記事公開日:2024.04.26
最終更新日:2024.09.30

ERPとは?意味や基幹システムとの違いを解説

「基幹システム刷新!」、「ERP導入!」というキーワードは聞きなれた言葉ではありますが、実際にERPとは?基幹システムとの違いは?などの疑問にお答えしたく、そこで今回はERPと基幹システムの違いについてわかりやすく解説いたします。

1.ERPとは


ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略で、統合基幹業務システム、基幹システムとも呼ばれます。
また、ERPパッケージ、ERPシステム、業務統合パッケージなど様々な呼び方もされています。
ERPは、企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合し、ビジネスの効率化、情報の一元化を図るためのシステムとして誕生しました。
ERPは、次の5つに分類されたシステムを統合し、ユーザーへ提供します。
これらのシステムは、多くの企業で共通して利用され、現在では、さまざまなERPソリューションが出てきています。

  • 会計管理システム
  • 販売管理システム
  • 在庫購買管理システム
  • 生産管理システム
  • 人事給与管理システム

2.ERPと基幹システム、業務システムの違い


基幹システムとERPは、どちらも社内の基幹業務を効率化する役割があるシステムですが、それぞれの目的や対応範囲には厳密にいえば違いがあります。
基幹システムというのは、前述のような基幹業務ごとにシステムが独立しており、特定の業務を効率化することが目的の“単一の”システムを指します。
人事システムは人事業務を効率化、在庫管理システムは在庫管理を効率化するなど、対応範囲が狭いためERPに比べて低コストかつ少ない工数で導入ができるでしょう。
なお部署間でデータをやり取りする際は、既存システムとの連携が必要です。

一方ERPは統合基幹業務システムといい、各業務に関わる基幹システムやデータを一元管理することで、業務効率化や経営戦略立案・意思決定の迅速化を目的としています。
複数の主要業務を一つのシステムで管理するため、データの連携性に優れており、部署や業務をまたいだ情報共有の簡易化を実現できます。
しかし基幹システムに比べて対応する業務が幅広いため、関係する多くの部署で導入準備が必要となり、システム導入は大掛かりな作業となるでしょう。
業務フローの大幅な変更が必要になったり社内周知や操作マニュアルの作成を行ったりと、基幹システムと比較すると導入前の準備や体制整備に手間がかかります。

一方で、業務システムというのも存在します。
これは、いわゆる基幹システム以外のシステムを指すことが一般的です。
営業支援システム(SFA)や顧客管理システム(CRM)、勤怠管理システム、ワークフローシステムなどの種類が挙げられます。
この違いとして、企業活動において必要不可欠なのかどうか、という点が挙げられます。
基幹システムは業務遂行においてなくてはならない機能を有しています。(売り上げ登録や請求書発行など)一方で、業務システムは様々な業務遂行をサポートする機能がメインであり、万が一システムが停止したとしても代替えの手段は用意しやすい分野をシステム化したものになります。

3.ERPの主な種類


ERPは、その提供形態・ネットワーク環境の違いから、主にオンプレミス型とクラウド型の2種類に分類されます。

オンプレミス型ERP
オンプレミス型ERPは、自社でサーバーやネットワーク機器などを用意し、運用するタイプのERPです。自社の業務プロセスに合わせた設計が可能で、カスタマイズ性が高く、多くの大企業で採用されています。

この方式はシステムを社内に構築するため、セキュリティを強化できるというメリットがありますが、初期費用が高額であることや、運用・管理に多大な手間を要する点がデメリットとなっています。

クラウド型ERP
クラウド型ERPは、インターネットを介して利用できるため、専用の機器を準備する必要がありません。また、どこでも利用できるのでリモートワークやモバイル端末からのアクセスにも対応可能です。

クラウド型はオンプレミス型とは異なり初期費用が低く、導入から運用開始までの期間も短縮される点が大きな魅力です。さらに、業務拡大や運用ルールの変更に合わせてユーザー数や機能を容易に追加できる柔軟性も持ち合わせており、近年導入数が増加傾向にあります。

4.ERPのメリットデメリット

4-1. ERPのメリット


ERPのメリット①:データの一元管理
ERP導入のメリット1つ目はデータの一元管理が可能となるという事です。
これは、企業内のあらゆる情報を瞬時に一箇所に集められることを意味し、したがって経営分析や経営戦略の構築、経営のリアルタイムの見える化という点でも大きなパワーを秘めているといえるのです。

ERPのメリット②:システム連携による効率上昇
ERP導入のメリット2つ目はシステム同士のスムーズな連携によって業務効率が向上することです。
ERPでは、会計や販売、生産といった業務をまとめて管理できます。
ERPを導入すれば、それぞれの情報を個別に管理する煩雑さから解放され、効率よく業務を進められるようになるでしょう。

ERPのメリット③:データドリブン経営の実現
ERP導入のメリット3つ目は、経営上の意思決定を迅速に行えることです。
情報の一元管理によって、経営層は企業内の状況を素早く正確に把握できるようになります。
その結果、経営層は勘や経験ではなく、データに基づいて会社にとって最適な意思決定を迅速に下すことが可能となるのです。

