記事公開日:2021.09.30
最終更新日:2023.11.01

中小・零細製造業のデジタル化【基幹システム導入_システム導入プロジェクト前編】

1.はじめに

本コラムでは、情報システムの専門家、いわゆる情シス部隊が存在しない企業様において、新たに基幹システム(生産管理、工程管理、会計管理、購買管理といった複数の機能群を有し、一つのデータベースで統合したシステム、ERPともいう)を導入する場合の検討から導入、活用までの流れについて、数回のシリーズに分けてお届けさせていただきます。
自社のIT関連の情報を全て把握している人が存在しない場合、新たにシステム導入をするにあたってどのようにハンドリングしてよいかがわからず、ベンダーにまかせっきりになってしまい、導入後も、システムの全体像を把握できていない場合があります。そのような状態では、導入したシステムを活用した業務改善を進めることもできず、事業を発展させる機会を逸することになります。そこで、導入を考え始めたときからどのような手順で進めれば導入後もシステムを活用できる環境を作ることが出来るかについて提案させていただいているのが本コラムシリーズです。是非、バックナンバーも参考にしていただければ幸いです。
第5回の今回は、システム導入プロジェクトを進める上でのポイントを解説いたします。

2.前回までの振り返りと本コラム内容について

前回までのコラムでは、検討開始の初動から仕様検討をし、システムベンダーを決める際の検討ポイントまでを解説をしました。ベンダーが決定すると、詳細な業務分析・要件定義・システム開発・システム導入・運用開始と、いよいよ実際に使うといったゴールに向けてプロジェクトがスタートします。
本コラムでは、ベンダーとプロジェクトを進めていく上でのポイントについて解説いたします。ここでいうシステムベンダーとは、「システムを提供、導入を支援する」企業を指しています。

3.システム導入プロジェクトの進め方

自社の必要要件を満たせそうなベンダーを選択しました。次のステップは、そのベンダーと一緒に新システムを現場に定着させ、活用するまでプロジェクトとして動かすことが必要になります。システムは、機械設備とは異なり、その中身(プログラム)を見ることは出来ません。そのため、新しいシステムには苦手意識を持ってしまい、現場からの理解を得られることが難しいことがあります。その打開策として、提案したいことは、(1)新システム導入を全社に周知すること、(2)新システム導入の意義を経営者自身で説明すること、(3)ベンダーに一任せずに、自社で積極的に関与することです。各項目について、解説させていただきます。

(1)システム導入を全社に周知することについて解説します。
導入するシステムによって、その規模、影響を受ける部署・業務は色々ありますが、その規模に寄らず、新システムの概要といつ頃導入される予定であることは、全社に共有し、その導入時期前後、特に導入後は今間でとの業務内容に変化が生じる可能性があることを認識しておいてもらうことが目的です。こうすることで、全社的なイベントであることを認識してもらい、直接関係無い部署・業務でも何かしらの影響がでる可能性があることを意識してもらうことが出来ます。また、一見関係無いと思っていた部署や社員から問い合わせが来て、見落としていた要件に気づくこともありますので、システム導入が決定したら、早めに全社に周知するようにしましょう。
(2)新システム導入の意義を経営者自身で説明することについて解説します。
これは、(1)に通ずるところがありますが、経営者が新システム導入の意義や思いについて語ることで、担当部署・担当者のみが単独で進めているプロジェクトでなく、全社的なプロジェクトであることを社員に認識してもらえます。システムを導入・変更することは、会社の仕組み自体を変更させることです。実際にそのシステムを使う社員の方々にとっては、今までの業務から変化することになるため、基本的には、ネガティブな反応が多くなりがちです。その反応を抑制するためにも、経営者が重要性を発信をすることで、自分の所属する会社にとって必要な変化であることを理解してもらうことが重要です。
(3)ベンダーに一任せず、自社で積極的に関与することについて解説します。
基本的には、ベンダー側が旗を振って、プロジェクトを進めることになります。しかし、ここでベンダーにまかせっきりにせず、自社からもわからないことは質問するや、追加で出てきた要望については、積極的に伝えるようにしていきましょう。特に理解できないこと・進め方や決定した事項に納得がいかないことは、遠慮せずに伝えましょう。自身の発言で、計画の進捗が遅れる・追加開発が発生し、コストが増大する可能性が頭をよぎると、思ったことを言えなくなります。そこで、引いてしまうと、後々それが問題になって、確認しておけばよかったと後悔することも少なくありません。また、自身が疑問に思ったことが、後から別の社員に質問され、結局、ベンダーに問い合わせる必要が出てくることもあり得ます。

4.おわりに

以上のポイントを意識してプロジェクトに臨んでいただければ、導入したシステムが使い物にならなかったといった事態は回避できると考えています。
中小・零細製造業のデジタル化【基幹システム導入_システム導入プロジェクト前編】の解説は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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