中堅・中小製造業におけるカーボンニュートラルの取り組みと課題
~サプライチェーン全体でのGHG排出量削減に向けた、中堅・中小製造業が果たすべき役割とDXの融合戦略とは~
2024.10.24
大手メーカーがサプライチェーン全体でのGHG排出量削減を進める中、中堅・中小製造業にもカーボンニュートラルへの取り組みが求められています。
本コラムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用し、製造工程データを基にした脱炭素化の実現方法について解説します。
製造業におけるカーボンニュートラル施策は、非常に重要です。
日本において部門別CO2排出量の3割以上は産業部門となっており(※1)、産業部門から排出されるCO2の9割以上を製造業が占めています(※2)。
製造業はCO2の排出量が多い業種だからこそ、カーボンニュートラルの取り組みが大切なポイントです。
※1:全国地球温暖化防止活動推進センター|日本の部門別二酸化炭素排出量(2021年度)
※2:環境省|産業部門における エネルギー起源CO2
1.製造業におけるカーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、GHG(温室効果ガス、特に二酸化炭素: CO2)の排出量と吸収量が実質的にゼロになる状態を指します。
つまり、企業や個人、地域が活動によって排出するCO2を、再生可能エネルギーの利用や森林の保護、カーボンオフセット(排出権の購入など)によって相殺し、地球全体でバランスを取ることです。
ここでは、製造業におけるカーボンニュートラルの特徴について説明します。
今までの製造業の脱炭素化は
再生可能エネルギーの利用
設備の効率化
など、自社で消費するエネルギー削減によるGHG(温室効果ガス)排出量削減がメインでした。
しかし、これからは原料調達から製造・物流・販売・廃棄まで製品すべてのプロセスで発生するGHG(温室効果ガス)排出量削減を考える必要があります。
これからの製造業の脱炭素化の方向性として、“製品のライフサイクル全体を通した省エネ・脱炭素化を目指す、ライフサイクルアセスメント”が求められます。
ライフサイクルは製品の全ライフサイクルにわたる環境影響を評価するため、サプライチェーン全体の排出量もこの中に含まれます。これにより、どの段階で最も多くの排出が発生しているのかを特定し、改善策を立てる基礎データが得られます。
このため、まずはサプライチェーン排出量を考える必要があります。
サプライチェーン排出量 = Scope1排出量 + Scope2排出量 + Scope3排出量
と定義されます。
※画像引用元:環境省|排出量算定について
Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
2.中堅・中小製造業でカーボンニュートラルが求められる背景
大手完成品メーカーはScope3のGHG(温室効果ガス)排出量削減を取り組み始めており、今後は製品LCA(ライフサイクルアセスメント)管理へ移行していきます。
GHG(温室効果ガス)排出量の算定範囲を自社からサプライチェーン全体へ、製品サイクル全体へ拡大していくことになります。
このサプライチェーンを担う、大手完成品メーカーに部品を供給している中堅・中小製造業企業も、これまで積極的に取り組んでいなかった脱炭素化に対応する必要が生じてきます。
これは非上場企業であっても最低限、Scope1/Scope2に該当する自社のCO2排出量の測定、公開、削減の取り組みが求められることになり、最終的には協力会社の排出量の把握も含め、自社のサプライチェーン全体であるScope3への対応が目標となります。
自社のCO2排出量削減を行うためには、まずは自社の排出量(Scope1,2)の把握が必要です。
Scope1は直接排出で、自社の燃料の使⽤、⼯業プロセスでのCO2排出量
Scope2は関節排出で、他社で⽣産されたエネルギーの使⽤(主に電⼒)に伴うCO2排出です。
ここで、”なぜサプライチェーン排出量“を算出するのか?を考えてみたいと思います。
目的は主に3つが考えられます。
①自社のホットスポットがどのカテゴリか?を知ることが出来る
ホットスポットを明確にすることにより、優先的に削減に取り組まなければならないカテゴリがわかり、効率的にGHG排出量削減に取り組むことが可能になります。
②自社の排出量の削減には限界がある
大幅なGHG排出量削減のためには自社のみではなく、サプライチェーン全体、社会全体でGHG排出量削減を目指すことが必要です。
③サプライチェーン排出量の開示を求める動きの拡大
社会の流れとして、ESG投資の呼び込みなど、資金調達の上でも対応が必要“となってきています。
会社の評価基準として、脱炭素化の取り組みが重視される様になってきています。
