記事公開日:2019.09.25
最終更新日:2023.01.20
工場自動化に向けて産業用ロボットの特徴を知る
近年、ロボットはあらゆる分野において、その裾野を拡げてきております。
製造業においてもそれは例外ではなく、工場のロボット化、ファクトリーオートメーション(FA)など、人により呼称は様々ではありますが、着実にロボットは私たちの身近なものとなってきているようです。
このように言うと、「確かにロボット化は大手の自動車工場の生産ラインなどに活用されている例とかよく見るね。」とか、「投資資金が潤沢な企業では最近ロボット化が進んでいるようだね。」など、どうやら“大企業が省人化の為に投入するもの=産業用ロボット”と思われているのかもしれないようです。
しかし本来、産業用ロボットとはそのような大企業の大量生産に用いられるだけではなく、中小企業の町工場など、少量多品種の生産体制に用いられることで成果を大いに発揮するものです。
ところで、この“産業用ロボット”とは、一体よく聞く “ロボット”とどのような違いがあるのでしょうか?
産業用ロボットもロボットの内の一つでありますが、その用途は製造業の現場、工場などに限られます。
これから話を進めていく上で、定義を明確にする必要があると思いますので、以下に日本工業規格JISによる定義を示します。
目次
1 産業用ロボットとは
日本工業規格JISによると、
「自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレータであり、3軸以上でプログラム可能で、1か所に固定して又は移動機能をもって、産業自動化の用途に用いられるロボット。」
と、このように定義付けられています。
(※日本工業規格JIS 「JIS B 0134:2015 2.9,産業用ロボット」)
このことからも、産業用ロボットは、形ではなく大まかな機能に焦点が当てられています。
しかしながら、この産業用ロボットは日々の技術的な進歩により、急速に進化を遂げてきています。
上記の定義によれば、産業用ロボットとは、同じ動作を繰り返し、それをずっと続けるための機械ではない様に受け止められたのではないでしょうか。
定義中にも「自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレータ」と、あるように産業用ロボットは大企業のような大量生産に適したものであるとはどこにも書いていないのです。
むしろ、各種の作業をプログラミングによって実行でき、再プログラミング可能で多目的な機械というのは中小企業のような多品種少量の生産体制において活躍が期待されるロボットであると言えるでしょう。
2 産業用ロボットの種類は?
産業用ロボットとは製造業の現場、工場の自動化を助けるものであるということは分かってきました。
しかし、産業用ロボットと一口に語っても様々な形状、機能を持ったものがあります。
それらロボットには一つ一つ、機能を最大限に発揮する工程があるようです。どんな種類のロボットがあるのか見ていきましょう
現在、一般的に産業ロボットというと、以下のような4種類が基本のロボットの種類となるようです。順を追って簡単に説明していきます。
2.1 垂直多関節ロボット
現在、工場に投入されているロボットの中では最もポピュラーな産業用ロボットとなります。
この垂直多関節型のロボットは、人間の腕の間接に似ているロボットです。
軸の数が多いことにより、動作の自由度が非常に高いということが特徴の一つです。
このように自由度が高いことで対象とするワークを回り込んでの作業も得意です。
しかし、その多軸ということからも制御がやや複雑になります。
具体的な例としては、自動車の溶接工程、組立工程など、様々な用途で使われています。
2.2 水平多関節ロボット
水平(スカラ)方向の動きに特化したロボットです。
水平多関節型のロボットは別名としてスカラロボットと呼ばれることが多々あります。
このロボットの関節は回転軸が全て垂直に揃っているため、必ずアームの先端が水平面内を移動します。
このことから、平面的な作業に向いていると言えます。
ウエハの搬送や、基板を組み立てる際など用途は多岐に渡っております。
2.3 パラレルリンクロボット
多関節型のロボットは軸が直列に繋がっている型でした。
しかし、それに対してパラレルリンク型では並列(パラレル)に軸が配置されているロボットとなります。
可動範囲はやや狭いですが、それぞれの関節が直接、先端を制御することが可能となり、非常に高速で動けるという特徴があります。
一般的には、アームで先端部の位置を制御し、ラインで移動する部品の整列や、選定などの作業へ利用されることが多いロボットです。
直交(直角)座標ロボット
縦(X軸)、横(Y軸)、高さ(Z軸)の3方向を直交するスライドで実現するロボットです。
作業を施す範囲に対し、設置面積が広くなってしまいますが、スライド機構による動作のため、回転がないという特徴があります。
そのため、制御も比較的簡単です。
このロボットは重量物の搬送や、基板の組み立て、ネジ締めなどが使用用途として挙げられます。
3 産業用ロボットの用途とは?
