記事公開日:2024.04.03
最終更新日:2024.04.03
溶接ロボットの特徴とメリット、溶接ロボット導入成功事例
1.溶接ロボット導入のメリット
溶接現場においては、TIGやCO2溶接などの伝統的な手作業には職人の技術や属人化が強く関わっており、熟練技術が要求されています。たとえば、TIG溶接では作業者の高度な技術や熟練した技量が求められ、その技術によって溶接の品質が左右されることがあります。同様に、CO2溶接でも作業者の熟練した技能が品質に直結します。
しかしながら、このような職人の技術や属人化による作業は、作業者間での品質のばらつきや疲労による労働者の品質低下、さらには事故リスクなどを招く可能性があります。このような課題を解決するために、溶接ロボットの導入は非常に有益です。溶接ロボットは、職人の技術や熟練した技量に依存することなく、プログラムに基づいて高速かつ正確な溶接を行うことができ、作業者間での品質のばらつきをなくし、生産性向上にもつながります。
溶接ロボットの導入により、職人の技術による属人化が低減され、作業者の負担が軽減されます。また、熟練技術に依存することなく、溶接作業の品質の向上と生産性の向上が実現されることから、中小製造業における溶接作業の効率化が期待できます。
2.人による溶接のメリットとデメリット
人による溶接のメリットとデメリットには以下のような点が挙げられます。
【メリット】
柔軟性:人による溶接は、複雑な形状や特殊な溶接部位にも対応できる柔軟性があります。作業者の技術や経験によって臨機応変な対応が可能です。
費用面:小規模な溶接作業や簡易な修理作業において、機械化よりもコストが低く済む場合があります。
開始コスト:溶接機器やロボットの導入に比べ、人による溶接のための開始コストが低い場合があります。
【デメリット】
人的要因:作業者の技能や集中力に依存するため、品質や効率に作業者個々のスキルやコンディションが影響します。
作業環境:危険物の取り扱いや有害物質の発生など、溶接には作業環境面でのリスクが伴います。
一貫性の問題:作業者の技能や疲労により、品質のばらつきや一貫性の確保が難しい場合があります。
次に溶接ロボットの特徴と選定ポイントについて解説します。
3.溶接ロボットの特徴と選定ポイント
溶接ロボットの特徴と選定ポイントは、溶接作業の自動化によって生産性向上と品質管理の確保を可能にします。溶接ロボットは高い精度と一貫性を持ち、人手による溶接と比べて作業効率が向上します。さらに、定常的な作業や大量の溶接作業においても、疲労やヒューマンエラーのリスクが低減されます。また、多くの溶接ロボットは柔軟な運用が可能であり、多様な溶接方法に対応しています。
溶接ロボットを選定する際には、溶接範囲、溶接速度、精度、および自動化の程度などの機能面だけでなく、設置スペースや作業環境などの環境面も考慮する必要があります。また、溶接ロボットシステムは他の製造設備との連携や統合が求められるため、適切なロボットシステムとの統合も重要な選定ポイントです。操作性や保守性、さらにセーフティ機能なども検討すべき要素であり、これらの選定ポイントを踏まえたうえで、最適な溶接ロボットを導入することが適切な選択となります。
4.溶接ロボット導入における補助金制度と活用方法
溶接ロボットの導入においては、補助金制度を活用することで導入コストを軽減することが可能です。補助金制度は地域や産業によって異なりますが、一般的には製造業において省人化や生産性向上を促進するための補助金が設けられています。
補助金の活用方法としては、まず溶接ロボットの導入計画を具体化し、補助金の申請資格や条件を確認することが重要です。補助金は多くの場合、導入する機器の性能や省エネ効果、労働環境の改善などに基づいて支給されるため、溶接ロボット導入による効果や効能を明確に示すことが求められます。
また、地域の助成金や補助金、国の産業支援策などの補助金制度を活用するためには、補助金の申請手続きや提出書類の準備なども正確に行う必要があります。地域の商工会や製造業支援機関などからの情報収集などを通じて、最新の補助金情報を入手し、適切な補助金を活用することが重要です。
5.溶接ロボット導入成功事例
■大阪府A社の事例
・概要
電気設備や空調設備向けの筐体を製造する工程に溶接ロボットを導入。
産業用ロボット2台を設置し、1台が溶接、もう1台がワークハンドリングと溶接後の研磨を行う
・導入に至った経緯
職人に頼った溶接品質であり、かつ人による品質の差が発生していた
・導入による効果
溶接職人に頼っていた溶接作業をロボット化することで若手でも同様の品質の製品を製造することが可能となった。
溶接と同時に溶接後の研磨もロボット化することで生産性が向上した。
・成功のポイント
多品種少量生産に適した溶接ロボットを導入し、製品の形状の多様性に対応できるようにした。この溶接ロボットは、製品の形状の多様性に対応できるように設計されており、生産ライン全体の効率を向上させることができた。
