記事公開日:2024.07.04
最終更新日:2024.07.16

AI外観検査とは?従来の画像検査との違い、導入のメリットや注意点とは?

いつもご愛読いただきありがとうございます。
製造業における、製品の品質管理は企業の信頼性を担保する重要な要素ですが、従来の手作業による検査は効率面や品質の均一性において課題が残されているケースが多くあります。
本記事では、AIを活用した外観検査の自動化について、その効果を最大限に引き出す方法をご紹介いたします。
AI外観検査の基本的な概要から導入メリット、よくある誤解、導入プロセスやよくあるFAQまで詳しく解説いたします。
本記事をお読みいただくことで、AI外観検査の基礎から導入方法までを包括的に理解することができます。外観検査の効率化を検討中の企業様は、ぜひ最後までご一読ください。

1.AI外観検査とは?


外観検査は、製品が仕様通りの外観を保っているかを確認する工程です。品質管理において、外観検査は非常に重要です。まずは、AIを活用した外観検査について解説していきます。

1-1.AIとは

AI(人工知能)とは、人間の知能を模倣し、データ解析や学習を行うシステムです。AIはディープラーニングなどの技術を活用して、大量のデータを解析し、人間と同等、あるいはそれ以上の精度で判断を行います。AI技術は医療、金融、製造業などさまざまな分野で利用されており、特に画像認識や不良検知の分野で高い精度を誇ります。

AIの歴史は1950年代にさかのぼります。当初は理論的な研究が主でしたが、現在では実用的な応用が進んでいます。2022年11月30日にはChatGPTがリリースされ、AIの実用性は加速的に高まっています。画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野で大きな成果を上げており、製造業でもその適用範囲が広がっています。

1-2.AI外観検査とは

AI外観検査は、製品の外観をAI技術を用いて自動的に検査する方法です。具体的には、カメラで撮影された画像をAIが解析し、不良箇所や不良を検出します。AIの学習方法にもよりますが、従来の目視検査やルールベースの画像検査と異なり、AI自体に不良データを学習させ、製品の良否判定をおこなわせることもできます。

AI外観検査は、特に大量生産をおこなっている工場で非常に有効です。例えば、自動車部品の製造ラインでは、毎分数百個の部品が生産されますが、このすべてを人間が目視で検査することは現実的ではありません。AI外観検査を導入することで、即時に大量の部品を検査することができ、生産性が大幅に向上します。

1-3.AI外観検査と従来の外観検査⼿法との違い

従来の目視検査は、人間の経験や勘に頼る部分が大きく、検査をおこなう人や、その人の状態などによって検査結果にばらつきが生じやすいという欠点があります。特に検査員が疲労している場合や、スキルにばらつきがある場合、不良品を見逃すリスクが高まります。これに対し、AI外観検査は一定の基準に従って一貫した検査を行うため、信頼性が高いと言えます。

また、従来の画像検査システムでは、あらかじめ決められたルールに基づいて不良を検知します。しかし、作業員の経験に頼るような、難易度の高い外観検査を自動化する場合は、不良のモデル化が困難であるという欠点がありました。AI外観検査は、機械学習アルゴリズムを使用してデータから学習をおこなうため、不良のモデル化が難しい、曖昧な不良パターンの自動化にも対応することができます。

AI外観検査の導入には初期コストがかかりますが、長期的に見れば検査の効率が向上し、不良品の減少によるコスト削減効果が期待できます。AI外観検査を導入することで、品質管理のレベルが向上し、製品の信頼性を高めることができます。

2.AI外観検査の2つのメリット


AI外観検査には、以下の2つのメリットがあります。
・省人化によるコスト削減と生産性向上
・検査品質の向上と均一化

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1.AI外観検査のメリット①:省人化によるコスト削減と生産性向上

AI外観検査を導入することで、人手による検査が不要となり、人件費の大幅な削減が可能です。時間や人手のかかっている作業を選定し、自動化することができれば、浮かせた工数分、人件費を削減することができます。また、製造ラインを24時間稼働させることもできるようになるため、さらなる生産性向上が期待できます。

さらに検査を自動化することで、検査員をより付加価値の高い業務に配置することが可能になります。例えば、生産ラインの監視や機械の保守、オペレーションの最適化など、より付加価値の高い業務に集中することができます。これにより、工場全体の生産性向上と効率化を図ることができます。

2-2.AI外観検査のメリット②:検査品質の向上と均一化

AI外観検査は、設定された基準に基づいて検査をおこないます。人間の疲労や主観によるばらつきを防ぎ、精度高く検査をおこなうことができます。

AI外観検査では、微細な不良や目に見えない欠陥を検出することができます。例えば、プリント基板の微細なクラックや汚れ、半導体チップの微細な不良など、人間の目では見逃しがちな不良を検出することができます。

3.AI外観検査の2つのデメリット


AI外観検査には既存の検査方法にはないメリットがありますが、いくつかのデメリットや課題も存在します。
・高コストの初期導入費用
・データの質と量に依存

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3-1.AI外観検査のデメリット①:高コストの初期導入費用

