記事公開日:2022.11.04
最終更新日:2023.01.20

中堅・中小ものづくり企業の新成長戦略~事業成長担保権の活用~

いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。

本コラムでは、企業の事業課題の一つである「金融機関からの融資」に対して、新たな選択肢となると最近話題となっている「事業成長担保権」について、中堅・中小製造企業にとって自社の事業を成長させるために重要であること、および制度施行後に速やかに融資審査を受けるために今から始めることを筆者の予測を含めつつ解説させていただきます。

本コラムのポイントは、以下の3つです。
(1)事業成長担保権に期待すること
(2)事業計画で融資を受けるために今から始めること
(3)事業計画を作るために必要なこと

1.事業成長担保権に期待すること

本担保制度に期待することは下記の2つです。
① 技術力を生かした事業の展開
② 社員の技術力向上

事業成長担保権とは、2022年現在、法務省及び関係省庁、有識者で議論を進めている「無形資産を含めた事業全体に対する担保制度」のことです。
まだ、議論中であるため、内容が確定しいるわけではありませんが、この担保権の対象になる無形資産の中には、「ブランド・ノウハウ・顧客基盤・知的所有権等」「事業運営から創り出される(将来見込まれる)キャッシュフロー」が含まれています。

この企画の背景に、ITベンチャー企業のように固定資産を充分持たない企業の経営者に融資を行えるような環境整備の必要性が高まっていることがあげられます。一方で、自社のものづくりに自信があり成長戦略を持っている企業にとっても、大変重要な制度です。
従来は、銀行が融資判断をする際は経営者の有形の不動産(土地、工場、設備等)、個別資産の評価額を算定したうえで企業の事業計画に融資するかどうか判断をしていましたが、この新たな担保制度では、事業全体が担保になります。
精度が高い事業計画を作成することで、その計画から生まれるキャッシュフローを基に融資を受けられるようになります。既存の融資方法ではあきらめていた計画でも、具体的で実現性が高ければ、新たな融資を受けられる可能性が高くなります。

その為、融資審査でも事業計画の内容をより精査されることが予想されます。これは事業計画の審査が厳しくなるといった面がある一方で、融資をうけるまでの過程で指摘が入ることで、事業計画の内容がブラッシュアップされるといった面もあります。

また、自社の技術力、その理由となる社員の能力も資産価値として評価されることが期待できる(特定の技術を持った技術系社員が必要な製品での差別化等)ため、社員にとっても技術力を高めることで企業価値向上に貢献できます。そういった能力を備えた社員と企業の両方が社外からも評価されれば、企業と社員の両方にメリットがあり、新たな人事評価制度の設定など様々な変革が起きることが期待できます。

2.今から始めること

事業成長担保権の運用は検討を進めている状況で、運用は始まっていません。
そのため、審査方法の詳細は不明ですが、従来の審査よりは事業計画を細かく具体的にチェックを受けること確実でしょう。
では、どういった事業計画が求められるのでしょうか?

重要な要素は複数あります。
自社の概況・市場分析・自社の優位性・計画の実現性等などです。従来の中長期計画や事業計画などでも同様のことは作成してきたと思います。今後は、その精度と確度が従来よりも高いレベルで要求されることが想像でき、「具体的な根拠」を求められることでしょう。
つまり、根拠をデータで示すことはもちろん、そのデータを集める方法や管理方法を説明する必要があります。事業計画がデータ・根拠に基づいて実現性高く立案されていれば、審査の際の説得力が増しますし、そういった計画は事業成長の強力な柱になることが期待できます。
重要ポイントは、「データで見せる」ことだと考えていますので、そのための数値化の仕組みとデータを蓄積・分析し、データで進捗管理を定期実施していることを示す必要があります。また、データのみならず、ソフト面・ハード面でも必要なことを決める必要があります。

3.データに基づいた事業計画を作るために必要なこと

以下では、データに基づいた事業計画を作成するために必要な取組内容の一部とその理由について説明させていただきます。

① 社員の能力の把握
スキルマップや評価テスト、人事考課などの結果を集計し、各社員の技量を整理しておき、事業計画を実現するために必要な人材、不足している人材を把握します。不足している人材確保のための採用計画や育成計画を立て、事業計画の具体性を向上させます。

② 生産能力の把握
設備能力一覧表や主力製品の生産リードタイムを把握しておきます。また、外注や購買関係の協力会社の能力についても整理しておく必要があります。生産能力を把握することで生産計画の説得力が増します。

③ 実績管理の強化
個別原価管理や生産管理等を数値で管理することで、管理体制を強化します。数値を使用することで、あいまいになっている部分を明確に把握し、事業目標を具体的に設定できるようなります。

④ 改善活動の推進
管理の強化と合わせて改善活動を進めます。改善活動の進捗と成果をデータで管理し、自社に計画を実現するための実行力があることを示します。

上記のいずれも体制を整えることは比較的短時間にできますが、データを蓄積することについては、時間を要します。効率的にデータを収集するためには、人力で実施するのではなく、ITツールを活用していくことが重要です。

4.まとめ

今回のコラムでは、日本の製造業発展の起因となり得る新たな担保制度「事業成長担保権」の概要説明とメリット、この担保制度を活用するために今から始めるべき取組の一部を解説させていただきました。
本内容を自社の中長期計画の検討、成長発展のお役に立てていただきたいです。
また、上記内容について、より具体的に詳細をお知りになりたい場合は、お気軽に弊社にご相談いただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 
 
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