成功のポイントは、製品の形状が多様である中で、作業分析を行い、ロボット化が困難な部分を見極め、その部分のみをロボット化することで、生産効率を向上させた点。このアプローチにより、製品の多様性に対応しつつ、生産ライン全体の効率を最大化することができた。
■長野県B社
・概要
ステンレス薄板のTIG溶接をロボット化。
さらに溶接後の鏡面研磨もロボット化に成功した事例。
・導入に至った経緯
TIG溶接の難易度はもちろんのこと、溶接後の鏡面研磨は非常に工数がかかる工程で生産性の低下原因となっていた。
・導入による効果
通常の手溶接では5年ほどかかる難易度の高いステンレス薄板のTIG溶接をロボット化することで職人依存体制から脱却した。
さらに、工数のかかる鏡面研磨を自動化することで生産性が大幅に向上した。
・成功のポイント
成功のポイントは、補助金を最大限活用してコストを抑えることや、多品種対応のためのシンプルなシステムと治具構想によって、多品種少量生産の板金加工業における職人技術のTIG溶接と研磨をロボット化したことである。この取り組みにより、工数削減と脱職人依存を実現し、さらに、外観部分のバフ研磨をロボットで実現するための方法についても詳細に取り組みを行った。また、補助金の獲得額としては4000万円の補助金を獲得し、この補助金の獲得額が成功につながった要因の一つとなっている。
■茨城県C社
・概要
対象となるワークは、主に変圧器用の配管で、長さ200㎜~5000㎜、径20A ~300Aの幅広い寸法で多品種少量生産の配管溶接をロボット2台とスライダー、ポジショナーを活用したシステムを構築した。
・導入に至った経緯
使用用途が特殊な配管であり、特に大きな径の配管溶接は職人技術で属人化していた
・導入による効果
職人の経験と勘をロボット技術に置き換えることで、製品の出来栄えに差があった問題を解消し、製品品質の見直しを行った。また、最新技術の活用により、製品の品質向上と生産性の向上が実現された。
・成功のポイント
こちらのロボット溶接システムでは対象ワークが一品一様でありその都度ティーチングを行うことが困難であったためティーチングレスのシステムを構築したことで多品種少量生産の溶接をロボット化することに成功した。
また、事業再構築補助金を活用することで約3000万円の補助額を獲得し低コストでの溶接ロボットシステム導入を成功させることができた。
6.さいごに
工場DX.comを運営する船井総合研究所では溶接ロボットの導入のお手伝いが可能です。
初めてで進め方が良く分からない、投資するならば投資対効果のある投資がしたい、など
お気軽にご相談下さい。
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多品種少量生産対応の溶接ロボットを導入したい!
本レポートでは、「多品種少量生産対応溶接ロボット」にテーマを絞り、具体的な導入方法と成功事例をご紹介いたします。
【①】多品種少量溶接ロボット導入の進め方
~業務分析、データ収集、作業分析、コスト効果分析、、、~
【②】多品種少量溶接ロボット導入の具体的手法
~溶接工程の作業分析を実施し本溶接とグラインダー仕上をロボット化~
導入の具体的手法を徹底解説!!
【③】補助金を活用した多品種少量溶接ロボット導入成功事例
●小ロット多品種板金加工業の溶接工程にロボット導入
7軸ロボットの導入により、人手に頼っていた溶接部門のロボット化を実現
●車両用大型部品の溶接工程にロボット導入
大量生産にしか向かないロボットのイメージを払拭、はじめてのロボット導入に至る
●曲面や立体形状アルミ部品のスタッド溶接加工作業をロボット化
スタートボタンを押すだけの簡単操作でパート社員でも操作が可能に
●建設部品の外観部溶接工程にロボット導入
高度な技術をもった熟練作業者しかできない外観部溶接工程にロボットを導入
●鍛造金型の硬化肉盛り工程へのロボット導入
ロボットオフラインソフトを用いて曲面ティーチング作業を数分で効率的に処理
●特注大型門扉製造工程における溶接ロボットシステムの効率化
事前に分類した教示データの利用で、溶接スキルの有無にかかわらず誰でも操作可能に
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中堅・中小製造業 経営者向け AI外観検査の導入ポイント 解説レポート
中小製造業がロボット導入で費用対効果を最大化するために最初にすべきこと
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製造業では必ずと言っていいほど人手のかかる作業となっている外観検査。
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