記事公開日:2025.05.16
最終更新日:2025.05.16
「動かない」ではなく「動かす!」基幹システム 導入成功への道!

目次
1.事例企業様の概要
【調理装置製造業 T社様】
■所在地:茨城県
■従業員数:約150名
■事業内容:調理装置関連製品の製造・販売
T社様は、現状のアナログ手法での業務内容について、将来を見据えたシステム化を推進して、基幹システムの導入に成功いたしました。そんなT社様が導入時に直面した様々な課題を乗り越えて、「動かない」と思ったシステムを「動かした」事例をご紹介いたします。
2.現場任せの製造/属人化/進捗が見えない
これまでT社様では、生産管理部として生産計画や指示を実施していましたが、「現場判断で生産される品目がある」、「熟練の担当者しか生産計画が組めず、熟練者に依存せずに指示が出せる仕組みがない」、「作業進捗が見えない」などの課題がありました。そのような中で、現状のアナログ業務から脱却し、基幹システム導入を通じた業務の一元化・可視化などを進めていくことを決断されます。そして、基幹システム導入を行う上で、最も重要である、目的/コンセプトを下記のように掲げ、基幹システム導入を進めます。
■目的「業務標準化を推進し、持続可能な事業とする」
・受発注業務、在庫管理、生産計画などをシステムで一元管理
・在庫管理、棚卸しの時間短縮等による間接コスト削減と生産性改善
・事務経理処理においての二重三重の業務を排除
■コンセプト
・パッケージシステムに業務を合わせる。【業務標準化】
・経営者を交えたプロジェクトメンバーを中心に全社で推進する。【担当者に任せきりにしない】
・新業務開始にあたり時流に則ったルールを明確にしてこれを遵守する。
上記コンセプトを社長に宣言していただくことによって、「標準システム以外使用しない(新たに導入するパッケージシステムに業務を合わせる)」、「追加開発をしない」、「運用を変更しないということはしない」、「同じものを2度入力しない」という、プロジェクトルールの徹底化がなされました。
つまり、『パッケージに合わせて、カスタマイズをせず、運用・ルールを柔軟に変える』ということです。
3.システム化への最大の課題 「マスタ化」
アナログ業務とシステム業務の最大の差は「マスタの有無」です。システムというのは基となるマスタがあることが前提となっています。マスタが予め設定されており、各人が自由に好きなように処理ができないからこそ、「業務が標準化される」という仕組みなわけです。
つまり、アナログ業務からマスタを作成するのは、非常に難しく、プロジェクトが行き詰まる最大の要因です。その中でも特に重要なのは「品目マスタ」であり、「自ら生産している品目の体系化」ができるかがキーとなります。
本事例においても、この「品目マスタ」を作成するのに、膨大な時間を要しました。更にマスタ作成後も現場からの理解を得られずに、活用してもらえなかった場面もありました。このような状況において、最悪のケース「今までのやり方のほうがよいのでは・・」という流れを断ち切るために、実践したのが徹底的な個別レクチャーです。各現場個々人の理解を深めるために、少人数制の研修会を毎週のように開催しました。時には完全な個別指導も含めて、3ヶ月間徹底的にトレーニングする期間に充てることによって、システムへの理解や操作の習熟につながり、次第に反対意見も薄れてきて、会社全体が1つにまとまり始めました。
4.Microsoft社の『Dynamics 365 Business Central』により、生産管理の標準化、脱属人化、効率化を達成
前述のようなコンセプトを実現するために、T社様では Microsoft 社の『Dynamics 365 Business Central』というパッケージ基幹システムを導入し、既存のアナログ業務のデジタル化を実現されました。
1)Dynamics導入後の効果
①日々の生産実績計上は現場による手書き日報にて管理されていた
⇒Dynamicsにより、データが一元化され、生産現場と生産管理部の連携を実現
②受発注状況が一覧で確認が行えていなかった