ERPのメリット④:ベストプラクティスの有効活用
ERP導入のメリット4つ目は、ベストプラクティスを有効活用できるという点です。
ベストプラクティスとは、各業種において蓄積されたビジネスプロセスのノウハウのことです。
ERPパッケージが所有しているベストプラクティスを自社においても活用できるため、事業の効率的な成長が図れるでしょう。

4-2. ERPのデメリット


ERPのデメリット①:選考の難易度が高い
ERPのデメリット1つ目は、種類が多岐にわたるため、自社に合ったシステムを選ぶのが難しいことです。
目についたシステムを気軽に導入するのではなく、事前に検討を重ねることが重要です。

ERPのデメリット②:社内教育の徹底が必要
ERPのデメリット2つ目は、ERPを導入する前には社内教育を徹底的に行う必要がある点です。
ERPは業務効率を改善してくれるツールですが、社員が正しく使いこなさなければ意味がありません。
ERPを導入する前に、ERPが何の役に立つのか、どのように使うのかといったことを教育する必要があります。
そのためにはかなり粒度の細かい次元で活用シーンや利用ルールを検討する必要があり、情報を社員に対してしっかりと伝える必要があります。

5.自社に合ったERP選定の7つのポイント


「自社の業務にFitしたERPを導入したい」、「ERPの導入コストに見合う効果を得られるだろうか」
など、ERPを選ぶ際には様々な思いや不安があるのではないでしょうか。

業務プロセスの改善やコスト削減などのメリットがあるERPですが、数多く存在する製品の中から自社業務に最適なものを選ぶことは容易ではありません。

また経営課題や業務フロー、ERP導入にかけられる予算などは企業ごとに異なるため、100社あれば100通りのあり方でERPは構築されるものです。

そこで本コラムでは、自社業務に最適なERPを選ぶためのポイントとして以下をご説明します。

  • 自社業務との適合性は高いか
  • カスタマイズ性(柔軟性)は高いか
  • ライセンスの提供方法は自社に合うか
  • 現場の方が使いこなせるか
  • 導入時や保守運用時などのサポートは充実しているか
  • セキュリティレベルは高いか
  • 導入実績は豊富か

上記の7つのポイントについて皆様に特に重要視していただきたいのは、自社業務との適合性についてしっかりと検討する点と、現場の仕様を想定して選定する事です。
ERP導入の際には多くの課題や解決策を検討することになりますが、市場の様々なERPはそれぞれ特徴を持っています。例えば原価に関しての機能が細かいとか、生産計画調整の機能が非常に豊かであるとかそういった特徴です。
さらに、製造業であれば組立製造業特化のものもあれば、すべての業種に対応している万能型のようなERPもあるなど分かりづらいながら特徴を持っています。
自社の中で解決したい事項がたくさん出てくる中で、Asis(現在)のやり方をそのまま焼き直すツールと言うよりも、Tobe(理想)のやり方をどう実現するのかをツール選定の際には重要にしていただけると成功に近づくと言えるのですが、そもそも自社の業務に合うツールを選ばなければ導入はともかく、活用にはかなり苦労することになります。

さらに、結局システムを使うのは現場になるため、現場の利便性が結局下がるような導入は避ける必要があります。

上記を踏まえてERPを選ぶことで「自社業務にFitしなかった」や「業務効率化できず、逆にシステム導入コストがかかった」などの損失を回避できるでしょう。

6.ERP導入の流れ


ERPを実際に導入する前に、ERP導入の基本的な流れを押さえておきましょう。

1つ目のプロセスは、ERPを導入する目的を明確にすることです。
ERPを導入することでどのような課題を解決したいのか、最初に明らかにしておきましょう。
それによって必要な機能が把握でき、導入するERPパッケージが選びやすくなります。
また、社員にERPの導入目的を説明するうえでも役に立ちます。

2つ目のプロセスは、プロジェクトの推進者を選定し、各部署の担当者と打ち合わせることです。
ERPに関するプロジェクトは社内の業務全般に関わるため、広い範囲をカバーできるように必ず2人以上の推進者を選ぶようにしてください。
推進者に適している人材としては、部署間をまたいで発言できる経営層に近い役職者が挙げられます。
推進者の次に、各部署でプロジェクトの責任を負う担当者を選び、打ち合わせを進めていきます。

3つ目のプロセスは、ERP導入に関わる業務プロセスなどについて棚卸ししておくことです。
今後ERPで管理することになる業務について、今はどのようなツールで管理しているのかを確かめておきましょう。
業務プロセスは各企業に固有のものなので、基本的には自社で棚卸しを進める必要があります。

4つ目のプロセスは、ERPでカバーできる範囲に合わせて新しい業務フローを構築することです。
棚卸しした業務内容を基に、ERPでどの範囲までをカバーするのかということを決めていきましょう。

