記事公開日:2020.07.30
最終更新日:2023.01.20
中小企業・中小製造業におけるロボット導入のポイントを解説
ご存じの通り、中小企業においても自動化・ロボット化による生産性向上及び省力化、省人化が急務となっており「なんとかしなくては」と考えている経営者も多いかと思います。
今回は初めてロボットを導入する際の「勘どころ」を解説していきます。
1.中小企業におけるロボット導入の必要性と役割
中小製造業において課題となっている重要な項目の一つが人手不足です。
従業員100名以下の企業に関しては人手不足が最重要課題であることも少なくありません。
熟練作業者の高齢化、作業の属人化、若手作業者の定着率悪化、退職率増加、新規採用応募者の減少、など人手不足は深刻な状況になりつつあります。そのような背景の中、中小企業においてロボットはどのような役割を果たすのでしょうか?
中小製造業におけるロボットの役割として大きく3つのポイントが挙げられます。
①人による作業の代替えによる生産性向上・省人化・省力化
②熟練作業者の高付加価値作業への配置転換
③若手技術者の育成による企業の成長
まず、真っ先に挙げられるのが①生産性向上・省人化・省力化です。
これについてはしっかりと「数字」でコストメリットを試算して導入効果の検証をしていく必要があります。
この段階で検証を誤ると、導入したけど何の効果も無かった、ただスペースを圧迫するだけのオブジェになってしまった、なんて言うことにもなりかねません。
さらに、中小製造業においては多品種少量生産が一般的である場合も多いため一つのロボットシステムでいかに多品種に対応できるか、も重要なポイントになってきます。
月に何万台も生産する自動車部品の量産ラインのような工程では単一品種の対応で大きなメリットが出ますが、月100個の製品を10品種、同一の機械で生産するような多品種少量型の町工場においては、一つのロボットシステム(低投資)で多品種対応(高利益)が求められるため、作業改善や作業方法の変更、設備レイアウトの変更等様々な改善を組み合わせてロボット導入を検討する必要があります。
次に、②熟練作業者の高付加価値作業への配置転換、③若手技術者の育成による企業の成長です。前述のように生産性が向上し省人化が実現したところで、現在の従業員に退職を迫るわけにはいきません。
そこで、ロボットにより手の空いた熟練作業者は、より付加価値の高い作業への配置転換を行います。中小企業が得意とする「職人の技術」です。
ロボットが出来ることはロボットが、人間にしか出来ないことは人間が、そのように作業を分担して、より短納期でより高品質な製品を提供する、中小企業としての強み(技術)を生かした戦略です。
さて、若手技術者の不足は中小企業において深刻な問題です。入社して半年も経たずに辞めてしまう、待遇を改善したが次の若手を雇っても同じように辞めてしまう、そのように若手が育たないので新しいシステムを導入しても扱える人間がいない、メンテナンスできる人間がいない、さらに新たな技術の導入に手が出せない、と悪循環に陥っていきます。
そこでロボット等の最新技術のオペレーター、技術担当者として若手を採用し「やりがい」や「目標・目的」を持って業務に取り組んでもらうことで若手社員本人としての成長と共に企業として成長していくとこが中小製造業におけるロボット導入のポイントであると考えます。
2.中小企業におけるロボット導入の注意点
では、中小企業においてロボット導入を検討する際に注意しなければいけない点とはどのような事があるのでしょうか?
先にも記載した通りまずは、「数字」でコストメリットを試算、するとこが重要な点となってきます。
生産量、工数、利益、等々様々な要因を数字で集めて分析し、どの製品のどの工程をロボット化していくのか、まずはざっくりと決めていきます。
製品と工程が決まったらさらにその工程を細かく分解して、どれくらいの工数がかかっているか、作業一つ一つの作業時間を出していきます。そのように分割した作業の中でロボットに行わせる作業を決めていきます。
この時点ではあくまでも仮の決定で、ある程度のビジョンを持って導入を計画していくための準備です。
さて、ここからが本題です。
重要なことが二つ、一つ目は優秀なシステムインテグレーター(SIer)を選定することです。
SIerとはロボットシステムや自動化システム等の提案、設計、導入、立ち上げを一手に担ってくれるメーカーや業者の総称です。
例えば、全く同じ工程のロボット化を何社かのSIerに依頼した場合でも、提案内容や導入コストに大きく差が出る場合があります。
これはSIerの「提案力」の差によるものです。機械設計や電気設計はある程度ノウハウ化されそれほど差が出るものではありませんが、この「提案力」は個々の経験とアイデアによる差が顕著に出るものです。
そういった観点から、提案力のある優秀なSIerを選定することが重要なことの一つになってきます。
二つ目はユーザーの分析力です。ここでいう分析とは、例えば大量の数字を集めて傾向を発見する、とかそのような小難しい分析ではなく、実際に現場ではどのように作業が行われているのか、を分析する力です。
ロボット導入となると、現場で作業をしている作業者が実際に打ち合わせに加わったり、一緒にシステム構成を考えたり、というのは生産があるため非常に困難であるため、経営者自らが構想設計から打ち合わせ立ち上げまで、一人でこなしていくケースも多いかと思います。
このような場合に起こりうるのが、把握している作業と実際の現場作業との差です。良くも悪くも、現場作業員が決められた作業手順(作業標準)通りに作業をしているとは限らないからです。
この実際の現場作業の確認(分析)を怠るとロボットシステム導入後に思っていた通りに物が出来ない、試算した通りに生産が進まない等の問題が発生します。現場作業員も「勝手に作業方法を変えられた!」と感じモチベーションも下がってしまいます。そのような問題を起こさないためにも現場分析が重要となってきます。現場分析=現場作業者とのコミュニケーション、であるとも言えます。その現場分析をもとにユーザーからSIerへ要望を出す(ある意味提案する)、その要望(提案)を受けてSIerが実現可能な方法を提案する、といった流れに乗れると良いシステムが作られていきます。
逆に言うと、いかに優秀なSIerとて、ユーザーから要望(提案)が無ければ良い提案が出来ないということです。
3.おわりに
昨今では、SIer側としても上記のような状態を認識し、提案型営業の必要性が問われています。しかしやはりSIerが実際に現場に立って作業分析をすることは困難でしょう。
ロボットだけを買ってきても何の価値も生まない、いかに価値を生み出すロボットシステムを生み出せるかはユーザーの現場分析力(提案力)にかかっている、といっても過言でありません。
このように、ロボットのような最新技術とはいえ「3現主義」のようなモノづくりの基本を大前提において導入を進めることが必要です。
ロボットについて何の知識もないから、とか、難しいことは分からないから、と投げ出してしまうのではなく、良いロボットシステムを作り上げるためには今まで現場で培ってきた経験が必要である、と認識し各々の現場にあったシステムを導入していくのが中小企業・中小製造業におけるロボット導入の「勘どころ」と言えるでしょう。
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