コロナ禍で求められるAI・デジタル活用による業務改革
2020.10.05
1.今、直面している日本の人材不足
日本の人口は、2009年をピークに毎年減少し続けています。総務省によると、2020年1月1日現在の日本の人口は1億2602万人、そのうち15~64歳の人口は7513万人となり、これは全体の約60%の人が労働人口として該当することを示します。また、国立社会保障・人口問題研究所の生産年齢人口の調査によると、2015年には7,728万人いた労働世代の人口が、2029年には7,000万人、2056年には5,000万人を割り込むと予測されています。
さらに、少子高齢化による労働人口の減少により、有効求人倍率も上昇しています。有効求人倍率とは、就職希望者一人当たりに何件の求人があるかを表した数値のことです。厚生労働省によると、2009年度から2019年までに有効求人倍率は10年連続で上昇しています。2019年度の有効求人倍率1.55倍に比べ、2020年度は新型コロナウイルスによる影響で1.08倍まで低下しましたが、人口が減っている以上、人材不足問題は更に大きくなっていくことが予想されます。
また、中小企業庁が発表する「中小企業白書」によると、1986年時点では、ほぼすべての地域で製造業の従業者が最多でした。しかし、2014年時点では、小売業やサービス業の労働者数が最多となる市町村が増加し、製造業からサービス業へと産業構造が変化していることも大きな問題です。
2.Withコロナで求められる本気の業務改革
業務改革と言えば、2016年8月に閣議決定した「働き方改革」より、プライベートの時間を大切にする価値観が広まり、労働者側の価値観の変化と多様化が進みました。
働き方改革の目的の一つは、今年に開催される予定だった東京オリンピックの初日をテレワーク・デイとして、企業への在宅や本社以外のオフィスでの勤務を呼び掛け、通勤者を減らし、東京オリンピックの期間中に観戦者が朝のラッシュ時に移動できるような環境作りをするというものでした。しかし、コロナをきっかけに多くの企業が半ば強制的に従来の仕事のやり方について見直しを迫られました。他人事であったテレワークやそれに伴う社内ツールのデジタル化について避けられない状況に直面した企業は多いでしょう。その中でたくさんの新しい価値観が生まれたことは間違いなく、この価値観は今後の生活・仕事のスタンダードとなっていくでしょう。
仕事の業務についても新しい価値観が生まれました。それはハンコ文化に代表される「業務の簡素化」です。すべてのことに「目の前の業務が本当に意味・価値はあるのか」と立ち止まって考える習慣が生まれました。意味がなければ廃止する。無駄だと感じてきた人力でアナログな作業はデジタル化に移行して効率化しようといった考え方をする人が多くなりました。
このような考え方をする人が多くなってきた中で、企業としてその波に乗れない企業は大きなリスクは抱えることになるでしょう。それは、デジタル化により業務効率化が図れないリスクではありません。最も重要なリスクは「社員のモチベーションの低下」です。今、デジタル化に対する社員の目は敏感です。自社がデジタル化に対応してくれないと感じれば、会社への信頼は揺らぎ、個々人のやる気は失われていくでしょう。逆に会社としてデジタル化に積極的な姿勢を見せれば、社員は「会社が社員のことを考えてくれている」と感じ、積極的に仕事に取り組むようになります。デジタル化への姿勢とは、効率化の数値に見えないところで社員に影響していくものです。
3.各業界の取り組み
では、今各業界ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。実例を挙げて見ていきましょう。少ない人材を効率よく回しながら従業員の満足度を上げるための第一歩として、マニュアル化された定型度の高い業務の自動化が挙げられます。そこには、人間の知的なふるまいを人工的に再現することができる「AI」が活用されています。ここでは、デジタル化の中でもAIを活用したシステムを紹介していきます。
例えば銀行では、取引時に印鑑票という顧客の印影や個人情報を記載した書類を利用します。実際、とある銀行では、数億ページの印鑑票を複数の倉庫に保管し、必要に応じて専用端末から参照していたのですが、書類の電子化は進んでおらず事務処理に膨大な時間がかかっていたそうです。その書類を、光学的文字認識(OCR)という書面上の文字を読み取り電子化するAI技術(AIOCR)を用いて電子化したことで、大幅に業務が効率化したことが報告されています。