産業用のロボットにはどのような種類があるのかということを紹介してきました。
これらロボットは工場のどのような工程をロボット化することが可能となってきているのでしょうか。
産業用ロボットが活用される代表的な5つのロボット化を紹介します。
3.1 溶接ロボット
溶接作業は高い熱や紫外線とヒュームが発生する過酷なものであり、産業用ロボットの需要の高い作業であります。
スポット溶接とアーク溶接を行うものがあり、これらの多くは多関節ロボットにより作業が行われるのが主流となっています。
3.2 組立ロボット
組立ロボットでは、どのような組立によるかという部分で最適なロボットの選定も異なってきます。
多関節ロボットだけでなく、双腕スカラロボットやパラレルリンクロボットなどが組立ロボットに適している場合もあり、ロボットの特性を考慮しつつ検討する必要性があります。
3.3 輸送ロボット
物流業界がEコマースの発展により、この搬送用ロボットが大きな役割を担ってきます。
搬送と一口に言っても、AGVのような自走式ロボットもあれば、多関節ロボットによる段ボールのパレタイジングやデパレタイジングなど幅広く種類が分かれます。
3.4 塗装ロボット
塗装工程のロボット化というと、自動車生産工場のロボット導入が有名です。
このような塗装では多くの作業が溶接同様に、多関節ロボットにより行われるのが主流のようです。
これは、塗装面の形状が一定でないということからも、自由度の高い多関節ロボットを使用することが最適であるということです。
3.5 検査ロボット
これまで紹介してきたロボットはプログラミングにより動作制御されますが、ロボット自体には検査を行う装置はついておりません。
そのため、検査を行うためにカメラ・レーザー変位センサーなどアプリケーションをロボットに取り付けることによって検査を行えるようにする必要性があります。
つまり、検査工程には何かしらのロボットの目となるセンサーを取り付けてあげる必要があるということです。
本記事では、上記のような工程のロボット化を紹介してきましたが、ロボットの活用の仕方によっては今こちらを読まれている方の工場でも自動化できる工程は必ずあるはずです。
本サイトでは様々な中小企業のロボット化の事例を掲載しておりますので、そちらもご一読いただければ自社の自動化の参考にお役立ちすると思います。
4 まとめ
近年、技術は急速なスピードで進化しています。ここまで説明してきた産業用ロボットですが、一つに括ってしまうこともできます。
しかし、ロボットの種類やそれらが使われる場面というのは様々のようです。
本記事では、産業用ロボットの種類を初めに、工場のどのような工程を自動化することが出来るのかということを簡単に解説してきました。
このようなロボット化は大企業にしか関わらないと思われがちでありましたが、産業用ロボットの定義にもあるように、ロボットとは中小企業のような多品種少量生産の現場において最大限の効果を発揮します。
もう既に、着々とロボットを導入し始めている中小企業もいるようで、先行事例として注目を集めています。
「自社ではロボットを導入することはできないのではないか?」、「別にまだロボット化をしなくても大丈夫ではないか?」このような考え方をしていては、今押し寄せている自動化の流れに取り残されてしまいます。我々が考えなければいけないのは、「どの工程へ、どのロボットを、いつ導入しようか?」というこの3点だけです。
本サイトでは様々な中小企業のロボット導入事例を掲載しておりますから、きっと自社の自動化の参考になると思います。
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