記事公開日:2022.02.15
最終更新日:2023.01.20

基幹系システムからAIサービスまで広がる「ノーコード/ローコード開発」

1.AIとノーコード/ローコード

従来、システム開発と言えば、プログラミング言語を駆使して専門のエンジニアが手掛けるものでしたが、「ノーコードツール」や「ローコードツール」によってそのハードルは年々下がってきています。
これまで、KintoneやGoogle AppSheetなどでは一般的なシステム開発に用いられてきましたが、最近、その領域はAIに迄広がりを見せており、2021年10月11日にリリースされたNTTcommunications社が展開するノーコードAI内製開発ツール「Node-AI」では、製造業のお客様を中心に異常検知やプラント運転支援などで活用されています。
また、ユニフィニティー社が展開する「Unifinity」では、AI inside社のAI技術をベースに活用しており、スマートフォンで撮影した画像などをAIで解析可能にしています。
より現場に近い場所で、より業務を知っている現場の方がシステムを開発するというトレンドは今後も続いていき、誰でもAI技術を使って業務改善をする時代が、すぐ近くまで来るかもしれません。

2.IT人材不足とDX

近年、これらの分野が盛り上がりを見せている背景として、技術革新は当然ありますがIT人材不足も理由の一つにあります。
デジタル変革を進めていくには、クラウドをはじめとするデジタルテクノロジーを用い、膨大なデータを収集、分析して洞察を得ていくことが欠かせません。
しかし、データの利活用を担うIT人材不足は明らかになっています。
たとえば、経済産業省が2019年に実施した調査結果で示された「2030年にはIT人材は最大で約79万人不足する」という見通しは記憶に新しいところです。
このような中で、プログラミングの専門スキルを有さない非エンジニアであってもDXを推進できることや、業務に精通したメンバーが改革を主導できることがメリットとして挙げられています。
さらに、業務の課題を解決して業務プロセスを変革することや、新たなビジネスモデルやサービスなどの価値創出をスピーディにすることが、非IT人材でも実現できるツールとして注目を集めているのです。

3.ノーコードとローコード

ノーコード(No Code)ツールは、「一切」ソースコードを記述せずにソフトウェアを開発できるサービスを指します。
開発のための環境構築が不要な上、非エンジニアでもweb開発が容易にできるため、従来エンジニアに頼っていた部分において内製化し、費用や時間を削減することができます。
また、運用を開始してからも必要に応じて作業作業が迅速にできる点もノーコードツールを利用する大変大きなメリットと言えます。

ローコード(LowCode)ツールは、「なるべく」ソースコードは書かずにソフトウェアを開発できるサービスを指します。
ノーコードのテンプレートにない追加開発や調整を「ローコード」で行うことができるため、従来の開発とノーコード開発のハイブリット型開発とも言われております。
開発者の力量に左右される部分はありますが、ノーコードに比べ拡張性が高い点がメリットと言えます。

以上により、「現場で開発できる」のがノーコード、「開発者の工数を抑える」のがローコードなどとも言われています。
いずれも「開発」という工程を簡易化するためのツールであり開発期間を大幅に短縮させることができます。

米ガートナーは2024年までに世界のアプリケーションの65%以上がローコード開発基盤で構築されると予測しており、今年2022年は、日本企業も半数以上がノーコード/ローコード開発を手掛けるようになると予想しています。
メリットとしては前述の通りですが、ここで注意しておきたいのは、何事にも「負の側面はある」ということです。

4.ノーコード/ローコード負の側面:セキュリティ・保守の懸念

誰もが開発できるということは、「シャドーIT」(シャドーIT:情報システム部門などが関知せず、ユーザー部門が独自に導入したシステムなど)や「野良アプリ」も増えることを意味します。
例えば、これまで社内の情報システム部などに開発依頼していたようなシステムでも一般部署内で作成可能となり、公開範囲設定によっては管理しきれない体制が生まれます。
結果、予期せぬ情報漏洩のリスクやシステム障害、内部不正などを招いてしまうリスクも十分にあり得ます。
特に、ノーコードツールで開発する場合は、セキュリティ対策はそのツールのプラットフォームが提供する範囲に依存するため、社内で導入する際にはルールを決めるなど対策が必要です。
これらの課題は保守においても同様であり、何か問題が発生した場合に誰が対応するのか、どの範囲で修正するのかを決めておく必要があります。

5.ノーコード/ローコード負の側面:大規模開発には不向き

ノーコード/ローコード開発はツールを利用して開発する手段であることから、利用するツールが展開している範囲内のみでの開発となります。
必然的に、理想とするシステムを理想形で構築できるか否かは、開発を始めてから判明するケースが多くなります。
そのため、初めから規模の大きなシステムを作成しようとすると途中で思わぬ壁に当たる回数も増えることから、大規模開発には不向きだと考えられています。
また、規模だけでなくシステムの理想形によってもノーコード/ローコードツールを利用する際の向き不向きはあるので、開発着手時には慎重な吟味が必要です。

6.まとめ

メリットとデメリットを理解した上で活用すれば、ノーコード・ローコードツールは大変便利なものになります。
導入を検討する際は、対象範囲や運用・開発ルールをしっかり定めてから始めましょう。

 
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