記事公開日:2022.11.29
最終更新日:2023.08.19

製造業のデータドリブン経営を実現するためのデータ化について

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製造業 基幹システム活用2024年時流予測レポート ~今後の業界動向・トレンドを予測~

いつも当コラムをご愛読いただきありがとうございます。

データドリブン経営という言葉が出現してから随分と時間が経ちましたが、実際に実現できている会社は多くはありません。
その理由として、主に製造現場のデータ化の取り組みの優先順位が低いことが主に挙げられます。

しかし、製造現場の状況をデータ化することによって見えることは多くあり、うまく活用することによって適切な投資、経営改善が可能となります。

今回は製造現場をデータ化することによって
・見えてくるもの
・データを見て現場改善を進めていくことの効果
について説明していきます。

1.製造現場のデータ化ができていない理由

冒頭でも述べましたが、多くの企業では製造現場のデータ化ができておりません。データ化の優先順位が低いことももちろん理由として挙げられますが、優先順位を上げて取り組むとなった場合、次にデータ化の取り組みのハードルの高さが障壁となってきます。そのハードルの高さの原因は以下となります。
a.データ活用を見据えた、データの適切な粒度の設定が必要
b.現場の状況に合った適切なデータ取得方法の検討が必要
c.現場の方の協力が必要である
d.恒常的に行わなければ効果が得られない

a.データ活用を見据えた、データの適切な粒度の設定が必要
単に実績だけを取得するのでは、その製品の製造にかかわるリードタイムやボトルネック工程の分析ができなくなってしまいます。どの軸で分析を行い、どのデータを取得することでどのような改善が見込めるかが見えたうえで、データの粒度を設定していく必要があります。
これには、現場の知識だけでなくデータ分析の知識が必要であり、この双方を満たす人材が希少である為、データのハードルが高くなってします。

b.現場の状況に合った適切なデータ取得方法の検討が必要
データの粒度が確定した後には、データ取得方法を検討する必要があります。現在、市場には様々なデータ取得方法が存在しており、それぞれ得手不得手があります。
複数の方法を吟味するには多少の費用が必要となり、さらには一つの手法がすべての設備、工程に対して適切であるとは限らないため、全設備、全工程に合った取得方法を限られた費用の中で決定する必要があります。
費用感としてもおおよそ数百万はかかり、安い金額とは言えない為、限られた予算で取得方法を決定していかなければなりません。

c.現場の方の協力が必要である
取得方法が決定した後は、現場の方への協力をお願いする必要があります。すべて自動で取得できれば良いのですが、データ化する項目には製品名や工程数、担当者名等自動で取得し得ない情報が含まれていますので、二次元コード読み取りなどのひと手間をお願いしなければなりません。
しかし、多品種少量生産であり、常に特急品やその他トラブル等の外乱に対応している現場にとって、そのひと手間を行うことは製造業務の妨げであると感じてしまうことも少なくありません。
データ化することで何が見え、どのように現場改善としてフィードバックされていくのか、という道筋を然りとお見せし、現場の方への理解を得た上で進めていく必要があります。

d.恒常的に行わなければ効果が得られない
多品種少量生産において、データサンプリングによる現場分析にはある程度の限界があります。前項で述べたように、様々な外乱に対処しながら製造しているため、サンプリング時の状況から現場のすべてを推測することはできません。
そのため、恒常的にデータを取得していき、ビッグデータとして蓄積していく必要があります。

これらの障壁は避けられないものであり、簡易化させることはほとんど難しいと考えてよいでしょう。会社全体でデータ化に向けての取り組みを行い、地道に泥臭くデータ化を行っていくことが必要となってきます。

2.製造現場をデータ化することによって見えてくるもの

しかし、1項の障壁を突破してでも、データ化することには意味があります。
まず、前提として取得すべきデータは下記項目である必要があります。

  • ロットNo 段取り開始時間
  • 顧客名 段取り終了時間
  • 製品名 作業開始時間
  • 工程数 作業終了時間
  • 担当者名
  • 設備番号
  • 指示数
  • 良品数
  • 不良品数
  • 不良理由

ここまでの項目を取得できていれば、以下のように多くの軸からの分析が可能となります。

  • ロットNo軸集計による直接製造費の算出
  • 顧客軸集計による客先別分析
  • 製品ごとのボトルネック工程の分析
  • 担当者ごとの作業分析
  • 設備ごとの稼働分析・製品リードタイム分析
  • 製品に対する良品・不良品の傾向分析
  • 段取りのタイミング、製品ごとにおける傾向分析
  • 製品の製造状況のリアルタイム把握、時間軸分析

etc…

データに関してのみ言えば、取得したデータの項目が分析の軸となるため、取得するデータが細かいほどより細かい分析が出来るようになります。
もちろん、細かく取得する分現場への負荷が高くなってしまうため、議論を行う必要がありますが、データの項目を設定する際には、「取得する項目が既に取得されている項目別に違いが現れるかどうか」という点に留意して設定することでより適切な粒度設定が可能となります。

例)段取り時間を追加で取得する必要があるかどうかを検討する場合
・取得する項目:段取り時間
・既に取得されている項目:担当者
・違い:担当者ごとにスキルが問われるため、時間に違いが現れる。

3.データを見て現場改善を進めていくことの効果

データの取得まで行うことができた場合、次は分析のフェーズになります。ここでいう分析では、高度な分析は必要とせずとも必要な改善項目が見えてくる場合が多いと感じています。

分析の方法としては、「項目別にフィルターをかけてそれぞれの違いを分かりやすくグラフ化する」という方法で十分です。

最初の分析段階では、データを見て現場改善していくことによって、今までなんとなく頭の中で「ここが課題で改善が必要だな…」と感じていた部分が可視化されるようになります。勘や経験による課題感の根拠となるものがデータとして現れてきます。

そうなると、根拠のある改善になるため、投資における失敗のリスクを削減することができ、さらに投資対効果の算出も可能となってきます。

データによる改善の効果が現れ始めると、改善による新たな項目に対してもデータ化を意識した改善を行うようになります。それによって新しく改善項目が現れ、またデータ化を意識した改善を行う…とこのサイクルを繰り替えるようになります。
これが「データドリブン経営」となるのです。

4.まとめ

AIをはじめとした最新技術において、「データ」というものはデジタル社会である以上使われ続けます。
IT企業では、このデータを集めてビッグデータとして販売するような企業もあるほどです。
早い段階でこの「データ化」に取り組み、資産として蓄積していくことが会社をより良くしていくカギとなります。

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