5つ目のプロセスとして、ERPの試験運用を行います。
試験運用の段階では、従来のシステムと併用しながら、問題なくERPが運用できるかどうかを確認してください。

試験運用に問題がなければ、6つ目のプロセスとして、ERPの本格運用を始めます。
社内全体に向けてマニュアルを作成し、状況に応じて機能を調整しながら運用を行います。

7.よくある質問

・基幹システムは何年くらい使えますか?
一般的に基幹システムの寿命は15年程度といわれることが多いです。これは、IT技術の進歩に、徐々に老朽化するシステムが対応できなくなっていくことによって生じると考えられます。近年はIT技術の進歩は目覚ましいものがあり、それに追随する形で基幹システムの寿命は徐々に短くなるのではないかと言われています。

しかし、これはアドオンカスタマイズが多いシステムであればあるほど生じる問題であると言えます。たいていのパッケージERPはバージョンアップを繰り返すことでこの老朽化問題に対応しようとしていますが、アドオンカスタマイズが多ければ多いほどこのバージョンアップ費用が高くなるケースが多いです。これによりバージョンアップを行わないという判断を行う企業が多くなっています。

近年のトレンドを鑑みると、いかにパッケージに合わせて業務を標準化してシステム導入できるかで寿命を延ばすことは可能だと言えるでしょう。

・基幹システムを入れ替えるべきタイミングは?
基幹システムの入れ替えタイミングとしては、まず現状を見た際に以下のような状況があれば入れ替えを検討すると良いと考えられます。

・システムの老朽化
サポート終了:現在使用しているシステムのサポートが終了する場合。
パフォーマンス低下:システムが遅くなり、業務に支障をきたす場合。
メンテナンス頻度の増加:故障やトラブルが頻発し、メンテナンスコストが増加する場合。

・ビジネスの拡大・変化
業務量の増加:事業拡大に伴い、現在のシステムが処理能力やスケーラビリティの限界に達した場合。
新しいビジネスモデル:新しいサービスや製品を展開するために、既存システムが対応できない場合。
多国籍展開:国際展開に伴い、複数言語や異なる税法・会計基準に対応する必要がある場合。

・業務効率の低下
手作業の多さ:手作業や二重入力が多く、業務効率が低下している場合。
データ連携の問題:異なるシステム間でのデータ連携が難しく、情報の一元管理ができていない場合。
自動化の必要性:業務プロセスの自動化が求められる場合。

・セキュリティ問題
セキュリティリスク:既存システムが最新のセキュリティ基準を満たしておらず、情報漏洩のリスクが高い場合。
法規制の変更:新しい法規制やコンプライアンス要件に対応するために、システムを更新する必要がある場合。

・コストの削減
運用コストの増加:システムの運用・保守コストが高騰している場合。
クラウド移行:オンプレミスからクラウドへの移行によって、コスト削減を図る場合。

・ユーザーの要望
使い勝手の向上:現行システムが使いにくく、ユーザーからの不満が多い場合。
モバイル対応:リモートワークやモバイルデバイスからのアクセスが増加し、既存システムが対応できない場合。
以上のどれかが該当する場合、入れ替えを検討することをおススメします。

・ERPとCRMの違いは何ですか?
ERPとCRMはそれぞれ企業の抱える情報を一元管理し、効率的な業務と成長を後押しするためのシステムを指しますが
の目的と機能には明確な違いがあります。
ERPは前述の通り企業のリソース(資源)を一元管理し、業務プロセスを最適化するための統合システムであり
財務管理:予算編成、財務報告、会計管理など。
人事管理:給与計算、労務管理、採用管理など。
製造管理:生産計画、在庫管理、品質管理など。
物流管理:購買管理、在庫管理、サプライチェーン管理など。
販売管理:受注処理、出荷管理、請求管理など。
などの管理業務をまとめたシステムを指します。

一方でCRMというのは、顧客との関係を管理し、顧客満足度を向上させるためのシステムです。主な機能としては以下のようなものが挙げられます。

営業管理:リード管理、商談管理、営業予測、顧客情報など。
マーケティング管理:キャンペーン管理、メールマーケティング、リードジェネレーションなど。
顧客サービス:サポートチケット管理、FAQ、カスタマーサポートなど。
分析とレポート:顧客データ分析、営業パフォーマンス分析、マーケティングROI分析など。

このように、ERPが企業全体の統合管理を目的として、全社的な導入が一般的なのに対し、CRMは営業部門、マーケティング部門、カスタマーサポート部門など、顧客対応に直接関与する部門での導入が一般的であると言えます。
また、昨今では、ERPとCRMを統合して使用することでより高度なデータ分析を行おうという動きもあります。

8.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、ERPについて解説いたしました。ERPを導入することで、社内業務の棚卸しや新しい業務フローの構築、試験運用など徹底した準備が必要ですが、その結果、業務効率の向上や経営判断の迅速化といった多くのメリットが得ることができます。

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