今後、大手完成品メーカーのサプライチェーン排出量算定の動きがますます加速するなか、
製造業全体としての取り組みは避けられない状況となっています
3.中堅・中小製造業におけるカーボンニュートラル実現への課題
中堅・中小製造業がカーボンニュートラルに取り組む際の課題を考えます。
主な課題として下記5項目をあげます。
①コスト負担の高さ
再生可能エネルギーの導入、省エネ設備の設置、排出削減技術の導入など、カーボンニュートラルへの取り組みには初期投資が必要です。特に中堅・中小企業は大手企業に比べて資金力が限られており、これが大きな障壁となります。
②技術・ノウハウの不足
カーボンニュートラルを達成するためには、エネルギー効率化技術や再生可能エネルギーの活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が必要ですが、中堅・中小企業にはそのような専門知識や人材が不足していることが多いです。
③エネルギー供給の安定性&エネルギーコスト
再生可能エネルギーへの依存度を高めると、天候や季節によるエネルギー供給の不安定さが課題となります。特に電力を多く消費する製造業では、生産ラインの安定性に影響を与える可能性があります。
また、中堅・中小企業では、再生可能エネルギーの調達先や選択肢が限られることがあります。特に地域によっては、再生可能エネルギーの供給業者が少なく、競争が不十分なため価格が高くなることがあります
④サプライチェーン全体での連携不足
カーボンニュートラルを達成するためには、サプライチェーン全体での排出削減が必要です。しかし、特に中小企業の場合、各社の取り組みに大きな差があるためサプライチェーン全体での連携が難しいことがあります。
その為、各企業が独自に取り組んでも、サプライチェーン全体としての効果が限定されてしまいます。
⑤データの収集と活用の難しさ
カーボンニュートラルに向けて排出量を正確に把握し、効率的な削減策を講じるためには、製造プロセスで発生するデータの収集・管理が不可欠です。
しかし、中小企業ではDXが進んでおらず、データの取得・活用が進んでいないことが多いです。
4.カーボンニュートラル実現のための最初のステップ
先程述べたように、サプライチェーンを構成する製造業企業の多くは、”コスト、設備、人員など限られた条件の中で、脱炭素化に取り組んでいく必要“があります。
これは非常にハードルが高いものになります。
そこで、脱炭素化だけ、としての取り組みではなく
製造の見える化
製品原価管理(製造工数管理)
など、本来の製造業務としてのDXの取り組みと合わせて、そこで得られたデータを活用することで、脱炭素化にも取り組んでいくのが良いのではないでしょうか?
このデータを脱炭素化に活用することで、“データを活用したGHG(温室効果ガス)排出量の把握、見える化”させ、取引先への公正な情報開示を行います。
これにより
製造課題の見える化
製造工程生産性向上
収益の適正化(正確な原価把握、在庫の把握)
など本業の業務改善に加え
GHG(温室効果ガス)排出量把握&削減
これによる企業価値向上の実現も目指すことが出来る様になります。
5.中堅・中小製造業における、カーボンニュートラル取り組み事例3選
中堅・中小企業が行なっているカーボンニュートラルの取り組み事例を紹介します。
環境省、経済産業省、農林水産省が運用している
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 業種別取組事例一覧
のサイトで紹介されている企業から中堅・中小企業の取り組みをご紹介します。
5-1.榊原⼯業株式会社
・企業情報
業種︓製造業(鋳型中⼦製造)
事業概要︓鋳型中⼦(⾃動⾞部品、建設機械部品、農機具部品)の製造
事業規模︓売上 20億円(2020年5⽉期)
拠点数︓5(愛知県⻄尾市3、豊⽥市1、富⼭県⾼岡市1)
従業員数︓140名(パート・アルバイト・実習⽣含む)
・削減⽬標
①Scope1・2の削減⽬標と削減に向けた取り組み
2030年に2018年⽐で50.4%削減
取り組み︓マテリアルフローコスト会計⼿法を活⽤し、会社全体のエネルギー量の⾒える化を実施し取り組む(仕組みで成り⽴つ活動︓1回/⽉低減会議を実施し対応)
②再エネ100%の⽬標について
2025年までに太陽光発電などの環境配慮エネルギーの導⼊を検討していく(1回/⽉の定期取締役会での協議事項とする)
③Scope3の削減⽬標と削減に向けた取り組み
(カテゴリ5)︓2030年に2019年⽐で60%削減
取り組み︓マテリアルフローコスト会計⼿法を活⽤し、会社全体の産業廃棄物量の⾒える化を実施し取り組む
※ゴミステーションの設置等をおこないゴミ分別の細分化と計測を実施し取組を強化
サプライヤーとの連携を取り産業廃棄物低減活動実施を計画
