記事公開日:2025.01.17
最終更新日:2025.01.17

【最新版】日本の紡績業・繊維業を徹底解説!業界動向と生き残り戦略

日本の紡績業・繊維業の現状と未来を【最新版】で徹底解説!糸・原料・綿・素材・製品に至るまで、業界動向、主要企業の最新技術、将来展望、生き残り戦略を網羅的に分かりやすく解説。衰退といわれる紡績産業の真実は?主要企業の取り組み、未来への展望を詳しく紹介します。

1. 序章:日本の紡績業とは?

皆様は「紡績業」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

もしかしたら、「古くからある産業」「衰退している業界」といったネガティブな印象を持つ方もいるかもしれません。しかし、紡績業は私たちの生活に欠かせない衣料品や繊維製品を生産する、重要な産業です。綿などの原料から糸を紡ぎ、布を織り、最終製品を作り出すまで、様々な工程を経て私たちの生活を支えています。

例えば、皆様が普段着ているTシャツ。このTシャツも、紡績業によって作られた綿糸から作られています。綿花を栽培し、綿から糸を紡ぎ、その糸で布を織り、Tシャツに縫製する。このように、紡績業は私たちの生活に密接に関わっているのです。

このコラム記事では、日本の紡績業の定義、役割、歴史から始まり、現在の業界動向、主要企業、そして将来展望までを徹底的に解説していきます。

この記事を読むことで、以下のことが分かります。

  • 紡績業の基礎知識
  • 日本の紡績業の歴史と現状
  • 業界が抱える課題と将来展望
  • 主要企業の取り組みと最新技術
  • 紡績業の未来と持続可能な社会への貢献

この記事は、以下のような方々に特に読んでいただきたいと考えています。

  • 多品種少量生産の紡績・繊維業の社長
  • 昨今の紡績業界の市場動向を鑑みて、自社はどのように生き残る戦略を立てるべきかを知りたい社長
  • 紙日報による手書き運用が続いており、その後のデータ活用ができていない。
  • 標準原価で収益管理しているが、材料費高騰・賃上げに対応できていない。
  • Excel運用が多く、社内での情報共有がリアルタイムにできない。
  • 原価管理をどのように利益UPに結びつけるか具体的な方法を知りたい。
  • 経営指標はもちろんだが、現場指標を設けて従業員に経営意識を持たせたい。

2. 日本の紡績業の歴史

日本の紡績業は、長い歴史の中で様々な変化を遂げてきました。
ここでは、江戸時代以前の状況から、明治維新による近代化、戦後の復興と成長、そしてグローバル化の影響による衰退と復活の道のりまでを、事例などを交えながら解説していきます。

① 江戸時代以前の日本の紡績業

江戸時代以前、日本の紡績業は、各家庭で綿花を栽培し、糸を紡いで布を織るという自給自足の形態が主流でした。原料となる綿は国内で栽培され、人々は手作業で糸を紡ぎ、布を織っていました。糸を紡ぐ道具として「糸車」が使われていたことは、皆様も歴史の教科書で見たことがあるのではないでしょうか?

しかし、1853年のペリー来航をきっかけに、海外から安価な綿製品が輸入されるようになり、国内の紡績業は大きな転換期を迎えます。

② 明治維新による近代化

明治維新後、政府は殖産興業政策を推進し、紡績業の近代化を図りました。官営工場の設立や海外からの技術導入などにより、紡績機械による大量生産が可能となり、日本の紡績業は急速に発展していきます。例えば、明治政府はイギリスから最新の紡績機械を導入し、官営の紡績工場を設立しました。この工場では、大量の糸が生産され、国内の繊維産業の発展に大きく貢献しました。

この時代、大阪は紡績工場が多く集まり、「東洋のマンチェスター」と呼ばれるほど栄えました。大阪には、現在でも繊維関連の企業が多く存在し、日本の紡績業の中心地として重要な役割を担っています。

