記事公開日:2025.09.30
最終更新日:2025.09.30

【事例解説】多品種少量生産を行う家具製造業のERP刷新!その成功の鍵は?

いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。

さて、突然ですが、皆さまの企業では、既存の基幹システムやアナログな運用が原因で業務が属人化し、真の原価や生産性を正しく把握できていない――そんな課題を抱えてはいませんか。

本記事では、多品種少量生産の課題に直面するA社の具体的な事例を元に、企業の持続的成長に不可欠なERP刷新をどのように行うべきか、その具体的な要点と解決策を解説します。

A社の事例:家具製造業のERP刷新がなぜ必要なのか

A社は、直営店からの受注や卸先からの発注を通じて、多岐にわたる家具の製造・販売を行っています。特に、別注品や特注品といった顧客の要望に応じたカスタムメイドの受注生産が多く発生するため、製品仕様や製造プロセスが非常に複雑になりがちです。現状の業務プロセスを詳しく見ていくと、多品種少量生産特有の複雑な課題が浮き彫りになります。

商品マスター/部品表(BOM)の課題
A社では、カタログに掲載されている商品であっても、システム上の商品マスターが完全に整備されていないケースが多く見られます。特に、製品を構成する細かな部品(ネジや釘など)の情報は、システムへの登録作業が煩雑であるため省略されがちです。その結果、製造原価を正確に算出できず、システムが提示する原価情報が現場で信用されない事態が発生しています。さらに、別注品が発生した場合には、デザインチームがその都度、オーダーシートや図面をもとに商品マスターを作成し直す必要があり、大きな負荷となっています。商品マスターに部品情報が正しく紐づいていないため、本来は部品発注が必要な資材が登録できず、製造時に材料が不足するリスクも生じています。

生産計画と進捗管理の属人化
A社の生産計画業務は、システムの負荷シミュレーション機能が不完全なため、生産管理担当者の長年の経験や勘に大きく依存しています。例えば、ソファなどの製造において、どの機械にどの程度の負荷がかかるかという占有時間はシステムに登録されていません。そのため、生産管理担当者がExcelやスプレッドシートを使って手作業で負荷調整を行わざるを得ない状況です。加えて、現場の作業者はシステムに搭載されている開始・完了ボタン(作業時間の計測機能)を正確に使用しない傾向があります。理由としては、正確な作業時間を記録すると残業が増えてしまうことや、入力作業自体が煩雑であることが挙げられます。その結果、工程ごとの正確な工数が把握できず、生産管理の精度が低下し、業務が特定担当者に属人化する状態が続いています。

在庫・調達管理におけるデータ連携の欠如
在庫・調達業務においても、データの分断が大きな課題です。A社では特定の部品を複数のサプライヤーから調達していますが、既存システムの制約により、一つの品目コードにつき一社分の在庫情報しか保持できません。そのため、調達担当者は複数サプライヤーの発注状況を把握するために、やむを得ずExcelで外部管理を行っています。また、内箱など生産に必要な部品は、受注部門の情報を基にDX部門がリストを作成し、それをデザインチームが受け取ってマスターを整備した上で製造部門へ共有するという複雑な流れを経ています。特に、返品品や展示品といった在庫はシステム上で管理されておらず、スプレッドシートで個別に管理されているため、在庫移動や数量を正確に把握することができません。このような在庫管理の曖昧さは、欠品や過剰在庫のリスクを高め、ひいては家具製造業のキャッシュフローにも悪影響を及ぼします。

家具製造業のERP刷新を成功させるための具体策

A社の事例から導き出される、ERP刷新を成功させるのための具体的な解決策を二つの柱に分けて解説します。

  • 柔軟な品番体系とマスター整備による原価の明確化
    最優先すべきは、全社共通で活用できる柔軟な品番体系を確立することです。現在のA社のように、個別のカスタマイズ品(別注)ごとにマスター登録を行っていると、マスターの件数が際限なく増え続け、管理負荷が膨大になります。そこで、親品番に共通の構造を持たせ、木材の種類やサイズ、仕上げといったバリエーションを属性情報として管理する「構成部品分散型」の考え方を導入することが求められます。
  •  

  • システムを活用した業務の標準化と生産性の向上
    属人化している生産計画や手作業での情報管理を脱却するためには、デジタル化と業務の標準化をERP刷新に組み込む必要があります。

    まず、生産計画の精度を高めるために、各工程の標準工数をマスターに登録し、システムの負荷シミュレーション機能を活用します。これにより、担当者の経験や勘に依存せず、システムが算出した根拠に基づく均一化された生産指示が可能となります。

    さらに、現場での作業実績を正確に把握するためには、システム入力に不慣れな作業者でも容易に利用できる仕組みが必要です。例えば、QRコードの読み取りやタブレットを利用した簡易的なインターフェース(A社では一部でKintoneを活用)を導入することで、作業者がQRコードをスマートフォンで読み込み、使用数量を登録するだけで、生地や資材の消費量をリアルタイムで在庫に反映させることができます。

    加えて、設計図面(CADデータ)と商品マスターを連携させ、図面情報から直接、生産指示書や資材ピッキングリストを生成する仕組みを構築すれば、デザインや調達業務における二重入力や情報連携のミス(例:誤った図面の送付や金具の供給情報の誤り)を防止することが可能です。

まとめ

A社の事例が示すように、多品種少量生産を行う家具製造業のERP刷新は、単なるITシステムの入れ替えに留まりません。それは、長年の複雑な受注生産体制が生み出した「マスター管理の不備」と「業務の属人化」という二大課題を解決するための、全社的な業務改革プロジェクトです。特に、原価の正確な把握と生産性の向上を目的とした「柔軟な品番体系とマスター整備」は、ERP刷新の成功を左右する最も重要な要素となります。データの一元化と業務の標準化を推進することで、A社のような家具製造業は、今後も顧客ニーズに応え続ける強みを維持しつつ、より強固で効率的な経営基盤を確立できるでしょう。

【10月・11月オンライン開催】
全国どこからでも参加可能!

「会社の業務の全体像が見えない…」
「リアルタイムな経営状況が見えにくい…」
そんなお悩みを抱える企業経営者の皆様へ

ERP未経験者・初心者歓迎!
初めてのERP導入!経営セミナー
~今からでも遅くない!ERPの基礎知識を事例とともに徹底解説!~

【オンライン開催日程】
2025/10/25 (土)10:00~12:00
2025/11/08 (土)10:00~12:00
2025/11/15 (土)10:00~12:00
2025/11/22 (土)10:00~12:00

https://www.funaisoken.co.jp/seminar/133209

「うちの会社に本当に必要なのだろうか?」
「導入の具体的な進め方がわからない」

そのような不安を解消するため、船井総研では「平日に時間が取れない中堅・中小製造業経営者」の皆様に向けたオンラインセミナーを開催します。

このセミナーでは、ERPの基礎知識を分かりやすく解説し、実際に導入して成功した企業の具体的な事例をご紹介します。リアルな成功体験を聞くことで、導入への不安を払拭できるはずです。

オンライン開催ですので、全国どこからでも、移動時間や交通費を気にせずご参加いただけます。また、平日お忙しい皆様のため、開催は土曜日としました。

本セミナーが、貴社の経営課題を解決し、次の成長ステージへ進むためのきっかけとなれば幸いです。

無料経営相談の際はフォームよりお気軽にお問い合わせください。お電話でのお問い合わせは 0120-958-270へ(平日9時45分~17時30分)