また、弊社船井総合研究所では、人材の採用にAIを活用しています。AIによって、似た志向を持つ、相性の良いコンサルタントをマッチングさせ、面接官ではなくリクルーターとして内定までを応援しています。面接官がすべての学生からの質問を担当するのではなく、選定されたコンサルタントに選考に関しての質問や悩みを相談できるので、入社してからの意識の乖離を減少させることができるだけでなく、お互いが効率よく時間を使うことができます。
他にも、AIチャットボットによりお問い合わせ業務担当者の人員を削減、営業手段の1つであるTwitterへの投稿代行、製造現場では不良発生傾向を自動分類するなどAIでできることは多岐に渡ります。
4.AIが社会基盤を構築するようになった世界
AIによって雇用が奪われる危険性があるとの指摘があります。しかし、それは悲観的な見方であり、実際は期待される要素の方が多くあります。「人員不足が加速する中、AIで出来ることはAIに置きかえ、浮いた時間・人員を本来行うべき付加価値の高い仕事に充てる」という考えが近い将来には主流になっていきます。残念ながら今は長時間労働が前提とした働き方が多いですが、長時間労働のすべてが付加価値の高い仕事ではないはずです。「人がやるべき仕事」「AIにやらせる仕事」の役割分担がより明確になっていく中で、生産性の低い作業は自然になくなっていくでしょう。勘違いしてはいけないのは、AIは大企業だけが導入しているわけではありません。企業規模に関係なくAIを取り入れている企業は多くおります。テレワークが他人事ではなくなったように、AIも他人事ではありません。人口が減少していく日本社会において、AIは
我々の生活・仕事隅々にまで恩恵を与えることでしょう。
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中堅・中小製造業 経営者様向け “工場のAI・デジタル化”最新事例解説レポート
この1冊で、工場のAI・デジタル化の最新事例がわかる!
【事例①】AI活用を通じて「見積もり業務の標準化・脱属人化」を推進!
【事例②】付加価値を生まない検査工程から人手を開放!AIを活用した外観検査体制の構築!
【事例③】現場に散乱していた生産日報・日常点検表等のペーパーレス化を実現!
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https://smart-factory.funaisoken.co.jp/download/201208/ 1.今、直面している日本の人材不足
日本の人口は、2009年をピークに毎年減少し続けています。総務省によると、2020年1月1日現在の日本の人口は1億2602万人、そのうち15~64歳の人口は7513万人となり、これは全体の約60%の人が労働人口として該当することを示します。また、国立社会保障・人口問題研究所の生産年齢人口の調査によると、2015年には7,728万人いた労働世代の人口が、2029年には7,000万人、2056年には5,000万人を割り込むと予測されています。
さらに、少子高齢化による労働人口の減少により、有効求人倍率も上昇しています。有効求人倍率とは、就職希望者一人当たりに何件の求人があるかを表した数値のことです。厚生労働省によると、2009年度から2019年までに有効求人倍率は10年連続で上昇しています。2019年度の有効求人倍率1.55倍に比べ、2020年度は新型コロナウイルスによる影響で1.08倍まで低下しましたが、人口が減っている以上、人材不足問題は更に大きくなっていくことが予想されます。
また、中小企業庁が発表する「中小企業白書」によると、1986年時点では、ほぼすべての地域で製造業の従業者が最多でした。しかし、2014年時点では、小売業やサービス業の労働者数が最多となる市町村が増加し、製造業からサービス業へと産業構造が変化していることも大きな問題です。
2.Withコロナで求められる本気の業務改革
業務改革と言えば、2016年8月に閣議決定した「働き方改革」より、プライベートの時間を大切にする価値観が広まり、労働者側の価値観の変化と多様化が進みました。
働き方改革の目的の一つは、今年に開催される予定だった東京オリンピックの初日をテレワーク・デイとして、企業への在宅や本社以外のオフィスでの勤務を呼び掛け、通勤者を減らし、東京オリンピックの期間中に観戦者が朝のラッシュ時に移動できるような環境作りをするというものでした。しかし、コロナをきっかけに多くの企業が半ば強制的に従来の仕事のやり方について見直しを迫られました。他人事であったテレワークやそれに伴う社内ツールのデジタル化について避けられない状況に直面した企業は多いでしょう。その中でたくさんの新しい価値観が生まれたことは間違いなく、この価値観は今後の生活・仕事のスタンダードとなっていくでしょう。