(SANDEELプロジェクト︓廃棄砂活⽤によるさつまいも育成事業の展開)
5-2.株式会社和泉
・企業情報
業種︓製造業
事業概要︓ポリエチレン製気泡緩衝材「エアセルマット」製造加⼯販売。その他梱包製品販売、研磨⽤製品販売。
・削減⽬標
①Scope1・2の削減⽬標と削減に向けた取り組み
2030年までに2019年⽐でCO2排出量46.2%削減
ガソリン⾞からHV⾞やEV⾞への切り替え・照明のLED化
②再エネ100%の⽬標について
2050年までに再エネ100%達成
③Scope3の削減⽬標と削減に向けた取り組み
サプライヤーとの連携により、軽量化添加剤やバイオマスプラスチック製品の販売・拡⼤に取り組み、⽯油由来ポリエチレンの使⽤⽐率の削減を進める。
5-3.株式会社篠原化学
・企業情報
業種︓製造業
事業概要︓寝具の企画、製造、卸し、輸⼊、販売
事業規模︓資本⾦2000万円、従業員11名
・削減⽬標
①Scope1・2の削減⽬標と削減に向けた取り組み>
2030年に2018年⽐で 50.4%削減
本社、ショールーム、倉庫の電⼒の再エネ化を推進
②再エネ100%の⽬標について
2030年までに再エネ100%達成
③Scope3の削減⽬標と削減に向けた取り組み
Scope3カテゴリ12: 2030年に2018年⽐で50%削減
サプライヤーとの連携により、CO2排出の少ない素材への移⾏
容器包装の軽量化
リサイクルの推進等に取り組む
6.まとめ
中堅・中小製造業での脱炭素化目標達成に向けた取り組みを整理します。
DX化によって製造工程から取得したデータを活用して”製造オペレーションの最適化“を実現させ、
これによりGHG排出量の削減、日常業務改善による削減、設備改善による削減、使用エネルギーの見直しを目指します。
この、DX化によって得られる製造工程データを活用した
“製造オペレーションの最適化” → これによる生産性向上 → 生産性向上による“GHG(温室効果ガス)排出量削減”と言う脱炭素化の取り組みのPDCAサイクルをうまく回していくシステムを構築することで、本来の製造業務の効率化と合わせて、GHG(温室効果ガス)排出量削減と言う脱炭素化の取り組みも進めていくことが出来る体制を整えることが可能となります。 大手メーカーがサプライチェーン全体でのGHG排出量削減を進める中、中堅・中小製造業にもカーボンニュートラルへの取り組みが求められています。
本コラムでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用し、製造工程データを基にした脱炭素化の実現方法について解説します。
製造業におけるカーボンニュートラル施策は、非常に重要です。
日本において部門別CO2排出量の3割以上は産業部門となっており(※1)、産業部門から排出されるCO2の9割以上を製造業が占めています(※2)。
製造業はCO2の排出量が多い業種だからこそ、カーボンニュートラルの取り組みが大切なポイントです。
※1:全国地球温暖化防止活動推進センター|日本の部門別二酸化炭素排出量(2021年度)
※2:環境省|産業部門における エネルギー起源CO2
1.製造業におけるカーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、GHG(温室効果ガス、特に二酸化炭素: CO2)の排出量と吸収量が実質的にゼロになる状態を指します。
つまり、企業や個人、地域が活動によって排出するCO2を、再生可能エネルギーの利用や森林の保護、カーボンオフセット(排出権の購入など)によって相殺し、地球全体でバランスを取ることです。
ここでは、製造業におけるカーボンニュートラルの特徴について説明します。
今までの製造業の脱炭素化は
再生可能エネルギーの利用
設備の効率化
など、自社で消費するエネルギー削減によるGHG(温室効果ガス)排出量削減がメインでした。
しかし、これからは原料調達から製造・物流・販売・廃棄まで製品すべてのプロセスで発生するGHG(温室効果ガス)排出量削減を考える必要があります。
これからの製造業の脱炭素化の方向性として、“製品のライフサイクル全体を通した省エネ・脱炭素化を目指す、ライフサイクルアセスメント”が求められます。
ライフサイクルは製品の全ライフサイクルにわたる環境影響を評価するため、サプライチェーン全体の排出量もこの中に含まれます。これにより、どの段階で最も多くの排出が発生しているのかを特定し、改善策を立てる基礎データが得られます。
このため、まずはサプライチェーン排出量を考える必要があります。
サプライチェーン排出量 = Scope1排出量 + Scope2排出量 + Scope3排出量
と定義されます。
※画像引用元:環境省|排出量算定について
Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 : Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