⇒Dynamics標準にて受注・発注入力を行うことにより案件状況検索性が格段に向上した
③棚卸作業については、エクセル、紙による手作業で行っていた
⇒Dynamicsにより、棚卸集計作業が自動化された
(※今後、理論在庫の精度向上により実棚回数を減らすことも視野に)
2)現在進行中の取り組み
①Dynamicsへ蓄積されるデータを分析活用
・「集計作業時間」を削減⇒データ分析を基に「考える時間」に置き換える
・データを取る(エクセル汎用性)⇒在庫状況を基に生産計画の見直し検討等を実施
②システム汎用性が高い特性を活かし、他事業部への導入を進める
・現在、他事業部への導入が進行中⇒今後の売上増に耐えるための管理体制を築く
・将来的な販売戦略拡大に繋げる
3)成果に繋がったポイント
前述のように今回の基幹システム導入において、成果に繋がった最大のポイントは、『業務をパッケージに合わせる為に、現状の運用・ルールを柔軟に変える』を徹底されたことです。
システムを導入するにあたって非常に大事なポイントであり、目的/コンセプトの内容を遵守・実現するためにも、とても重要なことです。ただし、これは宣言をすればそのように進むということではなく、常に導入過程における各ポイントでキーマン(本プロジェクトでは社長)の指示が的確になされていたことを意味します。これにより現場メンバーが判断に迷うことなく、正しい導入を進めることができました。更に、プロジェクトメンバーからの徹底的な現場担当者指導を通じて、本プロジェクトの成功に向けて会社全体を巻き込む雰囲気を加速させることができました。
4)さいごに
基幹システムの導入において、「自分達では動かせない、活用できない」 というお声をよく耳にします。その要因として、「システムをプロダクトとして導入するだけで業務整理を実施しない」「カスタマイズを実施してしまっていて属人化したシステムになってしまっている」「操作方法やルールが分からず迷っている」などが挙げられると思います。このような状態になってしまっている場合、「稼働できないから今までのやり方でよいのでは・・・」という意識が各メンバーの中に生まれてしまいます。
会社全体として、全員が一丸となってシステムを使用できる(システムが稼働している)状態を作るためには、大前提として「一人一人が当事者という意識を持つこと」が求められます。加えて、「システムを動かすためのサポート環境」を整備していくこともまた重要です。「動かない」という状態から「動かす」方法があるということを本事例にて、お伝えさせていただきました。
【皆様の会社では以下のようなお悩みはありませんか?】
https://lp.funaisoken.co.jp/mt/form01/inquiry-S045.html
◆現行システムが老朽化し、サポートの終了も間近に迫っているため、現行システムの刷新を考えている
◆システムが複雑化・ブラックボックス化し、業務の全体像を把握できない
◆部門ごとに異なるシステムを利用しており、データ連携が困難
◆情報システム部門やシステム担当者が不在、または専門知識を持つ人材が不足している
◆業務プロセスが標準化されておらず、非効率な業務が多い
◆属人的な業務が多く、担当者しか内容を理解していない
◆データ入力作業が多く、人的ミスが発生しやすい
◆データの可視化・分析が不足し、経営判断に役立てられない
◆部署間の連携がスムーズに行われず、情報共有が遅れる
◆在庫管理が正確に行えず、欠品や過剰在庫が発生しやすい
◆受注・発注管理が煩雑で、顧客対応に時間がかかる
◆会計処理が手作業中心で、時間と手間がかかる
◆経営状況をリアルタイムに把握できず、迅速な意思決定ができない
◆業務改善の必要性を感じているが、どこから手をつければ良いかわからない
上記のようなお悩みが1つでも当てはまる場合は、是非、船井総研の「無料オンライン相談」をご利用ください。基幹システム(ERP)導入をはじめとした、業務改革を専門とする経験豊富なコンサルタントが個別に対応させていただきます。
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