機器の導入や構成変更、工程変更などに対する意思決定をサポートします。

3.中堅・中小製造業におけるデジタルツインの必要性

IoT化が進んだ中堅・中小製造業が次のStepでデジタルツインを導入する必要性に関して説明します。

1.効率と生産性の向上: デジタルツインを使用することで、製品設計や製造プロセスの効率を向上させることができます。リアルタイムデータモニタリングとシミュレーションにより、無駄な作業の削減とプロセスの最適化が実現可能です。
2.品質管理の強化: デジタルツインは、製品のデジタルコピーを提供し、品質管理を向上させます。欠陥の早期発見や品質問題の修正が容易になります。
3.生産停止の最小化: デジタルツインは、設備や機器の予防保守を支援し、生産中断を最小限に抑えます。計画的な保守により、生産ラインの停止を回避できます。
4.市場適応性: 変化する市場に適応する能力が強化されます。デジタルツインを活用して製品設計やプロセスを素早く調整でき、新たな市場機会に迅速に対応できます。
5.持続可能な製造: デジタルツインは、持続可能な製造プラクティスの推進に貢献します。製品のライフサイクルを管理し、環境への影響を最小限に抑えるための情報を提供します。

4.中堅・中小企業がデジタルツインを導入する際生ずると思われる問題点

中小・中堅企業がデジタルツインを導入する際には、いくつかの潜在的な問題点に直面する可能性があります。以下は、考えられる主な問題点とそれに対処するための一般的な戦略です。

1.導入コストとリソース不足:
(対処策): デジタルツインの導入にはコストがかかり、スキルやリソースが必要です。
中小・中堅企業は、導入プロジェクトの予算を慎重に計画し、必要なリソースを確保する必要があります。船井総研等の外部の専門家やコンサルタントを活用しても良いと思います。

2.データの品質とセキュリティ:
(対処策): デジタルツインはデータに依存するため、データ品質とセキュリティが重要です。データ品質の向上に取り組み、データの収集から保存までのセキュリティ対策を強化します。

3.既存システムとの統合:
(対処策): 既存の製造システムやプロセスとデジタルツインを統合することは課題となることがあります。APIやプロトコルを使用して、異なるシステム間でデータの双方向の連携を確立します。

4.スキル不足:
(対処策): デジタルツインの導入には新たなスキルが必要です。従業員のトレーニングや外部のスペシャリストの雇用を検討し、必要なスキルを獲得します。

5.デジタルツインの戦略的活用:
(対処策): デジタルツインを単なる技術の導入とせず、戦略的な活用を検討しましょう。ビジネス目標とデジタルツインの目的を結びつけ、ROI(Return On Investment)を追求します。

6.データの過剰化:
(対処策): 適切なデータ収集戦略を採用し、必要なデータを収集することに焦点を当てましょう。過度なデータの収集はコストを増やし、データの分析を複雑にすることがあります。

7.変化への抵抗:
(対処策): 従業員への変更に対する抵抗があるかもしれません。変更管理戦略を確立し、従業員へのコミュニケーションと教育を重視しましょう。

8.セキュリティリスク:
(対処策): デジタルツインのセキュリティ対策を重視し、セキュリティポリシーとプロセスを確立し、データへの不正アクセスやサイバーセキュリティリスクに対処しましょう。

これらの課題に対処するための適切な戦略を採用することで、効果的にデジタルツインを活用し、競争力を高めることができます。
デジタルツインの利点を最大限に引き出すためには、段階的・計画的な導入が重要です。

3.まとめ

今回のコラムでは、“中堅・中小製造業のDX・IoT活用のコツ~デジタルツイン~”につきまして簡単ではありますが説明させていただきました。

今回の紹介した内容をご検討頂き、自社での製造工程のIoT化導入や取得したデータの活用方法の検討、過去に断念されたIoT化を再度進めていただければ幸いです。
また、上記内容について、より具体的に詳細をお知りになりたい場合や導入支援が必要といった場合は、お気軽に弊社にご相談いただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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