2.中堅・中小製造業でカーボンニュートラルが求められる背景
大手完成品メーカーはScope3のGHG(温室効果ガス)排出量削減を取り組み始めており、今後は製品LCA(ライフサイクルアセスメント)管理へ移行していきます。
GHG(温室効果ガス)排出量の算定範囲を自社からサプライチェーン全体へ、製品サイクル全体へ拡大していくことになります。
このサプライチェーンを担う、大手完成品メーカーに部品を供給している中堅・中小製造業企業も、これまで積極的に取り組んでいなかった脱炭素化に対応する必要が生じてきます。
これは非上場企業であっても最低限、Scope1/Scope2に該当する自社のCO2排出量の測定、公開、削減の取り組みが求められることになり、最終的には協力会社の排出量の把握も含め、自社のサプライチェーン全体であるScope3への対応が目標となります。
自社のCO2排出量削減を行うためには、まずは自社の排出量(Scope1,2)の把握が必要です。
Scope1は直接排出で、自社の燃料の使⽤、⼯業プロセスでのCO2排出量
Scope2は関節排出で、他社で⽣産されたエネルギーの使⽤(主に電⼒)に伴うCO2排出です。
ここで、”なぜサプライチェーン排出量“を算出するのか?を考えてみたいと思います。
目的は主に3つが考えられます。
①自社のホットスポットがどのカテゴリか?を知ることが出来る
ホットスポットを明確にすることにより、優先的に削減に取り組まなければならないカテゴリがわかり、効率的にGHG排出量削減に取り組むことが可能になります。
②自社の排出量の削減には限界がある
大幅なGHG排出量削減のためには自社のみではなく、サプライチェーン全体、社会全体でGHG排出量削減を目指すことが必要です。
③サプライチェーン排出量の開示を求める動きの拡大
社会の流れとして、ESG投資の呼び込みなど、資金調達の上でも対応が必要“となってきています。
会社の評価基準として、脱炭素化の取り組みが重視される様になってきています。
今後、大手完成品メーカーのサプライチェーン排出量算定の動きがますます加速するなか、
製造業全体としての取り組みは避けられない状況となっています
3.中堅・中小製造業におけるカーボンニュートラル実現への課題
中堅・中小製造業がカーボンニュートラルに取り組む際の課題を考えます。
主な課題として下記5項目をあげます。
①コスト負担の高さ
再生可能エネルギーの導入、省エネ設備の設置、排出削減技術の導入など、カーボンニュートラルへの取り組みには初期投資が必要です。特に中堅・中小企業は大手企業に比べて資金力が限られており、これが大きな障壁となります。
②技術・ノウハウの不足
カーボンニュートラルを達成するためには、エネルギー効率化技術や再生可能エネルギーの活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が必要ですが、中堅・中小企業にはそのような専門知識や人材が不足していることが多いです。
③エネルギー供給の安定性&エネルギーコスト
再生可能エネルギーへの依存度を高めると、天候や季節によるエネルギー供給の不安定さが課題となります。特に電力を多く消費する製造業では、生産ラインの安定性に影響を与える可能性があります。
また、中堅・中小企業では、再生可能エネルギーの調達先や選択肢が限られることがあります。特に地域によっては、再生可能エネルギーの供給業者が少なく、競争が不十分なため価格が高くなることがあります
④サプライチェーン全体での連携不足
カーボンニュートラルを達成するためには、サプライチェーン全体での排出削減が必要です。しかし、特に中小企業の場合、各社の取り組みに大きな差があるためサプライチェーン全体での連携が難しいことがあります。
その為、各企業が独自に取り組んでも、サプライチェーン全体としての効果が限定されてしまいます。
⑤データの収集と活用の難しさ
カーボンニュートラルに向けて排出量を正確に把握し、効率的な削減策を講じるためには、製造プロセスで発生するデータの収集・管理が不可欠です。
しかし、中小企業ではDXが進んでおらず、データの取得・活用が進んでいないことが多いです。
4.カーボンニュートラル実現のための最初のステップ
先程述べたように、サプライチェーンを構成する製造業企業の多くは、”コスト、設備、人員など限られた条件の中で、脱炭素化に取り組んでいく必要“があります。
これは非常にハードルが高いものになります。
そこで、脱炭素化だけ、としての取り組みではなく
製造の見える化
製品原価管理(製造工数管理)
など、本来の製造業務としてのDXの取り組みと合わせて、そこで得られたデータを活用することで、脱炭素化にも取り組んでいくのが良いのではないでしょうか?