AI外観検査システムの導入に際しては、ハードウェア、ソフトウェア、AIモデルの開発費用などの初期投資が必要になります。特に、高度なAIモデルを構築するためには、大量のデータや専門的な知識が必要であり、その開発のためのリソースが求められます。中小企業にとっては、この初期投資が高額であり、導入をためらう要因になるケースがあります。

3-2.AI外観検査のデメリット②:データの質と量に依存

AI外観検査の精度は、学習に使用するデータの質と量に大きく依存します。適切なデータを収集し、正確にラベル付けすることが求められます。例えば、不良対象が上手く撮像できていない場合や、撮像データが数十データしかない場合、AIモデルの検査精度は低下し、誤検出や見逃しが発生するリスクが高まります。どんなに質の高いAIを活用しても、適切なデータを収集できていなければ、理想的な外観検査の自動化を実現することは難しいです。

4.「AIによる外観検査」でよくある誤解


AI外観検査の導入提案をしていく中で、残念ながらAIに対する誤解が見られることがあります。よくある例として、「AIは完全無欠であり、人間の介入なしで検査を自動化できる」と考えがちですが、これは誤りです。先ほど記載した通り、AIの精度は学習データに依存しているため、データの質や量が検査結果に影響します。また、環境の変化や新たな不良パターンに対応するための継続的な学習が必要です。さらに、重要な判断には人間の確認が求められることもあります。

例えば、ある自動車メーカーにおいて、学習データが偏っていたり、学習事項を適切に更新していなかったことから、AIが誤った不良検出を多発させた事例があります。AI外観検査システムは常に最新のデータに更新しながら、運用していくことが求められます。また、すべての不良をAIで検出できるわけではないため、特に複雑な検査結果には人間による最終確認が必要です。

5.よくある質問


次に、外観検査AIを導入する際によくある質問についてご紹介いたします。

5-1.AI外観検査の導入にはどのくらいのコストがかかりますか?

初期投資としては数百万円から数千万円が一般的です。具体的な費用は、検査対象の規模や求める精度、必要な機能、自動化によって削減できる人件費によっても異なります。費用対効果を考慮し、適切なシステムを選定することが重要です。

5-2.AI外観検査はどのような業界で導入されていますか?

AI外観検査は製造業、自動車産業、食品産業、医薬品産業など、多岐にわたる業界で導入されています。特に製造業では、部品の表面検査や組み立て製品の最終検査などで使用され、高精度な検査結果と効率化が期待されています。

6.AIで外観検査をおこなうかどうか?以外の検討事項

6-1.AI以外の検討事項

検査工程を自動化する際は、AIで外観検査をおこなうかどうか?以外にもさまざまな検討事項があります。

例えば、
・照射光:製品に赤/青/緑/白い光を当てるのか?紫外線を当てるのか?
・装置の位置:どの角度から光を照射するのか?どの位置から製品を撮像するのか?
・画像ソフト:機械学習をさせるのか?ルールベースで画像認識をさせるのか?AIを使う
のか?
・カメラのスペック:どの程度の解像度のカメラが必要なのか
・タクトタイム:どのような仕様にすれば理想のタクトタイムが実現できるのか。カメラ
の台数を増やすのか?より高速処理できる画像ソフトを使うのか?etc…

示した通り、画像検査を自動化する手法は非常に多岐に渡ります。一つ一つを精査し、自
社に合った適切な手法を検討することが重要です。

6-2.費用対効果の検討

技術的な部分と合わせて検討すべきは、費用対効果の検討です。

自動化といっても、うちは多品種過ぎて費用対効果が出ないのではないか…と考えている企業様もいらっしゃるかと思います。
これらは、自動化品種や検査ラインの組み方、画像処理の方法を工夫することで、多品種でも費用対効果の出る自動化を実現できる可能性があります。

ロボットなどでワーク投入などを自動化させる際は、原則一つのティーチングにおいて一
つの製品のみを自動化させることができます。
一つ一つの品種に対してそれぞれティーチングを行う必要があるので、品種追加をしよう
とすると非常に工数がかかってしまいます。
しかし、外観検査においては、厳密には異なる品種でも、同じ製造ラインにて自動化をお
こなうことができます。

これは、外観検査の際に製品に対しておこなう動作が“撮像”であることに起因していま
す。
製品がカメラの画角に収まっていれば、さまざまな不良データを学習させたり、照射する
光の角度や種類を変えることで、同一ラインにて多品種製品の自動化をおこなうことがで
きます。

品種選定、検査ラインの組み方、画像処理方法などをしっかりと精査することで、費用対効果の出る自動化を実現しましょう。

7.まとめ

AI外観検査は、外観検査の自動化と品質向上に大きく寄与する技術です。
省人化によるコスト削減、検査品質の向上など、多くのメリットがあります。
一方で、導入前には詳細な検討をおこない、実際に費用対効果が出る形で導入を進めていく必要があります。

船井総研では、AI外観検査の自動化コンサルティングをおこなっております。要件定義から機器選定、補助金活用~導入後の運用支援まで、一貫して導入のお手伝いをさせていただいております。
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