仕事の業務についても新しい価値観が生まれました。それはハンコ文化に代表される「業務の簡素化」です。すべてのことに「目の前の業務が本当に意味・価値はあるのか」と立ち止まって考える習慣が生まれました。意味がなければ廃止する。無駄だと感じてきた人力でアナログな作業はデジタル化に移行して効率化しようといった考え方をする人が多くなりました。
このような考え方をする人が多くなってきた中で、企業としてその波に乗れない企業は大きなリスクは抱えることになるでしょう。それは、デジタル化により業務効率化が図れないリスクではありません。最も重要なリスクは「社員のモチベーションの低下」です。今、デジタル化に対する社員の目は敏感です。自社がデジタル化に対応してくれないと感じれば、会社への信頼は揺らぎ、個々人のやる気は失われていくでしょう。逆に会社としてデジタル化に積極的な姿勢を見せれば、社員は「会社が社員のことを考えてくれている」と感じ、積極的に仕事に取り組むようになります。デジタル化への姿勢とは、効率化の数値に見えないところで社員に影響していくものです。
3.各業界の取り組み
では、今各業界ではどのような取り組みがなされているのでしょうか。実例を挙げて見ていきましょう。少ない人材を効率よく回しながら従業員の満足度を上げるための第一歩として、マニュアル化された定型度の高い業務の自動化が挙げられます。そこには、人間の知的なふるまいを人工的に再現することができる「AI」が活用されています。ここでは、デジタル化の中でもAIを活用したシステムを紹介していきます。
例えば銀行では、取引時に印鑑票という顧客の印影や個人情報を記載した書類を利用します。実際、とある銀行では、数億ページの印鑑票を複数の倉庫に保管し、必要に応じて専用端末から参照していたのですが、書類の電子化は進んでおらず事務処理に膨大な時間がかかっていたそうです。その書類を、光学的文字認識(OCR)という書面上の文字を読み取り電子化するAI技術(AIOCR)を用いて電子化したことで、大幅に業務が効率化したことが報告されています。
また、弊社船井総合研究所では、人材の採用にAIを活用しています。AIによって、似た志向を持つ、相性の良いコンサルタントをマッチングさせ、面接官ではなくリクルーターとして内定までを応援しています。面接官がすべての学生からの質問を担当するのではなく、選定されたコンサルタントに選考に関しての質問や悩みを相談できるので、入社してからの意識の乖離を減少させることができるだけでなく、お互いが効率よく時間を使うことができます。
他にも、AIチャットボットによりお問い合わせ業務担当者の人員を削減、営業手段の1つであるTwitterへの投稿代行、製造現場では不良発生傾向を自動分類するなどAIでできることは多岐に渡ります。
4.AIが社会基盤を構築するようになった世界
AIによって雇用が奪われる危険性があるとの指摘があります。しかし、それは悲観的な見方であり、実際は期待される要素の方が多くあります。「人員不足が加速する中、AIで出来ることはAIに置きかえ、浮いた時間・人員を本来行うべき付加価値の高い仕事に充てる」という考えが近い将来には主流になっていきます。残念ながら今は長時間労働が前提とした働き方が多いですが、長時間労働のすべてが付加価値の高い仕事ではないはずです。「人がやるべき仕事」「AIにやらせる仕事」の役割分担がより明確になっていく中で、生産性の低い作業は自然になくなっていくでしょう。勘違いしてはいけないのは、AIは大企業だけが導入しているわけではありません。企業規模に関係なくAIを取り入れている企業は多くおります。テレワークが他人事ではなくなったように、AIも他人事ではありません。人口が減少していく日本社会において、AIは
我々の生活・仕事隅々にまで恩恵を与えることでしょう。
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中堅・中小製造業 経営者様向け “工場のAI・デジタル化”最新事例解説レポート
この1冊で、工場のAI・デジタル化の最新事例がわかる!
【事例①】AI活用を通じて「見積もり業務の標準化・脱属人化」を推進!
【事例②】付加価値を生まない検査工程から人手を開放!AIを活用した外観検査体制の構築!
【事例③】現場に散乱していた生産日報・日常点検表等のペーパーレス化を実現!
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https://smart-factory.funaisoken.co.jp/download/201208/