このデータを脱炭素化に活用することで、“データを活用したGHG(温室効果ガス)排出量の把握、見える化”させ、取引先への公正な情報開示を行います。
これにより
製造課題の見える化
製造工程生産性向上
収益の適正化(正確な原価把握、在庫の把握)
など本業の業務改善に加え
GHG(温室効果ガス)排出量把握&削減
これによる企業価値向上の実現も目指すことが出来る様になります。
5.中堅・中小製造業における、カーボンニュートラル取り組み事例3選
中堅・中小企業が行なっているカーボンニュートラルの取り組み事例を紹介します。
環境省、経済産業省、農林水産省が運用している
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 業種別取組事例一覧
のサイトで紹介されている企業から中堅・中小企業の取り組みをご紹介します。
5-1.榊原⼯業株式会社
・企業情報
業種︓製造業(鋳型中⼦製造)
事業概要︓鋳型中⼦(⾃動⾞部品、建設機械部品、農機具部品)の製造
事業規模︓売上 20億円(2020年5⽉期)
拠点数︓5(愛知県⻄尾市3、豊⽥市1、富⼭県⾼岡市1)
従業員数︓140名(パート・アルバイト・実習⽣含む)
・削減⽬標
①Scope1・2の削減⽬標と削減に向けた取り組み
2030年に2018年⽐で50.4%削減
取り組み︓マテリアルフローコスト会計⼿法を活⽤し、会社全体のエネルギー量の⾒える化を実施し取り組む(仕組みで成り⽴つ活動︓1回/⽉低減会議を実施し対応)
②再エネ100%の⽬標について
2025年までに太陽光発電などの環境配慮エネルギーの導⼊を検討していく(1回/⽉の定期取締役会での協議事項とする)
③Scope3の削減⽬標と削減に向けた取り組み
(カテゴリ5)︓2030年に2019年⽐で60%削減
取り組み︓マテリアルフローコスト会計⼿法を活⽤し、会社全体の産業廃棄物量の⾒える化を実施し取り組む
※ゴミステーションの設置等をおこないゴミ分別の細分化と計測を実施し取組を強化
サプライヤーとの連携を取り産業廃棄物低減活動実施を計画
(SANDEELプロジェクト︓廃棄砂活⽤によるさつまいも育成事業の展開)
5-2.株式会社和泉
・企業情報
業種︓製造業
事業概要︓ポリエチレン製気泡緩衝材「エアセルマット」製造加⼯販売。その他梱包製品販売、研磨⽤製品販売。
・削減⽬標
①Scope1・2の削減⽬標と削減に向けた取り組み
2030年までに2019年⽐でCO2排出量46.2%削減
ガソリン⾞からHV⾞やEV⾞への切り替え・照明のLED化
②再エネ100%の⽬標について
2050年までに再エネ100%達成
③Scope3の削減⽬標と削減に向けた取り組み
サプライヤーとの連携により、軽量化添加剤やバイオマスプラスチック製品の販売・拡⼤に取り組み、⽯油由来ポリエチレンの使⽤⽐率の削減を進める。
5-3.株式会社篠原化学
・企業情報
業種︓製造業
事業概要︓寝具の企画、製造、卸し、輸⼊、販売
事業規模︓資本⾦2000万円、従業員11名
・削減⽬標
①Scope1・2の削減⽬標と削減に向けた取り組み>
2030年に2018年⽐で 50.4%削減
本社、ショールーム、倉庫の電⼒の再エネ化を推進
②再エネ100%の⽬標について
2030年までに再エネ100%達成
③Scope3の削減⽬標と削減に向けた取り組み
Scope3カテゴリ12: 2030年に2018年⽐で50%削減
サプライヤーとの連携により、CO2排出の少ない素材への移⾏
容器包装の軽量化
リサイクルの推進等に取り組む
6.まとめ
中堅・中小製造業での脱炭素化目標達成に向けた取り組みを整理します。
DX化によって製造工程から取得したデータを活用して”製造オペレーションの最適化“を実現させ、
これによりGHG排出量の削減、日常業務改善による削減、設備改善による削減、使用エネルギーの見直しを目指します。
この、DX化によって得られる製造工程データを活用した
“製造オペレーションの最適化” → これによる生産性向上 → 生産性向上による“GHG(温室効果ガス)排出量削減”と言う脱炭素化の取り組みのPDCAサイクルをうまく回していくシステムを構築することで、本来の製造業務の効率化と合わせて、GHG(温室効果ガス)排出量削減と言う脱炭素化の取り組みも進めていくことが出来る体制を整えることが可能となります。