記事公開日:2021.04.16
最終更新日:2023.08.18

溶接ロボットを安定稼働させるセンシング機器とは?

多品種少量溶接ロボット導入事例解説レポート

1.溶接ロボットにおいての課題

産業用ロボットは一般的に「教示された通りに、精度良く、くり返し動作する」ものです。
繰り返し精度は、±0.1mm~0.5mm程なので、そこまで精度が悪いものではありません。
しかし溶接の対象となる構造物は下記の様な個体差が発生します。

  • 切断寸法
  • 曲げ角度
  • 仮付け位置
  • 母材の歪み、反り
  • 治具固定時のズレ
  • 溶接中の熱変形

このような加工で起きる加工寸法の誤差が元で、ロボットに教示してある溶接トーチと溶接線の位置
が微妙にずれてくる事は容易に想像が出来ます。
このような誤差が発生する環境でも長期的に品質と稼働を安定させていくためには、変化をセンシングしてトーチ位置やロボットの軌道、溶接条件を修正していく事が解決の手段として有効です。
特にTIG溶接等、シビアな溶接線の管理が必要な溶接には必須と言えます。
もちろんロボットの絶対精度の問題もありますが、多くの場合のロボット溶接においては、ロボット自身の精度よりも、むしろその相手(被溶接物)側の様々な要因によるずれを、いかに補正できるかが課題になります。

今回はそんな溶接ロボットの補正が可能となるセンシング機器について解説していきます。

2.センサーの種類や分類

まずセンサーについては下記の2点に分類されます。

  • 接触式センサー
  • 非接触式センサー

接触式センサーで一般的なのは

●接触プローブセンサ
溶接トーチと一体で動作するようにした接触子を開先にあて、開先の位置を検出する事が可能でアナログ信号でリアルタイムに位置を検出するものと、リミットSWのようにON/OFF(センサーが当たった瞬間の位置)を検出するものの2種類が一般的です。
●ワイヤータッチセンサ
溶接ワイヤ自身を接触子として用いるもので、微弱電流を流した溶接ワイヤと被溶接物との接触により、溶接開始点や終了点、継手位置等を検出します。

  1. 溶接トーチやロボット手首の近くに、検出ヘッドなどのじゃまになる機構を必要とせず、狭い部などでも適用上の制限が少ない。
  2. 溶接ワイヤ自身により位置検出を行うため、 センサ自体の位置調整(キャリブレーション)を必要としない。
  3. 簡単な制御回路で構成でき、センサ機構や計測装置が不要なため経済的である. ただこの方法はアーク発生中のリアルタイムの倣いではないため溶接線そのものの検出には不向きで、多くの場合は溶接前の溶接開始点検出用として用いられ溶接線に追従するアークセンサと併用する事も多い。

非接触式センサーとしては

●アークセンサ
消耗電極アーク溶接を開先内でウィービングしながら行った時の、溶接電流またはアーク電圧の変化を検出し、トーチ位置の制御を行います。特にZ相(溶接面からトーチ間の距離)の制御が行われ溶け込み量を安定させてくれます。
アークセンサは以下のような特徴をもっており有効なアーク溶接用ロボットのセンサとして広く用いられてます。

  1. アーク自身をセンサとしているため、溶接トーチやロボット手首の近くに検出ヘッドなどの機構を必要とせず、複雑な形状のワークにも適用できる。
  2. 溶接中の熱変形にも追従でき、リアルタイムで3次元溶接線倣いができる。
  3. アーク光、スパッタ、ヒュームなどの影響を受けず、精度、耐久性に優れている。
  4. 低コストで、経済的である。

アークセンサはアーク自身をセンサとするため検出ヘッドが不要で、アーク、スパッタ、ヒュームなどの影響を受 けないが、ウイービングを必要とするため実用溶接速度範囲は、1.5min/m 程度であり、相応の開先のあ る所にしか適用できない。

●レーザーセンサー
レーザー光を照射するセンサーヘッドを溶接トーチと同様にロボットハンドに装着し、溶接前にレーザー光を被溶接物に照射して、形状の変化を読み取る事で、開先や溶接位置の検出を行います。
レーザ光の反射により2Dの点群データを読み取りロボット側にフィードバックしたのちに専用のソフトウェアにて点群データを編集、任意の設定した加工点を中心にロボットの加工PRGが補正されるモノです。
レーザー光による検出精度は非常に優れている事と周辺環境にも影響されにくい事が特徴です。
TIG溶接の突き合わせ面などGAPがゼロに近いものでも、微細な段差や寸法の変化を検知する事が出来ます。
センサーから得られた点群データ(各計測地点の座標を持ったデータ)を編集、加工する事で、複雑な形状の判別も可能なので、より幅広く応用が利くセンサーです。

  1. ロボットハンドにレーザーセンサーを装着し加工前に一度サーチしてからロボットコントローラーや外部ソフトウェアにて位置補正を実施。
  2. レーザー発光面には溶接によるスパッタやヒュームの影響からレンズを保護するカバーが取り付けられていて定期的に交換が必要。
  3. 補正機器としては高価でセンサーのみで数百万円する事もあります。レーザー光から得られたデータを編集し加工点をサーチ、ロボットPRGを補正するソフトウェアが別途必要になる場合も多いです。(特にメーカー純正ではないレーザー補正システム)
  4. 直近ではレーザーセンサーから3Dのモデルを自動で生成し3Dモデル上で加工点をサーチしロボットPRGを補正してくれるソフトウェアの開発も進んでおり、今後の成長が最も期待される分野です。

このようなセンサーを活用する事で被溶接物の寸法・形状・姿勢の変化をサーチし、ロボットPRGを
自動で補正していく事で、品質と稼働の安定を図る事が出来ます。

主なセンサーの機能の整理としては
①ティーチングなどにより記憶されたトーチの位置・軌跡に対し、実際の溶接線を検出し、誤差を修正する。
(基となるティーチングデータの開始点を溶接線に合わせて自動で補正する)
②開先幅や裏波の状況などをセンシングし、溶接電流・電圧・速度・ウィービング幅などの溶接条件を修 正する。

溶接加工においてはMIG、MAG、TIG、レーザー等複数ありますが、共通して自動化の課題になるのはいつも、被溶接物の寸法、姿勢の誤差ですが、全ての加工条件で寸法誤差を減らす事は非常に大事ですが、それでも誤差は生まれてきます。
ロボットはあくまで人間でいう所の腕にあたり、モノを考えたりする事は出来ませんので、センサーが目となりソフトウェアが脳として加工物の個体差を判別しズレを修正する事で、人間の職人と同様に溶接を行わせる事が出来ます。

3.おわりに

今回は、溶接ロボットのセンサーと補正機能についてお伝えしましたが如何でしたか?
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