③ 戦後の復興と成長

第二次世界大戦後、日本の紡績業は壊滅的な被害を受けましたが、戦後復興とともに再び成長を遂げます。高度経済成長期には、合成繊維の登場や輸出の拡大などにより、日本の紡績業は最盛期を迎えます。ナイロンやポリエステルなどの合成繊維は、天然繊維に比べて強度や耐久性に優れており、衣料品だけでなく、産業資材などにも広く利用されるようになりました。

この時代の日本の紡績業を語る上で欠かせないのが、総合商社です。総合商社は、原料の調達から製品の販売まで、紡績業のバリューチェーン全体に関わり、業界の発展に大きく貢献しました。例えば、伊藤忠商事や丸紅などの総合商社は、世界中から綿花や羊毛などの原料を輸入し、日本の紡績会社に供給することで、安定的な生産を支えました。また、海外市場への販路開拓や、海外企業との提携など、グローバルな事業展開を支援しました。

④ グローバル化の影響と復活への道

1990年代以降、グローバル化の進展に伴い、中国や東南アジアなどの人件費の安い国々が台頭し、日本の紡績業は厳しい競争にさらされます。多くの企業が生産拠点を海外に移転したり、事業を縮小したりするなど、衰退の一途をたどりました。

しかし、近年では、高付加価値製品の開発や海外市場への進出など、新たな取り組みによって復活を遂げようとしています。とある企業では、繊維事業において、高機能素材やサステナビリティに配慮した素材の開発、グローバルな販売ネットワークの構築などに取り組んでいます。

3. 日本の紡績業の現状

日本の紡績業は、現在どのような状況にあるのでしょうか?
ここでは、生産額、輸出入額、企業数、従業員数などの統計データ、経済産業省の資料などを参考に、現状を客観的に分析していきます。

① 統計データで見る日本の紡績業

経済産業省の「繊維産業の現状と2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)の概要」によると、2020年の繊維産業の生産額は約2兆円、輸出額は約5,000億円、輸入額は約2兆5,000億円となっています。また、事業所数は約9,400、従業員数は約20万人です。

これらのデータから、日本の紡績業は、国内市場が縮小傾向にある一方で、海外からの輸入依存度が高いことが分かります。

② 業界全体の動向

日本経済新聞の「繊維」の業界動向ページによると、繊維業界は、コロナ禍からの回復基調にありますが、原材料価格の高騰や人手不足が課題となっています。

また、サステナビリティへの関心の高まりから、リサイクル繊維やオーガニックコットンなどの需要が拡大しています。

③ 市場トレンド

近年では、機能性や快適性に優れた高機能繊維、環境に配慮したリサイクル繊維、ファッション性の高い素材など、多様なニーズに対応した製品が求められています。

  • 高機能繊維
    吸水速乾性、UVカット、抗菌防臭など、様々な機能を持つ繊維が開発されています。スポーツウェアやインナーウェアなどに利用され、快適な着心地を提供しています。
  • リサイクル繊維
    使用済みの衣料品やペットボトルなどを原料とした繊維。環境負荷の低減に貢献し、循環型社会の実現に役立ちます。
  • オーガニックコットン
    農薬や化学肥料を使わずに栽培された綿花から作られた繊維。肌に優しく、環境にも優しい素材として注目されています。

4. 日本の紡績業が抱える課題

日本の紡績業は、輝かしい歴史と伝統を持ちながらも、現在、様々な課題に直面しています。
ここでは、日本繊維産業連合会や日本繊維産業連盟の資料などを参考に、主要な課題を整理し、詳しく解説していきます。

① 国内市場の縮小

日本の紡績業が抱える最も深刻な課題の一つが、国内市場の縮小です。少子高齢化の進展により、国内の人口は減少傾向にあり、それに伴い衣料品の需要も減少しています。総務省統計局のデータによると、2023年における日本の総人口は1億2,547万人であり、前年比で80万人も減少しています。

