記事公開日:2022.08.01
最終更新日:2023.01.20
加工精度が高いとロボット化できない?熟練技術者のすごさと見える化
機械加工の自動化を提案することは多々ありますが、その時に旋盤やマシニングなどにロボットを付けましょう!という話が出たときに必ず精度の話が出ます。
また、旋盤を対象にしましょう!と話していると「平面研削を自動化したい!」「円筒研削を自動化したい!」という話になります。これは、特定の熟練技術者に依存しているからだと思います。長い間働いている方にしかできない、その人が辞めたらどうなるのだろう?という危機感から自動化をしたい!という話になります。
私は正直その話になると「困ったな…」と思います。理由は精度以外の何かが結局重要で、しかもそれを実現するためにかなりの費用が掛かるイメージがあるからです。
ですが、まずは基本に立ち直り自動化する要件を事細かに見れば何とか出来るかな?という感じになります。その時の気づきを今回は書きます。
1.作業分析
何回も書かせていただいているのですが、結局作業分析が一番重要です。
ロボットができることはまだまだ限られているのでボトルネックは技術の壁になります。
まず、今熟練技術者がやっている作業を分解し、理解することが重要です。「~さんがやっていてよくわからない」というのがスタートです。
これではその人がいなくなると技術が途切れてしまう、ということになります。
作業を分析し見える化する、つまりマニュアル化して伝承していくことに近いです。
自動化を考えることと共にマニュアル化もしていきましょう。
2.作業分析から見えること
作業分析をしてみると、平面研削や円筒研削は以下の傾向があるかと思います。
- 設置することに手の感覚、目の感覚が関わってくる
- 何に対してどれを使うか、複雑である
- 位置調整に手の感覚、目の感覚が関わってくる
手の感覚、目の感覚をそのままロボットに反映することが非常に難しく、センサーを駆使すると高価になることが多いです。
色々と実験をしないといけないし、実験時点で金額感が合わず投資を躊躇してしまいます。
まずは、感覚を徹底的に言語化、数値化しましょう。例えば平面研削となると
- きっちり土台に引っ付ける⇒盤面とワークの面をぴったりつける
などになります。
ワークの面と面合わせをしっかりするのにどうしたらよいか?それがテーマになります。
まずは熟練技術者の感覚を“言語化”“数値化”し、SIerに伝えることをしましょう。
ちなみに、この作業はマニュアル化にもつながります。
感覚を新人に伝えても分かりません。何を基準に作業をすべきか?徹底的に伝える努力をしましょう。
3.実をいうと5Sが重要
平面研削、円筒研削はワークに対して精度を要求するために使われます。また、「ワークにキズ無き事」が絶対の条件になりがちです。
「面と面を合わせる」時によくよく聞いてみると、熟練作業者はペタペタ手で触って面を合わせている感じがしますが、この場合指の感覚でワークと面のゴミを探している場合が多いです。
これは切粉などでいわゆる「ハサミキズがないか?」を確認しています。これはロボット化することは非常に難しいです。
工作機械でワークをチャックする時、ハサミキズが必ずテーマになります。それは精度に関わらず、です。
切粉は機械加工業をしていると必ずついてくるテーマです。熟練作業者は結構基本に忠実な人が多いです。
- 普段から清掃をしっかりしている
- 仕事に誇りをもっている
- 一つ一つの作業が丁寧
これをつぶさに観察すると、5Sを意識していることになります。
- 切粉をきれいに取り除く
⇒清掃をしっかりしている、自分自身のしつけがしっかりしている
イメージです。
普段から5Sを作業員に意識させる。これは非常に難しいことです。
自動化することも大事ですが、まず基本に立ち直り、そもそもキズが発生しにくい環境を実現してから自動化をしていくことが重要です。
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