また、消費者のライフスタイルの変化も、衣料品需要の減少に拍車をかけています。かつては、冠婚葬祭やビジネスシーンなど、様々な場面で服装のTPOが重視され、それに応じた衣料品の需要がありました。しかし、近年ではカジュアル化が進み、フォーマルな服装をする機会が減っています。

さらに、ファストファッションの台頭も、国内市場の縮小に大きな影響を与えています。ファストファッションは、低価格で流行の衣料品を大量に販売するビジネスモデルであり、消費者の購買意欲を刺激する一方で、国内の繊維製品の需要を奪っています。

② 海外との競争激化

グローバル化の進展に伴い、中国や東南アジア諸国など、人件費の安い国々からの輸入が増加しており、日本の紡績業は厳しい価格競争にさらされています。これらの国々では、人件費だけでなく、土地やエネルギーコストも安く、大量生産によるコスト削減が可能です。

例えば、中国では、政府の支援策や豊富な労働力などを背景に、繊維産業が急速に発展しています。中国製の衣料品は、低価格でありながら品質も向上しており、日本市場においても大きなシェアを占めています。

また、ベトナムやバングラデシュなどの東南アジア諸国も、繊維産業の重要な生産拠点となっています。これらの国々では、人件費が安く、労働力も豊富であるため、低コストで衣料品を生産することができます。

③ 後継者不足

繊維産業は労働集約型であり、長時間労働や低賃金などが敬遠されがちです。そのため、若者の繊維産業離れが進み、後継者不足が深刻化しています。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2022年の繊維工業の平均月収は28万7,000円であり、全産業平均の34万6,000円を大きく下回っています。また、長時間労働も問題視されており、繊維工業の年間総実労働時間は1,848時間であり、全産業平均の1,734時間よりも100時間以上も長くなっています。

このような労働条件の厳しさから、若者にとって繊維産業は魅力的な職場とは映らず、後継者不足が深刻化しています。魅力的な職場環境づくりや人材育成など、後継者不足を解消するための取り組みが急務となっています。

これらの課題を克服し、日本の紡績業が未来に向けて発展していくためには、業界全体で力を合わせて、積極的な改革に取り組む必要があります。

5. 日本の紡績業の将来展望

厳しい状況に置かれている日本の紡績業ですが、将来の発展に向けて様々な取り組みが行われています。ここでは、日本繊維産業連盟の資料などを参考に、将来展望を多角的に分析していきます。

① 高付加価値化

高機能繊維、高品質素材、ファッション性の高い素材など、付加価値の高い製品を開発することで、海外との差別化を図り、競争力を強化していく必要があります。例えば、スポーツウェアや医療用繊維など、特殊な機能を持つ繊維の開発や、天然素材と合成繊維を組み合わせた新しい素材の開発などが進められています。

  • 高機能繊維の開発
    スポーツウェアやインナーウェアなどに利用される吸水速乾性、UVカット、抗菌防臭など、様々な機能を持つ繊維の開発が進んでいます。
  • 高品質素材の開発
    カシミヤやシルクなどの高級天然素材を使用した高品質な製品は、海外市場でも高い評価を得ています。
  • ファッション性の高い素材の開発
    独特の風合いや光沢を持つ素材、染色や加工技術を駆使した素材など、ファッション性の高い素材が開発されています。

② 技術革新

AIやIoTを活用した生産効率の向上、3Dプリンターなどの最新技術の導入、新素材の開発など、技術革新によって生産性向上や新たな価値創造を目指しています。AIを活用することで、需要予測や生産計画の精度向上、品質管理の自動化などが可能になります。また、IoTを活用することで、生産設備の稼働状況をリアルタイムで監視し、故障の予兆を検知することで、設備の稼働率向上やメンテナンスコストの削減などが期待できます。

  • AIの活用
    需要予測、生産計画の最適化、品質管理の自動化など、様々な工程でAIが活用されています。
  • IoTの活用
    生産設備の稼働状況の監視、故障予知、エネルギー消費量の削減など、工場全体の効率化に貢献しています。
  • 3Dプリンターの導入
    複雑な形状の製品や少量生産の製品を効率的に製造することができます。

製品の高付加価値化はもちろんですが、単に高付加価値化しても、それに対する適切な原価計算、利益管理ができないと意味がありません。DX・AIが叫ばれている現在ですが、製品個別に実際にかかる原価を正確に把握し、それをもとに工程別や担当者別で原価指標を設け、各種分析における原価低減の仕組みを構築することが重要です。
製品が多様化している現在では、すべての製品の原価・利益をすべて頭の中で把握することは非常に難易度の高いものです。
だからこそ、システムで管理し、データをもとに管理できる体制を構築すべきなのです。

③ 持続可能な社会における役割

環境問題への対応、リサイクル、サステナビリティなど、持続可能な社会の実現に向けて、繊維産業は重要な役割を担っています。例えば、衣料品の製造過程で発生する廃棄物の削減、リサイクル素材の利用、有害物質の使用削減など、環境負荷を低減するための取り組みが求められます。

  • 環境負荷の低減
    CO2排出量の削減、水資源の節約、廃棄物の削減など、環境負荷を低減するための取り組みが重要です。
  • リサイクル
    使用済みの衣料品やペットボトルなどを原料としたリサイクル繊維の利用を促進することで、資源の有効活用と廃棄物の削減に貢献します。
  • サステナビリティ
    環境に配慮した素材の利用、倫理的な調達、労働環境の改善など、持続可能な社会の実現に向けて、様々な取り組みが行われています。

6. 紡績業の未来:可能性と課題

最後に、紡績業の未来について、可能性と課題の両面から考察していきます。

④ 新技術、新素材

AI、IoT、3Dプリンターなどの新技術の導入により、生産性向上や新たな価値創造が期待されます。AIを活用した品質管理の自動化、IoTを活用した生産ラインの効率化など、様々な分野で新技術が導入されています。

また、ナノファイバー、スマートテキスタイルなど、新素材の開発も進んでおり、医療、スポーツ、環境など、様々な分野での応用が期待されます。例えば、ナノファイバーは、極細の繊維で、高い強度と柔軟性を持ち、医療分野では人工血管や臓器の再生医療に、スポーツ分野では高機能ウェアに利用されています。

  • スマートテキスタイル
    センサーや電子回路を組み込んだ繊維。体温や心拍数を測定したり、情報を発信したりすることができます。医療、スポーツ、ファッションなど、様々な分野での応用が期待されます。

⑤ SDGsへの貢献

環境問題への対応、リサイクル、サステナビリティなど、SDGsへの貢献は、繊維産業の重要な課題です。衣料品の製造過程で発生するCO2排出量の削減、水資源の節約、廃棄物の削減など、環境負荷を低減するための取り組みが求められます。また、リサイクル素材の利用やオーガニックコットンの使用など、環境に配慮した素材の利用も重要です。

⑥ 消費者ニーズの変化

消費者の価値観やライフスタイルの多様化に伴い、繊維製品に対するニーズも変化しています。機能性、快適性、ファッション性、環境への配慮など、多様なニーズに対応した製品開発が求められます。

7. まとめ

この記事では、日本の紡績業について、歴史、現状、課題、将来展望などを詳しく解説しました。

紡績業は、私たちの生活に欠かせない衣料品や繊維製品を生産する、重要な産業です。しかし、現在、国内市場の縮小、海外との競争激化、後継者不足など、様々な課題に直面しています。

これらの課題を克服し、未来に向けて発展していくためには、高付加価値化、技術革新、海外市場への進出など、積極的な取り組みが必要です。
また、製品別の原価を正しく把握し、適切な利益管理と原価低減を実施することにより、自社にとって生き残る戦略を立てることが出来るようになるのです。

紡績業の未来は、決して楽観視できるものではありませんが、新技術、新素材、SDGsへの貢献など、多くの可能性を秘めています。

この記事が、日本の紡績業に対する理解を深め、今後の発展を考えるきっかけになれば幸いです。

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